脹相（呪術廻戦）とは【徹底解説・考察まとめ】

運河（うんが）

敵を追尾する高圧縮血流。見た目は鮮血に似ているが、スピードはそれほど速くない。
しかし超新星と合わせて使うことで、“敵を追尾し、その近くで爆発するミサイル”のように使うことが可能で、「鮮血に相手を慣れさせたところで不意打ち気味に使用する」といった形で格上相手にも有効な奇襲となる。

脹相の来歴・活躍

加茂憲倫によって生み出される

明治初期、「呪霊の子を孕む」という特異体質の女性が存在し、“史上最悪の術師”こと加茂憲倫がこれに目を付ける。加茂憲倫は彼女を利用して凄惨な実験を繰り返し、九体分の呪物を作成。呪胎九相図と名付けられたそれは、世に出れば大きな災いをもたらすと判断され、呪術師たちに厳重に保管されることとなる。
この呪胎九相図の内、最初に作られたのが脹相である。弟たちと比べて人間に近い姿や加茂家相伝の術式を会得していることは、加茂憲倫が「まずは今すぐ用意できるデータを参照しながら作成してみよう」と考えた結果と思われ、彼がプロトタイプであることを物語っている。

特級呪霊によって受肉する

その後百五十年もの間厳重に保管され、呪術高専の強固な結界の中に封じられる。しかし特級呪霊一味がそこを襲撃した際、混乱に乗じて一味の長である真人が結界内に侵入。彼によって他の特級呪物と共に盗み出される。
「人類の廃絶」という目的のために戦力を欲していた彼らにより、適当に拉致してきた人間の体を土台にして受肉。一個の意志を持つ存在としてこの世に生まれ落ちる。この時、同様に盗み出された壊相と血塗も受肉しており、互いに互いを兄弟だと認識。「特級呪霊たちの目指す世界の方が、自分たちにとって都合がいい」と判断し、長兄として弟たちを導いていく。

弟たちの死

しかし、特級呪霊たちから与えられた任務の中で、壊相と血塗は虎杖悠仁と釘崎野薔薇の両名を相手に敗死。自身の持つ「近親者の異変を感じ取る」能力でそれを悟り、弟たちを殺した虎杖らに激しい憎悪を抱く。
虎杖はその身の内に“呪いの王”両面宿儺を宿しており、特級呪霊一味はこれを仲間にすることを人類廃絶計画の要としていたため、表立って行動を起こすことこそなかったものの、「弟たちの仇を討つ」ことは脹相の最大の目的となっていった。

渋谷事変

五条悟の封印

特級呪霊一味は、「両面宿儺を味方につける」以外に、「“最強の呪術師”五条悟を戦闘不能にする」ことも計画の柱としていた。彼らが全員でかかっても太刀打ちできない圧倒的強者である五条を封印するため入念に準備を進め、ついに行動を起こす。渋谷駅一帯に人々の行き来を妨げる結界“帳”を展開し、その中に閉じ込められた者たちを人質に五条を呼び出したのである。
封印に必要な刹那の隙を作るため、一般市民でごった返す渋谷駅の地下に彼を誘い出し、それを盾にしながらいっせいに襲い掛かる。これに脹相も駆り出され、特級呪霊一味と共に五条と交戦。とはいえ実力差を理解していたか、弟たちの仇である虎杖以外と戦うことに気が乗らなかったか、距離を取っての牽制に終始していた。
対五条に用意していた策を次々と破られ、犠牲者を出し、比喩でもなんでもなく死に物狂いだった特級呪霊たちからは「真面目にやらないと殺すぞ」と半狂乱で怒鳴りつけられたものの、五条からは「脅威度は低い」と見なされ、なんとか無事に作戦を完遂。作中最強の存在である五条を封印することに成功し、自らも生き延びる。

