脹相（呪術廻戦）の徹底解説・考察まとめ

渋谷事変にて、脹相はついに虎杖と遭遇。壊相と血塗の最期の様子を尋ね、それに虎杖が答えたことで、改めて彼を弟たちの仇だと認識した脹相は、見出しのセリフを吐いて己を奮起させる。このインパクトもあって、脹相はファンの間で「お兄ちゃん」の愛称で呼ばれることとなる。
脹相の行動原理が“兄弟への愛情”であることを強烈に印象付ける名セリフ。同時に「お兄ちゃん」という緊迫した場面にそぐわない物言いは、人でも呪霊でもない彼らにとって兄弟だけが生きる理由なのだという、呪胎九相図の切ない現実が見て取れる。
虎杖を“弟同然の存在”として認識した（あるいは認識させられた）脹相が今後どのような動きを見せるのか、注目が集まっている。

「全力でお兄ちゃんを遂行する！！」

渋谷事変のクライマックスにて、脹相が発したセリフ。
ついに本性を現した加茂憲倫。彼の手で持ち出されんとする五条を封じた獄門疆。満身創痍ながらそれを阻止しようと足掻く虎杖と呪術師たち。劣勢極まる状況の中、ある種場違いなほどに意外な人物がその場に乱入する。ほんの数刻前に虎杖と死闘を繰り広げた脹相である。
虎杖を“弟たちの仇”と憎み、これを仕留める寸前まで追い詰めた脹相は、しかし不意に「自分たち呪胎九相図と虎杖は家族にも等しい存在」であることを感じ取る。混乱の中撤退し、一人物思いに耽った末に彼が出したのは、「自分の直感を信じ、“弟たちを殺し合わせた”加茂憲倫に反旗を翻す」という結論だった。

脹相がこの事実を受け入れたのも彼なりの根拠があってのことではあるのだが、読者の目線からすると唐突な感は否めず、この展開自体がコミカルな印象を与える原因にもなっている。脹相がどこまでも大真面目なのがまたコメディチックな雰囲気を漂わせる。
しかしこの時点で虎杖の置かれた立場は悲惨の一言で、この場で共に戦う仲間からも命を狙われかねない状況にあった。その虎杖に対して理由はともかく無条件に味方してくれる脹相の存在は、読者のストレスを緩和し、作品を抵抗無く読み進めるための清涼剤として機能している。
大見栄を切る脹相の凛々しさと滑稽さだけでなく、作者の物語構成能力の巧みさも見て取れる名（迷）シーンである。

「ありがとう悠仁 俺の弟になってくれて」

宿儺との戦いの中、相手の切り札の威力と効果範囲を悟った脹相は「逃げられない」と判断し、己の血と呪力の全てを使って虎杖を守り切る。力を使い果たして崩れ行く脹相は、虎杖と静かに言葉を交わし、最後に「ありがとう悠仁 俺の弟になってくれて」と彼に語り掛ける。これに対し、虎杖もまた「俺を1人にするのか」と言いつつも「ありがとう 兄貴」と言葉を返した。
2人の間に、いつしか本物の兄弟愛に近い思いが生まれていたことを感じさせる。今度こそ弟を守り切れたことに安堵しながら散っていく脹相の姿が、どうしようもなく悲しくもカッコいい。

脹相の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

漫画家・柴田亜美の応援イラスト

“弟たちの仇”たる虎杖の前に立ちはだかり、これを打ち破るも「自分と虎杖は家族同然の間柄」だという根拠不明の確信を得て混乱しながら撤退。以降は「俺はお兄ちゃんだ」と豪語しながら虎杖の絶対的な味方として振る舞う脹相。読者の認識も“主人公に恨みを抱く強敵”から“謎の幻覚に翻弄される不審者”を経て、“何があっても味方でいてくれる頼れるお兄ちゃん”へとジェットコースターのような変遷を辿っていった。
これに合わせて脹相を応援する読者の数も増えていき、今では作中でもかなりの人気キャラクターとなっている。同業の漫画家の中にも注目している者は少なくないようで、『南国少年パプワくん』などの作品で知られる柴田亜美はツイッターで自筆の脹相イラストを公開している。

柴田亜美は、肉親に偏愛を注ぐ癖のある美男子をよく作中に登場させることで知られており、脹相はまさにこれに該当する。柴田亜美が『呪術廻戦』を愛読し、特に脹相を応援していることを知った読者たちは、「彼女の趣味にこれほど合致したキャラクターも珍しい」、「もともと柴田亜美の漫画に登場したキャラクターだと言われても違和感がない気がする」と大いに納得した。