シンデレラ（Amazon実写映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『シンデレラ』の概要

『シンデレラ』（Amazon実写映画）とは童話の『シンデレラ』をミュージカル風にアレンジし、Amazon Prime Video限定で配信されたロマンスコメディ映画である。
おとぎ話の『シンデレラ』は歌が好きで大人しく、品がある女性という役柄だったが今作品のシンデレラは少しお転婆で元気なところが特徴である。シンデレラは継母のヴィヴィアンとその娘マルヴォリア、ナリッサから差別を受けながら同じ家に暮らす。自分だけ地下室に住まわされているシンデレラは家の雑用ばかり任されていた。そんなシンデレラは時間を見つけて趣味のドレスづくりをしており、自分のお店を持ってドレスを売ることが夢だった。王室の衛兵の交代式に自作のドレスを持って売りに行こうとするが、「女が商売で成功なんてできない」と継母に馬鹿にされる。落ち込んだシンデレラだったが義理の母の忠告を無視してある日、広場にドレスを持っていく。そこで出会ったのがロバート王子だった。以前シンデレラが衛兵の交代式に行ったときにロバート王子はシンデレラに一目ぼれし、また会えることを期待して一般人の格好に変装して広場に来ていた。シンデレラに自分が王子であることは隠して「今度王室で開く舞踏会に来れば、偏見を持たない金持ちが大勢来る。よかったら紹介してやる」と、女という身分を気にせず才能を買ってくれる人が現れるかもしれないことを伝えた。「行くわ」と答えたシンデレラに婚約を申し込もうと、ロバート王子は張り切る。

舞踏会当日、シンデレラは自作したドレスを着る予定だったがヴィヴィアンにドレスを汚され、舞踏会に行けなくなってしまう。落ち込んでいたシンデレラのもとに現れたのが魔法使いのファビュラス・ゴッドマザーである。ドレスと馬車を用意し、魔法が切れる深夜12時までに帰ってくるようにシンデレラに警告する。城に着いたシンデレラはある王国の女王に出会い、自分が着ているドレスを自分でデザインして作ったことを伝える。シンデレラの才能を気に入った女王は「素敵な衣装を作れる人と世界中を巡りたい」と、シンデレラに専属デザイナーのオファーをする。夢への第一歩と考えたシンデレラはそれを引き受け、翌日の3時に広場へ他の作品も持っていくことを約束する。

シンデレラが夢を叶えられるチャンスを掴んで喜んでいた時、王子がシンデレラを見つけて彼女に結婚を申し込む。しかし、もしシンデレラが妃になれば王室の職務をしなくてはいけないため、ドレスショップを持つ夢は捨てなければいけない。シンデレラが夢と恋のどちらを叶えるか葛藤していた時、魔法が切れる12時を知らせる鐘が鳴りシンデレラは急いで馬車に戻る。走って城から出ようとするシンデレラを見た警備は、王子の未来の婚約者であるシンデレラを追いかける。魔法が切れて周りに貧乏な姿を見られる前に必死に逃げようとしたシンデレラは警備を追い払うために咄嗟に、履いていたガラスの靴を投げる。再びシンデレラに再会したかったロバート王子はガラスの靴を頼りに、靴を履ける女性を町へ探しに行く。

アレンジが加わった『シンデレラ』はコメディとミュージカルの要素を含んでおり、笑いを誘う場面が多数ある。ミュージカル風のユーモアあふれる作品として楽しむことができる。今作品はAmazon StudiosによってAmazon Prime会員限定で公開されたオリジナル映画である。本の中の『シンデレラ』とは違って、歌とダンスを多数取り入れたユーモアとミュージカル要素を存分に加えた作品になっている。グラミー賞にノミネート歴を持つシンガー・ソングライターのカミラ・カベロが主演の、「自分らしく生きる」ことをテーマにした夢を持つ人を応援する映画になっている。

『シンデレラ』のあらすじ・ストーリー

ドレスショップを持つことを夢みるシンデレラ

シンデレラは継母のヴィヴィアン、その娘のマルヴォリアとナリッサと一緒に暮らしていた。しかしシンデレラは家の地下室で差別を受けて暮らしていた。継母からは「いつかは嫁入りしてもらうわ」と言われるが、家庭に入るよりもシンデレラにはやりたいことがあった。ドレスデザイナーとして自分の店を持ち、商売をすることだ。女性が店を持ち、商売することは国で許されていなかったがシンデレラはいつか夢を叶えたい、という強い意志を持ってドレスを作り続けていた。

