アリス・ギア・アイギス(アリスギア)のネタバレ解説・考察まとめ

『アリス・ギア・アイギス』とは、コロプラより配信されているスマートフォン用ゲームアプリである。機械生命体ヴァイスの襲撃により地球を捨て宇宙船団による航海を続ける人類は、ヴァイスに対抗し得る高次元兵装「アリスギア」を開発。それから3世紀、若い女性だけが操作できるアリスギアによって宇宙船団の平和は守られてきた。その船団の一つ「東京シャード」のヴァイス対策企業「成子坂製作所」に新たな隊長が赴任したことで物語が始まる。

淵源からの呼び声

ノーブルヒルズとの長い係争が終わり世間からの疑念も晴れた成子坂製作所は、通常業務としてバンシー宙域の調査任務を請け負っていた。しかし、夜露は初めての宙域なのに懐かしさを感じると言い出す。何者かの呼び声に惹かれる夜露は、幼い日の思い出を呼び起こす。それは、死に瀕した事故の記憶でもあった。バンシー宙域の調査を続ける成子坂のチームは、あまりに多いヴァイスとの遭遇に疑念を抱く。しかし、夜露はその深部に必ず何かがあると力説する。宙域最深部に到達した夜露は、何かに導かれるように夢うつつの状態で指示を無視した方向へと進んでいく。コースを逸れた夜露を慌てて呼び止める楓。しかし、そこで2人が見たものは巨大なヴァイスコロニーだった。あまりにも大量のヴァイスを前に撤退する成子坂の調査チームは、その事実をAEGiSに報告し判断を仰ぐのだった。

アライアンス結成

成子坂製作所の調査チームが発見したヴァイスコロニーは、観測史上5番目の規模となる巨大さであった。数万にも及ぶヴァイス群を擁するコロニーへの対策を立案するため、AEGiS東京は急遽防衛審議会を開催する。この規模のコロニーの存在が東京シャードの絶対防衛圏内にあって見過ごされていたのは、AEGiS内部に送り込まれていたヴァイス信奉者集団「SIN」の工作員による隠蔽であった。AEGiSのみならずノーブルヒルズも叢雲工業も「SIN」の工作員に汚染され東京シャードへの大型ヴァイス侵入を誘引していたのだ。AEGiS情報本部により「SIN」の工作員が排除されたことでやっと正常化に至った今、これからの対策を協議することになる。事なかれ主義で専守防衛を唱えるトラベルオーダー東京の政務官である木曽徹は7年前の事故を引き合いに成子坂への不信を露わにする。しかし、AEGiS防衛政策局次長である霧島良馬は「この数を相手に籠城戦は不利である」とヴァイスコロニーへの速やかな強襲作戦を進言。コロニー発見者である成子坂の隊長からの証言もあり、北条グループ代表の北条大洋やヤシマ重工会長の屋島富岳といった防衛審議会メンバーもヴァイスコロニー強襲作戦を支持するのだった。
この決定を受けたAEGiSの鳳加純は、成子坂の隊長に東京シャード管内のアクトレス事業者連合、通称「アライアンス」の結成を指示する。これからのヴァイスコロニー強襲作戦でAEGiSと成子坂の主戦力が徴集され東京シャードの防衛網が手薄になることを懸念してのことであった。
当初は成子坂の傘下につくことを良しとしなかったエンパイア中野の面々だったが、出撃数と収入の増加が見込まれるとなると態度をコロッと変えてアライアンスへの参加を表明。同業他社も多くがアライアンス参加が利益になるとして賛同する中、社のトップが防衛審議会メンバーである北条グルーブに属する聖アマルテア女学院が何故かアライアンスへの参加を拒否していた。
そんな中でアマルテア生徒会の会長である紺堂地衛理と会談を持った成子坂の隊長は、彼女から北条グループへの叛意を打ち明けられる。「(アマルテアが北条グループと決別する)その時」の支援を約束することで隊長は地衛理の協力を取り付け聖アマルテア女学院をアライアンスに引き入れることに成功。これにより全体の流れがアライアンス参加へと傾き、東京シャード管内アクトレス企業の全社による協力体制が完成するのだった。
ヴァイスコロニー強襲作戦の指揮官として抜擢された成子坂の隊長。しかし、存続を危ぶまれた零細企業をあっという間に立て直し二度も東京シャードへの大型ヴァイス群襲撃を阻止した彼の存在はAEGiSにとっても叛逆の火種になりかねない不安材料だった。AEGiSの霧島局次長は、成子坂の隊長が自分達のコントロール下で動くようお目付け役としてAEGiS教練科に所属するアクトレスである山野薫子を成子坂に派遣することを決定した。

ヴァイスコロニー強襲

ヴァイスコロニーの撃破を目的とした「アキ作戦」が遂に開始された。その目的は「東京シャード攻撃用の大型ヴァイス群を撃破」「拠点防衛用の大型ヴァイス群の撃破」「ヴァイス増殖培地であるヴァイスミディアムの殲滅」である。そのために選抜された3部隊はそれぞれ成子坂チーム、旧叢雲チーム、アマルテア生徒会チームになるはずであった。しかし北条グループとヤシマ重工は防衛審議会内での発言力を巡って争っており、その妥協の結果として各チームに一人ずつ北条傘下のアマルテアと元ヤシマ傘下の旧叢雲メンバーを入れることで功績と責任のバランスを調整することとなった。こうした政治的理由からの急造混成チームに不満を漏らすアクトレスたちだが、それでも任務を遂行しなければならなかった。
椎奈は心配性の文嘉を支援に回しつつ天然のリンをうまくコントロールし、怜は大雑把に暴れる奏と思いつきで動くシタラに振り回されながらも臨機応変にヴァイス群を撃破していく。地衛理はチームリーダーを楓に委ね、自分がサポートに回って夜露の突破力を活かす作戦でヴァイスミディアム攻撃ルートの確保に成功。その手慣れた戦闘指揮を見た楓は、地衛理の戦歴がアマルテア生徒会での対ヴァイス戦闘だけでなくもっと前からのものであることを見抜くのだった。
そんな中、地衛理は政治的理由で大事な作戦に不安要素を持ち込む防衛審議会への怒りから殺意すら滲ませる楓の姿に北条グループを強く憎む自分と同じ獣性を見る。一方で、防衛審議会メンバーとの直談判で彼らとわかり合おうと主張する夜露には計り知れない器の大きさを感じていた。

その頃、ヴァイスコロニー強襲作戦に主力を取られた成子坂製作所ではコロニーから目を逸らすために東京シャードへの襲来数が増えたヴァイス対策に苦慮していた。本業である会社経営で忙しい盟華に加えて成子坂の裏方である芹菜や小結といった普段出撃しない面々まで総動員となり、メンバーは疲弊しきっていた。

