Dr.STONE(ドクターストーン)のネタバレ解説・考察まとめ

『Dr.STONE』とは、原作・稲垣理一郎、作画・BoichiによるSF・サバイバル漫画である。2017年から『週刊少年ジャンプ』で連載開始した。2019年に第1期が全24話でアニメ化し、2021年に第2期が放送。ある日、謎の光によって地球上の全人類が石化してしまう。長い長い時が流れ、最初に石化から目覚めたのは主人公「石神千空」で、人類が石化してから約3700年が経っていた。人類はこれまで築いてきた全文明を失うが、千空は幼馴染「大木大樹」などの仲間と共に科学によってその文明を取り戻していく。

千空と百夜の親子の絆

百夜が千空のために残した「仲間」という財産。

百夜と千空は血は繋がっていない親子である。千空曰く、百夜の親友の子供が千空で、何らかの事情で百夜が与って育てる事になったという。しかし2人は血こそ繋がって居ないが、目標に向かって地道に努力する姿や諦めないメンタルの強さは親子でそっくりである。
百夜は千空の協力と応援によって宇宙飛行士になりソユーズに乗り、他のパイロットたちに千空の話をして息子自慢を毎日していた。しかしソユーズの中で人類の石化現象に遭ってしまう。宇宙にいた百夜は石化を免れるが、百夜が真っ先に心配したのは息子の千空であった。百夜は「千空ならどうするか」と考えて、SNSの更新時間から光の発生源が南米だと特定する。南米から1番離れた日本付近に地上へ降りた百夜たち6人は、無人島で余生を過ごす事になる。6人の子孫は段々増えていき集落を作り、その一部が日本に向かい石神村の子孫となった。百夜は1番最初に石化から目覚めるのはきっと千空で、千空ならこの危機的状況にも負けず人類を助けてくれるはずだと信じて止まなかった。その千空のために百夜は子孫に鉱石の知識や、千空に百夜の現状を伝えるための物語を託した。そして百夜自身は毎日川で砂金を集め、砂金の中にごく稀に紛れるプラチナを千空に残す。
プラチナは復活液を作るために必要な硝酸を精製するのに不可欠な物であり、百夜の努力は百夜の死から3700年かけて千空へとしっかり手渡った。百夜と千空はもう会う事は出来ないが、お互いに信頼しあう親子の絆が描かれる。

コハクたち石神村の住人たちの変化

特に変化が著しいのはマグマで、積極的に千空の手伝いをするようになった。

千空たち現代人とは違い、現地住民なのがコハクたち石神村の住人達である。彼らは現代人では無く百夜が残した子孫の末裔であるため、そもそも現代の知識や常識などは全くない。しかし百夜が残した百物語から知識を得ているため、英語やノリツッコミなど現代の物も一部知っている。千空と最初に出会ったコハクは千空の生き方に惚れ、千空に全面的に協力してくれるキャラクターとなる。クロムや金狼銀狼兄弟にカセキやスイカもまた千空の科学と人間性に魅せられ仲間となっていく。金狼とスイカは千空の作った眼鏡によって今まで抱えていた「ぼやぼや病(近眼)」を克服する。クロムとカセキは物作りの楽しさを感じ、以前より生き生きとした顔を見せるようになった。
しかし石神村の住人の中で千空によって最も変化が起こったのは恐らくマグマである。マグマは元々はルリと結婚して村の長になろうと企んでいて、病弱なルリは邪魔だから結婚したら殺してしまおうとすら思っていた。そして御前試合では眼鏡をかけた金狼に圧倒されるが、狡賢い手を使って金狼を倒す。そしてクロムを一方的に必要ないほどボコボコにするが、科学を知らずクロムを侮り負けてしまう。そこからは鼻っ柱を折られたお山の大将のような状態で、リーダーになった千空のする事なすこと気に入らないでいた。そんな中、鉱山にテングステンを取りに行く際に千空によってメンバーに抜擢される。理由は単純に力が強いからであった。抜擢に1番驚いたのはマグマ本人であったが、これに乗じてクロムと千空を殺してしまおうと画策していた。しかしマグマは千空を思わず助けてしまい、千空と2人で雲母の穴に落ちてしまう。マグマは千空たち現代人は頭の良い人がチヤホヤされて、頭が悪く力が強いだけの人は必要ないものだと思っていた。しかし千空は頭が良い人は頭を使い、体力がある人は力を使い、適材適所で皆が社会の役に立つんだとマグマに教える。そして千空はマグマに科学で楽しませることを約束する。マグマは千空と2人で話した事で腹をくくり、司を倒すまでは千空に協力する事になった。そして司を倒した後はもう千空を殺したいとは思わなくなっていた。
マグマの他にも村長であるコクヨウも、千空がルリを治した事によってコハクとの仲も修復している。初めは千空を信用しておらずルリに胡散臭い薬を飲ませるのを反対していたが、千空がルリを助けたことで千空を村長として認める。村全体としても、以前までは寒さや不漁で人が死ぬ事があったが、千空がストーブを作ったことで寒さで死ぬ人はいなくなり、千空たちが小麦を見つけて農村を始めたことで餓死する人もいなくなった。冬の備えもガラス瓶を作ったことで食品の保存力が上がり、村はどんどん豊かになっていく。科学の本来の目的は人々の暮らしを助けて豊かにする事にあるのである。

