博士と彼女のセオリー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『博士と彼女のセオリー』とは2014年にイギリスで製作された、物理学者のスティーヴン・ホーキング博士と元妻のジェーン・ホーキングの出会いとその後を描いた伝記映画である。スティーヴンは21歳で筋萎縮性側策硬化症(ALS)を発症し余命2年と宣告されるが、ジェーンの献身的な愛情に支えられ苦しみながらも困難に立ち向かって行く。第87回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、主演のエディ・レッドメインは主演男優賞を受賞した。監督はジェームズ・マーシュが担当し、脚本をアンソニー・マッカーテンが担当している。
ブラックホール
スティーヴンが着替える途中、セーターの編み目から見えた暖炉の火がエネルギーの放出と重なり、そこからヒントを得てブラックホールの研究を展開させていく。
時間
スティーヴンの研究テーマである「時間」。
螺旋階段やコーヒーのクリームなど、時計を表しているような回る描写が幾つか映し出される。
『博士と彼女のセオリー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
スティーヴン「宇宙のすべてを説明するたった1つの方程式」
ジェーンとパーティー会場で初めて会った時、クリスチャンのジェーンが「無神論者は何を崇拝するの?」と聞き、「宇宙のすべてを説明するたった1つの方程式」とスティーヴンは答えた。スティーヴンはこの時からずっと宇宙の理論を知りたいと思っていた。やがて世界的有名な学者として名を馳せるスティーヴンの、その飽くなき探究心が実を結ぶ前の原点のような会話が印象的だ。
スティーヴン「ほら見て。僕らが創り上げたものを」
お互い別々のパートーナーと共に暮らすようになったスティーヴンとジェーン。エリザベス女王に招待され、「今日はありがとう。素晴らしかった。今日まで素晴らしいことばかりだったわ」と言うジェーンに、スティーヴンは「ほら見て。僕らが創り上げたものを」と、子供達を見て言った。壮大な宇宙からみれば自分の存在など点のように僅かなものであると感じながらも、人の愛が生み出した生命を前にしてスティーヴンが放ったこの言葉は、ジェーンへの感謝の気持ちが感じられる感動的なシーン。
時間の巻き戻しを現しているシーン
ペンローズの講義を聞いた翌日、スティーヴンはジェーンに「宇宙が膨張してるなら、時間を戻せば宇宙は収縮していくはずだ」と興奮気味に言った。そして「歴史をすべて逆戻りさせて時間そのものの始まりを解明すっていうのはどうかな?」と言って、スティーヴンとジェーンは両手を繋ぎ合い、笑顔で反時計回りにくるくると回った。病気が発覚する前の純粋で無邪気なやり取りが、戻らない時間の象徴のようで悲しくも美しいシーンである。
スティーヴンの眼鏡を拭くジェーン
スティーヴンの病気が発覚し、打ちひしがれたスティーヴンはジェーンを突き放す。しかしジェーンは「愛してるの。あなたと一緒にいたい。たとえ長い間でなくても私は構わない」と思いの丈を伝える。「何もわかってない」と言うスティーヴンにジェーンはキスをし、「いつも眼鏡が汚れてる」と言った。そしてワンピースの裾で眼鏡を拭き、スティーヴンにかけ直す。「ほら、この方がいいでしょ?」と言うジェーンに、「ああ。よく見えるよ」とスティーヴンは笑った。ジェーンの気高さと慈しみが、スティーヴンの不安や恐怖を包んでくれたのだ。
別れのシーン
時間をテーマに書いたスティーヴンの文章に「我々は何者か。なぜここに存在するのか。答えが見つかれば人間の理性の究極的な勝利となり、我々は神の心を知る」とあったことで、「神の存在を認めたのね」と喜ぶジェーン。「私を喜ばせようと思ってるの?」と微笑むジェーンに、スティーヴンはある言葉を用意していた。スティーヴンがエレインとの交流で笑顔が増えていく一方、ジェーンの笑顔は少なくなり、そしてそうさせているのは自分だと感じていたスティーヴンは、ジェーンが喜び、解放されるのは「エレインと一緒にアメリカに行く」という言葉だと分かっていた。スティーヴンが逡巡を見せた後、「エレインと一緒にアメリカに行くことにしたよ」という音声が流れる。「すべてうまくいくよ」と笑いかけるスティーヴンの気持ちをどこまで汲み取ったのか、ジェーンは「あなたを愛したわ」とスティーヴンに伝えた。そうジェーンが言った瞬間、スティーヴンは泣き崩れた。「精一杯やった」と言うジェーンは、涙を流してはいたがその姿は凛としていて、最善を尽くし、後悔がないことが伝わるシーンだ。
『博士と彼女のセオリー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
エディ・レッドメインの壮絶な役作り
Related Articles関連記事
レッド・ドラゴン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『レッド・ドラゴン』とは、トマス・ハリスの小説をもとにして2002年に公開されたアメリカのサスペンス映画である。 監督はブレット・ラトナー、主演をアンソニー・ホプキンスである。人食いハンニバルと呼ばれる精神科医の殺人犯ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)に殺されかけた過去を持つ、元FBI捜査官であるウィル・グレアム(エドワード・ノートン)との戦いを描く。見どころは、レクター博士とウィルの頭脳戦と徐々にレッド・ドラゴンと呼ばれる猟奇殺人犯を追い詰めていく所である。
Read Article
レ・ミゼラブル(レミゼ)のネタバレ解説・考察まとめ
2012年に公開されたミュージカル映画。主役のジャンバルジャンが牢獄から仮釈放されるシーンから始まる。ジャンバルジャンを追いかけるジャベール警部、ジャンバルジャンに自分の子供を託すファンティーヌなどの登場人物たちにより彼の人生は激動の時代を駆け抜けることとなる。そしてフランス革命が起き、それぞれの人生が変わるのであった。一人の男の一生を描いた超大作である。
