聲の形(こえのかたち)のネタバレ解説・考察まとめ

『聲の形』(英題:「A Silent Voice」)とは、大今良時が2013年に『週刊少年マガジン』にて連載を開始し2014年に完結した漫画、およびそれを原作としたアニメーション映画作品である。小学生時代に聴覚障害の少女に行ったいじめのせいで自らも孤立した主人公が、高校生になって再会した少女へ償いをする物語。主人公と少女、さらに2人の同級生や家族たちの、苦しみや再生の様子が描かれている。思春期の葛藤、孤独、友情、そして恋愛。全てが詰め込まれている作品である。

目次 - Contents

仲間割れと硝子の飛び降り未遂

島田との出会いやその後観覧車で植野が硝子の頬を叩いていたことに将也は動揺する。母校に出向いた際のかつての担任竹内との再会では苦手意識が頭をもたげる。さらに、永束と初めての喧嘩をしてしまい、疑心暗鬼になった将也は川井に相談した。しかし、そのことが裏目に出てしまい川井によって将也の過去がクラスで公言されてしまった。
色々と重なった将也は疲弊しきっていた。

止めを刺したのは植野のおせっかいだった。植野が将也を自転車にのせ、皆が集まる橋へ向かったことで、将也の過去をめぐって仲間割れがおきてしまう。植野と川井の口論が佐原を巻き込んだり、心配してくれる永束を突っぱねたり、いじめっ子が大嫌いな真柴に将也が殴られるなどで結局映画制作が頓挫してしまう。この様子を耳の聴こえない硝子は哀れみのような表情を浮かべ眺めていた。このような状況で落ち込んでいた将也だったが気丈に振る舞い、硝子をデートに誘う。

デート当日も火曜日の事件のことで頭が一杯の将也は、心ここにあらずという感じが硝子にも伝わってしまう。途中硝子が坂で転んでしまい将也がそれを助ける。硝子は手話で、今までのことを含め、謝る。硝子はこの時、自分といたら不幸になると将也に伝えていた。

しかしそれでも、将也はその後も硝子と会い遊んでいた。硝子の家でお菓子作りをした際、結絃に誘われた花火大会で大きな事件が起きる。花火大会の日、硝子は途中で自宅マンションへ帰ってしまう。それを知った結絃は自宅にカメラを忘れたと言って、将也に取りに行かせる。硝子の自宅に着いた将也は、ベランダで投身自殺を図る硝子の姿を捉えた。咄嗟に駆け寄った将也は、硝子の手首を掴み引き上げ救出する。しかし、その反動で将也が下の川へ転落してしまう、昏睡状態に陥ったのだった。

昏睡状態の将也を見守る仲間たち

将也の昏睡状態が仲間や周囲に与えた影響は大きかった。

将也の母親は西宮家族と対面すると、いつもの愛想の良さは当然無く平生装うも明らかによそよそしい。そんな将也の母親に対して普段冷淡で無愛想な硝子の母親は頭を地に付け土下座する。普段皮肉屋な結絃も土下座をする。外では植野が硝子を殴りつける。それを庇おうと佐原が盾になるも返り討ちに合う。硝子の母親がその様子に気付くと、今度は植野を無表情でボコボコに殴った。

乱闘後、西宮家では結絃が今までため込んできた動物の死骸の写真をはがし捨て始める。硝子の母親がそれを手伝い、一家は今までこらえ続けてきた涙を流す。

後日、永束が将也の下へ見舞いに行く。すると先に硝子が将也の病室の前に立っており、植野が将也の入院する部屋に籠城していることを確認する。落ち込んでいる硝子を気にかけた永束は、硝子を誘って自動販売機の方へ向かった。
硝子は永束に、みんなが築き上げたものを壊してしまったと伝えた。それに対し永束がどうすれば直ると質問と、硝子は映画の続きを作るのはどうかと提案した。
これが永束に勇気を与え、映画作り再開のきっかけとなった。

