トリリオンゲーム（漫画・ドラマ）のネタバレ解説・考察まとめ

『トリリオンゲーム』の概要

『トリリオンゲーム』とは稲垣理一郎の原作、池上遼一の作画によって2021年より『ビッグコミックスペリオール』に連載されている、スタートアップを題材とした青年漫画及び、それらを原作としたドラマ作品である。
稲垣理一郎はこれまで『アイシールド21』や『Dr.STONE』を手掛けており、池上遼一は『男組』や『サンクチュアリ』など劇画的な絵で知られている。

物語は天性の人たらし天王寺陽（てんのうじはる）通称ハルと、コミュ障の天才プログラマー平学（たいらまなぶ）通称ガクの2人が、世界的なIT企業ドラゴンバンクを買収するため0から起業し「トリリオンゲーム」という会社を大きくしていく姿が描かれる。
2人はまず投資家から資金を集めるためにドラゴンバンクが主催するハッカー大会に出場する。そこで出会った祁答院一輝（けどういんかずき）というスポンサーを得てからは人力AIを利用したネットショップの開発、ソーシャルゲーム開発、芸能プロダクションの買収やネットTV局の開局などを次々と手掛けていく。
2人の才能を評価しながらも、自分の手中に収めようとするドラゴンバンクの社長令嬢の黒龍キリカ（こくりゅうきりか）通称桐姫（きりひめ）と争いながら総資産1兆ドルを目指していく。
「トリリオン」とは1兆のことで、ハルは「トリリオンダラー（1兆ドル）」を手にするために2人で立ち上げた会社を「トリリオンゲーム」という名前にしている。

2021年には次にくるマンガ大賞にノミネートされており、翌年2022年のマンガ大賞では6位に選ばれた。

2023年にはTBS系列で連続ドラマ化され、ハルをSnow Manの目黒蓮、ガクを佐野勇斗が演じ話題となった。

『トリリオンゲーム』のあらすじ・ストーリー

株式会社「トリリオンゲーム」の設立

世界長者番付トップ10入りした初めての日本人、天王寺陽（てんのうじはる）通称ハルと平学（たいらまなぶ）通称ガクの出会いは中学時代であった。
半グレ集団に絡まれていたガクを同級生であったハルが助けに入ったのだが、半グレ集団を殴っているハルの様子が街頭の防犯カメラに録画されてしまう。今度は自分がハルを助けるため、ガクは買ったばかりのパソコンで防犯カメラのシステムをハッキングし動画を削除する。

親友になった2人は高校では分かれるものの、大学で再会する。大学4年になりガクは世界的IT企業であるドラゴンバンクにエンジニアとしての就職を希望していた。あがり症でコミュニケーションに難があるガクは最終面接まで残るが、思うような結果が出せず不採用となってしまう。同じくドラゴンバンクの面接を受けたハルは天性の明るさと話術とハッタリでなんなく採用となる。しかしガクが不採用になったことを知ったハルはあっさり内定を辞退してしまう。「自分のような口とハッタリで世渡りする人間と、ガクのような知識と技術がある人間がいて初めて両輪となる」とハルは言い、片輪しか取らないようなドラゴンバンクは買い叩いてみせると宣言する。ハルは「ドラゴンバンクを買収できるほどのトリリオンダラー（1兆ドル）を手に入れるための、トリリオンゲームをやろう」とガクを強引に引き入れるのだった。

起業はしたものの自己資産0円の2人は、営業担当のハルが投資家の間を回り出資を募るがどこにも相手にされなかった。困ったハルはドラゴンバンクの面接官であった、社長令嬢で取締役の黒龍キリカ（こくりゅうきりか）通称桐姫（きりひめ）の元を訪れる。実はドラゴンバンクの採用面接からハルとガクの2人を高く評価していた桐姫は、持ち株比率51％を条件に1億円の出資をハルに提案する。

しかしハルが持ち株比率51％という条件を飲むはずもなかった。ハルの狙いは桐姫が1億円の出資を約束したという事実を餌にして、その他の投資家から出資を募ろうとするものだった。桐姫が1億円を約束したという事実を世間に広めたいハルは、ドラゴンバンク主催のハッカー大会「セキュリティチャンピオンシップ2023」にガクを出場させる。そして宣伝のために「桐姫が1億円51％を提示！別の出資条件も急募 ！お問い合わせはtrilliongame@gmail.com」という長いチーム名をつける。
セキュリティチャンピオンシップには世界中から名だたるハッカーたちがチームを組んで参加していた。そんな中でたった1人で出場するガクは予選に参加するも、序盤は苦戦する。しかしハルがオフ会で集めてきたパソコンおたくたち100人のZOOM会議による協力を得て、無事予選を通過することができた。
決勝に駒を進めたハルとガクは、ドラゴンバンクからの妨害のため敗北寸前まで追い詰められる。しかしハルが仕掛けたルーターの罠により、最後の最後で息を吹き返し優勝する。
優勝はしたもののハルが行った電波妨害によりハルとガクのチームは失格となってしまう。しかしそのなりふり構わない戦いぶりに興味を抱いた祁答院ベンチャーキャピタルの祁答院一輝（けどういんかずき）から持株比率15%、3千万の出資を得ることに成功する。

