神さま学校の落ちこぼれ(小説・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『神さま学校の落ちこぼれ』とは、日向夏の原作小説をもとに赤瓦もどむが漫画化した作品。『花とゆめ』で2021年17号より連載開始となった。現代日本のごく普通の世界が舞台だが、少し変わっているのは「この世界には神さまがいる」ということ。高校受験を控えた陽美谷ナギは、「神さま学校」の合格通知を受け取る。エリートばかりの学校でナギの成績は学年最下位に。落ちこぼれとなったナギが超難関の国家資格「神さま」を目指す、超能力・学園・友情・恋愛・陰謀が絡むスピリチュアルスクールドラマである。
ナギの実家の神社で急遽お祭りを行うことになった際、ナギが10年以上神楽舞をやっていることを知ったホシノとツクヨミはナギに踊るよう言う。自分は素人に毛が生えた程度で人前で披露するなんてと弱気になっていたナギにホシノが「俺が一番嫌いなのはな 諦めている奴だ」と言う。「過去の栄光にすがって宝くじでもあたるのを待っているような そんな受け身の人間は金輪際目の前にいて欲しくない」「もしうちのツクヨミを商売に利用しようっていうなら頭を下げなくていい ただ、今後ツクヨミのためになるような将来性を見せてもらいたい」と真剣な表情でナギに伝えるホシノ。そんなホシノにツクヨミは「言い過ぎだ」と諭すが、ナギは、過去の栄光にすがる受け身の人間という言葉に自分の心を見透かされているようだと感じる。そして、ツクヨミが「自分は ナギの神楽舞を見てみたいと思う」と純粋にかけてくれた言葉に触発され、神楽舞でお祭りを盛り上げたのだった。
月読命(つくよみのみこと)「ナギは渡さない」
運動会中、猫田に突然テレポートで山林に連れてこられ誘拐されかけたナギは、たけるの指示によるものだと聞かされる。ナギが一瞬迷った時、ナギの神力を追って駆けつけたツクヨミが、ナギをかばうように現れ「ナギは渡さない」と言い助ける。その後ナギを気遣い、軽々と抱き上げテレポートで學園へ戻るシーンは、少女漫画の王道ともいえる胸キュンシーンである。
陽美谷ナギ(ひびやなぎ)に「師匠」と呼ばれ舞い上がる月読命(つくよみのみこと)
ナギの特別講師をすることになったツクヨミだが、ナギに「これからは『月読命先生』とお呼びすればいいでしょうか」と尋ねられ、似合わないとホシノに笑われてしまう。ナギが「それとも『師匠』とか?」と尋ねるとツクヨミの顔がキラキラと輝き「もう一回言ってみてくれ」「もう一回」と言われる。とまどいながら「師匠…?」というナギの言葉に、目を閉じ感慨深げにかみしめるツクヨミ。ホシノが「こいつの好きな漫画のキャラの呼び名だ」と言う。「漫画とか読むんですね」というナギに、「あれでも一応10代だしな」とホシノは返すのだった。
江道トータ(えとうとーた)の陽美谷ナギ(ひびやなぎ)への感情がわかるシーン
運動会で、神通力のわからないナギは、競技に出ない子達と一緒にダンスをすることとなる。そこでナギが神楽舞経験者ということで、振り付けから指導まで行うことになった。一生懸命練習するナギにトータはいつものように「相変わらず暑苦しいな」と嫌味を言うが、「神楽舞なら君でもなんとかなるんじゃない?」「奇麗だったし…」と思わず言ってしまう。しかし、思いがけず素直に言ってしまったと気づき、「舞の 型が」と強調する。「褒めてくれてありがとう」というナギに「違う」と言い立ち去るトータだった。どこまでも素直になれないトータだが、ナギに対する特別な気持ちが感じられるシーンである。
陽美谷ナギ(ひびやなぎ)がピンチの時いつも助けに駆けつける月読命(つくよみのみこと)
遊園地でガラン先生と謎の男たちに襲われピンチに陥るナギ。ナギはツクヨミの教えを思い出し、とにかく逃げ回るが、捕まってしまう。自分にできることをと思いついたのが、相手に自分の信力を流し込み暴走させ、認識阻害を破ること。反撃にあいながら、何とか成功するナギ。朦朧とする頭でナギは「そして 神通力がこうして破れるとき いつも あの人が来てくれた」とツクヨミが現れるのを待つ。認識阻害に裂け目が生じた瞬間、「ナギ 大丈夫か」と現れたツクヨミに泣きそうになりながら笑顔で「はい」というシーンは、ナギのツクヨミに対する絶対的な信頼と絆を感じさせる。