将也の目覚めと映画制作の再始動

映画制作が再始動し始めても硝子の心が休まるようなことは当然無かった。ある夜、硝子は仲間が皆仲良くしている夢を見る。その夢の中で硝子がベッドに横になると目が覚めた。目には大粒の涙が浮かんでいた。デジタル時計に目をやると日付が変わる前の22時58分で、曜日を見るといつも仲間が橋に集まる火曜日であった。硝子は導かれるようにその橋へ向かう。しかし、当然そこには誰もおらず、硝子はひざまづいて泣き咽んだ。

目を覚ました将也は、治っているはずのない身体を引きずり、いつも仲間集まる川へ向かう。そこには泣き咽ぶ硝子がいた。力が抜けたようにひざまづく硝子に合わせて、将也もひざまづく。ここで将也は、ようやく西宮に謝ることができたのだった。

将也が昏睡状態から回復し、学校に向かうとすでに文化祭が始まっており、更に永束が中心となり手がけた映画の完成試写会も行われていた。上映終了後、色々相まってしまったのもあってか将也は一人「最高」と叫んでしまう。すると丁度会場の明かりが点灯する。将也は気まずくなりその場から逃げ出す。ここで会場に将也が来ていたことに仲間たちは気付く。仲間達は皆将也との再会を喜んでいた。その証拠に将也が心の中で他人の顔に貼り付けていたバツマークがどんどん剥がれていく。途中心無い声がかかろうとも将也はそれを穏やかに受け入れるような表情を浮かべる。

この後、新人映画の公開選考会が開かれ、文化祭で上映された映画もまた公開審査にかけられる。結果は散々なもので皆落ち込むも、将也がみんな最高だろうがと声をかけたことで立ち直った。その後仲間は近くのファミレスで打ち上げをする。お互い歪みあった時のかつての空気感はもはや解消されていた。

高校卒業と成人式での再会

かつて映画を制作した仲間達はそれぞれの進路を決定し、卒業シーズンを迎えていた。硝子は理容師を目指し、聴覚に障害を持ちながらも理容師をしている人物の元で働きながら学ぶため上京することが決まる。それを知った将也はショックを受けるが当然阻止することなどなく、卒業後には上京する硝子の引越しの手伝いを永束と共にしていた。ひと通り作業が終わり、硝子とのしばしの別れの時が来るとここで将也は硝子からのプレゼントのことを思い出す。別れ間際の最後の会話はそのプレゼントがなんだったのかということだった。それは庭などに飾るガーデンピックであることをここで将也は初めて知る。隣にいた永束は呆れていた。

時は流れ、仲間達は地元の成人式に集まっていた。その日そこでは同時に母校の小学校の同窓会も開かれていた。その会場へ向かう将也と硝子であったがその会場の扉の前で硝子が入るのを躊躇ってしまう。将也はそんな硝子の手を取り、かつての級友集まる会場へ入って行く。

『聲の形』の登場人物・キャラクター

主要人物

石田将也(いしだしょうや)

右側の人物が石田将也。左側の人物が西宮硝子。

CV:入野自由

本編の主人公。
小学生時代は暇を持て余し、刺激を求めるようなやんちゃな悪ガキタイプの性格であった。好奇心から硝子に対するいじめの主犯格になっていたものの、硝子をいじめているという感覚より、いじめることで日々の暇な日常を楽しめているという充実感が勝り、容赦しない。いじめがあまりに度を過ぎたものになって学級裁判にかけられ、クラスから断罪される。
硝子がいじめられ転校してからはスクールカースト下位に転落し、手のひらを返したかのようにいじめを受ける。それと同時に、繊細な性格が窺え始める。硝子に対する罪悪感からか他人に対しひどく疑心暗鬼になり、相手の顔色ばかり気にしている。さらに口調は常に穏やかになり単独行動が目立つようになる。
小学生時代してこなかった勉強には身が入るようになり、小学生の時の担任竹内と同じ東地高校に進学する。竹内と再会した際に将也は感心される。硝子に対する罪悪感で中学から習い始めた手話が高校3年生の時点で普通に会話できるくらいに上達している。これらから勤勉さも窺える。
西宮家のかすがいであった硝子の祖母西宮いと(にしみやいと)が亡くなり結弦が落ち込んでいた際は、将也はこの事実を知らないながらも、結弦が泣いていた姿をみかけたことに言及し「関係あると思いたい。後悔したくないから。」と伝えるなど、仲間の窮地を自分事のように捉える優しい一面も多く見受けられるようになる。
小学生時代、硝子に対するいじめで壊し続けた補聴器代170万円は当時親に弁償してもらったが、アルバイトをして返済するなど責任感のあるまじめな性格も窺える。
自身がいじめられて以降、将也は塞ぎ込みがちになる。それでも中学生の時に一人で名古屋に向かったり、手話を覚えたりする。また、親に弁償してもらった170万円をアルバイトで貯めて返済しようとする。更には転校した硝子を探し出し直接謝ろうとする。これらのように人一倍の行動力もまた見受けられる。
将也には、硝子のモデルになった人物と上手く付き合えなかった頃の作者自身が投影されている。だが小学生時代の将也を描いたときには作者の兄を思い出し描いていた部分もある。
血液型はA型。

