つみきのいえ（アニメ映画）のネタバレ解説・考察まとめ

パイプ

老人が愛用していたパイプ。階上へ引っ越し作業をしている際、あやまってパイプを落としてしまう。パイプは部屋の床に開いていたハッチをすり抜け、階下へと落ちていった。階下へ降りるきっかけとなったアイテムだ。ちなみに、絵本ではパイプではなく大工道具となっている。住まいを築くのに必要な大工道具を取り戻したことがきっかけとなって、家族との思い出が次々とよみがえってくる。

写真

老人の部屋に飾ってある写真。それは家族の写真であり、一人になった今も大切に飾られている。

潜水服

船にのってやってくる雑貨屋から購入した潜水服。老人は潜水服に身をつつみ、海に沈んだかつての古巣へと降りて行った。

『つみきのいえ』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

老人と奥さんのなれそめ

老人がかつて住んでいた階下を進み、たどり着いた先にあったのは今は亡き妻との出会いと新婚生活の記憶だった。老人と妻は幼馴染同士で結婚し、小さなレンガ造りの家を夫婦2人で建てた。夫婦で食卓を囲み、ワイングラスを傾け笑いあう新婚生活の光景がよみがえる。夫婦生活が始まった部屋で、孤独感にさいなまれる老人の姿がただただ物悲しい。老人が過去を思い返した時、どの記憶にも必ず妻がいた。老人にとって妻は大切な存在だったことを気づかされる名シーンだ。

1人の食卓に2つのワイングラス

かつて住んでいた部屋をめぐり、家族や妻の思い出にふけった老人は、物語の最後にたった一人の晩餐をする。いつもの晩餐とは違って、食卓には2つのワイングラスが並び、グラスを傾ける老人の姿があった。老人はかつて住んでいた部屋を巡った果てに、妻との新婚時代にワインを傾け、笑いあった日々を思い出した。そんな日々を懐かしむようにグラスを傾ける老人の哀愁漂う雰囲気が愛おしくなる名シーンだ。

『つみきのいえ』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

「人生」を抽象的に表現するため老人の生活を淡々と描く

監督の加藤は、『老人の生活を淡々と描くことで、「人生」を象徴的に表現したかった』と後のインタビューで語っている。老人の生活を淡々と描くことに重点を置いたために、背景的に表現しきれていない部分も多かったようだ。また、「視聴者が人生の中で大切にしているものや過ぎ去ってしまったものに対し、どのような姿勢をとるのか考えるきっかけになる作品にしたかった」とも語っている。
あまりに単調に描きすぎたため、老人の今までに積み重ねてきた人生を感じられるよう絵の陰影を強くしたり、回想のシーンが心情を表すように色合いに変化をつけるなどの工夫がなされている。

加藤曰く「達成感のなさだけが残った」作品

本作品は、16人のスタッフにより一年間で製作された。加藤曰く「達成感のなさだけが残った」と後のインタビューで語っている。「自分の考えをすべて出そうと思った」加藤だったが、自身まったく納得していないようで、作品がアカデミー賞を受賞したことに戸惑った。受賞後、海外から合作の誘いが寄せられたが、加藤はあまり気乗りしていないようだ。

『つみきのいえ』の主題歌・挿入歌

テーマ曲：近藤研二「つみきのいえ」

本作のタイトルで流れる曲。ゆったりとしたどこか物悲しい曲調が作品の雰囲気とマッチしている。