AIオンラインショップ「ヨリヌキ」の開発

3千万の資本金を手にしたハルとガクは社名を「トリリオンゲーム」とし、人材の採用に動き始める。リクルートサイトを立ち上げ応募者を募るが、その中に就職活動連敗中の高橋凛々（たかはしりんりん）通称リンリンもいた。リンリンは持ち前の正義感と生真面目さが邪魔をして1つも内定を貰えず、それでもめげることなく就職活動に励んでいた。

祁答院のオフィスを借りてトリリオンゲーム社の面接会場としたハルとガクは応募者たちに1つの問題を出す。その問題と答えを知っていたリンリンは「自分は正解を知っているので答えられない」と答える。その堅物ともいえる生真面目さは自分たちに必要だと思ったハルとガクはリンリンを採用することに決めた。
初出社してきたリンリンを、ハルはトリリオンゲーム社の社長に任命する。ハルとガクはリンリンとともに新事業企画会議を行い、AIと見せかけて人間がおすすめ商品を答える花のセレクトショップ「ヨリヌキ」を作ることを決定する。リンリンが担当する人力AIは「トリンリン」と名付けられ、花屋でずっとアルバイトをしてきたリンリンの専門知識と、親切丁寧な対応が評判を呼び「ヨリヌキ」は大ヒットする。

人気が出てきた「ヨリヌキ」をハルは老舗生花チェーン、蜜園フラワーへの売却を打診する。蜜園フラワーの社長は「ヨリヌキ」を買い取る条件として1ヶ月で2千万円の売上を出すことをハルたちに要求した。
その条件をクリアするために、ハルとガクは日本一の生花の市場である新宿歌舞伎町へホストとして潜入する。
ホストクラブに訪れる女性客たちに「ヨリヌキ」を勧めるハルとガクたちに、ホストクラブナンバーワンの緋勇人（ヒロト）は苛立ちを見せる。ハルとヒロトはどちらがナンバーワンになるかという賭けをする。ヒロトに勝ちナンバーワンとなったハルの影響で「ヨリヌキ」で花を買う人は爆発的に増え、その月の売上は目標の2千万円を達成する。

トリリオンゲーム社は無事蜜園フラワーに「ヨリヌキ」を1億円で売却する。しかし桐姫の父親でありドラゴンバンクの社長である黒龍一真（こくりゅうかずま）は「ヨリヌキ」を目障りとみなし、メディアを使って徹底的にすり潰してしまう。
それに怒りをおぼえたハルは復讐のため、自らもメディア帝国を作ることを決意するのだった。

ゴップロの買収と『プチプチランド』

メディア帝国を作るための次の事業として、ハルはソーシャルゲーム作りを選ぶ。ハルは「ハートが足りねぇ」が口癖の桜心護（さくらしんご）を丸め込み、桜が社長の零細ゲーム会社「SAKU SAKU LAB」を買収する。桜に「ハートのあるゲームを作ろう」と約束したハルは、ドラゴンバンクの大ヒットゲーム『ドラゴン娘』の開発プロデューサーである「世界の堀本」という人物を引き抜くことを約束する。
投資家を集めた新作ゲーム開発説明会に、ハルは極秘ゲストとして「世界の堀本」を登場させる。彼の効果でトリリオンゲーム社は、20億円の資金を調達することに成功した。
しかしハルが用意した「世界の堀本」は真っ赤な偽物で、というより「世界の堀本」という存在もネット上でハルが作った架空の人物であった。

