神さま学校の落ちこぼれ(小説・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『神さま学校の落ちこぼれ』とは、日向夏の原作小説をもとに赤瓦もどむが漫画化した作品。「花とゆめ」で2021年17号より連載開始となった。現代日本のごく普通の世界が舞台だが、少し変わっているのは「この世界には神さまがいる」ということ。高校受験を控えた陽美谷ナギは、「神さま学校」の合格通知を受け取る。エリートばかりの学校でナギの成績は学年最下位に。落ちこぼれとなったナギが超難関の国家資格「神さま」を目指す、超能力・学園・友情・恋愛・陰謀が絡むスピリチュアルスクールドラマである。

ナギに「師匠」と呼ばれ舞い上がるツクヨミ

ナギの特別講師をすることになったツクヨミだが、ナギに「これからは『月読命先生』とお呼びすればいいでしょうか」と尋ねられ、似合わないとホシノに笑われてしまう。ナギが「それとも『師匠』とか?」と尋ねるとツクヨミの顔がキラキラと輝き「もう一回言ってみてくれ」「もう一回」と言われる。とまどいながら「師匠…?」というナギの言葉に、目を閉じ感慨深げにかみしめるツクヨミ。ホシノが「こいつの好きな漫画のキャラの呼び名だ」と言う。「漫画とか読むんですね」というナギに、「あれでも一応10代だしな」とホシノは返すのだった。

トータのナギへの感情がわかるシーン

練習中のナギに「相変わらず暑苦しいな」と嫌味を言った直後、無意識に自分の素直な気持ちを表し、ナギの舞を褒めてしまったトータ

運動会で、神通力のわからないナギは、競技に出ない子達と一緒にダンスをすることとなる。そこでナギが神楽舞経験者ということで、振り付けから指導まで行うことになった。一生懸命練習するナギにトータはいつものように「相変わらず暑苦しいな」と嫌味を言うが、「神楽舞なら君でもなんとかなるんじゃない?」「奇麗だったし…」と思わず言ってしまう。しかし、思いがけず素直に言ってしまったと気づき、「舞の 型が」と強調する。「褒めてくれてありがとう」というナギに「違う」と言い立ち去るトータだった。どこまでも素直になれないトータだが、ナギに対する特別な気持ちが感じられるシーンである。

ナギがピンチの時いつも助けに駆けつけるツクヨミ

遊園地でガラン先生と謎の男たちに襲われピンチに陥るナギ。ナギはツクヨミの教えを思い出し、とにかく逃げ回るが、捕まってしまう。自分にできることをと思いついたのが、相手に自分の信力を流し込み暴走させ、認識阻害を破ること。反撃にあいながら、何とか成功するナギ。朦朧とする頭でナギは「そして 神通力がこうして破れるとき いつも あの人が来てくれた」とツクヨミが現れるのを待つ。認識阻害に裂け目が生じた瞬間、「ナギ 大丈夫か」と現れたツクヨミに泣きそうになりながら笑顔で「はい」というシーンは、ナギのツクヨミに対する絶対的な信頼と絆を感じさせる。

ツクヨミとナギがお互いの存在について思うこと

お互いの存在に安心を感じる2人

遊園地でのナギの誘拐未遂の後、ナギと2人きりになったツクヨミは、ナギの祖母により助けられたこと、ナギには神通力暴走から助けてもらったこと、いつも神通力不足の時に甘味をもらっていることに感謝する。ナギといると、ナギに助けられたことが初めてではなく、今までずっと色々な人達に助けられていたことに気付けたと打ち明ける。ナギもまた、ツクヨミといると神さまの匂い、ナギの祖母のお香の匂いと相まって、心から安心することに気付き、ツクヨミにもたれかかり眠ってしまうのだった。この場面は、ナギとツクヨミがお互いを安心できる心地の良い存在として認識し、信頼しあっていることがわかるシーンとなっている。

『神さま学校の落ちこぼれ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作者は『薬屋のひとりごと』の日向夏、作画は『兄友』『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』 の赤瓦もどむ

花とゆめ(白泉社)から出版されている本作は、シリーズ累計発行部数、3800万部を突破たライトノベル「薬屋のひとりごと」の日向夏と、横浜流星主演で実写映画化とドラマ化を果たした「兄友」の赤瓦もどむのタッグによる少女マンガである。星海社から出版されている日向夏原作小説のコミカライズではなく、日向夏のプロットをベースに作家同士がアイデアを出しつつ練り上げる方式で制作している。
元々、原作の日向夏が、編集者から白泉社で少女漫画を描いてみないかと話をもちかけられたことがきっかけで、ちょうど連載が終わるタイミングだった赤瓦もどむとタッグを組む話が出たという。お互いの作品を読んでいたということもあり、とんとん拍子に話が決まったが、日向夏は当初、それまでオリジナル作品を描いていた赤瓦もどむがオリジナル作品ではなく自分の作品を描くことを懸念していたという。ただ、今回は元々ある小説のコミカライズではなく、赤瓦もどむのアイデアを取り入れながら、チームみんなで原作を作っていくという作品だったため、赤瓦もどむの作風を殺すことなく一緒に作り上げていくことができるのではないかと思ったという。実際、日向夏との対談で、赤瓦もどむは、「かなりのびのび描かせてもらっていて、『殺す』なんてとんでもないです。一緒に作品を作り上げることができて光栄です。」と言っている。
また、本作ができるまでの流れとして、まずは日向夏がプロットを提出し、赤瓦もどむのチームからフィードバックをもらう。そこからセリフと最低限の地の文で構成されたシナリオを渡し、後はお任せしているとのこと。フィードバックの段階で赤瓦もどむチームからキャラクターや展開に関する様々な意見やアイデアをもらい、漫画にする段階でさらに赤瓦もどむが補ってくれるので、みんなで原作という作り方をしているのだ。

