リアル(井上雄彦)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『リアル』とは1999年より井上雄彦が『週刊ヤングジャンプ』で連載しているスポーツ漫画。主人公は3人の青年。高校生の野宮は小学生からバスケにのめり込んでいたが、バイク事故を起こし、中退。その時、車いすの青年、戸川と出会う。彼は短距離走の実力ある選手であったが、骨肉腫により右脚を切断する。そして、車イスバスケを通して、目の前の困難と戦っていた。もう1人、高橋久信は野宮と同じ高校のバスケ部に所属していたが、交通事故により下半身不随となる。彼は車イスバスケに熱中し、自尊心の高い自分を変えようとする。

東京ライトニングス

野宮が入団を希望していたバスケのプロチーム。選手層が薄くスタープレイヤー・安西ばかりが目立っている。

『リアル』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

高橋 久信「夕暮れの空はどこか非現実的に見えた 感覚のない脚だけが俺のリアルだった」

もう今までのようには歩けない。その宣告を受け、茫然自失の高橋は心のなかで「夕暮れの空はどこか非現実的に見えた 感覚のない脚だけが俺のリアルだった」と呟いた。

自分は今まで優等生だった。すぐに怪我も治る。そう過信していた高橋にとっては、思ってもみない言葉だった。「まさかの自分が?」「何で自分が?」まだその言葉を受け入れられていない。まだ実感がわかないのだ。いきなり非現実的な世界に放り込まれ、唖然とする高橋。感覚のない脚だけが彼に残酷な事実を突きつける。

若林「ヒーローを目指すのが男ってもんスよ」

戸川をピアノに連れ帰りに来た父親に向けて、戸川の同級生若林が言ったセリフが「ヒーローを目指すのが男ってもんスよ」。

事情は知らないが、これだけは誰にも負けないというもので一番になるのが男ってものだろうと中学生に諭される戸川の父親。純粋でエゴの塊のような言葉だが、人を突き動かすのは最後、この部分である。戸川の後のエゴイストの部分にも関わってくる重要なセリフだ。

野宮 朋美「もっとマシな人間になりてえよ」

初めて長野にやってきた時の、夏美への罪悪感から出た野宮のセリフが「もっとマシな人間になりてえよ」。

事故で下半身不随にさせてしまった夏美に会いに来たが、医者は彼女は自分の道を歩き始めている、君も自分の道を歩き始めるときじゃないかと答える。この罪悪感を抱えて、一生生きていかねばならない。その重さに耐えかねた野宮は思わず、呟いた。情けなさもあったことだろう。もっとまともな人間になりたい。彼は自分の道を懸命に探そうとしていた。

野宮 朋美「努力するモンをあざ笑ってきたお前に何ができる? 何ができんだよ?」

高橋の病室で、彼に野宮が言い放ったセリフが「努力するモンをあざ笑ってきたお前に何ができる? 何ができんだよ?」。

リハビリの話になり、懸命に努力する夏美を思い出す野宮。しかし、高橋にはできないだろう。今まで努力する人間たちを鼻で笑ってきた彼には。野宮は確信を持ってそう言い切った。今までのバスケ部の辛い練習が思い出される。すべて手を抜いて要領良くふるまってきた彼には絶対にできない。一種の哀れみを持って高橋を見つめる野宮だった。

山内 仁史「何のために生まれてきたかわからないじゃん そんなヒマないよ」

脚を切断したばかりの戸川が、病気に前向きな山内に対して何故そんなに強いのかと尋ねたときの返答が「何のために生まれてきたかわからないじゃん そんなヒマないよ」。

山内は自分の人生をジェットコースターに例えた。短くてあっという間だから、そんな余計なことクヨクヨ考えている暇はないと。それじゃあ、なんのために乗ったのかと。

高橋 久行「君自身の声を…聞こえないふりをしていると…そのうち本当に聞こえなくなってしまう」

高橋が彼の父親の家に外泊したとき、父親が高橋に行ったセリフが「君自身の声を…聞こえないふりをしていると…そのうち本当に聞こえなくなってしまう」。

正解ばかり、最短距離で求めようとする息子に、もっと心の声に耳を傾けろという父親。そうやって、心の声を無視しているとやがって本当に聞こえなくなってしまう。高橋の本質を見抜いたするどい一言。

山下 夏美「笑いたい奴は笑え!って―――」

バイト先が倒産して、夏美に話を聞いてほしくて長野までやってきた野宮が夏美から言われたセリフが「笑いたい奴は笑え!って―――」。

周りなんかどうでもよい。自分の決めた道をまっすぐ進む。夏美は残された選択肢の中から、自分のやりたいことを選び出し、それに向かって歩いていた。それに触発される野宮。自分の道を探そうとあがく覚悟を決める。

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