ハルの目的はゲームを作ることではなく、集めた20億でゴッド・プロモーション通称ゴップロという業界最大手の芸能事務所を買収することであった。
最初の投資者でトリリオンゲーム社の最大の理解者である祁答院は、以前ゴップロでマネージャーをしていた。祁答院は自分がかわいがっていたヒムロという若い俳優が起こした交通事故の身代わりとなり、ゴップロから去ったという過去を持っていた。ハルは祁答院と手を組みそのスキャンダルを元にゴップロの2代目社長、神（じん）を脅迫する。
株主総会当日、ハルは会場内を電波ジャックし神のイヤホンのみに話しかけ、ヒムロのスキャンダルを暴露して株式を急落させるという、ハッタリ勝負を挑む。それに敗北した神社長は相談役として一線を退き、祁答院が社長となったことでハルはゴップロの経営権を乗っ取ることに成功する。
そしてトリリオンゲーム社はゴップロのIT分野をまるごと請け負うことで、経済界に大きなインパクトを与えることになった。

一方ガクは、桜やSAKU SAKU LABのメンバーを裏切るようなハルのやり方にやりきれなさを感じていた。そしてガクは本気でゲームを作ることでハルを見返そうと、桜たちと約束する。
自分に出来ることを考えたガクは『ドラゴン娘』の本当の開発者を調べるために、ドラゴンバンクのサーバーをハッキングする。しかしガクは土壇場で情報を盗むことに躊躇してしまった。しかしハッキングを行ったのはガクだということは桐姫にはバレており、ガクは桐姫に強引にデートに連れ出される。観覧車の中で桐姫に問い質されたガクは必死に白を切るが、『ドラゴン娘』の開発者が知りたかったとことを桐姫に話す。桐姫はドラゴンバンクの体面を守るためハッキングされた事を秘密にするかわりに、『ドラゴン娘』の開発者蛇島透（へびじまとおる）の存在をガクに伝える。

早速蛇島の引き抜きにドラゴンバンク本社に向かったガクとリンリンは、蛇島から年収1億8千万円を提示される。そんな額は支払えないと2人は肩を落とすが、突然現れたハルの「まずはアドバイザーから」という交渉により、蛇島はゲーム作りに参加することになる。
ゲームの中身を重視する桜と課金を重視する蛇島は最初は対立する。しかし売れるゲームを作るには両方大事という蛇島の言葉にハートを感じた桜は、蛇島と一緒に『プチプチランド』を完成させる。

一方、ハルと祁答院は芸能界の大手事務所皇興業（すめらぎこうぎょう）とゴップロの間で、タレントのIT展開分野での提携をする。そして『プチプチランド』のCMやプロモーションに多くのタレントを起用させる。『プチプチランド』内にもヒムロを始め多くのタレントがアバターとして登場し、『プチプチランド』のダウンロード数は『ドラゴン娘』を超える大成功を収める。

ドラゴンバンクからの誘い

ソーシャルゲーム『プチプチランド』の成功でトリリオンゲーム社は50億円の売上を上げる。
これまで会社の創立者として無給で働いていたガクを始めゲーム部門の桜、SAKU SAKU LABの面々も年俸3千万となる。
その頃ガクは高校の同窓会に参加する。当時憧れていた桃瀬（ももせ）から迫られるが、持ち前の小心者が顔を出し逃げ出してしまった。

トリリオンゲーム社の業績が順調に伸びていたある日、ハルとガクと祁答院の3人はドラゴンバンク社長である黒龍の自宅に招かれる。桐姫も同席した中で黒龍はトリリオンゲーム社を350億で買収し、ハルと桐姫が結婚することを求める。ハルとガクを自分の力で手に入れたい桐姫は父親のやり方に怒りをあらわにする。桐姫との結婚を受け入れることも、断ることもできない状況でハルは「あ、俺もう結婚してるんすよ！」という大嘘でその場を切り抜けるのだった。
トリリオンゲーム社を売却すれば1人あたり150億円が手に入るという状況だが、ガクは1兆ドルを手にするためのトリリオンゲームをハルと一緒に続けたいと考える。2人の出した結論は黒龍一真の提案を断り、反対にドラゴンバンクを買収することを宣言する。

トリリオンTVの開局

ドラゴンバンクを買収するために必要なのはお金と世論の両方だとハルは言う。いくらお金があってもドラゴンバンクがスポンサーとなっているメディアでネガティブキャンペーンを打たれると負けてしまうのだ。
そこでハルは自分たちのネット配信のTV局であるトリリオンTVを作ろうといい出す。開局記念にハルはゴップロと皇興業のタレントを総動員して、大型バラエティ番組を制作しようとする。しかし番組が放送される直前、ドラゴンバンクがアメリカの大手配信サービスのD-REXジャパンを買収したというニュースが流れた。そしてD-REXジャパンの社長には桐姫が就任し、ハルとガクは桐姫と直接対決することになる。

