MONSTER(モンスター)のネタバレ解説・考察まとめ
『MONSTER』とは、浦沢直樹による漫画およびそれらを原作としたアニメ作品。
舞台は1980年代後半から90年代後半のヨーロッパ。
日本人の天才脳外科医・テンマは強盗事件にまきこまれ重傷を負った少年・ヨハンの命を助ける。しかし、その9年後にヨハンと再会したテンマは、彼が平気で殺人を繰り返す殺人鬼であることを知る。
殺人鬼・ヨハンを生き返らせてしまったことに責任を感じたテンマは、その責任を果たすため、ヨハンを抹殺する旅に出る。
『MONSTER』の概要
1980年代後半から1990年代後半のヨーロッパを舞台にした、浦沢直樹によるミステリー漫画。
ビッグコミックオリジナルにて、1994年から2001年まで掲載された。全18巻。
天才的な腕を持つ日本人医師・テンマは、院長の娘・エヴァと婚約し、順風満帆な出世コースを歩んでいた。しかし、院長の命令を無視して、強盗事件の被害者として運び込まれてきた少年・ヨハンの手術を執刀したため、出世コースから外されてしまい、さらにエヴァとの婚約も解消させられる。
その数日後、院長とその取り巻きの医者達が何者かによって毒殺されているのが発見される。
ほぼ同時に、ヨハンはともに運び込まれた妹・アンナとともに病院から姿を消す。
その9年後、ヨハンと再会したテンマは、院長らを殺害したのはヨハンであること、さらにヨハンはそのほかにも殺人を繰り返してきた殺人鬼であることを知る。
9年前の院長らの殺人事件が起こったことによりに出世などのメリットを得ていたことなどから、事件を捜査していたルンゲ警部に疑われてしまい、殺人の容疑者として指名手配されてしまうテンマ。
殺人鬼・ヨハンをよみがえらせてしまったことに責任を感じたテンマは、ヨハンを殺害し、彼による殺人を止めることによりその責任を果たさなくてはいけないと考える。
テンマは、指名手配犯となり追われる身となりながら、ヨハンの行方を探る旅に出る。
第3回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第46回小学館漫画賞青年一般部門を受賞。
2004年に日本テレビなどでアニメ版が放送された。
『MONSTER』のあらすじ・ストーリー
天才脳外科医Dr.テンマ
ケンゾー・テンマは、ドイツのアイスラー記念病院で働く日本人脳外科医。誰もが天才と認める技術の持ち主だが、政争にはからっきしで、病院内の権力闘争には翻弄されるばかりだった。
1986年のある日、強盗事件に巻き込まれたという双子の兄妹が病院に運び込まれる。兄のヨハン・リーベルトは頭部に銃弾を撃ち込まれていて危険な状態だったが、テンマは派閥争いから来る「治療するな」という命令を無視して彼を助ける。これにより病院内での立場が危うくなるテンマだったが、数日後唐突に敵対派閥の上司が死亡し、閉ざされかけていた医者としての将来が開けていく。
その後ヨハンは妹と共に忽然と姿を消し、テンマはそれを案じながらも医者として活躍していく。9年の時が流れ、医者同士の権力闘争に巻き込まれそうになるたびに相手が不審な死を遂げることを不思議がっていたテンマは、ある時唐突にそれが自分の助けたヨハンの犯行であることを知る。ヨハンは殺人者としての恐るべき才覚と、人を殺めることになんら罪悪感を抱かない危険な精神を併せ持つ、人の姿をした怪物のような存在だったのだ。
テンマの周囲でヨハンが殺人を繰り返したのは、「自分の命を助けてくれたお礼」だった。これにすさまじい衝撃を受けたテンマが、再会した彼にやめるよう告げると、ヨハンは「もう恩は返し終わった」と判断していずこかへと姿を消す。
追う者と追われる者
自分が恐るべき殺人者を救ってしまったこと、ヨハンが一切の証拠を残さぬまま姿を消したことを知ったテンマは、自らの手で抹殺してでも彼を止めるために医者としての身分を捨てて失踪する。裏社会の人間と関わり、ヨハンの足跡を追いながら、テンマはドイツやその周辺諸国を旅して回る。
