桐山零が抱える問題と成し遂げた成長【3月のライオン】

羽海野チカの漫画『3月のライオン』は『ヤングアニマル』で連載されている。アニメ、実写映画、外伝漫画、などさまざまなメディア展開が行われる。主人公の桐山零は、事故で家族を失い天涯孤独の身となる。将棋に縋って生きてきた零は、川本家と出会い、数多くの棋士との対局し、さまざまな事を経験しながら、自分の居場所を模索する。大きな孤独を抱え、もがきながらも成長していく桐山零を徹底解説する。

桐山零がプロ棋士になるまでの経緯

桐山零(きりやま れい)は幼い頃、交通事故で家族を亡くしてしまう。
家族を失った桐山を引き取ったのは、亡くなった父の友人であるプロ棋士の幸田だった。
桐山は自分が生きる道は将棋しかないと考え、幸田の内弟子になり、本格的に将棋を始める。

少年期では、詰め将棋、棋譜並べ、将棋道場の対局など、毎日将棋に没頭し続けた。
その努力が報われ、中学生の時にプロ棋士(作中では中学生でプロになった棋士としては史上5人目)になる。

しかしその努力は幸田の実子達のプロ棋士になる夢を諦めさせることになった。
桐山の実力を目の前に、歩(長男)と香子(長女)は結果を出すことが出来なかった。
歩は挫折し、香子は強制的に奨励会を退会させられた。
その後、歩は引きこもってゲームばかりする予備校生になり、香子は街で遊び回る派遣社員になった。

やがて桐山は自分が強くなるほど幸田家が崩壊していくことに気づく。
プロ棋士になった直後、桐山は幸田家から出て行き、六月町のマンションで一人暮らしを始める。

桐山零の性格

当初の桐山は感情希薄、冷静沈着、寡黙で周囲との関わりをあまり持ちたがらずに人間関係において消極的だった。
そのため周囲から、いじめられたり、避けられたりするなど、浮いた存在。
一年遅れで高校に入学したこともあり、親しい生徒がおらず、影が薄かった。
川本家と出会ったことで、だんだんと能動的になる。

川本ひなたのいじめがきっかけとなって、川本家のために自分が何が出来るのか考えるようになった。
ただしその気持ちが強すぎて、思考が暴走することも。

ひなたに対しては、過去の自分を救ってくれた恩義を感じている。
そのきっかけは、ひなたが友達のいじめを庇った時のこと。
ひなたは「友達を庇ったことは間違っていない」と叫んだ。桐山は小学生の時、いじめを受けた過去を持っている。桐山に話しかけてくるものはおらず、桐山はずっと将棋に逃げるしかなかった。ひなたの叫びは、かつて孤独だった自分に、ひなたが手を差し伸べたように思えた。
桐山は、孤独だった自分を救ってくれたことに恩を感じ、ひなたの手を取り、一生をかけて恩を返すことを誓う。
周囲から見ればひなたに恋心を抱いているように見えるが、桐山は自覚していない。

桐山は孤独だった自分に、ひなたが手を差し伸べる場面を想像した

桐山はひなたに恋心を抱いている自覚なし

桐山零の将棋

生きるために将棋をすることを決意した桐山

桐山が将棋を覚えたきっかけは実父の影響。
そして本格的に始めたのは幸田に引き取られてからだ。

桐山は交通事故で家族を亡くし、自分の居場所を失ったことに危機感を抱いていた。
そんなことを考えていた葬儀の最中に、幸田がやって来て、「君は将棋が好きか?」と訊ねてきた。
この瞬間、桐山は自分の新しい居場所を作るため、将棋棋士の子になることを決意する。

外面には出さないが、内面ではさまざまな感情が渦巻いている

将棋においては負けず嫌いで勝ちに貪欲。普段とは打って変わって、我を強く出す。
将棋の研究会での意見の言い合いなどで、棋士たちとぶつかり合うこともしばしば。
他人に指摘されるまでは自覚はなかったが、「自分は強い」「油断しなければ勝てる」などの慢心や優越感を持っていたこともある。
それ故に対局において悪手を打ってしまい、負けることもあった。

感覚思考の桐山

戦い方はオールラウンダー。どんな戦法も相手に応じて使い分ける。
将棋の思考は感覚型。理屈や理論よりも盤面を見て感じた感覚を優先する。
大盤解説では周囲が気づかなかった一手に唯一気づく場面もあった。

桐山の対局

桐山はさまざまなプロ棋士達と対局してきた。
ここではいくつか桐山の対局とそれに関連したエピソードを紹介する。

桐山零 VS 安井学

安井学

桐山の勝利。
順位戦で対決した。
安井は、普段は腰が低いが、酒とギャンブルに溺れて家庭は荒れており、離婚することになる。
娘からは「クリスマスまで過ごしたい」と言われており、そのクリスマス当日に桐山と対局。
対局中盤で、安井はミスをしてしまい、そのまま戦意喪失。桐山が勝利する。その後「あ~あ…最後のクリスマスだったのになぁ…」と桐山に八つ当たり気味な態度を見せた。
そんな安井の姿に桐山は苛立ちを覚え、自分と同じように努力をしないことに、咆哮を上げた。

怒りのあまり叫ぶ桐山

桐山零 VS 島田開

島田開

桐山の敗北。
将棋タイトルの一つ獅子王戦のトーナメントで対局した。
桐山は対局前、島田を「勝つ将棋」というより「負けない将棋」を指す人と見ていた。
しかし、桐山は島田に圧倒的な差を見せつけられ、自分が調子に乗っていたことに気づく。
結局、桐山は何も反撃できずに敗北。そのショックが強すぎて数日間寝込んでしまった。
その後、桐山は島田の将棋研究会に入ることになる。
名人の宗谷と対局する彼の姿を間近に見て、尊敬する先輩棋士の一人になった。
桐山が成長するきっかけにもなった対局である。

自分が桐山の眼中に入っていないことに気づいていた島田

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