聲の形(こえのかたち)のネタバレ解説・考察まとめ

『聲の形』(英題:「A Silent Voice」)とは、大今良時が2013年に『週刊少年マガジン』にて連載を開始し2014年に完結した漫画、およびそれを原作としたアニメーション映画作品である。小学生時代に聴覚障害の少女に行ったいじめのせいで自らも孤立した主人公が、高校生になって再会した少女へ償いをする物語。主人公と少女、さらに2人の同級生や家族たちの、苦しみや再生の様子が描かれている。思春期の葛藤、孤独、友情、そして恋愛。全てが詰め込まれている作品である。

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『聲の形』の概要

『聲の形』(こえのかたち、英題:A Silent Voice)とは、大今良時が2013年の『週刊少年マガジン』(講談社)36・37合併号から2014年51号まで連載した漫画、およびそれを原作としたアニメーション映画である。

物語は主人公2人の小学校時代における出会いの回想から始まる。やんちゃな性格の主人公・石田将也(いしだしょうや)は、小学生時代、聴覚に障害を持つヒロイン西宮硝子(にしみやしょうこ)に対するいじめの中心人物となり、後にそれが原因で周囲に切り捨てられ孤独になる。その後に抱く、硝子に対する自責の念は将也の運命を翻弄する。物語は2人の小学校時代における出会いの回想から始まる。やがて高校生となり、依然孤立したままの将也は硝子との邂逅を果たす。以後、将也はかつての仲間との再会も果たす。また将也が新たな友人達と出会ってからは、人間の持つ孤独や絶望、純愛や友情などが描かれている。

本作は、作者が専門学校時代に投稿した漫画の結果待ちをしている間に描いていた作品でもある。その着想は、作品の投稿当時から現在に至るまで育っているテーマ「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」の答えを作者自身が見つけ出せなかったため、「読者に意見を聞いてみたい」という気持ちで描いたという。その後、読みきりが掲載されて議論が起こった際には「嬉しかった」と感想を述べている。また、手話通訳者である作者の母親の協力もあり、劇中では手話の場面が多く描かれる。なお、題名の「こえ」の表記を「聲」としたのは、その文字が「声と手と耳」が組み合わさってできているからと作者は述べている。また「気持ちを伝える方法は声だけじゃない」という意味を込めたとも作者は述べている。

タイトルはいずれも『聲の形』で副題等はないが、連載のきっかけとなる最初の作品が『別冊少年マガジン』2011年2月号に掲載され、その後リメイクされた作品が『週刊少年マガジン』2013年12号に掲載された。その後、週刊連載版が『週刊少年マガジン』(講談社)36・37合併号から2014年51号まで連載されている。これらは詳細部分が異なっており、区別するため最初の作品を「オリジナル版」、リメイクで読み切り掲載された作品を「リメイク版」、再リメイクで週刊連載されている作品を「週刊連載版」としている。
本作は、2014年度「コミックナタリー大賞」第1位、「このマンガがすごい!2015」オトコ編第1位、第19回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。

『聲の形』のあらすじ・ストーリー

将也の小学生時代

物語は作中の現在から6年前、主人公の石田将也(いしだしょうや)が小学6年生の頃から始まる。

将也はクラスの悪ガキで、放課後になると親しい仲間を引き連れ近くの橋まで行き「度胸試し大会」と称して川に飛び込む遊びをしていた。そして遊び終わると皆で理容室を営む自宅に濡れたまま帰り、部屋でゲームや漫画を読むなどして遊ぶ日々を送っていた。
育ちがよく冷静な性格の島田一旗(しまだかずき)とふくよかな体格で多数派になびきやすい性格の広瀬啓介(ひろせけいすけ)を引き連れ、例の如くいつもの川で度胸試し大会をしていると将也は靴を盗まれる。犯人は誰なのか詮索すると島田の通う塾にいることが判明する。
翌日、強気で自己主張の強い性格の植野直花(うえのなおか)に、将也の靴を盗んだ犯人をおびき寄せてもらう。犯人は大柄な体格の通称デラックス。将也は、デラックスを問い詰め制裁を喰らわす。
充実感に浸るのも束の間帰りの道中、将也は、自宅で何度が見かけた姉の30人目の彼氏であるげんき君に出くわす。げんき君はデラックスの兄で将也は早速報復にあってしまう。