一方、テンマの周囲で起きた不可解な殺人が、全て彼を利する形のものであったことに気付いたBKA(ドイツ連邦捜査局)のハインリッヒ・ルンゲ警部は、「テンマこそ一連の殺人事件の犯人に違いない」と見立ててこれを執拗に追っていく。
9年前の記憶を無くし、義両親の下で平穏に暮らしていたヨハンの妹ニナ・フォルトナー。テンマの医師としての腕を見込んで、一緒に一稼ぎしようと持ちかけてくる裏社会の人間オットー・ヘッケル。かつて東ドイツに存在したという孤児院「511キンダーハイム」の謎を追うヴォルフガング・グリマー。ヨハンの怪物性を知り、これを止めるために影に日向にテンマをサポートする精神分析医ユーリウス・ライヒワイン。ヨハンを追う中で、テンマは様々な人々と時には仲間、時には利用しあう間柄、時には競争相手として交流する。
しかしそれを嘲笑うかのように、ヨハンはテンマの行く先々で殺人を繰り返す。休む間もない逃亡生活の中で、テンマは憔悴していく。
なまえのないかいぶつ
なお諦めずヨハンのことを調べていく中で、テンマは彼が511キンダーハイムの出身者であることを知る。511キンダーハイムは、表向きは孤児院として普通に経営していたが、その実態は孤児たちを工作員として育て上げることを目的とした東側諸国の実験場だったのである。
ヨハンはここで殺人者としての才能を開花させるも、その怪物性は511キンダーハイムを運営していた東側諸国の工作員たちにすら制御できないほどの代物だった。ついには言葉巧みに大人たちを殺し合わせることで511キンダーハイムを壊滅させたヨハンは、当時その運営を任されていた者たちにとって「最高傑作」という意味でも「証拠隠滅」という意味でも逃してはならない存在となっていた。
自分を捕えようとする東側諸国の工作員を始末しつつ、ヨハンは511キンダーハイムにおける工作員育成計画の主要人物だったフランツ・ボナパルタという男を次なる標的に選ぶ。
フランツはかつてヨハンとニナの母親に恋をして東側諸国を裏切り、亡命して今はルーエンハイムという街で暮らしていた。これを知ったテンマたちは、ヨハンの凶行を止めるため、511キンダーハイムの真実を見届けるため、それぞれにルーエンハイムへと集結していく。
事件の結末
ヨハンの殺人者としての怪物性は、彼自身をも蝕んでおり、ルーエンハイムではフランツだけでなく住民たちの大量殺戮を計画していた。それがどのような形であれ、フランツとの決着をもって自分の人生を終結させようと考えていたヨハンだったが、それぞれの思惑と決意を持ってこの地にやってきたテンマ、グリマー、ルンゲたちによって彼の計画は阻止される。
しかし、いよいよヨハンを追い詰めたテンマたちの前で、彼は計画に協力させていた自身の信奉者の銃撃を頭部に受けて倒れる。瀕死の状態で横たわるヨハンを見たテンマは、最後まで捨て切ることのできなかった医師としての志に従い、彼を病院に運び込んで再びその命を救う。
直後、テンマは連続殺人事件の容疑者として逮捕される。しかし彼を追う中でそれが誤りだと気付いたルンゲの口添えもあり、その容疑が冤罪であることが証明されて汚名を返上。再び医師として働き始める。
テンマの施術で一命を取り留めたヨハンは、その後昏睡状態が続いていた。しかし見舞いに来たテンマの前で突如起き上がると、かつて511キンダーハイムで母親に見捨てられた過去を語る。
母に見捨てられ、望みもしない殺人鬼としての才覚を目覚めさせられた自分。多くの人に愛され、今も幸せに生きる妹のニナ。自分たちの間にどんな違いがあったというのか。
言外にそう問いかけてくるヨハンを前に絶句するテンマ。気が付くと相変わらず昏睡したままのヨハンが目の前におり、白昼夢を見たのかと不思議に思いながら病室を去る。その後ヨハンが寝ていたベッドが空になっている様が描かれ、物語は終わりを迎える。
『MONSTER』の登場人物・キャラクター
主要人物
ケンゾー・テンマ(天馬 賢三) / Dr.テンマ
声 - 木内秀信 / 幼少期 - 小野未喜
本作の主人公。
ドイツ・デュッセルドルフのアイスラー記念病院で働く、日本人の天才脳外科医。院長の娘・エヴァと婚約し、順風満帆な出世コースを歩んでいた。
