しあわせの隠れ場所(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『しあわせの隠れ場所』とは、マイケル・ルイス著「ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇跡」をワーナー・ブラザーズ映画が映画化したハートフル作品だ。貧しい家庭に生まれホームレス同然の生活を送っていたマイケル・オアーがとある家族に迎え入れられ、全米アメリカンフットボールのプロ選手への道を駆け上っていくまでの実話を基に作られた。北米では2009年11月に公開され興行収入2億ドルを超す大ヒットとなり、日本でも2010年2月に上映されたのち2009年度の興行成績8位にランクインした。

リー・アン「チームは家族と同じなの。」

アメリカンフットボールのルールや意義をよく理解できず、とにかく相手を傷つけないようにプレイを行っていたマイケルを見かねたリー・アンが、「前にあの危険な地区に行って一緒に服を買った時のことを覚えているでしょう。私が怖がっていたらあなた“守ります”って言ったわよね。覚えてる?もしも誰かが襲ってきたら、あなた止めてくれたでしょう?車で事故が起きた時には、エアバッグを止めたでしょう?チームは家族と同じなの。敵のチームからあなたが仲間を守らなきゃ。」とアドバイスをする。「クォーターバックの選手は私だと思って守りなさい。テールバックの選手はS・Jだと思って敵を近付けさせないようにするの。コリンズもショーンもチームの中にいるわ。」と続ける。いつもの少しきつい物言いで矢継ぎ早にアドバイスをした後、最後に「じゃあ、楽しんでね。」とリー・アン流の優しさたっぷりの一言も付け加える。マイケルの保護本能の高さや暴力を嫌う性格をきちんと理解している母だからこそのアドバイスに、思わず涙腺が緩むシーンだ。

マイケル「家に帰そうと思って」

他校との試合中、大きな体に目を付けられ相手チームの65番選手から執拗な嫌がらせとも取れる行為をされ続けていたマイケル。しかし、試合中にマイケルが相手選手から暴言を吐かれたことに腹を立てたバートが審判に猛抗議することで、マイケルとバートの間に絆が生まれ、そのおかげでマイケルは覚醒した。続々と相手チームを止めていき、嫌がらせをしてきていた65番選手に至っては、タックルをしたままコートの外まで押し出してしまった。審判には反則を取られ、バートからも不思議そうに声をかけられると、「すみません、バス停まで連れて行けませんでした。(65番選手を)家に帰そうと思って。」とアメリカンジョークを飛ばした。真顔でジョークを言うマイケルに、笑わずにはいられないシーンだ。

マイケルの小論文

入学当初の字の読み書きさえできなかった頃のマイケル。劇中、様々な思い出のシーンを振り返りながら小論文が読み上げられる

成績評価点をあげるために必死に勉強しているマイケルは成績の3割を占めるという学年末の小論文で挽回しなければならなかった。マイケルは、ショーンの勧めから“死の谷”という詩を題材に選んだ。600騎の兵は司令官のミスだと分かりつつも、死の谷へと向かうという内容の詩に対して、マイケルはこう小論文に書いた。「勇気というのは、難しい。馬鹿げた考えや間違った命令に従う勇気もある。大人や、コーチや、先生たちに疑問など持ってはいけない。ルールを作る側だから。大人が正しいことも、そうでないこともある。大人に疑問を持つかどうかは自分次第だ。600人の兵士は誰も、降伏したり根寝返ろうと思わなったのだろうか。だって、死の谷に向かうなんてひどすぎる。だから勇気はむずかしい。いつも言われた通りにすればいいのか。時には理由もわからずに従うこともある。どんなバカでも勇気は持てるから。勇気よりも人の行動を左右するのは誇りだ。それが今と未来の自分を決める。大切なことのために死ねるなら、誇りも勇気も持っていられる。それはすばらしい。詩人はこう言いたかったのであろう。勇気を持ち続けて、誇りある者になれ。そして間違った命令を下した者のためにも祈ってやれ。」と。字の読み書きもできなかった青年が、家族の助けを借りながらここまでの文章を書けるまでに成長している様に、思わずグッときてしまう。

リー・アン「あなたが決めることよ」

大学協会からの調査で、リー・アンが母校に選手を送るためにマイケルを拾ったのではないかと問いただされ、疑心暗鬼になるマイケルだったが翌日には2人は和解した。その際、リー・アンは、マイケルに「自分が望む道を選んでほしいの。あなたの人生だもの。」と繰り返した。テネシー大学に行ったり、ハンバーガー屋の店員になったりと例を出されても、リー・アンは「あなたが決めることよ」と言うのみ。マイケルは家族が行ってた大学だからと、再びミシシッピ大学へ進学することを決めた。マイケルを引き取ると決めた時も家族に相談せず決めたリー・アンだったが、ぐっと堪えてマイケルに決定を委ねたシーン。息子のために、自ら変わろうとするリー・アンに思わず胸が熱くなる。

『しあわせの隠れ場所』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実話との相違点

実際のテューイ一家

マイケルは一家と出会う前からアメリカンフットボールをやっていた

本作では、マイケルが高校へ入学してからアメリカンフットボールを始めたことになっているが、実際には幼少期からテレビで見てルールもしっかりと理解しており、一家と出会う前からすでにアメリカンフットボールのプレイヤーとして活躍していた。

テューイ家の父、ショーン

本作では、ショーンは数十件もの飲食店などを経営する実業家と描かれているが、実際のショーンはレストラン経営も行う傍ら、バスケットの経験を活かしスポーツ解説者としても知られている。

S・Jの体格や年齢

本作では年齢こそ設定されてないものの、S・Jは小学生くらいの小柄で幼い男の子として描かれている。しかし、映画のエンドロールで流れる実際の家族写真に写っているS・Jはマイケルほどではないものの、180センチはありそうな高身長の青年だ。

コリンズとマイケル

本作ではあまり口数が多くなく、マイケルを静かに家族として受けれている印象のコリンズ。しかし実際には、マイケルのためにいくつかのクラスを変更し、宿題を手伝ったりと劇中で語られている以上にマイケルへの支援を行っていた。また、本作ではマイケルのことをクラスメイトからからかわれたコリンズが無視をしている話題があがるが、実際にはコリンズの友人たちはマイケルとも親しくしていた。

バートの人柄

kyk_wednesday6
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