新隊長着任

ヴァイスコロニー強襲作戦指揮のため隊長が不在の成子坂製作所では、「AEGiSから新しい隊長が送り込まれる」という噂に浮足立っていた。綾香、ゆみを筆頭に人事権に介入するAEGiSの横暴を撤回させようと息巻くアクトレスたち。そこに現れたのは隊長代理を務めることになったAEGiS教練科教官の山野薫子だった。その姿を見て驚くゆみ。薫子はゆみがアクトレス免許を取得した時の教官だったのだ。薫子もまたアクトレスを諦めたはずのゆみが成子坂で活躍していたことに驚き、そして喜んでいた。すっかり同窓会ムードの二人を面白く思わない綾香だったが、薫子はそんな彼女に指揮を執るのはこれまで通り隊長であり、自分は隊長がやっていた雑務を引き受けるだけだと説明。隊長解任が勘違いと判明した成子坂のアクトレスたちは安心するのだった。
その頃、安全保障会議では米英仏独の各シャード代表が東京シャード防衛審議会の面々に各国からのアクトレス増援を申し出ていた。団結や協力を口にする彼らの真の目的はヴァイスコロニー撃破後に得られるヴァイス資源であることは明白であった。遂に言葉を飾ることをやめて直接的に恫喝してくる各国代表。シャード間の距離や準備期間の話を持ち出して何とか断ろうとする防衛審議会の面々だったが、各国代表は東京シャード在住の自国籍アクトレスを送り込むと宣言した。
一方、ヴァイスコロニー強襲作戦は新たな局面を迎えていた。鳳加純率いるAEGiSの精鋭部隊が遂にヴァイスコロニー中枢へ突入する準備に入ったのだ。

増強される戦力

ノーブルヒルズとの契約解除後はAEGiSに籍を置いていたグルカ傭兵のサンティ・ラナが成子坂製作所へ長期出向でやってくることになった。それと時を同じくして、上海シャードからやってきた有名な美少女料理人の王紅花も成子坂製作所とアクトレス契約することになったという。これは、ネパールシャードに強い影響力を持つイングランドシャードや大企業である華鈴武装技術に要請された上海シャードがヴァイスコロニー利権にありつくためアライアンスにアクトレスを送り込むという政治的な策謀だった。ヴァイス信奉者集団「SIN」の摘発に追われていたAEGiS東京は、こうした列強国による介入という新たな問題に頭を悩ませる。AEGiS情報本部の愛宕右京は、部下の籠目深沙希に成子坂製作所の動向を監視するよう命じた。しかし、当の成子坂では人手不足で疲弊していた中で頼りになる新戦力が加入したことを喜んでいたのだった。

グレート・ゲーム

成子坂製作所に新たにモスクワシャードからの増援としてニーナ・カリーニナが加入することになった。一気に国際色豊かになった成子坂製作所だが、ジニーはこの状況を列強国による東京シャードへの介入と見てかまをかけるべくわざと不穏な言葉を使って煽る。しかしサンティは「私たちの敵はヴァイス」とその挑発には乗らず、裏の事情を聞かされていない紅花とニーナには意味が通じなかった。その背後に突如現れた籠目深沙希。彼女もAEGiSからの増援だという。歴戦の猛者である自分とサンティにも気配を悟らせなかった深沙希の正体を不審に思うジニー。深沙希は成子坂の現状を監視するため、あえて内部に入ることを選んだのだ。
アクトレス部門が増員を喜ぶ一方で、成子坂の整備部門は遂に限界を迎えていた。メンバーフル稼働に加えて提携先のエンパイア中野やアライアンス他社のギアまで整備せねばならず、更に増援で外国籍アクトレスが増加。単に数が多いだけならまだしもギアの製造メーカーもバラバラで各個人の好むチューンもまちまちとあってAEGiSの整備部門より過酷な状態であった。部下の消耗を見かねた磐田は、かつて繋がりのあったベルクラント社から紹介された腕利きの整備技術者であるリタ・ヘンシェルを増員として迎え入れた。
その頃、予想よりも早くモスクワシャードが動いたことにAEGiS情報本部の愛宕右京は頭を抱えていた。右京の見立てではニーナは科学アカデミーによる非合法な非人道的実験の被験体だという。列強国が平気でアウトランドの法を破ることを苦々しく思う右京。一方、ペンタゴンシャードの工作員であるジニーの動向に関しては、背後にある全米連合政府に対して東京シャードが強く出られないため当分は様子見となった。しかし、ジニーの目的とされる「アリス」に関しては右京はその存在をおとぎ話と否定する。もし本当に東京シャードがアリスを秘匿していたら東京シャードごと滅ぼされても文句が言えないほどのアウトランドへの背信だからだ。300年前に月面自治政府の施設ごとヴァイスの大攻勢で失われたはずの全能人工知能アリス。この喪失によるアウトランドの損失は計り知れないという。
AEGiS情報本部がマークしていた琴村姉妹は、職も住居もないネットカフェ難民として転々としていることが判明した。彼女たちが金銭に困って「SIN」の工作員と接触した際、最悪の場合は工作員も姉妹も殺処分するよう右京は深沙希に命じる。アクトレスが「SIN」のテロリストとなってはならないからだ。
その琴村姉妹は、逃亡生活を続けながらも未だに成子坂への憎悪を忘れない姉の朱音と自分達は「SIN」に騙されていたのではないかと疑う妹の天音で意見が対立していた。同じ孤児院で姉妹のように暮らし、引退後は共に暮らすはずだった凪が自分達を置いて他シャードへ移住するはずがないと信じる朱音は凪を自分達から奪った成子坂への復讐心に今も囚われ続けていた。

決戦! ヴァイスコロニー

鳳加純たちの部隊が出撃したことでアキ作戦は遂に最終局面に突入した。東京シャードを狙う大型ヴァイス部隊の阻止、ヴァイスコロニー防衛部隊の撃破、ヴァイス増殖培地であるヴァイスミディアムの破壊へそれぞれ進行する成子坂・アマルテアの合同部隊3チームと、作戦意図を察知して引き返してきた敵部隊を阻止する加純率いるAEGiS特殊部隊。合計4チームの最終決戦が始まろうとしていた。

〈安全保障戦略会議〉
AEGiS本部の安全保障戦略会議では、最終局面を迎えたアキ作戦を評議員たちが注視していた。AEGiSが後退した敵主力を阻止するため投入したという戦略予備部隊の存在に疑義の眼差しを向ける各国シャードの代表者たち。そのような戦力の存在は公表されていなかったからだ。各国代表は東京シャードによるヴァイスコロニー占有を疑っているのだ。AEGiS東京の霧島局次長は、まだ作戦も終了していないのに戦後処理の利権配分のことしか口にしない各国代表に内心呆れ返っていた。

〈東京シャード攻撃用大型ヴァイス群撃破チーム〉
大型ヴァイスとの連戦という通常ならあり得ない戦況に武道家として心を躍らせる椎奈。強敵との戦いを楽しむリンも戦いを回転寿司に喩えてわくわくを隠せない。戦いを楽しむ二人の緊張感のなさを不安視する文嘉だったが、椎奈とリンはここまで来たら悩んでもしょうがないと言う。それを受けた文嘉も覚悟を決めて苛烈な連戦に挑むのだった。
敵戦力の半分を撃破した椎奈たち。あれだけの数の大型ヴァイスとの戦闘は普通なら絶望的な局面だとぼやく文嘉だが、リンにとって絶望とは空腹のことでしかなかった。そんなリンを見て自分の悩みが馬鹿らしくなった文嘉は、作戦が終わったら食事に行こうと誘う。リンは豚骨ラーメン、文嘉は醤油ラーメン、椎奈はみそラーメン。一緒にラーメンを食べるという約束を生還の誓いとして、三人は残敵の撃破に臨む。そして、目標の大型ヴァイス全戦力を撃破した椎奈たち。これで東京シャードを狙う敵部隊は壊滅し、安心感で脱力する文嘉。目的を果たした椎奈は、奏と地衛理の作戦成功を祈るのだった。

