紅グモ(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『紅グモ』とは、楳図かずおによる恐怖漫画。1965年から1966年にかけて『週刊少女フレンド』にて連載された。楳図の少女向け作品初期の傑作として知られている。クモを題材にして人間が異形の者に変貌する怖さと、少女姉妹の明暗を分けた不条理ドラマが見どころである。同漫画は、可愛らしい姉妹が継母の策略に嵌り、紅グモという恐ろしい虫に翻弄されていく様子が描かれたホラー作品である。

北村たか子(左)と継母(右)

紅グモに寄生されたたか子は、生きているにも拘わらず誤って土葬されてしまった。辛くも脱出に成功した彼女だったが、髪は全て白髪となり、美少女の面影はどこにもない。仲の良かった妹の美也子ですら、たか子に気づかず避けてしまった。失意のたか子は、それでも挫けることなくお手伝いのばあやとして北村家に入ることに成功する。彼女の目的は1つ、自分をこのような目に遭わせた継母へ復讐することだった。そして、遂にたか子は美也子の前で自分の正体を明らかにして、継母へ報復する機会を得た。「今こそうらみをはらしてやる!!」というたか子のセリフは、この後に展開された継母の死亡シーンと併せて、『紅グモ』の中で数少ないカタルシスを得られる名言として知られている。

『紅グモ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

上京後『紅グモ』を描いてメジャー漫画家となった楳図かずお

『紅グモ』 朝日ソノラマ サンコミックス版表紙

『紅グモ』の作者である楳図かずおは、1965年にメジャー漫画家の仲間入りを果たした。楳図は1963年に上京すると、貸本漫画と講談社の週刊漫画雑誌に作品を発表し続けた。1965年、『週刊少女フレンド』に連載した『ママがこわい!』と、『週刊少年マガジン』に連載した『半魚人』で注目された。さらに、彼は同年に『週刊少女フレンド』誌上にて『紅グモ』を発表したことで、完全にホラー漫画家として認知された。楳図の快進撃は留まることを知らず、翌1966年になると代表作の1つ『へび少女』や『ウルトラマン』のコミカライズを連載し、内外で高い評価を得たのである。

「マリー・アントワネット症候群」を取り上げた『紅グモ』

紅グモに寄生された恐怖で髪の毛が真っ白になった北村たか子

「マリー・アントワネット症候群」とは、人間が極度の精神的なショックやストレスを受けることで、短期間で急激に頭髪が白髪になる現象である。実在したフランスの王妃マリー・アントワネットが、処刑される前夜に恐怖で一瞬にして白髪になったというエピソードが元ネタになっている。現実に一瞬で人間の頭髪が白髪になるということはないとされているものの、過度のストレスや恐怖で白髪になることや脱毛現象が起きることは立証されているとのことだ。

『紅グモ』のストーリー内では、誤って生きたまま土葬された北村たか子が命からがら脱出すると、自分の髪が全て白髪になってしまうというシーンが描かれた。同作品の他に「マリー・アントワネット症候群」を扱った漫画に、『ベルサイユのばら』や『東京喰種トーキョーグール』がある。また、小説家の江戸川乱歩は、『白髪鬼』や『孤島の鬼』などで度々「マリー・アントワネット症候群」を扱っている。

ハッピーエンドにならなかった不条理ドラマ『紅グモ』

『紅グモ』 朝日ソノラマ サンワイドコミックス版表紙

楳図かずお作品は、ハッピーエンドが少ないことで有名である。『紅グモ』も例に漏れず、決してハッピーエンドとは言えない不条理なストーリーが展開された。最も不条理だと言われているのは、北村姉妹の行く末だ。姉のたか子は、継母によって紅グモに寄生されてしまう。継母への復讐こと遂げることができたが、白髪になって以降は妹の美也子から気味悪がられるという憂き目に遭った。一方で、美也子は継母によってメンタル面で追い込まれたり、紅グモが寄生したれい子に襲われるなど、酷い目には遭ったものの最終的には助かっている。また、何故か美也子は紅グモを寄生されていない。このように『紅グモ』では、キャラクター間における悲劇に差が生じ、その結果不条理な結末を迎えたのだ。こうした不条理さこそが、楳図作品の魅力であると考察するファンも多い。

クモ嫌いの楳図かずおが描いた『紅グモ』以外のクモ漫画

『神の左手悪魔の右手』 小学館 ビッグコミックス版第3巻表紙

楳図かずおは、インタビュー等で嫌いなものにクモを挙げていた。彼が、あえて嫌いなものを題材にして恐怖を表現した作品が『紅グモ』である。同作品では、物凄い数のクモが登場しており、多くの読者を怖がらせた。『紅グモ』の他に楳図が描いたクモ漫画は、1963年の『劇画マガジン』に掲載された『くも妄想狂』と、『ビッグコミックスピリッツ』誌上にて1986年から1988年まで連載された『神の左手悪魔の右手』の1編『女王蜘蛛の舌』である。

『くも妄想狂』は、約30ページの短編漫画で、遺産を独り占めにしたい男が兄に対して彼が恐れるクモをけしかけるというストーリーである。終盤で、読者の予想がつかないどんでん返しが展開された。また、『女王蜘蛛の舌』は、舌に女王蜘蛛を有した女性が、好きになった男性につきまとう物語である。『くも妄想狂』の要素が『紅グモ』に活かされ、『紅グモ』の要素が『女王蜘蛛の舌』に取り入れられていると考察する楳図ファンが多いと言われている。

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