しかし、院長の命令を無視し、後から運び込まれた市長ではなくヨハンの手術を執刀したことから出世コースを外され、さらにエヴァとの婚約も解消させられる。
しかしその後、ヨハンによって院長らが殺害されたことで出世コースに返り咲く。
ヨハンの手術から数年後、自分の患者がヨハンの指示で強盗事件に関わっていたことから、ヨハンが殺人鬼であること、さらに、自身の発言がヨハンが院長らを殺害するきっかけになっていたことを知る。殺人鬼・ヨハンを生き返らせてしまったことに責任を感じ、彼による殺人を止めるために自分が彼を殺さなくてはいけないと考える。
ルンゲ警部らにより、院長らを殺害する動機が十分にあったことなどから、殺人事件の容疑者として指名手配されてしまう。
追われる身となりながら、ヨハンの行方を捜す旅に出る。
非常に温厚な性格で、かつ医者の仕事に責任感と情熱を持っており、自分が危険な状況でもけが人や病人を見かけると必ず治療をしている。
さらに、かつて自分を捨てたエヴァが命を狙われていると知った時も、危険を冒してまで脱獄し、彼女を守ろうとした。
ヨハン殺害に向けて準備を進めるが、医者として人を生かすという使命感と、殺人鬼であるヨハンを殺害しなければいけないという義務感の間で苦悩する。
ヨハン・リーベルト
声 - 佐々木望 / 幼少期 - 上村祐翔
テンマが追っている「怪物」。優れた頭脳と美しい容姿、圧倒的なカリスマ性を持っている。
幼いころから周囲の人間を殺し続けた殺人鬼。
子供のころから周囲の人間の心に入り込み、相手を操ることができた。
成長後はロベルトなどの崇拝者を従えながら、殺人を繰り返していく。
妹のニナとともに、フランツ・ボナパルタらが関わる、「西ドイツを駆逐する優秀な戦闘員を育成する」ことを目的とした実験により生まれた。
その後、母親とニナとともに「3匹のカエル」で生活していたが、ペトル・チャペックらとともにやってきたボナパルタにより、ニナは「赤いバラの屋敷」に連れ去られ、母親とも別れてしまう。
「赤いバラの屋敷」から帰ってきたニナからそこで起きた惨劇を聞き、ニナの記憶と自分の記憶が共有される。
その後、「3匹のカエル」に火を放ち、ニナとともに逃走する。
ニナと一緒に国境近くで倒れていたところをヴォルフ将軍に保護され、511キンダーハイムに送られる。
その後、511キンダーハイムの職員や生徒をマインドコントロールし、殺し合いをさせ、施設を崩壊される。
その後ニナとともにリーベルト夫妻に引き取られるが、ある夜に夫妻を殺害し、ぞれを知ったニナに自分を撃たせて重傷を負う。しかし、テンマが執刀した手術により一命をとりとめる。その後、命の恩人であるテンマが院長やその一派に属する医師らを恨みに思っているということをテンマの独り言から知り、院長らをテンマへのお礼として殺害する。院長らの殺害後にニナとともに病院を抜け出す。
9年後に再びテンマのもとに現れ、院長らを殺害したのは自分であることを告白する。
ニナ・フォルトナー / アンナ・リーベルト
声 - 能登麻美子 / 幼少期 - 塚田真依
ヨハンの双子の妹。
ヨハンとともに病院を抜け出した後、養父母のフォルトナー夫妻に引き取られ、ごく普通の大学生として幸せな生活を送っていた。
ヨハンやテンマの記憶を忘れていたが、20歳の誕生日にテンマと再会し、さらにフォルトナー夫妻が以前の養父母・リーベルト夫妻を彷彿とさせるような状態で、ヨハンの関係者の手によって殺害されてしまったことから、記憶を取り戻す。
その後、大学を休学し、ヨハンの行方を探る。テンマに殺人をさせてはいけないと考えており、彼に変わって自分がヨハンを殺害しようとすることもある。
子供のころ、ヨハンがリーベルト夫妻を殺害した現場を目撃している。さらにその時に、ヨハンはそれ以前にも自分とヨハンに良くしてくれていた人たちのことを殺害していたことを知る。ヨハンの命令でヨハンの頭を打ち抜き、心神喪失した状態で立ち尽くしていたところを駆け付けた警察により保護された。その後、ヨハンとともに、テンマが働くアイスラー記念病院に運び込まれ、彼の治療を受けている。