〈AEGiS東京情報本部〉
アキ作戦に呼応して「SIN」が同時多発テロを開始することは情報本部の想定内であった。複数グループを事前に摘発することには成功したものの、送電システムや交通網を狙ったテロは完全に防止することはできなかった。AEGiSの通信・管制システムも被害を受けている。しかし被害は想定の範囲で収まっていた。これもAEGiS内部の「SIN」工作員を一掃できていたからだ。
成子坂製作所の大躍進、これは全てAEGiS情報本部による工作だった。AEGiSと蜜月関係であった叢雲工業に入り込み、そこからAEGiS上層部を汚染していた「SIN」の工作員を摘発するために叢雲工業を不正企業として清算、後釜として成子坂を成長させる。そして、焦った「SIN」の工作員はノーブルヒルズを使って成子坂潰しを仕掛けてきたことで逆に自滅に至ったという筋書きである。
しかし、AEGiSの誤算は成子坂の隊長の存在であった。発展途上シャードの出身で戸籍がなく、以降の経歴も紛争地帯などの記録が残らない地域を転々としており、深沙希の調査ですらその正体がわからない謎の人物。いかに有能であろうと、そんな人物が現在ヴァイスコロニ―殲滅作戦の指揮を執っているのだ。その滑稽な事態に、情報本部の愛宕右京は乾いた笑いを洩らすしかなかった。しかし、深沙希は成子坂の隊長の人柄を、そして共に戦うアクトレスたちを信じていた。

〈拠点防衛用大型ヴァイス群攻撃チーム〉
ヴァイスミディアム攻撃部隊へ向かう敵戦力が少しでも少なくなるよう進撃していく奏たち。しかし、奏は「地衛理は逆境になるほど燃えるタイプ」だと言う。意外な言葉に驚く怜とシタラ。あのクールな地衛理にそんな面があるとは知らなかったのだ。それでも、少しでも作戦失敗の可能性を減らすために拠点防衛部隊を撃破することを誓う奏に同意する怜たち。
遂に目標地点の敵戦力を壊滅させた奏たちだったが、後方の観測班から新たな敵の防衛拠点を発見したとの報告を受ける。追加ミッションにげんなりするシタラだが怜は楓のために、と更なる闘志を燃やす。奏もまた地衛理の負担を減らすため新たな戦いに臨むのだった。
そして新たな防衛拠点は奏たちによって破壊された。あとはヴァイスミディアムの破壊だけである。地衛理の判断力を信じる奏、楓がいるなら無理はさせないと信じる怜。あれだけの連戦をこなしておいて全力で宙域を離脱する奏のタフさに呆れるシタラであった。

〈AEGiS特別高等部特殊部隊〉
加純たちの部隊は、陽動に気付いて後退した敵主力の阻止を目的として出撃した。しかし、その真の目的は別にあった。生命維持システムを消耗させてまで極大火力を追求した特殊ギアを装備しているのはそのためである。(註:このルートでは全戦闘が特別編成となり使用キャラが加純・京・アンジーで固定される。また、彼女たちの情報は見ることができない)
加純たちの真の作戦目的は作戦案には未記載、霧島局次長だけが了承している機密事項だった。それは、ヴァイスコロニーの動力源である重力子縮退炉を破壊、ヴァイスコロニーそのものをマイクロブラックホールに沈めることである。コロニーそのものが無くなれば資源を巡る暗闘に意味はなくなり、戦後処理の利権問題も吹っ飛ぶからだ。
ヴァイスコロニー中枢とその制御装置であった大型ヴァイスを破壊した加純たち。加純はただちにアクトレス全部隊の撤退を命じるが、軌道を変更した敵主力の残存部隊はヴァイスミディアムを攻撃中の夜露たちを目標に定めていた。縮退炉よりミディアムの防衛を優先する敵の想定外の行動に驚く加純は、夜露たちへ緊急退避命令を伝えるようオペレーターに命じたのだった。

〈ヴァイスミディアム攻撃チーム〉
ヴァイスの培養拠点であるヴァイスミディアム攻撃へ向かう夜露たちだったが、夜露はヴァイスが生物なら意思疎通と相互理解ができるのではと言う。想定外の発言に興味を持つ地衛理に対し、ヴァイスは悪であり討つべきものと主張する楓。夜露も今すぐヴァイスとの意思疎通ができるとは思っていないようで、東京シャード防衛のためにヴァイスミディアム撃破の意志を再確認するのだった。
他のチームの連携状況について不安視する夜露だったが、楓は怜とシタラはきっと大丈夫だと信じていた。地衛理も奏の思慮と優しさならうまくやれると言う。そして、文嘉やリン、椎奈のチームもうまくやれるはずだと。
そして、遂に視界に入ったヴァイスミディアム。それは不定形の銀色の塊だった。機械生命体を生み出す海である液状の金属塊。それを生命を弄ぶ邪悪なものと断ずる楓と地衛理。しかし、夜露はヴァイスミディアムに目を輝かせ、「とても美しい」と言うのだった。そして、ヴァイスミディアムに近付くほどに夜露の頬は紅潮し、活力が湧き上がっていた。
ヴァイスミディアムから発生する防衛機構は、歴戦の戦士である地衛理や一流の武術家である楓でさえ傷つけることはできない。しかし、夜露の攻撃だけはそれを破壊することができた(註:ゲーム中でのこのミッションは特別編成であり、夜露だけが特定の敵にダメージを与えることができる)。そして、全ての防衛機構を破壊されたヴァイスミディアムは汚染による自壊を起こし消滅していった。その戦いぶりを達人の演武のようだと讃える楓。しかし、地衛理は夜露の戦いに恐怖を覚えていた。死の具現、どの戦場でも見たことのない異能のアクトレスだと。
追撃してきた敵主力残存部隊も加純たち特別部隊の援護を待たずに一蹴した夜露たち。楓は夜露がこの戦いで成長したと単純に喜んでいたが、地衛理は夜露の異常な能力に高レベル大型ヴァイス以上の恐怖を覚えると同時に、かつてない強い興味を持つのだった。
そして、加純の部隊にいたあの謎のアクトレスから呼びかけられた楓は、やはり彼女が行方不明の姉である京だと確信した。幼少期の心の傷から取り乱して姉を追おうとする楓を止める地衛理。夜露は、その楓の姉・京が幼い自分を助けてくれた人物だということを思い出した。しかし、その夜露の瞳はヴァイスを思わせる赤い輝きを放っていたのだ。

バンシー宙域の大型ヴァイスコロニーはマイクロブラックホールと化して消滅、多数の損耗を出しながらアキ作戦は勝利をもって終結した。その消滅に呼応するかのように空を眺める少女、村尾未羅。彼女の瞳もまた、夜露と同じ赤い輝きを帯びていた。