西宮硝子(にしみやしょうこ)

CV:早見沙織

先天的に聴覚障害を持つ本作のヒロイン。障害がありながらも、友達の輪に入ろうと一生懸命な少女。
障害のある者とない者が共に学ぶインクルージョン教育で学ばせたいという硝子の母親の方針のもと、通常クラスで学び続けてきた硝子ではあったが結果的に度重なるいじめを受けてしまう。将也の学ぶ水門小学校に転校してからもそれは変わらなかった。硝子の聴覚は障害の程度は軽くなく、補聴器をつけても会話をほとんど聞き取れない程重度であった。発話も不完全で周囲と上手にコミュニケーションが取れないことが硝子を苦しめ続けていた。
このように硝子の苦悩は「理解」にまつわるものが多かった。「理解したい」「理解されたい」「理解できない」という他人とのコミュニケーションにおける思い煩いは硝子に愛想笑いを度々つかせる。特にコミュニケーションの行き違いで周囲と摩擦が生まれた時などに愛想笑いを浮かべてしまう。周囲に溶け込むための硝子なりの苦肉の策ではあったが、これが更に裏目に出てしまう。引っ込み思案や身勝手な振舞いに思われたり、将也などの悪ガキには更に奇異な目で見られたりして硝子は苦しみ続ける。
将也を中心とするいじめが原因で転校してからは特別支援学校に移ったとされる。
小学校での硝子は、クラスに溶け込み友達を作ろうと努力するが結局うまくいかなかった。特別支援学校への転校以降、周囲からのいじめもなくなったが、将也と再会するまでは孤独で内向的な生活を送っていた模様。高校生になってからは、人間関係にも少しずつ諦めがにじみ始め、愛想笑いでごまかすことが多くなっていた。
将也と再会を果たした後も、「理解」にまつわるコミュニケーションの行き違いは残る。逆に献身的になった将也に好意を寄せ、想いを自分の声で伝えようとするも将也の理解には至らなかった。そして小学校時代の旧友との交流が復活するなど、めまぐるしい人間関係に翻弄される。
投身自殺を図ろうとした硝子を助けた際、逆に将也が転落し昏睡状態に陥る。この時硝子が抱く自責の念が、頓挫した映画制作の再始動を呼びかけるきっかけとなる。今までのコミュニケーションでは主張できなかった硝子自身の課題と向き合うきっかけなったと思われる。この呼びかけは見事達成される。
高校卒業後は理容師を目指し上京する。
誕生日は6月7日。
血液型はA型。

西宮結絃(にしみやゆづる)