ニナ・フォルトナーという名前はフォルトナー夫妻に引き取られた際につけられた名前である。
アイスラー記念病院に運び込まれたときは「アンナ・リーベルト」という名前であり、ヨハンにも「アンナ」と呼ばれている。
運動神経が良く、合気道を習っている。さらに頭脳明晰で、大学の同じクラスの生徒が答えられなかった問題にもすらすらと答えている。
エヴァ・ハイネマン
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目次 - Contents
- 『MONSTER』の概要
- 『MONSTER』のあらすじ・ストーリー
- 天才脳外科医Dr.テンマ
- 追う者と追われる者
- なまえのないかいぶつ
- 事件の結末
- 『MONSTER』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ケンゾー・テンマ(天馬 賢三) / Dr.テンマ
- ヨハン・リーベルト
- ニナ・フォルトナー / アンナ・リーベルト
- エヴァ・ハイネマン
- ハインリッヒ・ルンゲ警部
- ヴォルフガング・グリマー / ノイマイヤー
- テンマの協力者
- ユーリウス・ライヒワイン / Dr.ライヒワイン
- ルーディ・ギーレン / Dr.ギーレン
- ディーター
- フリッツ・ヴァーデマン弁護士
- ギュンター・ミルヒ
- ハンス・ゲオルグ・シューバルト
- カール・ノイマン / カール・シューバルト
- ロッテ・フランク
- リヒァルト・ブラウン
- オットー・ヘッケル
- ヤン・スーク刑事
- ヤコプ・マウラー
- ヒューゴー・ベルンハルト
- Dr.シューマン
- ミラン・コラーシュ
- ヨハンの関係者
- ロベルト / アルフレート・バウル / アドルフ・ラインハルト
- 赤ん坊
- ギュンター・ゲーデリッツ教授
- ヘルムート・ヴォルフ将軍
- ペトル・チャペック
- クリストフ・ジーヴァーニッヒ
- マルティン・レースト
- その他の重要人物
- フランツ・ボナパルタ / クラウス・ポッペ
- ヤロミール・リプスキー
- マルゴット・ランガー / ヘレンカ・ノヴァコバー
- ミハイル・イワーノヴィチ・ペドロフ / ラインハルト・ビーアマン
- フィリップ・ゼーマン / フィリップ・ゼマン
- カレル・ランケ
- ベンヤミン・ヴァイスバッハ
- 『MONSTER』の用語
- なまえのないかいぶつ
- 超人シュタイナー
- 3匹のカエル
- 赤いバラの屋敷
- 511キンダーハイム
- 朗読会
- 終わりの風景
- 『MONSTER』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「人の命は平等じゃないんだもの。」(1巻1章『ヘルDr.テンマ』)
- 「バリバリグシャグシャバキバキゴクン。」(9巻3章『なまえのないかいぶつ』)
- 「おかえり。」(11巻8章『悪夢の扉』)
- 「人間はね………何にだってなれるんだよ」(15巻6章『ニナの記憶』)
- 「Dr.テンマ……すまなかった。」(18巻2章『休暇の終わり』)
- 「悲しみはどんどん薄れていって……楽しかった記憶ばかりが残っていく……人間て、都合よくできてるわよね……」(18巻10章『明日は来る』)
- 『MONSTER』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「テンマ」の元ネタ
- 実際に発売された『なまえのないかいぶつ』
- 国境なき医師団
- アニメ版『MONSTER』
- 概要
- 主題歌
- オープニングテーマ「GRAIN」 作曲・編曲 - 蓜島邦明
- エンディングテーマ 「for the love of life」(CHAPTER.1 - 32) 作詞 - デヴィッド・シルヴィアン / 作曲 - デヴィッド・シルヴィアン・蓜島邦明 / 歌 - デヴィッド・シルヴィアン
- 「Make It Home」(CHAPTER.33 - 74) 作詞・作曲・編曲 - 蓜島邦明 / 歌 - フジ子・ヘミング