覚醒編

7年前のアリスギア暴走事故の真相が次第に明らかになっていく

それから

アキ作戦によってバンシー宙域のヴァイスコロニーが撃破されてから数日後、夜露たちは久しぶりに成子坂製作所に出社した。しかし、そこで彼女らを出迎えたのはサンティ、紅花、ニーナだった。夜露たちが出撃している間に成子坂には多くの外国籍アクトレスが加入していたのだ。事情がわからず驚いている夜露たちだが、紅花たちはお構いなしに夜露たちを称賛する。アキ作戦の状況は前日に報道が解禁され、夜露たちのヴァイスコロニーでの活躍は多くの人々の知るところとなっていた。自分たちが知らないうちに東京シャードを救った英雄として扱われることに戸惑う夜露たち。そんな中、ニーナは科学アカデミーで強化改造された自分たちと同じような能力の気配を夜露から感じ取っていた。しかし、それをモスクワシャードの上層部に報告するのは止めて自分の心の内に留めておくのだった。
紅花が録画していたアキ作戦のニュース特番を見て、必要以上に英雄として報道されていることに困惑する夜露だったが、そんな中で加純たちAEGiS特殊部隊の姿が全く報道されないことに違和感を抱く。それに対して文嘉は、防衛機密として報道されなかったのだろうと言う。一方のシタラは憧れの杏奈に手放しで称賛されたことにただひたすら感涙するだけであった。
また、アキ作戦で留守にしている間に綾香たちチーム・バーベナが東京シャードのランキング首位にきていたのも夜露たちにとっては驚きであった。アキ作戦で夜露や楓、地衛理といったトップアクトレスが不在の間に奮闘したことで実績と知名度を上げていたのだ。また、人数不足のエンパイア中野も新メンバーを加えて成績上位に食い込んでいた。
大きく変わった状況を未だ呑み込みきれない夜露たちの前に、慰労会の説明のため現れたゆみだったが、いつもの理不尽やわがままがすっかり影を潜めて常識人になっていることに驚くあまり別人かと疑う文嘉とシタラ。夜露たちが不在の間に着任したかつての指導教官である山野薫子の影響であった。一方、隊長に面会した薫子は、アキ作戦終了後もアライアンスの維持や外国籍アクトレスの処遇など多数の問題が成子坂に山積していることを告げ、今後もAEGiSによる支援を継続していく旨を伝える。
久々に成子坂の整備室を訪れた隊長は、磐田からリタ・ヘンシェルを紹介される。アキ作戦に伴う人手不足を補う増員整備士としてベルクラント社から派遣されたリタはアクトレス免許を所持しており、ベルクラント社でもギアのテスト要員を務めた実力者であった。磐田はアクトレスとしてのリタの運用を隊長に委ねると、アキ作戦から戻ってきた面々のギアを徹底整備する体制に入るのだった。
アキ作戦が終わってもアライアンスが継続されることが決まったため、各提携先を視察しなければならない隊長は、手始めに身近な提携先であるエンパイア中野を訪ねる。しかし、そこでエンパイア中野の新人アクトレスで中野の保安官を自称するシャーリー・オークレイから過重労働についての詰問を受ける。出撃回数が飛躍的に増大したやよいや桃歌の愚痴を真に受けて、「アライアンスの隊長はエンパイア中野にブラック労働を強いている」と勘違いしたのだ。実際のところはアライアンス加入で収入が激増したエンパイア中野は綺麗な新事務所まで手に入れたため、救いの神である隊長を吊し上げようとするシャーリーに驚いたやよいと桃歌は慌てて割って入る。二人から、隊長は自分たちのボスのボスであると説明を受けてようやく状況を理解したシャーリーは隊長に謝る。そこにひょっこり現れたのがエンパイア中野の社長・室江央典だった。お調子者の室江は「金額は安くていいからうちのアクトレスを使って」と積極的に隊長への売り込みを開始。桃歌たちはせっかく実績を積み人気が上がった自分らを雑に安売りしようとする室江に呆れて制止にかかるのだった。
アライアンスの視察として聖アマルテア女学院を訪ねた隊長。椎奈は作戦中の約束通りチームの祝勝会として、文嘉やリンとラーメンを食べに行ったことを奏に自慢していた。奏も祝勝会を開くつもりだったが、シタラは溜まっていたゲームのプレイに忙しく、怜は祖母と二人暮らしのため人付き合いに時間が割けないということでお流れになったのだという。そして地衛理は、隊長との密談のために椎奈と奏に席を外してもらう。
地衛理からの報告、それは聖アマルテア女学院によるアクトレス事業への本格参入だった。これまでは養成校として他社やAEGiSに人材を送り出す側だったアマルテアは、自校生徒にアクトレス免許を積極的に取得させ学園をアクトレス企業化するつもりであった。更にアクトレス免許の年齢下限引き下げを防衛審議会に申請、初等部からアクトレス育成を始めるつもりなのだという。その目的は自社アクトレスを大幅増員して成子坂からアライアンスの主導権を奪取することにあった。しかし、隊長は北条グループのこうした野心は想定済みであった。北条グループ内にあって北条家打倒を目指す地衛理にとって、そんな隊長は心強い同盟者として映るのだった。
最後に、地衛理は夜露と楓の動向を尋ねる。しかし隊長にはうまくはぐらかされてしまった。地衛理は、ヴァイスミディアム戦で見せた夜露の異常性が今後の成子坂にとってどのように働くのかを怖れていたのだ。

時間は少し遡る。
AEGiS東京の安全保障戦略会議では、アキ作戦終了についての会合が開かれていた。これまで成子坂製作所に不信感を抱いていたトラベルオーダー東京の木曽徹は、掌を返して成子坂を称賛し隊長に名誉都民の称号授与を検討し始める。アクトレスの顕彰も必要だとするヤシマ重工の屋島富岳に対し、所属団体への顕彰で充分だとする北条グループの北条大洋。既に作戦後の功績を奪い合う暗闘が始まっていた。しかし、米英独仏の代表者たちは計画書に記載されていない作戦でヴァイスコロニーそのものをマイクロブラックホールに沈めたことに対してAEGiS東京の霧島局次長を叱責する。兵器産業の代表者でもある彼らは、豊富なヴァイス資源を葬り去った霧島の行動を容認することができなかったのだ。霧島もまた鹵獲利権目的で多くのヴァイスコロニーを放置しアクトレスに負担を強いる各国代表のやり方を良く思っていなかった。成子坂の追い落としを図る北条は、各国代表に加担し作戦指揮官であった隊長の責任問題に話をすり替えて解任に持ち込もうとする。しかし、霧島は既にアキ作戦の報道管制を解除していた。東京シャードのみならず各国シャードで英雄として報道された成子坂の隊長を解任することはもはや世論が許さないのだ。完全にしてやられた各国代表と北条は解任要請を撤回せざるを得なかった。
しかし各国代表もこのまま引き下がるわけにはいかなかった。ヴァイスの特性として大規模攻撃を受けると大規模な反撃を行う習性があるという。彼らはその際に、自分たちのメンツを傷つけた東京シャードを矢面に立たせるつもりであった。
その頃、ネットカフェ難民として逃亡を続けていた琴村姉妹は遂に所持金が尽きて路頭に迷っていた。二人が凪と暮らしていた修道院のシスターも彼女たちに関わったことでAEGiSに逮捕され、本当に行き場を失い途方に暮れる二人の前に現れたのは真理だった。真理が凪を見殺しにしたと信じる朱音は敵意を露わにするが、琴村姉妹こそが凪への手掛かりだと思う真理は二人をAEGiSから匿うことを提案する。お互いを信用できなくとも目的が同じなら手を組めるはず、という真理の言葉に納得した朱音は真理の提案に乗ることを決断。真理の用意した隠れ家で暮らすことにしたのだった。