千空とは違うリーダーシップを持つ七海

難航していた船作りで、大型船の模型を自ら作って活路を開いた。

司との戦いの後に登場したのが七海龍水である。龍水は七海財閥の息子で、豪邸で小さい頃から莫大なお小遣いを貰うなど規格外の生活をしていた。欲しい物は何でも手に入れなければすまない性格で、そのための努力は惜しまない。人材を宝だと思い、自分に必要だと思った人材を男も女も欲する。しかし他人を物扱いしたりはせずキチンとした待遇をし、相手も自分も昇格させていくのをモットーとしている。龍水はカリスマリーダータイプであり、龍水を船長に迎えた事で千空たちの行動力は格段に上がる。しかし千空の役目を食う事は無く、千空とうまく協力して皆を導いていく。龍水が来た事で気球に乗る事ができ、難しい航海が可能になり、龍水の執事のフランソワを復活させたことで食事が大幅に改善された。さらに龍水がお金を作ったことで物を売ったり買ったりするシステムが生まれた。航海中にギャンブルをしたりお酒を飲むなどの遊びも増える。
宝島編では到着後に石化させられてしまうが寸前にスイカを助けたり、龍水が自分の命を捨てる覚悟で大樹を復活させたり、イバラとの戦いでは捨て身になるなど、龍水が活躍する場面が目立つ。アメリカ編でも千空と共に戦闘機に乗って戦い、極限状態の中で高い操作技術を発揮してドッグファイトを勝利した。
初めはテンションが高く偉ぶっている龍水の登場に皆動揺していたが、現在では科学王国の七賢人の1人にも数えられており、誰もが龍水をリーダーの1人と認めている。特に直感力に優れたリーダーであり、ここぞという時に運の悪い千空とはそこが違う。しかし千空も龍水も地道な努力を惜しまないタイプであり、似たところも多い。

