沈黙の艦隊(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『沈黙の艦隊』とはかわぐちかいじによって1988年から1996年まで『モーニング』に連載されていた、架空の戦争・軍事政策をテーマとした漫画作品、およびそれらを原作としたラジオドラマ、アニメ、映画作品である。政治的な陰謀や軍事技術の進展による国際関係の緊張を背景に、架空の最新鋭潜水艦「やまと」の艦長である海江田四郎とその乗組員たちの活躍を描いている。本作は、そのリアルな描写と緻密なストーリー展開で高い評価を受けた。

アメリカ合衆国の副大統領兼上院議長として、政界の重要な地位にある。彼は、海江田が提唱する超国家的な原子力潜水艦艦隊の構想や、それに基づく世界政府の創設の可能性に着目し、そのビジョンを支持することを選択した。この立場は、彼が以前から敵視していたアメリカ合衆国大統領ニコラス・J・ベネットとの間で対立を深める原因となった。リードの行動は内政における重大な政治的な動きとして、物語の中で重要な役割を担っている。

ロバート・D・ベイカー(演:ケヴィン・コープランド)

ロバート・D・ベイカー

CV:中多和宏(アニメ)
アメリカ合衆国の国務長官であり、大統領ニコラス・J・ベネットの信頼厚い側近の一人。彼は「やまと」に関連する外交政策の策定において中心的な役割を果たしている。物語の中で彼は「大統領のマシン」の一部として最初に紹介された際、彼の姓は誤って「ベイガー」と記されていたが、正しくは「ベイカー」である。

ジャック・ターナー

CV:松本大(アニメ)
ジャック・ターナーは、アメリカ大統領の特別補佐官として、その落ち着き払った態度と聡明さで知られている。沖縄沖海戦時には日米緊急首脳会談で海原らと対面し、その緊迫した状況下でも平然とした様子を保ち、一切汗を見せないほどの冷静さを示した。彼の特徴的な眼鏡は印象的で、これが理由で海原からは直接的に「おい、そこのメガネ」と呼ばれることもある。ターナーのこのような振る舞いは、彼が高いプレッシャーの下でも冷静さを保ち続ける能力を持っていることを示しており、政治の世界における彼の信頼性とプロフェッショナリズムを強調している。

リチャード・ローゼンバーグ

CV:緒方賢一
リチャード・ローゼンバーグは、アメリカ国連大使として活動しており、その経歴には元アメリカ合衆国連邦議会上院議員という役職も含まれる。彼は国連安全保障理事会において、日本側が「やまと」を擁護する立場に対して鋭い批判を行った。ローゼンバーグのこの行動は、彼が持つ外交政策における断固たる姿勢と国際的な安全保障問題に対する深い関心を表している。彼の発言は、国際社会における緊張関係を象徴するものとして、大きな注目を集めた。

アンドリュー・ギル

ニューヨーク市の市長として活躍している。海江田が率いる「やまと」がニューヨークに入港した際、ギル市長はアメリカ政府と軍の攻撃方針に対し反対の立場をとった。彼は、マスコミを活用してニューヨーク市のアメリカからの独立宣言を行い、「やまと」との友好同盟を結ぶことを市民に強く訴えた。ギル市長とアンドリュー・P・ナガブチ艦長は古くからの友人であり、この動きは彼らの深い絆を反映したものであった。この行動は、「やまと」に対する擁護の強いメッセージとして国際的な注目を集めた。

カール・シュルツ

カール・シュルツは、アメリカ合衆国連邦議会下院の議長を務めている。彼は、ニコラス・J・ベネット大統領が「沈黙の艦隊」計画を支持し始める心変わりを敏感に察知し、その方針に反対の立場を示した。シュルツ議長はベネット大統領のこの変化を受け入れられず、彼に対して弾劾裁判を開始する準備を進めるなど、その不同意を強く表明した。その過程で彼は上院と下院の両方を結束させ、大統領に対する政治的圧力を高めることに努めた。

アメリカその他の登場人物

リー・ゴールドウェル

リー・ゴールドウェルは、軍需産業の巨頭イースト・ウェスト・ダイナミックス社の社長。ニューヨーク沖での海戦における海江田の行動に対し、強い関心と同時に敵意を抱いている。また、軍事費の削減を進めるニコラス・J・ベネット大統領に対しても敵視の姿勢を示している。「やまと」が国連に参加し軍備永久放棄の実現が検討される状況に対しては、これを危惧している。ゴールドウェルは各国のマスコミやアメリカ政府に圧力をかけ、反「やまと」キャンペーンを推進することで、その動きを牽制。彼は軍産複合体を代表する人物の一人として、その影響力を行使する。

アイザック・ネイサン

ネイサン研究所の所長で、アメリカ合衆国大統領ニコラス・J・ベネットの大学時代の後輩にあたる。彼はベネットが大学に在籍している間に教授となり、その後も親交があった。ネイサンはデビット・ライアンと共にホワイトハウスを訪れ、大統領に対して海江田が提唱する「沈黙の艦隊」計画、正式名称「SSSS (Silent Security Service from the Sea)」の意義とその持つ完全な核抑止力の可能性について熱心に語った。彼は、この計画がアメリカによって実現されるべきであり、そのためには海江田を排除する必要があると強く提案した。ネイサンのこの提言は、彼がいかに海江田の構想を高く評価し、同時にそれをアメリカの政策として取り入れるべきだと信じているかを示している。

マルス・ベネット

アメリカ合衆国大統領ニコラス・J・ベネットの息子で、野球とニューヨーク・ヤンキースを熱愛する少年。彼は原子力潜水艦「やまと」とその艦長である海江田に大きな関心を持ち、父親であるベネットに海江田の思想や行動について質問する。この会話を通じてマルスは東洋の性善説を引き合いに出したベネットの説明に強く興味を示し、その結果、ベネットに対して海江田と直接会うことを約束させる。マルスの純粋な興味と好奇心は、父親であるベネットが海江田や「やまと」に対する態度を再考するきっかけの一つとなった。

狙撃手(名称不詳)

国連本部で演説を行っていた海江田を狙撃しようとした謎の狙撃手は、カメラマンに偽装して施設内に潜入した。彼はテレビカメラに見せかけたライフルで発砲しようとした直後、現場に急行した警備員二人に遭遇。一人を撃ち重傷を負わせた後(その警備員の生死は確認されていない)、もう一人の警備員によって射殺される。この狙撃手が単独で行動していたのか、それとも誰かに依頼されたのかは明らかにされていないが、彼の背後には少なくとも一人の共犯者や依頼人がいることが示唆されている。

イギリス海軍・政府関係者

クリス・ストリンガー

クリス・ストリンガー大佐は、イギリス海軍所属のトラファルガー級原子力潜水艦「タービュレント」の艦長。彼はその豪快で率直な性格から、フランス海軍のメルビルには「そんなデリケートな人物ではない」と評されている。イギリス海軍の中でも屈指のエリートとされるストリンガーは、世界各国の原潜艦隊の中で最も早く「やまと」への理解を示し、リーダーシップを発揮。特にニューヨーク沖で「やまと」が沈没した際には、その乗組員を全員救出するという重要な役割を果たしている。

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