バガボンドの武器と奥義・必殺技まとめ

『バガボンド』とは、吉川英治の小説『宮本武蔵』を原作とした、江戸時代初期の剣客宮本武蔵が“日本一の剣士”へと成長していく様を描いた井上雄彦の漫画作品。丁寧な筆致と生々しくも迫力ある物語が高く評価され、第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第6回手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞している。
実在の剣豪をモデルにした作品であるため、作中には日本の武芸者たちが実際に使用した刀や槍、鎖鎌に杖といった様々な武器とその遣い手、奥義や必殺技が登場する。ここではそれを紹介する。

『バガボンド』の概要

『バガボンド』とは、吉川英治の小説『宮本武蔵』を原作とした、江戸時代初期の剣客宮本武蔵(みやもと むさし)が“日本一の剣士”へと成長していく様を描いた井上雄彦の漫画作品。
主人公の武蔵は原作小説で登場した「剣の道」をひたすら追求する求道者としてではなく、より若く荒々しいキャラクターとして設定されており、その分彼の成長がより印象的に描かれている。丁寧な筆致と生々しくも迫力ある物語が高く評価され、第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第6回手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞している。

宮本村の浪人新免武蔵(しんめん たけぞう)は、幼くして母を失い、武芸者の父からは「いずれ自分を脅かすかもしれない存在」として敵意を向けられ、村人からも「何を考えているのか分からない粗暴な男」と警戒され、愛情に飢えながら成長した。元服を迎えた彼は、大柄な体格と天性の才覚で剣士として頭角を現し、それでも一部を除いて自分を認めない宮本村の人々に失望して出奔。1人で旅を続けながら「日本一の剣士」を目指していく。
その中で様々な武芸者たちと出会い、ある時は互いに学び、ある時は全力で殺し合いながら、武蔵は少しずつ「自分に取って剣術とは何か」を考えるようになっていく。一方、武蔵を追って村を飛び出した幼馴染のおつう、武蔵を慕う少年伊織(いおり)、武蔵の好敵手として成長していく佐々木小次郎(ささき こじろう)、堕落していく武蔵の友人本位田又八(ほんいでん またはち)なども、時に武蔵と関わり時に彼と擦れ違いながらそれぞれに旅を続けていく。

武器と奥義・必殺技について

『バガボンド』は実在の剣豪をモデルにした作品であるため、作中には日本の武芸者たちが実際に使用した刀や槍、鎖鎌に杖といった様々な武器、各流派の奥義や必殺技が登場する。

作中の多くの剣客が得物とする刀。
剣士として成長していく中で武蔵が好んで使うようになった木刀。
当時の女性の一般的な護身用の武器だった短刀。
刀に勝る間合いを持つ槍と、それをさらに改良した十字槍。
トリッキーな攻撃が持ち味の鎖鎌。
ここでは、『バガボンド』に登場する武器とそれを使う主なキャラクター、奥義や必殺技に該当する技を紹介する。

刀(かたな)/太刀(たち)

作中でもっとも多く登場する武器。片側にだけ刃の付いた長剣で、触れただけで肉を裂くほどの鋭さと重量からすれば驚くほどの頑強さを持つ。これは最高品質の砥石による研磨と独特の構造による効果で、その性能と美しさから美術品としても古くからやり取りされている。
個々の遣い手によって運用が微妙に異なり、武蔵は物語の途中で「片手に刀、もう一方の手に刀より少し短い脇差」を構える二刀流に開眼している。武蔵のライバルである小次郎は異様に長い「物干し竿」と称されるものを愛刀にしており、これは作中においては「子供の頃から大人用の刀を振り回していた」ことが理由となっている。

遣い手:宮本武蔵(二天一流)

本作の主人公。恵まれた体格と天性の剣才の持ち主で、自分を認めない生まれ故郷の人々への反発から「剣術で日本一の存在になる」ことを夢見て出奔。幾多の武芸者と戦う中で「剣の道とは何か」を考えるようになり、ただの剣客に留まらない精神性を育て、求道者としての一面を持つようになっていった。
二天一流の名は晩年に使い出したもので、青年期を描いた本作中では使用していない。

一方の手に刀、もう一方の手に脇差を持つ二刀流で有名な剣客だが、実際の立ち合いでこれを使用したことはほとんどないとされる。武蔵は「命懸けで戦う以上、全ての力と武器を駆使しなければ勝利は覚束ない」と考えており、ここから「武士は2本の刀を持っているのだから、これをどちらも使うべきだ」という発想に至り、これが二刀流の元になったという意見もある。

奥義・必殺技:後の先(ごのせん)

相手の技を見切って避け、カウンターで斬り捨てる技。吉岡清十郎の一の太刀を破るために武蔵が編み出したもの。
武蔵は史実においても相手の技を見切ることに長け、「額に米粒を貼って、これだけを斬らせる」ことができたとされている。剣術のみならず徒手空拳で行う格闘技も含めて、武術の奥義とされる技法の1つである。

遣い手:佐々木小次郎(巌流)

巌流島の決闘で有名な剣豪。史実の資料が少なく、武蔵と立ち会った時はすでに老人だったという説もある。『バガボンド』においては“聴覚に障害のある天才剣士”という斬新な設定で登場し、もう1人の主人公として活躍する。
小次郎は「物干し竿」と称される異様に長い刀を得物にしていたとされており、本作でもこの点は踏襲している。さらに「子供の頃から大人用の刀を使って稽古していたため、成長していくにつれて通常の長さの刀では物足らなくなり、自分の感覚に合った得物を求めた」という形で小次郎が長い刀を使うことに理由を設けている。

奥義・必殺技:燕返し(つばめがえし)

小次郎の代名詞ともされる有名な技。振り下ろした刀をそれ以上の速度で跳ね上げ、“避けた”と油断している相手を斬り捨てる。小次郎が空を飛ぶ燕を見て「これを斬ることはできないか」と考えて編み出したとされている。

遣い手:吉岡拳法/吉岡清十郎/吉岡伝七郎/植田良平(吉岡流)

京都最強と称される剣術一門。創始者の吉岡拳法(よしおか けんぽう)亡き後、兄の吉岡清十郎(よしおか せいじゅうろう)と弟の伝七郎(でんしちろう)が道場を受け継いでこれを盛り立てている。
この2人は史実においても「武蔵に倒された」とする資料が存在する。しかし当時の武士は立場が変わるごとに名前を変えたり誰かから受け継ぐことも珍しくなく、武蔵に倒されたのが作中の吉岡兄弟のモデルになった人物なのかどうかは不明。

奥義・必殺技:一の太刀(いちのたち)

戦国時代末期の剣豪塚原卜伝(つかはら ぼくでん)が編み出したとされる奥義。具体的にどのような技なのかの伝承が残っておらず、「雑念を捨て、自分の全身全霊を込めて放つ強烈な斬撃」や「相手の頭上に刀を放り、これを警戒した相手の懐に飛び込んで脇差で斬り捨てる技」、「先読みを極めた末に詰将棋のごとく“自身の勝ち筋”を見出し、その通りに斬りかかることで確実に勝利する技」、「自身の気力、体力、相手との位置取り、タイミング、全てがベストの瞬間に斬りつける技」などと解釈されることが多い。実態は不明ながら、そのシンプルかつインパクトのある名称で日本の剣術の歴史の中でも特に有名な技である。
本作においては、吉岡拳法が独自に編み出した「雑念を捨て、自分の全身全霊を込めて放つ強力な斬撃」として設定されている。拳法の後を継いだ吉岡兄弟がこの技を使う。

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