過ぎ去った時を求めて

成子坂製作所の事務所では、「事務所内に子供の幽霊が出る」という噂で持ちきりだった。幽霊を目撃したと言い張る愛花と、お化けが怖いということを知られたくないあまりにそれを否定する綾香。睦海は、自分だけでなく整備部の面々や事務員の陽子も幽霊を見たと言う。それを激しく否定する綾香だが、3人が大声で騒いでいるのを見咎めて薫子が仲裁に入る。その薫子が連れていた和装の少女を見て悲鳴をあげる愛花たち。その少女が事務所で目撃された幽霊とそっくりだったからだ。幽霊騒動の原因になっていたことを察して謝る少女。彼女は御蔵座梓希といい、成子坂製作所に入社するためにこっそり事務所見学に来ていたのだ。中学生である愛花たちより更に小柄な梓希は小学5年生だった。アクトレス免許取得は中学生からではと怪訝に思う綾香だったが、梓希はアクトレス免許取得の下限引き下げのテストケースとしてAEGiSによる特例措置を受けていたのだ。これは、聖アマルテア女学院初等部の設立により小学生アクトレスの先駆者になることを目論む北条グループに対するAEGiSの牽制であった。梓希の曽祖母は成子坂製作所の黎明期に活躍した「伝説のアクトレス」であり、所長からの推薦でAEGiSが後見人となって入社が決定したのだ。梓希が自分より若年でアクトレス免許を取得したことに対抗心を燃やす綾香は、この梓希のいきさつを聞いてコネ入社呼ばわりする。しかし、幼年期より英才教育を受けていた梓希はそれに反発、実力でも負けていないと張り合うのだった。

データを前に悩んでいる様子の薫子を見て声をかける楓と文嘉。薫子の悩みは、成子坂製作所のアクトレス勤務実態であった。一見すると大勢のアクトレスを抱えているように見える成子坂。しかし、その多くは非正規雇用の登録アクトレスと、各国AEGiSやギアメーカーからの出向組、そしてエンパイア中野や聖アマルテア女学院といった提携企業からのレンタルであった。現在要求される事業規模に比して正規所属アクトレスが少な過ぎる、それが成子坂の抱える弱点となっていた。出向組や提携組は本来の帰属先の都合で帰任する可能性が高く、登録アクトレスは多くが本業持ちのためそちらが優先される。そうなると成子坂がいつでも使える人員は現在の担当エリア数に対してギリギリなのだ。そこで薫子は先日のアクトレス免許試験の成績上位者をスカウトする計画を立てていた。その中で一際目を引いたのが星条大学附属高校の御茶ノ水美里江。高いエミッション数値に加えてほぼ満点の技能試験と学力試験、まさに非のうちどころがない成績を残していた。だが、新人としてはあまりに完成され過ぎた能力に薫子は疑問を呈する。とはいえ即戦力として期待できるとしてスカウト申請の準備を進めるのだった。

それからしばらく後、楓は夜露を呼び出してアキ作戦の時に彼女が言った「幼い頃の自分を助けたのは楓の姉」という言葉の真偽を確かめようとしていた。もし夜露の言うことが本当なら、その近くに楓の姉・京が今どこにいるかの手がかりがあるかもしれなかったからだ。数年前のおぼろげな記憶を辿りながら路地裏を歩く夜露たち。楓は、姉の京が6年前に勘当されて家を出たこと、ノーブルヒルズとの係争でAEGiSから助っ人として派遣された仮面のアクトレスが京だったことなどをぽつぽつと話す。そして、楓も今は道場から破門され実家からも勘当されていることを告げる。理由を尋ねる夜露に、楓は「剣の道を踏み外したから」だと言う。楓も京も、犯罪者への私的な制裁に剣術を使ったことが破門の理由であった。しかし、京が破門された経緯を語りながらも、楓は自分の理由についてはあえて夜露に話さなかった。
突然、夜露が立ち止まる。京と出会った時の記憶が蘇ったのだ。その夜露の赤く輝く瞳を見た楓は、それがアキ作戦の時と同じであることに気付く。走り出した夜露とそれを追う楓。二人が辿り着いたのは、佐蔵修道院だった。この前で夜露と京は出会ったのだという。佐蔵修道院、それは以前神宮寺真理が楓に「吾妻京が高校時代を過ごした」として教えた場所。夜露は小学生の頃にここに通っていたという。しかし、その理由は思い出せなかった。
その佐蔵修道院から出てきた人影に驚く楓。それは、楓がずっと探していた吾妻京だった。戦闘を除けば数年ぶりに出会った姉妹。感無量の楓とは裏腹に、軽い調子で「何でここにいるの?」と言う京。夜露は、はっきりと京が自分を助けてくれた人物だと思い出していた。
シスターの格好をしている姉に驚く楓。京は、修道院に欠員が出たことで穴埋めの見習いシスターとして勤務しているのだと言う。数年前に助けてくれたことの礼を言う夜露だが、京は「その恩返しは困っている他のたくさんの人に」と言う。京を潤んだ眼差しで見つめる夜露の姿を見て、夜露が本当に憧れていたのは京であり、これまでの夜露の「楓への憧れ」は楓の姿を通した京へのものだったことに気付く。二人を礼拝堂に案内した京。楓は、久しぶりの再会にもかかわらずまったく普段通りの京に苛立ち、何故修道院にいるのかを問う。それに対して京は「道場を継ぎたくなかったから」「楓の方が道場を継ぐのに向いている」と答えた。しかし、楓は自分より剣の才に優れる姉がそう言ったことに疑問を呈する。だが、京は楓の才能は自分以上だと言う。幼少期より姉の剣才に憧れ続けてきた楓はそれを否定し、自分も破門されたことを告げる。京は、父からの破門宣告は「家のことは忘れて好きにしていい」という許しだと言う。そして、父の真意は楓に道場を継がせることにあるのだ、とも。京は父が本当に後継者と見定めていたのが楓だと知ったからあえて勘当を受け、母に頼んで佐蔵修道院で暮らすことを選んだのだ。両親が京の行方を知っていて黙っていたことにショックを受ける楓。京は、自分になついていた楓がついて来ないように両親に頼んで自分の居場所を隠していたのだ。
それでも、姉にようやく出会えたことで涙を見せる楓。その楓の姿を見て、「琴村姉妹のことを思い出す」と言い出した京。意外な人物の名前が出たことに驚く楓と夜露だった。
ノーブルヒルズの尖兵として執拗に自分たちに嫌がらせをしていた琴村姉妹の名前を聞いて激昂する夜露と楓。しかし、京は彼女たちが佐蔵修道院の孤児養育施設出身だと言う。京が修道院の寄宿舎に来た時はまだ琴村姉妹は小学生だった。妹のように可愛がろうと接した京だったが、姉のように慕っていた女性が音信不通になったことで人間不信を拗らせた琴村姉妹は、京にはなついてくれなかったという。その琴村姉妹がずっと探していたのは九品田凪、かつてTV番組のオーディションで「チーム・メリーバニー」の3人目になった少女で宇佐元杏奈と神宮寺真理のチームメイトである。京の口から語られた意外な繋がりに驚く夜露たち。京は、凪の結婚記者会見に本人の姿がなかったこと、メリーバニー最後の出撃が新型ギアのテスト戦闘だったこと、当時のメリーバニーのギア提供元が成子坂製作所だったことを夜露たちに教える。