月読命(つくよみのみこと)と陽美谷ナギ(ひびやなぎ)がお互いの存在について思うこと
遊園地でのナギの誘拐未遂の後、ナギと2人きりになったツクヨミは、ナギの祖母により助けられたこと、ナギには神通力暴走から助けてもらったこと、いつも神通力不足の時に甘味をもらっていることに感謝する。ナギといると、ナギに助けられたことが初めてではなく、今までずっと色々な人達に助けられていたことに気付けたと打ち明ける。ナギもまた、ツクヨミといると神さまの匂い、ナギの祖母のお香の匂いと相まって、心から安心することに気付き、ツクヨミにもたれかかり眠ってしまうのだった。この場面は、ナギとツクヨミがお互いを安心できる心地の良い存在として認識し、信頼しあっていることがわかるシーンとなっている。
『神さま学校の落ちこぼれ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
作者は『薬屋のひとりごと』の日向夏、作画は『兄友』『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』 の赤瓦もどむ
『花とゆめ』(白泉社)から出版されている本作は、なろう小説から生まれたライトノベル『薬屋のひとりごと』の日向夏と、横浜流星主演で実写映画化とドラマ化を果たした『兄友』の赤瓦もどむのタッグによる少女マンガである。星海社から出版されている日向夏原作小説のコミカライズではなく、日向夏のプロットをベースに作家同士がアイデアを出しつつ練り上げる方式で制作している。
元々、原作の日向夏が、編集者から白泉社で少女漫画を描いてみないかと話をもちかけられたことがきっかけで、ちょうど連載が終わるタイミングだった赤瓦もどむとタッグを組む話が出たという。お互いの作品を読んでいたということもあり、とんとん拍子に話が決まったが、日向夏は当初、それまでオリジナル作品を描いていた赤瓦もどむがオリジナル作品ではなく自分の作品を描くことを懸念していたという。ただ、今回は元々ある小説のコミカライズではなく、赤瓦もどむのアイデアを取り入れながら、チームみんなで原作を作っていくという作品だったため、赤瓦もどむの作風を殺すことなく一緒に作り上げていくことができるのではないかと思ったという。実際、日向夏との対談で、赤瓦もどむは、「かなりのびのび描かせてもらっていて、『殺す』なんてとんでもないです。一緒に作品を作り上げることができて光栄です。」と語っている。
また、本作ができるまでの流れとして、まずは日向夏がプロットを提出し、赤瓦もどむのチームからフィードバックをもらう。そこからセリフと最低限の地の文で構成されたシナリオを渡し、後はお任せしているとのこと。フィードバックの段階で赤瓦もどむチームからキャラクターや展開に関する様々な意見やアイデアをもらい、漫画にする段階でさらに赤瓦もどむが補ってくれるので、みんなで原作という作り方をしているのだ。
『神さま学校』は2000年代の『花とゆめ』のイメージ
今回、作品を書くにあたり、原作の日向夏は最初に3つほどプロットを出し、選んでもらったのが今作だったという。3つのプロット案はそれぞれ様々な年代の『花とゆめ』から作ってみたというが、本作はその中で「2000年代のイメージ」だった。日向夏曰く、今の『花とゆめ』らしさを目指すと現役で書いている先生方にはとてもかなわない。2000年代の自分が読んでいて面白かった『花とゆめ』のモチーフを抽出しつつ、自分なりに今の時代らしさや現代の生活様式をプラスするとちょうどいいかなと思ったという。赤瓦もどむは、最初にこの作品を読んだとき、話の主軸になっている学園ものの感じにどことなく少年漫画らしさも感じ、自分に描けるだろうかという緊張感と共にわくわくした気持ちになったという。日向夏は、ファンタジー要素もあり、ある種の冒険らしさがあるのが『花とゆめ』らしさだと感じているとのこと。それが少年漫画らしさとも近いというか、少年漫画の読者とも親和性が高いのかなというイメージがあると語っている。
