聲の形(こえのかたち)のネタバレ解説・考察まとめ

『聲の形』(英題:「A Silent Voice」)とは、大今良時が2013年に『週刊少年マガジン』にて連載を開始し2014年に完結した漫画、およびそれを原作としたアニメーション映画作品である。小学生時代に聴覚障害の少女に行ったいじめのせいで自らも孤立した主人公が、高校生になって再会した少女へ償いをする物語。主人公と少女、さらに2人の同級生や家族たちの、苦しみや再生の様子が描かれている。

石田将也「そう思ってしまう自分が一番嫌いだ」

第1巻5話に登場する。
硝子に対するいじめが原因で自身がいじめを受けるようになり他人に対し疑心暗鬼になった将也は周囲を皆敵のように捉えてしまう。そんな将也は高校3年生になっても相変わらずで将也を否定するような幻聴の症状も窺え学校の生徒の顔にバツマークを付けるようになっていた。
そのような状況下、将也が回想を巡らせ心の中で浮かんだ言葉が「みんな嫌いだ 嫌いな奴の好きなものも嫌いだ 嫌いな奴の友達も嫌いだ 嫌いだ 嫌いだ そう思ってしまう自分が一番嫌いだ」である。

石田将也「西宮 俺と お前 友達に…なれるか?」

第2巻6話に登場する。
親に弁償してもらった170万円を返したあと、思いの外早い段階で将也は消えた硝子の元へ謝罪に向かう。将也は硝子へ謝罪したら死のうと考えていた。しかしいざ再会を果たし、話し始めると逆に「罰が足りない」と負い目を感じる。その後「あの頃は傷つけ合うことでしか伝えられなかった」というような後悔など、将也自身の素直な言葉を話し始める。
その後謝罪するはずだったがここで咄嗟に出た言葉が「だけど だけど今では…わかる…つもり…お前のこえ…西宮 俺と お前 友達に…なれるか?」である。

石田将也「アホみたいな考えかもしれないけど…体があるうちは西宮のために消耗したいと思ってる!命を!!」

第2巻13話に登場する。
硝子の母が川に投げ捨てた筆談ノートを硝子はキャッチしようする。するとその弾みで硝子は川に落ちてしまう。その硝子を追う形で将也も川に飛び込む。その際、硝子の妹の結絃は川に飛び込む将也をこっそりカメラ収め、過去に硝子をいじめた報復の一環でネットにアップしてしまう。その記事は将也の小学生時代の度胸試し大会さながらであった。
やがてこの記事が硝子にバレ、硝子は結絃に問い詰める。普段感情を表さない硝子が怒りを露わにしていること、また姉のためを思ってしたことなど色々と相まって結弦は半泣き状態で家を飛び出る。
将也の姪っ子のマリアが結絃を偶然見つけ、将也宅へ避難させることになるが、このことを知らない硝子は結絃の行方を案じ探しに出る。
今度は一向に帰らない娘達を案じた硝子の母が将也宅に訪れ硝子を探すことになる。なかなか見つからず諦めかけた結絃と将也が口論になった時に将也の口から出た言葉が「オレは西宮に会ってその全部を強烈に感じたからこそ人生から逃げずに済んだんだ!アホみたいな考えかもしれないけど…体があるうちは西宮のために消耗したいと思ってる!命を!!」である。
将也が他人に対し初めて熱い想いを打ち明けた瞬間でもある。

石田将也「君に 生きるのを手伝ってほしい」

第7巻53話に登場する。
仲間達の集合場所となった火曜日の手話講習の後、硝子が向かう鯉の餌やり場で、昏睡状態から復帰した将也と奇跡の再会を信じその場にうずくまる硝子が、本当に奇跡の再会を果たし、将也はここで初めて硝子に「ごめんなさい」と謝ることができる。
西宮も自分のせいで昏睡状態に陥った将也に対し募りに募らせた自責の念を手話で吐露する。
そんな硝子に対するここでの将也の答えが「もし俺が 今日からやらないといけないことがあるとしたら もっとみんなと一緒にいたい たくさん話をしたり 遊んだりしたい それを手伝ってほしい 君に 生きるのを手伝ってほしい」である。

石田将也「変わろうと足掻いてる時間の方が大事なように 俺は思うよ」

第7巻57話に登場する。
昏睡状態から復帰した将也が初めて学校を訪れ仲間達と再会を果たした際の佐原との再会で「何も変わっていない」と言う佐原に対し、将也がかけた言葉が「変われないこともあるよ 俺だって 変わろうと足掻いてる時間の方が大事なように 俺は思うよ」である。
佐原は笑顔になり「そっか」と答える。