Read Article
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』とは2018年に公開された『ファンタスティック・ビースト』シリーズ2作目の映画。『ハリー・ポッター』シリーズと同じ"魔法界"を舞台とした作品で、『ハリー・ポッター』シリーズの公式スピンオフ前日譚の第2弾。 闇の魔法使いグリンデルバルドが移送中に逃亡するシーンから物語が始まる。巨大な力を求め仲間を集めるグリンデルバルドとの攻防が繰り広げられる。 黒い魔法使いグリンデルバルドを追う魔法動物学者ニュートの新たな冒険が描かれる。
Read Article
アメイジング・スパイダーマン2(マーク・ウェブ版)のネタバレ解説・考察まとめ
「アメイジング・スパイダーマン2」は、映画「スパイダーマン」のリブート(再始動)作品。 恋人「グウェン」を危険にさらさないという、彼女の亡き父との約束に悩む「スパイダーマン」こと「ピーター」は、両親の死に繋がる大きな陰謀に巻き込まれ、運命に翻弄されていく。
Read Article
ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』とは2016年に公開された『ファンタスティック・ビースト』シリーズ1作目の映画。『ハリー・ポッター』シリーズと同じ"魔法界"を舞台とした作品で、『ハリー・ポッター』シリーズの公式スピンオフ前日譚。原作者J.K.ローリングが脚本を手がけた。 イギリスの魔法使いニュートが魔法動物達と共にニューヨークに降り立つところから物語が始まる。手違いで逃げ出してしまった魔法動物達とニューヨークで起こった不思議な事件。魔法動物と魔法使いによる新たな魔法界の物語。
Read Article
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』とは2022年に公開された『ファンタスティック・ビースト』シリーズ3作目の映画。『ハリー・ポッター』シリーズと同じ魔法界を舞台とした作品で、『ハリー・ポッター』シリーズの公式スピンオフ前日譚の第3弾。主人公ニュートらに協力を要請し闇の魔法使いグリンデルバルドの陣営に対抗するチームを作ったダンブルドア。魔法界を支配しようとするグリンデルバルドの企みを阻止するため、寄せ集めの凸凹チームが魔法動物と共に戦いに挑む。ダンブルドアの過去が明かされる物語。
Read Article
リリーのすべて(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『リリーのすべて』とは、世界で初めて性別適合手術を受けた、リリー・エルベの実話を元に描いたヒューマン・ドラマ。2015年にアメリカ、イギリス、ドイツで製作された合作映画である。風景画家である主人公はある日、肖像画家の妻に頼まれ女性モデルの代役を引き受ける。そのことがきっかけで、自分の中に女性の存在があることに気付き始める。悩み苦しむ夫の変化に困惑しながらも、妻のゲルダは夫の本質を尊重し、理解を深めて行く。概念を超えた夫婦の絆と美しき愛の物語。
Read Article
ティム・バートンのコープスブライド(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ティム・バートンのコープスブライド』とは、ティム・バートン監督によるストップモーション・アニメーション映画。同監督の『チャーリーとチョコレート工場』と同時進行で制作され、主演も同じジョニー・デップだ。ジョニー・デップにとっては声優初挑戦作品となった。 結婚を目前に控えた内気な青年が、死体の花嫁と結婚してしまうというストーリー。 第78回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされ、2005年ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の長編アニメ賞を受賞するなど、高い評価を得た。
Read Article
スパイダーマンの歴代スーツまとめ
『スパイダーマン』とは、MARVEL COMICS発祥のアメコミヒーローである。 スパイダーマンは、スパイダースーツを着用してヴィランたちと戦いを繰り広げる。これまでスパイダーマンは『サム・ライミ版スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』『MCUスパイダーマン』の3つのシリーズで映画化されてきた。シリーズによってスパイダースーツの形状や能力が異なっている。
Read Article
ハリー・ポッターシリーズのスピンオフ!「ファンタスティック・ビースト」と「呪いの子」の情報まとめ
2016年に『ハリー・ポッターシリーズ』のスピンオフ映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が公開された。これはハリーの時代よりも前の出来事を描いた作品である。また同年には『ハリー・ポッターと呪いの子』の舞台も始まった。こちらは『ハリー・ポッターと死の秘宝』の出来事から19年後の話となっている。
Read Article
【レ・ミゼラブル】ヘレナ・ボナム=カーターの七変化まとめ!ジョニー・デップに負けてない!【ハリー・ポッターシリーズ】
ヘレナ・ボナム=カーターといえば、『レ・ミゼラブル』のテナルディエ夫人役や『ハリー・ポッター』シリーズのベラトリックス・レストレンジ役が有名ですよね。なんとなく想像される通り、どこかぶっ飛んでいる役が多いのが彼女の特徴です。他にどんなのを演じているか、この記事でまとめました。ジョニー・デップも良い意味で変な役が多いけど、ヘレナだってそれに負けてないですよ!