虎杖との死闘

五条封印後、彼を救うために押し寄せてくるだろう呪術師たちにどう対応するかを協議する中、一味の長である真人が「自分たちが力を合わせれば宿儺無しでも目的は達成できるから、虎杖を殺してしまおう」と言い出す。
これは虎杖に対する真人の個人的な殺意から出た言葉だったが、他の者たちが困惑する中で一早く同意。真人が「早い者勝ちで最初に会った者が好きなようにすればいい」という形で強引に話を終わらせると、さらなる反論が出るより先にその場を離脱。五条を救うためにやってくるだろう虎杖を待ち構える。
運よく特級呪霊一味の誰より早く虎杖と遭遇し、これと交戦。最初の攻防を交わした後、弟たちの最期の様子について彼に尋ね、それを聞いて怒りと悲しみに感極まる。壊相と血塗の名を口にし、彼らの兄として仇討ちを果たすこと、誇れる兄で在り続けることを力強く宣言した。

戦いながら互いの手の内を探り合い、騙し騙され裏をかき、一進一退の死闘を繰り広げた末に、ついに決定的なダメージを与えて虎杖を昏倒させる。しかし後はトドメを刺すだけとなったところで、「近親者の異変を感じ取る能力」で“虎杖に死という異変が迫りつつある”ことを感知してしまう。これは脹相と虎杖が家族にも等しい関係であることの証拠であり、困惑し、狼狽し、結局虎杖を手にかけることなく「家族同然の仲である弟たちと虎杖はなぜ殺し合わなければならなかったのか」と読者すら混乱するような謎に頭を抱えて苦しみながら退いた。

“お兄ちゃん”の決意

五条の封印と救出を巡り、何人もの呪術師と呪霊が渋谷駅一帯で戦い散っていく中、「虎杖は自分の家族同然の存在」、「家族同然の自分たちが殺し合っていた」という現実に精神を消耗。駅構内の一角で座り込みながら悩み続ける。
ほぼ全ての戦闘が終わったところで、ついに自分の中で折り合いをつけ、「真偽を確かめるために、もう一度虎杖に会わなければならない」と判断。混乱を抱えたまま立ち上がり、渋谷駅のどこかに今もいるのだろう虎杖との合流を目指す。

果たして虎杖と再開した時、彼は仲間たちと共に偽夏油と対峙していた。本性を現した偽夏油の言動を見る内、かつて自分たちを作り出した“史上最悪の術師”加茂憲倫にも額に縫い合わせたような傷跡があったことを思い出し、それが同一人物であることを悟る。
改めて虎杖を“弟”と認識し、「よくも弟を殺させようとしたな」と殺意と共に偽夏油へと詰め寄るも、そこに裏梅が立ち塞がる。「これ以上私を待たせるな」と冷徹な口調で咎められるも、自分を騙して弟と殺し合わせようとした彼らへの怒りは抑えられず、裏梅に対して身構える。
唐突に始まった敵方の仲間割れを呆然と見詰めていた虎杖と彼の仲間たちは、「理由は分からないが脹相は自分たちの味方をしてくれるらしい」と判断。共に戦うことを決める。虎杖が「味方でいいんだな」と話しかけてそれを確認した際、「違う、俺はお兄ちゃんだ。とりあえず一度“お兄ちゃん”と呼んでみてくれないか」と緊急時にも関わらず妙なことを口走り、彼自身混乱の中にあることを表した。

東京壊滅

加茂憲倫が放った無数の呪霊により、東京は甚大な被害を受ける。23区はほぼ壊滅、政治も経済もストップし、一千万もの呪霊がただただ都心を蹂躙する。もはや事態の完全収束は不可能で、なんとか被害を最小限に食い止めようと呪術界上層部が苦心する中、虎杖と行動を共にする。
虎杖のことを完全に“弟”と認識し、気遣い、もはや呪術高専に戻ることもできないがせめて東京中に溢れる呪霊を狩らんとする彼に力を貸す。その虎杖から「俺はお前の弟を殺したんだぞ」と改めて告げられるも、「あれは不幸な事故だ。この状況に立ち会えば弟たちも同じことをしている。兄弟とはそういうものだ」と、“兄”としての優しい言葉をかける。