国の次期国王、ロバート王子は父親のローワン国王からの命令で、広範囲に数々の国を支配しているレジナルド卿の娘と結婚するように言われていた。しかし、父親は自国の拡大のために権力のある家系と結婚することを望んだがロバート王子は愛していない人とは絶対に結婚をしたくなかった。レジナルド卿の娘がロバート王子に婚約の話をしに来ると、ロバート王子は「しばらくは結婚する気はない」と、はっきりと断る。息子が勝手に縁談を断ったことを知ったローワン国王はロバート王子に激怒する。国を拡大することを最優先に考えていたローワン国王は、息子のロバート王子を財産が多く、豊かな家の女性と結婚させようと思っていたからだ。レジナルド卿の娘との婚約の話はなくなったので、すぐに婚約者を見つけるため、舞踏会を開いて婚約者を見つけるようにローワン国王はロバート王子に命じる。ロバート王子は内心では自分が心から愛する人に結婚を申し込みたいと思っていたが、父親の命令は絶対守らなければいけなかったため、仕方なく舞踏会を開く準備を進める。

ロバート王子が花嫁を見つけて王位を継承する前に、城を警備する衛兵の交代式が行われた。ローワン国王、ベアトリス王妃、ロバート王子、グウェン王女といった王室の面々が顔を出す行事で、国のビッグイベントとされていた。そこにシンデレラと継母のヴィヴィアン、マルヴォリアとナリッサも行く準備をする。衛兵の交代式で国王が話しているときに、シンデレラは前国王の銅像によじ登って国王の話を聞こうとした。それが目に入ったローワン国王は「私の父から降りろ！」とシンデレラに怒鳴る。シンデレラは「聞こえづらくて。背の低い民のために観覧席でも作ったら？」と、ため口で偉そうな口調で文句を言う。国王の怒りを買ってしまったシンデレラはその場にいづらくなり、交代式が終わる前にその場から去る。ロバート王子は国王と市民という身分の差を気にせず、自分の意見をはっきり話すシンデレラの美しさと度胸に惹かれて一目惚れをする。そして、なんとかしてシンデレラも舞踏会に呼ぼうと考える。舞踏会についてローワン国王に「家柄を問わず、すべての女性を舞踏会へ呼びたい」と提案する。「好きにしろ」というローワン国王の許可を得たロバート王子は、庶民に変装して町へ繰り出し、シンデレラを探しに行く。ロバート王子として近づいたら、彼女が身分の差を気にして招待を受けてくれないと思ったからだ。

シンデレラを舞踏会に招待するロバート王子

庶民の格好をして広場に着いたロバート王子は自作のドレスを売り歩いているシンデレラを見つける。シンデレラは周りから「女が商売人を気取っているぞ」「バカはやめとけ」と、女性の身分で商売することを馬鹿にされる。国で女性が店を持つことを許されていないことに嘆くシンデレラだったが、「ドレスを作って自分の店を持って売りたい」とロバート王子に夢を語る。その時、「2週間後にロバート王子が舞踏会を開いて未来の花嫁を見つける」、と発表される。周りの女性が王子の花嫁になれるかもしれない期待を寄せる中、シンデレラは「舞踏会なんて時代遅れ。私は行かない」と話す。ロバート王子はどうしてもシンデレラを舞踏会へ来てもらいたかったため、「世界中からは沢山お金持ちが来る。よかったら紹介してやる」とドレスを売る機会を作ろうとする。王子は「境遇に不満を抱く気持ちが分かる」と話し、シンデレラの夢を応援する姿勢をみせた。夢を心から応援してくれる男性が本物のロバート王子とは知らず、シンデレラは「いい男」と魅力を感じた。