CV:悠木碧

第2巻8話から登場する。
ヒロイン硝子の妹で、年齢は硝子の約3歳下。聴覚障害を抱える姉を懸命にサポートする。その懸命さは時に依存を感じさせる。中学生であるが、不登校で学校には通っていない。不登校、趣味の写真撮影、母との不仲など、これらの全ての理由が硝子に由来する。髪を短く切って男性のように振舞うようになったのも、姉を守るための「強さ」を子どもなりに表現したものでもあった。
初登場当初、少年のような外見で一人称を「オレ」と称するなど、あまりにボーイッシュであったあまり、将也と永束は本当に男だと勘違いし、危うく一緒に銭湯に入りかける。
将也と初めて会った時点、結絃は将也が硝子をいじめていた張本人であることを認識していたため、硝子に近づこうとする将也に妨害の限りを尽くす。しかし将也が本気で罪を償おうとしていること、またそのような将也に硝子が惹かれ始めることなどを目の当たりにすると将也に対する怨恨が段々と和らいでいく。やがて「石田ならどうする」というように逆に将也を頼るような慕う態度を見せ始める。動物の死骸を写真撮影するのを趣味にしていると思われるがこれは硝子の自殺願望を食い止めさせるものであった。
不登校ではあったが高校へは進学する。進学先は植野や佐原と同じ太陽女子学園の模様。物語終盤で植野、佐原と同じ制服を着ている。

永束友宏(ながつかともひろ)

CV:小野賢章

第2巻8話から登場する。
高校編から登場する、将也が高校3年目にして初めてできる友達。
とても情に厚く義理堅い性格。永束が自転車を他の生徒に横取りされそうになっているところを将也が自身の自転車を渡す形で助ける。後に行方が分からなくなった将也の自転車を永束が取り返したのをきっかけに将也と友達になる。
最初のほうから将也のことを親友とし、将也と積極的に仲良くなろうとする。そんな永束に将也はすぐ馴染むことができ、忘れていた楽しい時間を思い出す。最終的には将也にとってよき理解者となる。
一見明るいキャラクターのように思えるが、馴れ馴れしく見栄っ張りな一面もあり将也以外の交友関係はあまりない。小柄で小太り、かつもこもこ頭で本作ではコメディタッチに描かれ暗くなりがちなストーリーを明るくしてくれる。情に厚く結弦が将也を追い返した際に結弦の胸倉をつかみ一喝したり、結弦が犯した事件のことで一緒に謝るなど、芯が強く思いやりがある。
将也に対する呼び方が親しくなるにつれ、「石田君」「将也」「ヤーショー」と変わっていく。真柴のことも親しくなると「マーシー」と呼ぶようになる。一方、将也は彼のことを「永束君」と君付けで呼ぶ。
作者にとって永束は、見栄っ張りで自己中という点で女子から不評を買いやすいキャラクターとされる。
血液型はAB型。

佐原みよこ(さはらみよこ)

CV:石川由衣

第1巻2話から登場する。
そばかすが特徴の心の優しい少女。小学生時代に、聴覚障害のある硝子を助けようと、先生の喜多の「話を覚えよう」という提案に率先して名乗り出る。おれは世話役を任された植野の負担を軽減するためでもあったが、逆に植野から「点数稼ぎ」と嫌味を言われ、以降不登校となってしまう。そのため、硝子が将也にいじめられていた事や将也がクラスメイトにいじめられていた事も知らない。
不登校は中学の時まで続く。中学では主に保健室登校をしていた。「硝子を助けられなかった」という自責の念と「変わりたい」という向上心の下、ここで手話の勉強を続ける。
しかし高校生になると通学ができるようになる。高校は太陽女子学園に進学し、ファッションデザインを中心に学ぶ。だがこの高校には苦手とする植野も進学していた。その事実を知った当初は戸惑いを隠せなかったが佐原は植野と積極的に仲良くなろうとする。
ある日佐原が描いた服のデザインが次点の銀賞を取る。金賞は植野であった。植野は金賞を獲るも銀賞が佐原であることが気に食わなかった。後に、佐原を慕う後輩が作品のダメだしする声を植野は聞いてしまう。腹を立て振り返るとそこには佐原がいた。佐原は植野の作品をダメだしする後輩に「そんなこと言わないで」と植野を庇う発言をしていた。植野は「今日一緒に帰るぞ」と佐原に言い残しその場を去った。これがきっかけで佐原は植野に対する苦手意識を克服していく。
高校に入り身長が急激に伸びた佐原は同性からの憧れの的となる。文化祭ではモデルも努める。
血液型はA型。

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