Read Article
CGじゃない!『ティム・バートンのコープスブライド』撮影裏画像を紹介【ストップモーション・アニメ】
『ティム・バートンのコープスブライド』の撮影裏が分かる画像を集めました。ジョニー・デップやヘレナ・ボナム=カーターといったティム・バートン監督作おなじみのキャストが集結。キャラクターに命を吹き込む繊細な作業に驚かされる、貴重なメイキングシーンを紹介していきます。
Read Article
初心者にもおすすめ!傑作ミュージカル映画まとめ
ミュージカル映画というジャンルの中には新旧・実写・アニメなど数えきれない名作、傑作が存在する。ここではふだんミュージカルを観ない人にもわかりやすくとっつきやすく、何より面白いミュージカル映画作品をランキング形式でまとめた。
Read Article
CMにサッカーの試合に使われまくる名曲「民衆の歌」の動画まとめ
「民衆の歌」はヴィクトル・ユーゴー原作のミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌として作られた曲で、ミュージカル映画でもエンディングテーマとして使われ、世界中に感動をもたらした。「民衆の歌」は『レ・ミゼラブル』に留まらず、テレビCMやフィギュアスケートの曲、サッカーの試合など様々な場所で使われている。
Read Article
魅惑の世界!おすすめのストップモーション&クレイアニメ映画を紹介!『ジャイアント・ピーチ』など
いつまでも見ていたいおすすめのストップモーション・クレイアニメ映画のまとめです。少年と虫たちの冒険を描いた『ジャイアント・ピーチ』やティム・バートンの世界を堪能できる『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』、『ティム・バートンのコープスブライド』など6作品、あらすじや作品の魅力を紹介していきます。
Read Article
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『博士と彼女のセオリー』の概要
- 『博士と彼女のセオリー』のあらすじ・ストーリー
- スティーヴンとジェーンの出会い
- スティーヴンの才能
- 距離を縮めるスティーヴンとジェーン
- 病気の発覚
- スティーヴンとジェーンの結婚生活
- スティーヴンの理論
- ジェーンの苦悩
- 声を失ったスティーヴン
- スティーヴンとジェーンの別れ
- スティーヴンの授賞式
- 2人が創り上げたもの
- 『博士と彼女のセオリー』の登場人物・キャラクター
- スティーヴン・ホーキング(演:エディ・レッドメイン)
- ジェーン・ワイルド・ホーキング(演:フェリシティ・ジョーンズ)
- エレイン・マッソ(演:マキシン・ピーク)
- ジョナサン・ジョーンズ(演:チャーリー・コックス)
- ベリル・ワイルド(演:エミリー・ワトソン)
- ジョージ・ワイルド(演:ガイ・オリヴァー=ワッツ)
- フランク・ホーキング(演:サイモン・マクパーニー)
- イソベル・ホーキング(演:アビゲイル・クラッテンデン)
- フィリパ・ホーキング(演:シャーロット・ホープ)
- メアリー・ホーキング(演:ルーシー・チャペル)
- デニス・シャーマ(演:デヴィッド・シューリス)
- キップ・ソーン(演:エンゾ・シレンティ)
- アイザック・カラトニコフ(演:ゲオルグ・ニコロフ)
- ダイアナ・キング(演:アリス・オル=エウィング)
- ブライアン(演:ハリー・ロイド)
- 『博士と彼女のセオリー』の用語
- ブラックホール
- 時間
- 『博士と彼女のセオリー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- スティーヴン「宇宙のすべてを説明するたった1つの方程式」
- スティーヴン「ほら見て。僕らが創り上げたものを」
- 時間の巻き戻しを現しているシーン
- スティーヴンの眼鏡を拭くジェーン
- 別れのシーン
- 『博士と彼女のセオリー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- エディ・レッドメインの壮絶な役作り
- 映画化を実現させるまでの脚本家アンソニー・マッカーテンの道のり
- 『博士と彼女のセオリー』の主題歌・挿入歌
- ED(エンディング):The Cinematic Orchestra 「Arrival of the birds」