クレイマー、クレイマー(Kramer vs. Kramer)のネタバレ解説・考察まとめ
『クレイマー、クレイマー』とは、1979年に公開されたアメリカ映画。突然訪れた離婚をきっかけに、父親が息子との関係を見直すヒューマンドラマ。ホームドラマの名作とも言われており、その中でも父と子に焦点を当て、幼い子供を一人で育てる事や仕事の両立がいかに難しいかも表現され、現代に通じる内容になっている。また、当時アメリカで問題視されていた離婚や養育権の社会問題を描いた事で高く評価された。
内容だけではなく子役を含むキャスト全員の演技が高い評価を受けた作品でもある。
法廷侮辱罪とは裁判所の命令や措置に違反し、暴言・暴行を行ったりして、裁判所の権威を傷つける罪の事である。今作の中でジョアンナの弁護士がテッドにきつく問い詰めた事でテッドがムキになり声を荒げてしまい裁判官から「大声を出すと法廷侮辱罪で拘留しますよ」と注意を受けてしまう。
『クレイマー、クレイマー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
テッドの初めての手料理
ジョアンナが家から出て行ってしまい、ビリーと2人きりになったテッドがビリーを心配させまいと、ビリーに食べたいものを聞きフレンチトーストを作る。家事をジョアンナに任せきりだったテッドは料理に慣れておらず、卵の割り方も雑でマグカップに割り殻が入った状態でビリーに混ぜさせる。ミルクを入れるのを忘れている事をビリーに注意され、テッドは後から入れる方が美味しいと言い訳をする。フレンチトーストを焼いている間コーヒーの準備をするが、見ていない間に焦げてしまい、初めてのフレンチトーストは失敗に終わる。テッドは今度は上手く作れるとビリーに約束する。
仲が深まっていったテッドとビリーはラストに父と息子2人で仲良く協力しながらフレンチトーストを作り上げる。
ムキになってアイスクリームを頬張るビリー
夕食中、ビリーがご飯を食べたくないと駄々をこね、おもちゃで遊びだす。そんなビリーを見たテッドは、仕事での苛立ちからビリーに早く食べるよう強く言う。しかし、ビリーは聞く耳を持たず、アイスクリームを食べ出そうとする。
母親が居なくなった不安と、父親にかまってもらえない寂しさから起こした反抗的な行動だった。
離婚は自分のせいだと思うビリー
ビリーが初めて、離婚の原因は自分にあるのではないかと泣きながらテッドに思っていた事をぶつけるシーン。
自分が悪い子だから母親が居なくなってしまったのだと自分を責めていたビリーの気持ちを初めてテッドが知ったシーンでもある。それを機にテッドは心を入れ替えて仕事中心の生活からビリー中心の生活に変えていく。
ジャングルジムでの怪我
友人であるマーガレットとテッドは公園に行き、ジャングルジムでビリーを遊ばせる。マーガレットとテッドがベンチで話し込んでいるうちに、ビリーがジャングルジムから落ちてしまう。頭から落ちたビリーは血を流して泣き叫ぶ。テッドはビリーを抱えて急いで病院に連れていく。治療中、テッドはビリーの側にずっと付いて安心させてあげる。この事件が裁判でジョアンナにとって有利となったが、テッドにとっては父親としての自覚が芽生えた出来事でもあった。
ラストのジョアンナの決断
離婚をきっかけにテッドは自分や子供と向き合い、より良い関係を築こうと努力してきた。そんなテッドのことを裁判を通して見てきたジョアンナはビリーとテッドの関係性を壊す事ができないと感じ、親権をテッドに譲る決断をした。ジョアンナもビリーを愛していたからこそ、自分の気持ちよりもビリーの生活を考えての苦渋の決断をしたのだ。
マーガレットの物語
テッドとジョアンナの友人であるマーガレット。マーガレットにも離婚歴があり、1人で家事と育児をこなしていたジョアンナに同情していた。家を離れて自立するべきだとジョアンナに勧めた張本人でもあった。
ジョアンナが家を出ていき、テッドが家事と育児をするようになってからは立場が似てきたので、テッドに対して一種の友情を感じていた。
ある休日、テッドはビリーを連れて近くの公園に出かけ、遊具でビリーを遊ばせているときにマーガレットと語り合った。それは、今でも元旦那の事を愛しているかどうかという事だった。浮気をされたマーガレットだが、彼を嫌いになったわけではなく裏切った彼を許せなかったのだと告白する。初めて、まだ元旦那を愛している事に気付き泣き出してしまうマーガレットだった。
その後、自分の気持ちと向き合い、元旦那とよりを戻すことに決めたのだ。
『クレイマー、クレイマー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
挿入歌と親子の関係性
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目次 - Contents
- 『クレイマー、クレイマー』の概要
- 『クレイマー、クレイマー』のあらすじ・ストーリー
- 妻の家出
- 父と息子の2人っきりの生活
- ジョアンナが家を出てから1年半
- 仕事と家事・育児の両立の厳しさ
- 親権裁判のスタート
- 息子の幸せ
- 『クレイマー、クレイマー』の登場人物・キャラクター
- テッド・クレイマー(演:ダスティン・ホフマン / 日本語吹替:東地宏樹)
- ジョアンナ・クレイマー(演:メリル・ストリープ / 日本語吹替:田中敦子)
- ビリー・クレイマー(演:ジャスティン・ヘンリー / 日本語吹替:矢島晶子)
- マーガレット・フェルプス(演:ジェーン・アレクサンダー / 日本語吹替:日野由利加)
- ジョン・ショーネシー(演:ハワード・ダフ / 日本語吹替:宝亀克寿)
- ジム・オコナー(演:ジョージ・コー / 日本語吹替:小島敏彦)
- フィリス・バーナード(演:ジョベス・ウィリアムズ / 日本語吹替:加藤優子)
- グレッソン(演:ビル・ムーア / 日本語吹替:仲村秀生)
- スペンサー(演:ジャック・ラメージ / 日本語吹替:楠見尚己)
- 『クレイマー、クレイマー』の用語
- 原告Mrs.Kramer(妻)VS被告Mr.Kramer(夫)
- 法廷侮辱罪
- 『クレイマー、クレイマー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- テッドの初めての手料理
- ムキになってアイスクリームを頬張るビリー
- 離婚は自分のせいだと思うビリー
- ジャングルジムでの怪我
- ラストのジョアンナの決断
- マーガレットの物語
- 『クレイマー、クレイマー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 挿入歌と親子の関係性
- ダスティン・ホフマンも実際に離婚調停中
- 原作とのいくつかの相違点
- 『クレイマー、クレイマー』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:Antonio Vivaldi『マンドリン協奏曲 ハ長調 RV425 第1楽章アレグロ』
- 『クレイマー、クレイマー』の劇場予告動画