『神さま学校』は2000年代の花とゆめのイメージ

今回、作品を書くにあたり、原作の日向夏は最初に3つほどプロットを出し、選んでもらったのが今作だったという。3つのプロット案はそれぞれ様々な年代の「花とゆめ」から作ってみたというが、本作はその中で「2000年代のイメージ」だった。日向夏曰く、今の「花とゆめ」らしさを目指すと現役で書いている先生方にはとてもかなわない。2000年代の自分が読んでいて面白かった「花とゆめ」のモチーフを抽出しつつ、自分なりに今の時代らしさや現代の生活様式をプラスするとちょうどいいかなと思ったという。赤瓦もどむは、最初にこの作品を読んだとき、話の主軸になっている学園ものの感じにどことなく少年漫画らしさも感じ、自分に描けるだろうかという緊張感と共にわくわくした気持ちになったという。日向夏は、ファンタジー要素もあり、ある種の冒険らしさがあるのが「花とゆめ」らしさだと感じているとのこと。それが少年漫画らしさとも近いというか、少年漫画の読者とも親和性が高いのかなというイメージがあると語っている。

ツクヨミは当初影も形もなかった!?

主人公ナギはキャラクターデザインもすぐに決まったが、当初ツクヨミは影も形もなかった。赤瓦もどむのリクエストにより、「花とゆめ」の読者は、冒険譚だけでなく、魅力的な男女の関係も欲しいはずという「花とゆめ」チームが考える少女漫画らしさを入れる為、リクエストにこたえる形で登場したという。日向夏個人としては、少女漫画は他に主軸があれば、男女の関係性は5%くらいでも良いかなと思っていたというが、60%くらいは必要だとおしえてもらったという。

たけるは当初ぬいぐるみではなくテレパシーのみで登場予定だった

たけるがテレパシーとテレキネシスで動かしていたぬいぐるみ

たけるは当初テレパシーのみで登場する予定だったが、赤瓦もどむが小説なら面白いテンポだが、漫画としてコマ割りすると画面が単調になることを懸念。マスコットとして動かしても良いかと日向夏に相談し、ぬいぐるみという形で登場することになった。

tinoue1203
tinoue1203
@tinoue1203

Related Articles関連記事

薬屋のひとりごと(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

薬屋のひとりごと(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『薬屋のひとりごと』は、日向夏による日本のオンライン小説、ライトノベル作品。コミカライズもされており、ビッグガンガン版(作画:ねこクラゲ、構成:七緒一綺)と「猫猫の後宮謎解き手帳」の副題がつくサンデーGX版(作画:倉田三ノ路)がある。なお2誌とも同じ原作の内容を描いている。物語は中国によく似た世界での話。元花街で働いていた猫猫(マオマオ)が後宮で働くことになる。そこで様々な事件に巻き込まれ(たまに自ら首を突っ込み)持っている薬の専門知識で事件を次々と解いていくファンタジーラブコメミステリー作品。

Read Article

薬屋のひとりごとの恋愛関係・カップル・カップリング・夫婦・恋人まとめ

薬屋のひとりごとの恋愛関係・カップル・カップリング・夫婦・恋人まとめ

『薬屋のひとりごと』は日向夏のライトノベル小説およびそれを原作とした漫画・アニメである。2011年から小説掲載サイト「小説家になろう」で連載が始まった。中華系の架空の帝国を舞台に、薬の知識に長けた官女・猫猫(マオマオ)が王宮内で起こる不可思議な事件を解決するミステリーが物語の主軸である。一方で、後宮の宦官である壬氏(ジンシ)の猫猫に対する片思いが実っていく様子も描かれ、恋愛模様ももう1つの軸となっている。

Read Article

薬屋のひとりごとの料理・食事・食べ物・飲み物まとめ

薬屋のひとりごとの料理・食事・食べ物・飲み物まとめ

『薬屋のひとりごと』とは、2011年に小説掲載サイト「小説家になろう」で初掲載された日向夏のライトノベル小説である。原作小説が人気になったことから、コミカライズ版やアニメ版も展開された。舞台は架空の中華系帝国「茘(リー)」。豊富な薬の知識を持つ猫猫(マオマオ)が、王宮内の数々の事件を解決していく。事件の中には食品に仕込まれた毒やアレルギーによるものもあり、作中にはさまざまな食べ物や飲み物も登場する。

Read Article

薬屋のひとりごとの回収済み・未回収の伏線・謎まとめ

薬屋のひとりごとの回収済み・未回収の伏線・謎まとめ

『薬屋のひとりごと』は日向夏によるライトノベル小説である。2011年から小説掲載サイト「小説家になろう」で連載が始まり、人気を集めて漫画やアニメにも展開された。架空の中華系帝国を舞台に、後宮務めとなった猫猫(マオマオ)が薬の知識を活かし、王宮の不可思議な事件を解決するミステリー作品。多くの伏線が張り巡らされ、読者を魅了している。

Read Article

目次 - Contents