舞踏会当日、自作したドレスで舞踏会へ行くために身支度を終えたシンデレラを見て、継母のヴィヴィアンは「婚約者のいるあなたは舞踏会へ行く必要はないの。今朝、トーマスから結婚の申し出があったわ」と話す。トーマスは、庭で取れる野菜をよく分けてくれる男性である。しかし、シンデレラとはだいぶ年が離れており、シンデレラも愛してなどいなかった。すぐに「婚約は断ります。どうしてもいきたいんです」とヴィヴィアンにしつこく迫ると、ドレスを汚されてしまう。もう他に着れるドレスを持っていなかったシンデレラは舞踏会を諦めるしかなかった。諦めかけていたシンデレラの前に現れたのは、魔法使いのファビュラス・ゴッドマザーだった。ゴッドマザーは魔法を使ってシンデレラがデザインしたドレスを着せ、ドレスに合うガラスの靴も用意する。また、シンデレラが地下で一緒に住んでいた3匹のネズミを魔法で人間にし、馬車も用意して、シンデレラを舞踏会へと送り出した。ただし、「魔法が切れる深夜12時までに帰ってくるように」という制約つきだった。

城へ着いたシンデレラは上の階のバルコニーへ向かう。会場には各国からお金持ちが大勢着ており、シンデレラはそのうちの1人のタチアナ女王に声をかけられる。ドレスを自分でデザインしたことを伝えるとその才能を褒められ、「素敵な衣装を作れる人と世界を巡りたい。興味はあるかしら？」と、タチアナ女王の専属のドレスデザイナーのオファーを受ける。タチアナ女王が翌日に帰国する時間までに広場に行くことを約束し、夢へのチャンスを掴んだことにシンデレラは大喜びする。

シンデレラとロバート王子の再会

タチアナ女王との話が終わり、シンデレラは1階のダンスホールでロバート王子が話しているのを見かける。町の広場で話していた男性が王子様だったとは知らず、無礼な態度を取っていたことをシンデレラは後悔した。ロバート王子はシンデレラが来てくれたことを感謝したが、シンデレラは「夢へのチャンスを掴んだから帰るわ」と言って立ち去ろうとする。ロバートはシンデレラを引き留めてダンスを申し込み、他の参加者がいる前でダンスを披露する。そして、まだ話したいことがあったロバート王子は、2人で話せる場所へシンデレラを案内する。

2人きりになった時、ロバート王子は「僕の妃になってくれ。家柄なら気にしなくていい。君は生涯王族として暮らせる」と話した。しかし、シンデレラは自分の夢を捨てたくなかったため「私のドレスづくりはどうなるの？」と疑問を呈した。ロバート王子は「女性には王族の役割がある。君には専属の洋裁師を雇おう」と話すが、シンデレラは「私が洋裁師よ」と、夢を追い続けることを主張する。シンデレラは「自分を選ぶわ」と言い、結婚していい暮らしをすることよりも夢を叶えてやりたいことに専念する生活を選んだ。シンデレラは愛するロバート王子と離れがたく、別れの最後にキスをしようとする。しかし、キスをする寸前に真夜中の12時を知らせる鐘が鳴り、シンデレラは魔法が解けてドレスやガラスの靴が全てなくなることを恐れた。魔法が解ける前に急いで城の外で待っている御者のところへ走る。それを見つけたウィルバー伯爵はシンデレラが城から出るのを阻止しようとし、追いかける。それを振り払おうとしたシンデレラは咄嗟に履いていたガラスの靴を片方投げ、城から離れていった。

ローワン王子が舞踏会で未来の妃にフラれたことをローワン国王に伝えると、せっかくのチャンスを逃したことを叱責される。「時間切れだ」とローワン国王は切り出し、愛していなくても国を守るために財産がある家系のある女性である、ローラ姫と結婚するように命じる。シンデレラに再会することを諦めてしまったロバート王子は「従います」と、力なく承諾してしまう。

トーマスの妻になることをシンデレラに命じる継母

舞踏会の翌日、継母のヴィヴィアンがシンデレラの部屋へ来て、舞踏会で娘2人はロバート王子の妃に選ばれなかったことを話した。その時、偶然にもガラスの靴を見てしまったヴィヴィアンは舞踏会にいたロバート王子の妃に選ばれた女性はシンデレラであると確信する。舞踏会当日は魔法によってきらびやかな外見をしているシンデレラにヴィヴィアンは気づいていなかった。シンデレラが王の妃になれば、この家もその財産で裕福になるだろうと考えたヴィヴィアンは「この家のために、彼と結婚して」とシンデレラに話す。シンデレラは「もう断りました。もう遅いんです」と言う。女性が生活していくためには結婚して家庭に入ることしかないと考えていたヴィヴィアンは、トーマスに嫁ぐことをシンデレラに命じる。
シンデレラはトーマス、ヴィヴィアンと共にトーマスの家まで向かう。だが、タチアナ女王と広場で待ち合わせをする約束をシンデレラは忘れていなかった。3匹のネズミが協力して乗っていた馬車の運転手の気を逸らし、馬車が不安定に揺れた隙にシンデレラは馬車から飛び出して、町の広場へ向かった。