地道な努力で戦闘技術を手に入れた氷月と、努力をしない天才肌のモズ

ただの槍での戦いではモズが強かったが、管槍を持った氷月には勝てなかった。

氷月は司帝国に所属していて人を選別するという点において司と意思を同じくしていた。しかし氷月の思う選別は弱い者や足手まといな者を振るいにかけるものであった。司は大人という強者が弱者である子供を搾取する事を嫌っていたが、氷月は弱者が縋りつくことで強者を搾取する事を嫌っていたのである。氷月はただの槍での勝負であれば弱くは無いが物凄く強いと言う程でもない。しかし管槍という武器を使うことで司と同じくらいの戦闘力を有する。実際重傷の怪我をした司との戦いでは氷月の方が有利であった。氷月は千空と司のコンビに敗れた後、牢に入れられ長らく出番は無かった。宝島へ行く際に牢をそのまま船に積み、もしもの時の戦力としてカウントされていた。
そのもしもがやってきたのがモズとの戦いであった。氷月はモズと千空たちどちらに味方すべきか考えたが、モズの顔の美醜で人類を選別するという言葉を聞いて千空たちに協力を決めた。モズは生まれつき強く、努力をせずとも何でもする事ができるため努力と言うものを心底馬鹿にしていた。氷月は初めはただの槍での勝負であったためモズに押されるが、千空が管槍の管を作って来た事で形勢逆転する。モズは管槍を使った氷月に手も足も出ずに負けてしまう。氷月は道場で長い間努力をして管槍を習得しており、その努力がモズの才能を上まったのである。モズは氷月の洗礼された強さに惹かれ、何か1つを努力をして極めてみるのも悪くないと言い、氷月はそんなモズを受け入れ機会があったら管槍を教えると約束した。しかし2人はイバラの島全土に及ぶ石化光線によって石化させられてしまう。2人はもう目覚めることなど当分ないと思っていたが、石化が解かれ、2人が再開する機会はすぐに訪れた。
アメリカへの道中、戦闘員への指導をして欲しいという理由で氷月の石化が解かれる。氷月は指導を請け負う条件として2人分の石化復活液の権利を欲し、ほむらとモズの石化を解いた。モズは約束通り今度は真面目に氷月から訓練を受けていて、アメリカ兵との戦いでその成果を存分に見せた。

発明品のロードマップ

サルファ剤や船など何か大掛かりなものを作る時に出てくるロードマップ。

作中で千空が何か作る時に目標に向かうためのロードマップが度々登場する。沢山の科学用語や薬品名が書かれており、科学に詳しいものでないともはや理解は出来ない。鉱石から採取した物を熱して液体にしたり、別の薬品と合わせて精製しなおしたり、煮たり焼いたり乾かしたり、とても沢山の工程がある。特にロードマップが長かったのは抗生物質、携帯電話、船である。初期の頃である抗生物質は鉱石などを探す段階から始まっているが、携帯電話の辺りではもはや材料が殆ど揃っている。船では材料こそあるが難しい作業であり、油田を見つけるために気球を作り、気球を作るために布を作り、気球から地図を作るためにカメラを作った。さらに複雑な船を作るために小さいサイズの模型を作ってパーツを拡大コピーし、大きい船を組み立てるなどの作業があり1年掛かった。長いロードマップであるが、化学やモノ作りに焦点があたる本作の見所のひとつである。

『Dr.STONE』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

原作者・稲垣理一郎が「猫じゃらしラーメン」を再現

原作者・稲垣理一郎は原作3巻で猫じゃらしラーメンを実際に作ったとコメント欄で写真付きで語っている。緑の太くて短い麺で、味はやはり微妙だったようである。

人類が石化した3700年後の自然に生えた木は真っ直ぐ生えないという拘り

作画を担当するBoichiは、人間が居ない3700年の森を真っ直ぐ伸びた杉が並んでいるだけの森にしてはいけないと語る。森に杉が多いのは現代人が植えたからであり、真っ直ぐ伸びるのは管理されているからである。特に関東付近の人は真っ直ぐに伸びた木と平地の森を想像しやすいが、人間の管理を受けていない森を再現するのに真っ直ぐ伸びる木を描かないようにしているという。作中の関東平野は、上空から見たロシアのツンドラのイメージを適用している。

原作者・稲垣理一郎、作画・Boichiがロシアや槍道場などを訪れた取材

原作者・稲垣理一郎と作画・Boichiは本作を描く為に何度も取材を重ねている。フランソワが登場するにあたって自身でパンを捏ねてみたり、氷月を描くにあたり槍道場で実際の管槍を使ってみたり、ペルセウスを出すのにあたり帰帆船を取材している。また原作42話から44話で使われた写真資料の数は1070枚にも上るという。他にも気球に乗ったり、ロシアへ取材に行ったり、ガラス工房に取材も行っている。Boichiは以前描いたロシアの物語ではロシアの歴史、文学、料理、マフィアに関する本を読んだり、音楽を聞いたという。本作でも2人は膨大な資料と取材を重ね、本作の世界や千空に思いを馳せながら執筆作業をしているとのことである。

『Dr.STONE』の主題歌・挿入歌

第1期

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