パプリカ(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

パプリカとは今敏監督によるアニメ映画である。原作は筒井康隆作の小説「パプリカ」。2006年11月25日に劇場公開された。
千葉敦子は夢を共有できる装置DCミニの中で別人格「パプリカ」となって活躍するサイコセラピスト。ある日、研究所からDCミニが奪われてしまい悪用される事件が起こる。なんとか解決策を模索する敦子と研究所の仲間たちだが、事件の影響により夢が現実世界にも影響を及ぼし始める。

『パプリカ』の概要

『パプリカ』は2006年11月25日に劇場公開されたアニメーション映画である。原作は筒井康隆の同名小説。
監督は『東京ゴッドファーザーズ』や『千年女優』を手掛けた今敏、音楽は『剣風伝奇ベルセルク』や『DETONATORオーガン』を手掛けた平沢進が起用されている。
第63回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門へ正式出品されており、また、animecs TIFF 2006のオープニング上映作品にもなった。
キャッチコピーは「私の夢が、犯されている―/夢が犯されていく―」となっている。キャッチコピーの通り、この映画は夢を中心にストーリーが進んでおり、夢の中や心の中にいるもう1人の自分とどう向き合うのかを考えさせられるストーリー展開が話題を呼んだ。

『パプリカ』のあらすじ・ストーリー

島(左)の夢に入り込むパプリカ(右)

天才研究者の時田浩作によって開発された夢を共有する装置、DCミニ。千葉敦子は精神医療総合研究所の職員として働きながら、DCミニを使用して夢を共有し、夢の中でのみ現れる人格「パプリカ」を使ってサイコセラピーをおこなうサイコセラピストとして研究所の所長である島寅太郎らとともに活躍している。警察官の粉川利美も島の紹介でDCミニを使った「パプリカ」によるサイコセラピーを受けはじめる。
そんなある日、そのDCミニが研究所から奪われる事件が発生する。他人の夢に潜り込むことが出来るDCミニによって夢という深層心理の領域に他人が踏み込んでしまうことの危険性を危惧し、開発を凍結させようとする車椅子の理事長・乾精次郎と口論となる島と千葉であったが口論の最中にDCミニの悪用によって島が発狂、突如走り出し研究所から飛び降りて大怪我、昏睡状態になる事態となる。
この事態を受けて千葉と時田、研究所職員の小山内守雄らはDCミニを取り戻すために動き出す。時田の部下であった氷室啓がDCミニを奪った犯人ではないかとみた3人は氷室の家へと向かう。しかし、家はすでにもぬけの殻で氷室を見つけることはできなかった。
天才である時田はDCミニを盗んだとされる氷室の行動が分からず、千葉に相談するも天才ゆえの人の命を軽視した言動に怒られてしまう。このことをきっかけに時田は千葉の力を借りず、氷室を説得しようとDCミニを独断で利用する。しかし、逆に夢に犯されてしまい、昏睡状態となってしまう。
一方、千葉もパプリカの手助けによって目を覚ました島とともにDCミニを使って氷室の夢に侵入する。氷室にDCミニの悪用をやめるよう説得するが、すでに氷室もほかの人に夢を侵食されており、昏睡状態となっていることが判明する。千葉はその後も夢の中を探し回り、真犯人が乾と小山内であることを突き止めるがそれと同時に彼らに捕らえられてしまう。
不自由のない体を取り戻すという乾の野望を知るも絶体絶命の状況の中、サイコセラピーの途中に侵食された夢に巻き込まれてしまった粉川が姿を現す。粉川によって千葉は助け出されるが、助け出す際に銃撃を受けた小山内が現実世界でも死亡してしまう。この現象を皮切りに夢と現実世界が入り交じる事態になる。
瞬く間に現実世界は夢に侵食され、夢に犯されて自分を見失っている時田も現実世界に現れる。パプリカもこの現象によって千葉と完全に分離、1つの人格として現実世界に現れて千葉や粉川のサポートを始める。
死亡した小山内の側にいて最初に夢に取り込まれた乾はこの不可思議な現象を利用して、当初の目的であった不自由のない体を取り戻すことに成功し半透明な巨人として現実世界に顕現する。千葉はその間に暴走した時田に取り込まれてしまうが、乾と同じように現象を利用し半透明な赤子として乾と対峙する。
赤子の状態の千葉は乾をどんどん吸い込み、それに伴い身体の成長を始める。最後には乾を丸ごと取り込むことで成人女性にまで成長し、この不可思議な現象を止めた。

『パプリカ』の登場人物・キャラクター

千葉 敦子(ちば あつこ)

CVは林原めぐみ。精神医療総合研究所の職員の傍ら、DCミニを用いてサイコセラピーをおこなう「パプリカ」としても活躍している。
自分の想いを抑制する理論的な性格の持ち主。その性格ゆえに時田への恋心にも気づかないふりをしていた。終盤ではその思いを隠すことなく時田に伝えて相思相愛となっている。

パプリカ

CVは千葉敦子と同じく林原めぐみ。千葉敦子のもうひとつの人格であり、夢の中でどんな悩みも解決してしまう完璧な性格の持ち主として描かれている。千葉がサイコセラピーをする際はこの人格となって相手の深層心理を見て悩みを解決する。
序盤では別人格と明確に判断できる材料が出てこないが、夢と現実世界が入り混じる終盤では完全に千葉と分離し、現実世界で千葉や島をサポートした。

時田 浩作(ときた こうさく)

CVは古谷徹。精神医療総合研究所に勤務している職員であり、天才科学者。DCミニも時田が開発した。天才肌であるため、他人の嫉妬などの感情が理解できず作中ではDCミニを盗んだとされる小室の行動が理解できなかった。
かなりの巨漢で研究室やエレベーターから出るのも人の手が必要になるほど。

島 寅太郎(しま とらたろう)

CVは堀勝之祐。精神医療総合研究所の所長であり、DCミニの開発担当責任者。物語の序盤でDCミニの悪用により発狂、研究所から飛び降りて大怪我を負う。
その後、共有された夢の中に捕らえられていたがパプリカの活躍により覚醒。覚醒してからは千葉のサポート役として活躍する。

粉川 利美(こながわ としみ)

CVは大塚明夫。島と同級生の現役警察官であり、学生時代のトラウマを解消するためにパプリカのサイコセラピーを受けることになる。作中ではパプリカのサイコセラピーを受ける最初の人物。
一度目のサイコセラピーを受けた後、インターネットを通じてサイコセラピーを定期的に受けるが受けている最中に共有された夢に飲み込まれてしまう。迷い込んでいる内に乾と小山内が千葉を拘束している場面に遭遇、千葉を救出した後に小山内に学生時代のトラウマを強制的に見せられるが克服して小山内を弾丸で撃ち抜く。

氷室 啓(ひむろ てつ)

CVは阪口大助。時田とともにDCミニの開発をおこなっていた。しかし、時田の天才とも呼べる才能に嫉妬してしまい、開発中のDCミニを持ち出す。
その後、DCミニには乾に奪われてしまい、自身は共有された夢に犯されて昏睡状態となる。

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