石田将也「でも今では…そんなのいつでも覆せるような気がするんだ」

第7巻61話に登場する。
将也の進学先の専門学校の願書が届いた日、部屋に戻ると将也の布団に植野がいる。「話がしたい」と将也に伝え場所を変え聞いたのは将也が硝子の自宅マンションから川に落下した際、助けたのはかつて将也の親友であり、将也をいじめていた島田と広瀬であったことだった。続けて植野も将也に対する謝罪と硝子を好きになれないという素直な気持ちを将也に打ち明ける。ここで将也が植野にかけた言葉が「俺がまだ島田たちと仲良かった時 話しかければ常に期待通りの返事が返ってくるからなぜかあいつらのこと何でも知ってる気になっててさ それが一転一番分からない奴になっちゃって… 何があるかわかんないなあって思ったよ まぁ自分のせいなんだけど… でも今では…そんなのいつでも覆せるような気がするんだ」である。
更に「そのままで良い」とも植野に声をかけたのに対し植野は「甘いよなー」と言う。その後植野は将也が知らない3つ目を言い残し、その場を立ち去る。

石田将也「この扉の向こうにあるのは きっと辛い過去だ でももう一つある 可能性だ それはいつだって開くことができる 生きている限り」

第7巻最終話に登場する。
将也の地元の成人式で小学校の同窓会が執り行われた際、会場の扉を将也が開けようした時の将也の回想が「この扉の向こうにあるのは きっと辛い過去だ でももう一つある 可能性だ それはいつだって開くことができる 生きている限り」である。
会場に入ることを躊躇う硝子の手を取り、将也と硝子は会場に入る。

西宮硝子「でも私も友達ごっこはいやです。だから、ごっこなんて言われないように もっとあなたのことが知りたいです。」

第3巻22話に登場する。
植野に将也と硝子の関係性を「それって友達ごっこじゃない」と指摘されたことにずっとモヤモヤしていた将也が硝子に「友達ごっこじゃないよな」と確認するようなメールを送り、硝子から送られてきた返信の内容が「私もそうなのかなって思ってしまいました。でも私も友達ごっこはいやです。だから、ごっこなんて言われないように もっとあなたのことが知りたいです。」である。
将也がその返信を受け取った時、奇しくもメールを返信したばかりの髪型をポニーテールに変えた硝子と鉢合わせになる。

西宮硝子「いちぃ だ くぅ- うきぃ」

第3巻23話に登場する。
「あなたのことを知りたい」という硝子からの返信メールを受け取り、奇しくも硝子と鉢合わせして将也はどこか辿々しい会話をする。ここで硝子は以前将也からもらった猫のポーチの御礼にと動物をあしらったガーデンピックをプレゼントする。プレゼントされた将也にはそれがガーデンピックであることを理解できないではいたが「ありがとう」と言いその場を後にする。帰路につく将也の後ろ姿に硝子が、上手くコントロールできない声を駆使し力強く将也にかけた声が「いちぃ だ くぅ- うきぃ(石田君好き)」である。
将也はそれに気付きはするも肝心の言葉は伝わらず硝子の「うき」という声を「月」と勘違いして「ああ⋯キレイだね⋯」と続ける。
これは夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した逸話を彷彿させるがそのような意識はなかったと作者は答えている。

永束友宏「でもさ石田君俺ぁ友情ってのは言葉や理屈…それらを超えた所にあると思うんだ」

第2巻9話に登場する。
自転車を横取りされようとしている永束を将也が自身の自転車を渡す形で救い、後に返ってこない将也の自転車を永束が取り返す。このことがきっかけで永束と将也は友達になる。
久々に楽しい気分を味わった将也はふと永束に「『友達の定義』って何かわかる?」と尋ねる。すると「それは定義付けないといけないものなのかい?」と逆に将也は質問されて少し納得し自分の抱える思いを打ち明け、それを聞いて永束が答えたのが「でもさ石田君俺ぁ友情ってのは言葉や理屈…それらを超えた所にあると思うんだ」である。

植野直花「インガオーホーなんてクソくらえ!」

第5巻38話に登場する。
いじめを許さないという立場の真柴と会話した際、いじめの主犯である将也はあまりにバツが悪くなる。ここで将也は真柴と親しい同じ小学校出身でぶりっ子キャラの川井に告げ口されたと疑心暗鬼になり、直接自分の過去を真柴に話したのか聞く。するとこれが藪蛇となり川井は半泣きで将也の過去を公言してしまう。耐えられず学校をあとにした将也は植野と遭遇し、このことを打ち明ける。「孤立確定だ」「罰がたりないんだ」と弱気になる将也に植野がかけた言葉が「インガオーホーなんてクソくらえ!」である。

佐原みよこ「高めろ 自分を 変わり続けろ この先ずっと変わらずに」

第6巻47話に登場する。
将也が昏睡状態に陥ったことが仲間たちにとってそれぞれの思いを回想するきっかけとなる中、佐原は小学生から不登校になったことを思い出し自分の無力感に苛まれていた。佐原のように本当の気持ちを打ち明けることもできなかったり、将也のように直接硝子に会いに行こうともしない自分を責めてしまっていた。特に将也の変貌ぶりには佐原は驚かされており、変われない自分とどうしても比較してしまっていた。変わらないという意識は将也に影響受ける以前からあった。嫌な奴がいない時こそチャンスだと捉えていた佐原がよく自分に言い聞かせていた言葉がこの「高めろ 自分を 変わり続けろ この先ずっと変わらずに」である。

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