二人で協力して呪霊を狩り続ける中、禪院家の呪術師である直哉の襲撃を受ける。禪院家はお家騒動の真っ最中であり、直哉は先代当主に後継として指名された伏黒の命を狙っていた。その伏黒が虎杖の追跡任務に当たっていたことから東京まで出向き、本命ではない相手と鉢合わせたのである。
「伏黒が追跡している相手なら餌として使える」と判断した直哉は、独自の術式による信じがたい速さを発揮して虎杖と脹相を翻弄。それでもなんとか奇襲を凌ぎ、改めて仕切り直しとなったところで、その場に五条の生徒で虎杖抹殺の命令を受けている特級術師の乙骨憂太が乱入。かつて対峙した五条に勝るとも劣らないほどに強大かつ異質なその力を肌で感じ、虎杖と直哉と共に戦慄する。
なんとか虎杖を逃がそうと考え、速さで勝る直哉を抑えるためにこれと交戦。大技を放つ際に“溜め”が必要な赤血操術では、速さで上回る自分相手に分が悪いことを指摘された上で勝ち誇られるも、「俺の弟に手を出して生きて帰れると思っているのか」と剥き出しの戦意でこれに応じる。戦術を駆使して対抗し、ついに直哉に決定的な一撃を叩き込んで勝利をほぼ我が物とするも、その場に虎杖を降した乙骨が現れ、彼に素手で殴り倒されてしまう。

薨星宮への侵入

乙骨は事前に五条から「何かあったら虎杖たちを守ってくれ」と頼まれており、彼を襲ったのも“処刑した”という既成事実を作って時間を稼ぐことが目的だった。虎杖は乙骨の治療を受けて回復し、クラスメイトにして戦友の伏黒 恵（ふしぐろ めぐみ）を始めとする仲間たちと合流。虎杖から身内だと紹介されたことで、脹相もそこに加わる。
虎杖たちは事態の打開のために日本呪術界の中枢たる天元という存在と接触することを考えており、そのために彼の結界の深奥「薨星宮（こうせいぐう）」に侵入する方法を検討していた。脹相は自身の「近親者の異変を感じ取る能力」を応用し、天元の結界の奥地に保管されている呪胎九相図の位置を感知することで、虎杖たちを薨星宮へと導くことに成功する。

天元は敵方と通じていることを危惧して一度は脹相たちを拒絶するも、その可能性は無いと見るや一転彼らの前に姿を現す。彼は加茂憲倫の正体が羂索（けんじゃく）という千年以上昔の術師であることを一行に教えると、協力する代わりに自身の護衛をしてほしいと要求してくる。

天元は不死の術式を持つ術師ではあるが、五百年置きに星漿体と呼ばれる特殊な資質を持つ者との同化を果たさないと肉体を維持できなくなる。十一年前にこれに失敗し、不死のまま自我と肉体を失った彼は、「地球上のあらゆる場所に遍在する幽霊」のような状態になっていた。
もはや人間より呪霊に近い存在で、羂索が我が物とした呪霊操術の対象ともなりうる。この状態の天元が羂索の支配下に置かれ、無為転変で全人類との融合を果たせば、それは「個としての人類」の消滅と、剥き出しの自我同士が延々と互いを呪い合う地獄絵図が完成することを意味していた。

事情を聞いた脹相は、特級呪術師の九十九由基（つくも ゆき）と共に、天元の護衛に就くことを宣言する。
“天元と人類の同化”を目論む羂索。その準備として進行している、術者同士のデスゲーム「死滅回游」。これを止めるため、それぞれに役目を背負って薨星宮を後にする虎杖たちを見送り、いったん彼らと別行動を取ることとなる。

薨星宮への襲撃