まず桐姫はドラゴンバンクの潤沢な資金を元に大手地上波TVキー局全てと提携した。地上波のコンテンツを最大限に利用するD-REXジャパンに、トリリオンTVは圧倒的な差をつけられて破産寸前まで追い詰められてしまう。そこで起死回生の一手として在京局最弱ではあるが報道に定評のある東京瓦テレビと手を組んで、トリリオンTVはネット報道という武器を手に入れる。
東京瓦テレビのディレクター功刀（くぬぎ）と看板アナウンサーの白虎あかり（しろとらあかり）の協力を得て、トリリオンTVの報道は知名度を上げていく。
視聴者からの情報で簡易発電機で充電したスマホが爆発したというニュースが入る。爆発したスマホはミスリルフォンというメーカーのもので、販売元のミスリル工業は東京瓦テレビの大口スポンサーであった。
ニュースを流すことを止めようとするミスリル工業と瓦テレビ上層部に、ハルは「隣の部屋で文春が録音している」というハッタリで対抗する。ハッタリ勝負に敗北したミスリル工業側は全ての端末をリコールすることを約束し、結果ユーザーからの支持を集める。
さらに関東を襲った台風により各所で停電が発生する中、発電機で安全に充電できるミスリルフォンとネット報道の中で一番信頼の高いトリリオンTVは、一気に利用者数を伸ばすことになった。

トリリオンTVとD-REXジャパンの争いは更に激しくなっていく。桐姫は潤沢なドラゴンバンクの資金をバックにD-REXジャパンを1年間完全無料キャンペーンを打ち出す。D-REXジャパンは無料期間の間に皇興業やゴップロのタレントをキャスティングした、大型連続ドラマを制作しようとする。
ハルはそれに対抗し、都内にある撮影スタジオを全て抑えてしまう。ハルの予想外の奇手に桐姫は目を輝かせるのだった。
撮影スタジオがないのなら大型の物流倉庫を使おうとした桐姫たちをもタッチの差でハルは抑えてしまう。

そしてハルは桐姫と手を組もうと提案し、プロポーズを申し込む。しかしビジネスのことを一番に考える2人は結婚話は保留とし、ビジネスで手を組むことを約束するのだった。
トリリオンTVとD-REXの共同出資でT-REX連合というチャンネルが設立された。桐姫を手元に置きつつトリリオンゲーム社を潰したい黒龍社長と、自由のままに1兆円を稼ぎたいハルとガク、そして父親の言いなりにはならずにハルとガクを手に入れたい桐姫の三つ巴の戦いが新たに始まるのであった。

さらに資産を増やそうとするハルは次の一手として、トリリオンゲーム社をIPO（新規上場株式）させるべく動き始める。

『トリリオンゲーム』の登場人物・キャラクター

主人公

天王寺陽（てんのうじはる／演：目黒蓮）

本作の主人公で株式会社トリリオンゲーム社の営業担当。通称ハル。
息を吐くように嘘をつき、悪いことにもブレーキが効かないワガママ男。口癖は「俺たちのワガママは世界一だ！！！」。一見すると優男だが体は鍛えられており、100㎏のバーベルを上げたり、ケンカは非常に強い。長い髪をポニーテールにしている。
中学時代に防犯カメラのシステムをハッキングして画像を消去したガクのパソコンの腕を高く評価している。大学も一緒で就職活動連敗中のガクと一緒に株式会社トリリオンゲーム社を設立する。
会社設立後は営業や交渉事を一手に引き受け、嘘とハッタリと悪知恵を駆使して次々と大金を稼いでいく。

平学（たいらまなぶ／演：佐野勇斗）

本作のもう一人の主人公。株式会社トリリオンゲーム社の技術部門担当。通称はガク。
不良たちにカツアゲされそうになっていたところを助けてくれたハルを救ったことから、ハルと仲良くなる。学生時代ドラゴンバンクの最終面接で緊張のあまり何も喋ることができず不採用になってしまった。自分が不採用になったことで内定を辞退したハルに誘われトリリオンゲーム社を設立する。
資金集めのために出場したハッカーの大会「セキュリティチャンピオンシップ」ではハルの手助けもあったが、世界中から集まったプロ集団を相手に見事優勝するほどの腕を持っている。
トリリオンゲーム社内では主に制作を担当しており、ネットショップ「ヨリヌキ」やソーシャルゲーム『プチプチランド』などの制作に携わっている。
普段は気が小さくハルの言動に振り回されているが、ハルからは絶大な信頼を寄せられている。ハルの「お前なら勝つだろ」という言葉にスイッチが入る。

トリリオンゲーム社の関係者

高橋凜々（たかはしりんりん／演：福本莉子）