またも退屈な日々を送ることになった将也だが、ここで転機が訪れる。聴覚に障害を持つ本作のもう一人の主人公、西宮硝子(にしみやしょうこ)との出会いである。硝子は自己紹介でノートを取り出し、筆談でのコミュニケーションをお願いする。将也には硝子が宇宙人のように映るが、奇しくも硝子の席はその将也の前となる。興味を持ち始めた将也はここから硝子をいじめ始める。将也は、硝子の耳元で大声を出してみたり、上手く発音することができない硝子の真似をしたり、合唱コンクールで上手く歌えない硝子をオンチだと言う。挙句には黒板に硝子の悪口を書き連ねるなど、どんどんいじめをエスカレートさせる。

あくる日将也は、硝子の補聴器までを取り上げ始める。将也は更にもう片方の補聴器を取り上げようとしたはずみで硝子の耳を負傷させる。これに対し担任の竹内(たけうち)は将也を咎めるも、自分に恥をかかせるなと言うだけであった。硝子はいじめてくる将也達に何故か謝り続ける。将也は「ごめんなさい」と記載されたノートを払いのけ、近くの池に投げ捨てた。

後日、硝子は学校を休む。この日の総合学習の時間、将也のクラスで校長先生により、硝子の母から娘がいじめられていると学校に問い合わせがあったと伝えられる。更に壊れた補聴器の総額が170万円にも及ぶということも告げられ、学級裁判により将也は公開処刑される。その後将也は逆にクラスのいじめの標的にされ、孤立した。

将也はボロボロになるも、母親には悟られまいと、いつもの友達といるように振る舞った。学校では上靴を隠され、担任の竹内に訴えるも逆に疑われてしまう。後に将也の上靴を盗んだ犯人が島田と広瀬だと判明し、将也は2人に詰め寄るも逆に返り討ちに合ってしまった。床に大の字になり途方にくれ意識が薄れかけてきたところ、硝子がハンカチで血を拭き取ってくれた。驚いた将也は御礼を言うでもなく、硝子と突っぱねる。ここで初めて硝子は自分の感情を露わにし、将也と硝子の取っ組み合いが始まる。
その後、硝子は転校した。ここで将也は、毎朝硝子が拭いていたのは硝子の机ではなく、悪口が書かれた将也の机であったと知り、自分の愚かさにようやく気付いた。

将也の高校生時代

西宮硝子との再会

進学校とされる東地高校に入学した将也は高校3年生になっても硝子のいじめに対する自責の念を拭えず、他人には疑心暗鬼になり、孤立し続けていた。

そんな中、硝子の行方が判明したという連絡が将也の元へ入る。過去に母親が払ってくれた硝子の補聴器の弁償代170万円をアルバイトで貯め、そのお金を寝ている母親の枕元に置く将也。その足でバイトを辞め、硝子の元へ謝罪に向かう。この時の将也は謝罪後に自殺するつもりでいた。

その後将也は硝子との再会を果たす。しかし、将也に出会った硝子はその場から立ち去ろうとするが、追いかけようとしてつまづいた将也の様子を見て、戻って来てくれた。将也はかつての筆談ノートを取り出し「忘れ物」と手話を交えて渡そうとする。その将也に硝子は驚き、なぜ手話ができるのかと尋ねる。これに対し将也は堰を切ったように硝子に対する自責の念を伝える。しかし、ここで謝罪するはずが、友達になれるかと思わず硝子に尋ねてしまう。焦る将也ではあったが硝子の答えは将也への握手だった。
この硝子と将也の再会をきっかけに、小学校時代の友達が「あの頃」を修復するかのように集まることになる。

硝子の母との再会

硝子との再会を果たし後、硝子は将也をいつも鯉の餌やりをしている橋まで案内してくれる。気まずさが漂いながらも過去を振り返りながら会話していると、硝子の母親が硝子を迎えにくる。

ここで将也は硝子の母との再会を果たす。硝子の母親は硝子が先の筆談ノートを手にしていることに気付く。すると硝子の母はそれを取り上げ、川へ投げ捨ててしまう。焦って硝子はその筆談ノートをキャッチしようとした弾みで川に落ちてしまう。その硝子を救おうと今度は将也が川へ飛び込む。

二人して川に飛び込んだ甲斐あってか無事ノートは見つかり安堵するも、西宮親子はすぐにその場を立ち去ろうとする。硝子は振り返り、手話で「またね」と言ってくれる。将也は西宮親子の後ろ姿へむけて後悔していると大声で投げかけた。すると硝子の母が足早に将也の元へ踊り、思い切り将也の頬を叩いたのだった。