ツクヨミが登場したのは『花とゆめ』らしさを出すため
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目次 - Contents
- 『神さま学校の落ちこぼれ』の概要
- 『神さま学校の落ちこぼれ』のあらすじ・ストーリー
- 「神さま学校」への入学
- サバイバルなオリエンテーション
- たける人形の秘密
- 神通力別講師の選択
- 神通力特別授業
- 体育祭での青田買い
- ナギの神通力の秘密と遊園地
- 江道大社への職業体験
- 江道家の家系図
- 未来の光景
- 『神さま学校の落ちこぼれ』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 陽美谷ナギ(ひびやなぎ)
- 陽美谷家のヒミコ
- 陽美谷たける(ひびやたける)
- 天宇受賣命(あまのうずめのみこと)
- ナギの友人達
- 田中モナカ(たなかもなか)
- 美馬みるる(みまみるる)
- 逢坂サガミ(おうさかさがみ)
- 江道トータ(えとうとーた)
- 松田タロウ(まつだたろう)
- 広崎ざくろ(ひろさきざくろ)
- 鏡オルハ(かがみおるは)
- 神さま
- 月読命(つくよみのみこと)
- 夜刀神(やとのかみ)
- 木花咲夜姫(このはなさくやひめ)
- 大山津見神(おおやまつみのかみ)
- ツクヨミのプロデューサー
- 芥河ホシノ(あくたがわほしの)
- 惟神學園の先生
- 學園長
- 祖父江マサユキ(そふえまさゆき)
- 小林レイリ(こばやしれいり)
- 飯波ガラン(いいなみがらん)
- 超自然学派に属する者達
- 猫田(ねこた)
- カツグチ
- オモイカネ
- 『神さま学校の落ちこぼれ』の用語
- 神通力を持つ者達の総称
- ヒミコ
- 神さま
- 超自然学派(ちょうしぜんがくは)
- 学校
- 私立惟神學園(しりつかんながらがくえん)
- 神通力(じんつうりき)
- 念動力(サイコキネシス)
- 観念動力(テレキネシス)
- 発火能力(パイロキネシス)
- 精神感応(テレパシー)
- 残留思念読取(サイコメトリ)
- 透視能力(クレアボヤンス)
- 瞬間移動(テレポート)
- 引寄能力(アポート)
- 消去能力(アスポート)
- 未来予知(フォアサイト)
- ヒーリング
- 神通力強化(じんつうりききょうか)
- 『神さま学校の落ちこぼれ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 月読命(つくよみのみこと)「…初めてだ 誰かに『助けてもらえた』のって…」
- 田中モナカ(たなかもなか)「それぞれがやれる事やればいいの あんたがさっき木登りしてくれたみたいにね」
- 學園長/大日女尊(おおひるめのみこと)「ナギさんは今、土の中に埋まった種です。それを芽吹かせるのも腐らせるのもあなた次第よ」
- 芥河ホシノ(あくたがわほしの)「俺が一番嫌いなのはな 諦めている奴だ」
- 月読命(つくよみのみこと)「ナギは渡さない」
- 陽美谷ナギ(ひびやなぎ)に「師匠」と呼ばれ舞い上がる月読命(つくよみのみこと)
- 江道トータ(えとうとーた)の陽美谷ナギ(ひびやなぎ)への感情がわかるシーン
- 陽美谷ナギ(ひびやなぎ)がピンチの時いつも助けに駆けつける月読命(つくよみのみこと)
- 月読命(つくよみのみこと)と陽美谷ナギ(ひびやなぎ)がお互いの存在について思うこと
- 『神さま学校の落ちこぼれ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者は『薬屋のひとりごと』の日向夏、作画は『兄友』『ラブ・ミー・ぽんぽこ!』 の赤瓦もどむ
- 『神さま学校』は2000年代の『花とゆめ』のイメージ
- ツクヨミが登場したのは『花とゆめ』らしさを出すため
- 赤瓦もどむの提案で生まれたたける人形
- ツッコミ役として誕生したホシノ
- 漫画と小説で2度楽しめる『神さま学校』の世界