シンデレラとロバート王子の再会

シンデレラが町の広場へ向かっていた時、城ではローワン国王が「ガラスの靴の持ち主を探して、愛する人と結婚していい」とロバート王子に未来を委ねた。愛するシンデレラと再会してもう一度プロポーズするため、ロバート王子は町へシンデレラを探しに行く。広場へ向かうシンデレラは、途中で馬に乗ってシンデレラを探すロバート王子に出会う。ロバート王子は「王族の宿命よりも、君と生きていきたい」と改めてプロポーズする。シンデレラは承諾の返事としてキスをする。しかしゆっくりしている時間はなく、タチアナ女王との待ち合わせの時間は迫っていた。シンデレラはロバート王子の馬に一緒に乗り、広場へと急ぐ。

無事に広場に着いたシンデレラはタチアナ女王にデザインしてきたドレスを見せ、その才能を認めてもらえた。タチアナ女王のもとで洋裁師として働くことになり、夢への第一歩を踏み出せることができた。ロバート王子もシンデレラについていき、世界旅行をすると決める。城に帰り、シンデレラをローワン国王とベアトリス王妃に紹介した。ベアトリス王妃に「結婚式の準備はする？」と聞かれるが、ロバート王子は「まずは世界中を一緒に旅する。だから王位をすぐには継げない」と謝った。しかし、ロバート王子には妹のグエン王女がいるため、彼女が次期女王として王国を統治していくことになる。

王室の宿命を気にしてシンデレラとの結婚を諦めかけていたロバート王子だったが、シンデレラの自分の夢へ真剣に向き合う姿勢に影響された。ロバート王子は愛していない人と結婚して王位を継ぐよりも、シンデレラと生涯をともにする道を選ぶ。シンデレラもロバート王子も、お互いに自分の意志と力で夢を掴んだ。愛する人も夢も追いかけ続けたシンデレラとロバート王子の思いが重なり合い、希望を叶えることができた喜びを歌とダンスで表現し、物語は終わる。

『シンデレラ』の登場人物・キャラクター

主人公

シンデレラ（演：カミラ・カベロ）

吹き替え版CV：渡辺明乃
本作の主人公。ドレスを作ることが好きで、将来はドレスデザイナーになって自分の店を持つことが夢だ。両親が亡くなってから継母のヴィヴィアンに引き取られる。ヴィヴィアンと、ヴィヴィアンの娘であるマルヴォリアとナリッサと一緒に暮らすが、不平等な扱いを受けていた。シンデレラだけ地下室に住まわされ、シンデレラが入れる紅茶に文句をつけられることは日常茶飯事だった。ヴィヴィアンからは「いつかは嫁になって家庭に入るのよ」と指図を受けていたが、シンデレラは本当は自分の夢を優先したかった。いつか自分の夢への一歩を切り開けると信じて、地下室でドレスを作り続けていた。シンデレラは自分の暮らす国では女性が商売することは許されていないと知っていたが、それを無視してある日、自分で作ったドレスを町へ売りに出る。周りからは案の定、馬鹿にされてしまうが、何事もすぐに行動に移す強い意志がある。

王室の人々

ロバート王子（演：ニコラス・ガリツィン）

吹き替え版CV：高橋広樹
次期国王になり、王国を継ぐ立場にいる。そのためには妃を見つけて王の座につかなければいけないが、心から愛する人を見つけることができないでいた。父親のローワン国王は「愛などいらない」と言いながら、権力と財力がある家系の娘を妃にするように命じていた。父親とは結婚の仕方に関して真っ向からぶつかっていたが、最終的には父親に逆らえずにいた。シンデレラと出会ってからは自分の意思を隠す性格から、自身が望むことに突き進む性格に変わっていく。衛兵の交代式で前国王の銅像に乗っていたシンデレラを見た時から一目惚れし、恋に落ちた。

ローワン国王（演：ピアース・ブロスナン）