永束友宏(ながつかともひろ)との出会い

硝子の「またね」という言葉をどう受け止めて良いのか悶々とする中、将也は永束友宏(ながつかともひろ)と出会う。永束は、のちに将也の親友となり数少ない理解者となってくれる。
出会った当初永束は自転車を横取りされようとしていた。将也は代わりに自身の自転車を献上する形で永束を救う。

西宮結絃(にしみやゆづる)との出会い

永束を助けたは良いが自転車を盗まれた将也は徒歩でその日は帰宅する。するとその道中、パンの割引券を手に入れる。将也はこれを硝子に会う口実とし、パンを購入し再度硝子の元へ向かう。

硝子のいる手話講習の教室に入ろうとすると将也はある少年と鉢合わせする。実はこの少年は少女であり、硝子の妹の西宮結絃(にしみやゆづる)であった。結絃は将也がかつて硝子をいじめていた張本人であることを認識し、硝子がいるか尋ねる将也に対し、頑なにここにはいないと否定した。

川井みきとの再会

川井みきは、将也と同じ高校に進学し、高校3年生の時に将也と同じクラスになる。

川井と再会した頃、将也は後に映画制作の仲間になる真柴智(ましばさとし)に過去のことを尋ねられていた。この頃から、将也が心を閉ざし孤独を感じている間、将也から見える人間の顔にはバツマークがつけてられている。この時、将也は硝子から佐原に会いたいと言われており、その佐原の行方を川井に聞いている。

佐原みよことの再会

将也は、川井から佐原が太陽女子学園に進学していることを聞き出すと、佐原を探しに向かう。
当初は永束と向かう予定だったが永束の余計なおせっかいで結果的に硝子と探しに向かうことになる。しかしこの日は探し出せずに終わる。
翌朝、遅刻しそうな将也が満員電車に乗り込むと、前に背の高い女性の後ろ姿を見る。そこで丁度電車が止まり、扉が開くとその高身長の女性と一緒に将也はこけてしまう。その女性に声をかけられ、顔を見ると奇しくも佐原であった。
佐原と再会できた将也は、放課後、佐原を硝子のもとへ案内する。

植野直花との再会

硝子と佐原の再会を果たせた将也は、例の鯉の餌やりをする橋で硝子、結絃、佐原たちと共に集まっていた。
硝子が将也に誰か会いたい人はいないのかと尋ねると、過去のトラウマを思い出し将也は語気を荒げて否定してしまう。翌日、永束にも同じようなことをしてしまった将也が、その放課後、悶々としながら街を歩いていると今度は植野と遭遇する。

お互い気付いておきながら気付いていないふりをし、猫カフェのアルバイトでビラ配りをしていた植野は何事も無かったように将也にそのビラを渡す。翌日将也は永束と共に、その猫カフェで働いているのが植野であることを確認しがてら向かうことになる。

真柴智(ましばさとし)との出会い

佐原と再会させてくれた御礼だと言って硝子からプレゼントをもらった将也。それを眺めながら、何に使う物なのか理解できなかった将也は永束に何に使うものか尋ねた。永束はそれを自慢されているように感じたので話を切り替え、以前話していた新人映画賞に向けての映画制作話を持ち出す。そこへ気さくに話しかけてくる男子生徒が現れる。

これが、後に永束の制作した映画の主役となる真柴智(ましばさとし)との出会いであった。真柴は以前から将也に興味があった。

島田一旗との再会

硝子が鯉に餌をやる橋に行く火曜日、永束は自分も連れて行ってほしいと将也にお願いする。理由は、結絃に映画制作のためのカメラを貸してもらう交渉をするためであった。

その後いつもの橋に共に向かうことになるがそこには真柴も付いてくる。橋に到着し、永束が結絃に交渉すると結絃はカメラを貸す見返りに遊園地にいきたいと言う。こうしてみんな揃って遊園地に向かうことが決まる。この時点のメンバーは将也、硝子、結絃、永束、佐原の5名である。

遊園地に向かう当日になると更に人数が増える。植野と川井が参加する。まず真柴が川井を誘いその川井が植野を誘うことで更に2人増える形となる。合計8人で川井指揮のもと、遊園地に興じる。最初はお互いギクシャクしたものの徐々に皆楽しみ始める。
しかし将也は遊園地の屋台で、かつての親友、島田一旗と再会し、水を差される。硬直する将也に、島田は「お節介だ」と植野に言った。植野にはここに島田がいることが分かっていたのだった。

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