その頃、ファミリーレストランで神宮寺真理に奢られて食事をしていた琴村姉妹は、真理が指名手配の自分たちを匿った真意を聞き出そうとしていた。のらりくらりと朱音の追及をかわす真理が口にした「お金があれば何でもできる」という言葉が凪の口癖だったことに気がつく天音。真理は、琴村姉妹への自分にできる最大限の誠意として、もう一人の関係者を呼び出していた。それは凪のチームメイトのもう一人、宇佐元杏奈だった。杏奈は、AEGiSから指名手配されていた琴村姉妹と真理が一緒にいることに驚く。真理から琴村姉妹が凪が常々口にしていた「一緒に暮らすことを願っていた妹分」だったことを知らされた杏奈は、琴村姉妹に凪の最後の出撃について話すことを決意する。
九品田凪最後の出撃、それは彼女が加入してから3年目のことだった。チーム・メリーバニーを社会現象と呼べるほどの人気に押し上げたのは、凪の人気によるものだった。才能には恵まれていなかったが、それでも泥臭く諦めずに頑張る凪の姿は、同世代の少女を中心に大きな共感と感動を呼んでいたのだ。そんな人気を呼んだメリーバニーには、テレビ局から専用ギアが提供されることになった。とはいえ局にはギア開発ができるわけでもなく、局は提携先のヤシマに丸投げ、そしてヤシマは下請けの成子坂製作所へ更に丸投げした。人気がなかった頃からメリーバニーの担当だった成子坂製作所は、より3人の適性を見極めた専用ギアを開発したのだった。しかし、その専用ギアが凪の失踪を引き起こしたのだ。杏奈と真理のギアは「普通の範疇に留まった理想の装備」でしかなかった。しかし、凪の専用ギアはアクトレスの限界をはるかに超える先鋭的なものであった。努力家で絶対に諦めない凪は、そのギアの持つ限界性能に努力で近付いて、その果てに到達していた。真理はそんな凪を「ギアに魅入られた」と感じていた。経験豊富な真理や運動神経抜群の杏奈に実力で追いついた一方で、心ここにあらずといった様子になっていった凪。そして、ギアの実戦テストに選ばれたのはごく普通の調査宙域、脅威度の低いヴァイスしか出現しないはずの場所。初めて来た宙域にもかかわらず凪は突然「懐かしい」「誰かが呼んでいる」と言い出すと、これまでにない超人的な戦闘力で小型ヴァイスを次々に破壊していく。そして、そんな凪に呼ばれるように未確認の超大型ヴァイスが出現したのだ。超大型ヴァイスに近付く凪を助けようとして奮闘した真理と杏奈だったが、超大型ヴァイスのかつてない猛攻の前に力及ばず緊急脱出を強いられ、幸せそうに微笑んだ凪はその超巨大ヴァイスと共に姿を消した。これが最後の出撃の真相だった。
これがアキ作戦のヴァイスミディアム戦における夜露の行動と酷似していることに、その場に居合わせなかった真理と杏奈は気付くよしもなかった。
凪の失踪後、AEGiSに保護された真理と杏奈は、凪は入院したと聞かされ、それ以降の引退会見も全てAEGiSのお膳立てによって行われていた。凪が結婚し他シャードに移住したと聞かされた真理は、その後7年間あらゆる手を尽くして凪を追った。しかし、凪の痕跡はどこにもなかった。
二人の語る凪の変調に心当たりを感じた天音は、朱音の制止にも関わらず凪からの手紙を見せる。その手紙は、凪が新型ギアの訓練を開始してから次第に異常なものになっていた。支離滅裂な内容に幼児の落書きのような意味不明な絵、「宇宙に繋がる」「声が聞こえる」「心が混ざる」という謎のメッセージ。専用ギアの使用が凪の精神を蝕んでいたことを改めて思い知らされた杏奈と真理は、凪の失踪がアリスギアのもたらした副作用によるものだと確信する。

その頃、整備部の片隅に放置されていた旧式ギアを整理しようとしたリタは、その中から1冊のノートを発見する。古びて変色したノートに書かれていた整備記録には、とても昔のものとは思えない先鋭的なギアのデータが記載されていた。ノートが変色するほど古い時期のギアとは思えない性能に驚きと歓喜の声をあげるリタ。その声を聞いてやって来た磐田は、リタの見ているノートを慌てて奪い取ると、今見た内容を全て忘れるよう強く命じる。磐田は「こいつはこの世にあっちゃいけねえギアなんだよ」と言うのだった。

因果の小車

成子坂製作所からのスカウトを受諾、入社が決定した御茶ノ水美里江が事務所に挨拶に訪れた。彼女の新人らしからぬしっかりした振る舞いと研究熱心さに感心する楓と文嘉。そこに現れたリンは美里江に興味を抱き、新人教育として初出撃のパートナーに名乗りを上げるが、怜がそれを制する。天才ではあるが、直感と本能で動くリンは新人の手本にはならないと思ったからである。ギアの整備にも関心を持つ美里江は整備部の見学にも乗り気であり、楓と文嘉は美里江をギア整備室に連れて行く。しかし、そこではリタと磐田による激しい口論の真っ最中であった。怯える美里江を文嘉は外に連れ出すが、リタと磐田の口論の内容から原因が7年前のことにあると察した楓はその場に残る。佐蔵修道院で姉の京から聞かされた話に関係があると思ったからだ。
リタは、磐田が旧式ギアに隠していた整備ノートに記されていたギアのことを知りたいと食い下がる。とても7年前のものとは思えない高性能にすっかり惚れ込んでいたのだ。しかし、磐田はあれは曰くつきのギアであり、とてもじゃないが表に出せないと拒絶する。そこに割り込んだ楓は、そのギアが九品田凪のものではないかと磐田に問う。睨み合う楓・リタと磐田。そこに割って入ったのは隊長だった。磐田は、隊長に二人が危ない橋を渡ろうとしているとして、この件から手を引くよう説得してほしいと頼む。だが、そこに更に割って入ったのが神宮寺真理と宇佐元杏奈、そして彼女たちに連れて来られた琴村姉妹だった。
磐田は、旧式のギアになんか誰も触らないだろうと踏んで整備ノートの隠し場所に使っていたのだが、リタの研究熱心さが仇となってノートの所在が明るみに出てしまったのだ。リタの整備士魂に呆れつつも称賛する磐田。真理は、凪の専用ギアについての資料はとっくに処分されたものと思っていた。しかし、磐田は技術者として愛着のあったギアの資料を処分することができなかった。磐田は、凪が脱出できなかったのはテレポートドライブの破損が原因だと思っていた。しかし、凪の手紙を見た真理は、真相はそんなところにはないと怒りを露わにする。杏奈は、琴村姉妹の了解を取って凪の手紙を磐田に見せた。著しい精神汚染の兆候を示す凪の手紙に驚愕する磐田と楓。リタも、ここまで酷い精神汚染状態のアクトレスに実戦テストをさせたことを不審に思う。その上で改めて磐田を問い詰める真理。磐田は、凪の専用ギアの設計者は所長ではなく、当時の成子坂で所長の補佐をしていた宇時家冬馬ではないかとの推測を口にした。所長はあくまで自分が設計したギアだと言い張るため磐田も口裏を合わせざるを得なかったのだ。
宇時家冬馬。成子坂製作所創設メンバーの一人である。彼のことを語るには、成子坂製作所創業からの歴史を振り返らねばならなかった。
坂東工業高校の同級生だった磐田宗一郎と森村元は、機械いじりの好きな者同士で意気投合し、そのまま二人は自分たちの技術を磨くために東京境界技術専門学校へ入学した。境界福祉法(各シャードに設定された時代のテクノロジーレベルを超える技術を禁ずる法律)の制限を受けないアリスギア研究は、最新技術に憧れる若者にとってはもってこいのものだったのだ。そこで出会ったのが天満小梅と宇時家冬馬だった。自分でギアをメンテナンスするために、男子だらけの専門学校に入学してきた自営アクトレスの小梅と独学で学んだ天才の宇時家。能力はアクトレスとしては底辺レベルだったが、情熱だけは本物の小梅を見るに見かねて、磐田と森村が小梅を手伝うようになった。中古品の汎用ギアを徹底的にカスタマイズすることでほぼオーダーメイドに近い性能を発揮するようになり、それを扱う小梅のアクトレスとしての戦績は大きく向上していったのだ。そうして遂に企業所属アクトレスに迫る戦績を挙げた小梅だったが、自営アクトレスとしてはそこが限界だった。そんな時にチームに加わったのが宇時家であった。飛び抜けて奇抜な設計のアリスギアの企画を持ち込んできた宇時家は、資金を捻出してそれを磐田たちに造らせた。予想通りまともに使えないギアに仕上がったが、宇時家はそれをヤシマ重工に特許ごと売り込んだのだ。「今は技術的に実現不可能でもいずれ可能になる」ということを見越してのことだった。異能の設計技術と巧みな商才を持つ宇時家が加わったことで、天満小梅のバックアップチームでしかなかった集団は「成子坂歯車工業」として起業することになった。
ヤシマから得た資金を基に宇時家が中古の設備を買い揃え、ギアメーカーとしての第一歩を踏み出した成子坂。ヤシマの下請けからスタートした成子坂は、アクトレス業界のギアチューンブームに乗ってアリスギアのカスタマイズ業を開始。個人から中小企業まで多くのアクトレスのギアを手掛けるようになった。しかし、そのことで大手ギアメーカーから睨まれるようになり、アクトレス企業との取引を妨害されるようになる。その打開策として成子坂自身がアクトレス企業を運営することになったのだ。小梅が連れてきたのは、かつてのトップアクトレスであったが加齢による衰えで戦績を落としていた東雲チヱとやはりトップアクトレスであったが結婚で一時は現役を退いた御蔵座咲々。ベテランの復活劇を演出した成子坂は人気が急上昇し、やがて成子坂へ所属するアクトレスも増えていった。他社では能力を活かしきれないタイプのアクトレスにも適合したギアを提供することで実力を発揮させる成子坂は、一躍業界の風雲児となったのだ。これにも宇時家の功績があった。彼は、当時は芸能界の「帝国」と呼ばれた大手芸能事務所であるエンパイア中野との提携を取ってきたのだ。
こうして大成功を収めた成子坂製作所は事業を拡大していった。しかし成子坂主導のアクトレスブームは飽きられて終わりを迎え、経営危機に陥った成子坂はヤシマ経由で東京チャンネルから持ち込まれたメリーバニーの企画に参加し、新たなアクトレスブームを作り出した。こうしてようやく成子坂の悲願であった完全オリジナルのアリスギアを製作するに至ったが、その顛末は凪の失踪とメリーバニーの解散、そして世間の信頼を失った成子坂の凋落だった。
メリーバニーの専用ギアは所長の設計であったが、重要部分の調整は宇時家の担当であった。真理と杏奈の専用ギアはそうして造られたものであり、特に異常な挙動をするものではなかった。しかし、凪の専用ギアだけは宇時家による全面的な設計変更の産物であると思われた。
その宇時家の所在を問う真理だったが、彼は7年前に成子坂がアリスギア開発部を解体した際に辞職し行方不明になっていた。楓は、その宇時家が叢雲工業の新型ギアに関わっていたのではないかという。しかし、磐田はその現物を解体しないと分からないと答える。真理は、宇時家が「SIN」に参加しているのではないかと推測するが、磐田はそれを先走りではないかと諌める。もし叢雲に宇時家の痕跡があれば叢雲の処分はあの程度では済まなかったはずだ、と。
次は所長を捕まえて情報を聞き出そうと意気込む杏奈だったが、それを遮ったのは朱音の叫びだった。真相究明と犯人探しにばかり躍起になって誰も凪のことを本気で探そうとしていないことに耐えられなかったのだ。「凪お姉ちゃんを返して」と泣きじゃくる朱音の姿に皆が押し黙る。真理たちに愛想を尽かして朱音を連れて整備室から出ようとする天音。しかし、認識阻害で隠れていた籠目深沙希が天音たちの前に立ちはだかった。深沙希はその場にいた全員を拘束、AEGiS情報本部へと連行するのだった。
隊長は、情報本部で事務官の愛宕右京と対面していた。拘束された中で、事件への関連性が低い楓は既に解放されていた。リタも整備ノートのことを口外しない条件で解放されるという。
愛宕は、7年前の事件に「SIN」が関与していた可能性を把握するため真相を究明するのが目的であると語る。そのために成子坂所長の小梅、そして宇時家の所在調査を極秘裏に進めるつもりであった。磐田も事情聴取を受けており、凪のギアの整備ノートは押収されることになった。
杏奈も簡単な聴取の後に解放されていたが、真理はAEGiSに拘束された際にAEGiS情報本部のスキャンダルを海外のサイトに放出する報復措置を決行。真理はそれ以外にも報復をほのめかしているため、愛宕は隊長に真理の説得を頼むこととなった。
そして、愛宕は隊長に琴村姉妹の身柄を預けることを申し出た。「SIN」との繋がりを失ったことでAEGiSとしては琴村姉妹を監視する必要はなくなったが、別の工作員が無一文の彼女たちを利用するかもしれないため、成子坂のアクトレスとしての定収入を提供しつつ保護観察をして欲しい、というのが愛宕の言い分であった。
翌日、深沙希に連れられて成子坂の事務所を訪れた琴村姉妹。夜露は、二人がノーブルヒルズに利用されただけであることを理解し受け容れることを決断する。「大切なのはこれまでじゃなくてこれからです」と語る夜露の言葉を受けて、朱音は謝罪と共にこれまでの自分の気持ちを吐き出して走り去る。残った天音はノーブルヒルズの時に関わりのあったサンティにも謝罪するが、サンティは自分は傭兵としてノーブルヒルズに雇われて契約違反があったから離反しただけだと言う。そして、サンティは天音が謝る相手は東京シャードの住人であり、そのためにアクトレスとして東京シャード防衛に尽力するよう諭す。
ギア整備室にいた楓の前に現れた琴村姉妹は、以前のギア整備室への破壊工作(躍進編「策謀!赤坂エリア争奪戦」参照)のことを楓に謝罪する。しかし楓は、「自分は不審者の顔を見ていない、見ていたら許さないけど見ていないから知らない」と言うだけだった。それを聞いていた磐田も「あんなものはガキのイタズラだ」と一蹴。そして琴村姉妹に、凪のギアがどうしてああなったのかをきちんと調べることと、所長と宇時家の居場所を見つけて情報を聞き出すことを約束するのだった。

クロスオーバー

アキ作戦終了後、めっきりヴァイスの出現数が減ったことで成子坂のアクトレスは暇を持て余していた。普段は勤務態度に口うるさい文嘉まで勤務時間内にも関わらず本を読み始める始末。そこに薫子が現れ、慌てて居ずまいを正す文嘉たちだったが、薫子は特に咎めることもなく待機していた隊長に相談を持ちかける。その時に薫子が「二人きりで」と隊長に言ったことが原因で、成子坂内で「隊長と薫子が交際しているのでは」との疑惑が持ち上がってしまった。動揺する者、祝福する者と反応は様々。しかしその真相は、薫子の友人に成子坂の新戦力として採用したいアクトレスがいるということだった。そのアクトレスの名は二階堂司。女子プロゴルファーの傍らフリーのアクトレスをしていたが、薫子に頼まれて成子坂に籍を置くことに決めたのだという。

文島明日翔と依城えりは、「鳥の会」のバードウォッチングのため早朝から公園に集まっていた。集合に遅れている鳳加純はAEGiSのエースだから毎日残業で疲れているのだろうと噂する二人だったが、そこに現れた加純はそんなに残業はしていない、と言うのだった。
バードウォッチングを楽しむ三人。アクトレスとしての給与で買った観察用の双眼鏡を見せた明日翔は、自分がアクトレスになれるよう成子坂へ紹介してくれた加純に礼を言う。明日翔とえりは、アキ作戦の開始前にはAEGiSの業務で疲労困憊して「鳥の会」の集まりに参加していても上の空であった加純の身を案じていたのだ。二人の心遣いに感謝する加純。明日翔とえりは、少しでも加純に恩返しできるよう強いアクトレスになることを誓う。加純も、良い友人に出会えたことを嬉しく思っていた。

一方その頃、エンパイア中野もヴァイス出現数減少のあおりを受けて一時期の好調が嘘のように収入が激減していた。芸能活動はまだ芽が出ず、衣装代やCDのプレス費用は自腹の持ち出しである桃歌とやよいは、アクトレスとしての収入減が芸能活動の縮小につながるため困り果てていた。実家のステーキ店が安定していて芸能活動も順調なシャーリーはその心配がなく、いざとなったら桃歌とやよいをアルバイトに雇うと言う。しかし、接客が苦手なやよいと、肉の匂いが服に付くことを嫌がる桃歌はそれを拒否。事務所で騒ぐ三人を咎める社長の室江だったが、桃歌たちは室江の営業力不足がこの事態を招いたのだと逆に批判する。更にギャラに対して事務所の取り分が多過ぎるのではないか、と室江を問い詰める桃歌たち。事務所の取り分は売り出しのための経費だ、と居直る室江は、怒りが収まらない桃歌たちを宥めるために芸能の仕事を提示。アクトレス免許保持者向けの高ギャラ営業だと説明され、久々のおいしい仕事にすっかり機嫌を直す桃歌たちだった。
だが、実際の仕事内容は芸能ではなく、アンダーシャード(シャード下層部)の共同溝清掃だった。アクトレス免許保持者はアンダーシャードでの作業が免許に規定された業務内容に含まれるため違法ではないがグレーゾーンの仕事である。室江に一杯食わされたと怒る桃歌とやよいだったが、仕事は仕事と割り切るシャーリーの後押しもあって作業に取り掛かる。しかし、作業をしていた桃歌たちは開発を放棄された地下トンネルに迷い込んでしまう。シャーリー自慢のガールスカウト野外生存術も地下では役に立たず、遭難して死ぬのだと思い込み錯乱したやよいは明後日の方向へ走り出してしまう。それを追う桃歌とシャーリー。やみくもに走った三人が辿り着いた地下施設の天井からは、金色に輝く金属粉が降り注いでいた。それを見て、黄金を掘り当てたのではと喜ぶ桃歌たち。しかし、それは環境浄化用の金ナノ粒子触媒だった。錯乱したやよいが飛び込んで壁に衝突したことで、アンダーシャードの環境浄化施設が誤作動を起こして触媒が漏出、シャード上層の気候に悪影響が出てしまったのだ。自社タレントの起こした不祥事で各方面に平謝りする羽目になった室江は、施設の弁償金を桃歌たちのギャラから天引きすると宣告。もっと苦しくなった生活のため、桃歌たちはこれまで以上に芸能の営業に奔走せざるを得なくなった。

アキ作戦以降非番の日が増えた成子坂では、夜露と楓が休日を満喫していた。琴村姉妹が成子坂に馴染み、学校でも楽しく過ごしていることを嬉しそうに語る夜露。しかし、楓は琴村姉妹の名前を聞いたことで7年前の九品田凪失踪事件のことを思い出し、憂いの表情を見せる。それを見た夜露は、楓だけでなくリタや磐田もここしばらく元気がないことを怪訝に思い楓に尋ねる。しかし夜露を巻き込みたくない楓は言葉を濁す。楓の元気がないことを心配する夜露は、楓の姉である京に相談すれば良いと提案するが、楓は京はもう佐蔵修道院にはいないことを告げる。臨時雇いのシスターだったため欠員が補充されたことで職務を終え、それ以降は吾妻家でも所在を把握していないのだ、と。AEGiSの特殊部隊に所属しているため、家族にも居場所や任務内容を話せない京は、もうどこにいるのかわからないのだ。再会が束の間だったことを悲しむ楓を、同じシャードで同じアクトレスをしているならきっとまた会えると励ます夜露。気を取り直して休日を楽しむ夜露たちの傍を通り過ぎる二人の少女。その時、夜露は何とも言い知れないものを感じてその姿を見つめる。二人を「ファッション誌で見た」と言う楓だったが、夜露は雑誌での既視感ではなくどこかで会ったことがあるのだと言う。その二人、君影唯と村尾未羅。未羅も夜露を見て「どこかで会ったことがある」と言う。唯は、他人に無関心な未羅が知らない相手に執着するのは珍しい、と夜露に興味を持つのだった。

喫茶店で密会する真理と芹菜。芹菜は真理に雇われた協力者であり、真理が逮捕された際に報復措置としてAEGiS情報本部高官のスキャンダルを流したのは芹菜の手によるものだった。その真理が次に芹菜に依頼したのは、宇時家冬馬の所在を探すことだった。成子坂にいた頃は常に社長である天満小梅の影に隠れて取材を拒否していたため青年期の写真しか残っておらず、更に成子坂のデータベースから自身の手がかりを消して逃げた人物を追うという困難な任務である。しかし、真理は磐田の協力によって宇時家との繋がりがありそうな国内ギアメーカー数社を洗い出していた。最も繋がりが深いと思われた叢雲工業は既に会社が解体されているため今回は除外したという。真理は今回の仕事はAEGiS情報本部のサポートも得られているため、身分偽装の証明書等はAEGiSが手配するという。真理の呼びかけに応えて現れた深沙希は、改めて芹菜に宇時家の捜索を依頼する。AEGiS情報本部は、7年前の事件の背後に「SIN」の存在があったのか否かを確かめるために、何としても宇時家と小梅の身柄を確保したかったのだ。

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