千年女優(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ
千年女優とは今敏監督によるオリジナルアニメーション映画で、2002年9月14日に劇場公開された。
主人公である藤原千代子は小さい頃から女優業を続けていた大ベテラン。お世話になっていた映画会社「銀映」の撮影所が老朽化によって壊されることになり、それに際して映像制作会社の立花源也と井田恭二からインタビューを受けることになる。
『千年女優』の概要
『千年女優』は2002年9月14日に劇場公開されたオリジナルアニメーション映画。上映時間は87分。
監督は『パーフェクトブルー』や『東京ゴッドファーザーズ』などを手がけている今敏、音楽は『ベルセルク』や『妄想代理人』で挿入歌や主題歌などを担当した平沢進を起用している。
原作はなく、脚本と原案ともに監督の今敏が担当している。本作のキャッチコピーは「その愛は狂気にも似ている」となっており、主人公・藤原千代子の壮絶な女優人生を送りながらも幼少の頃に出会った「鍵の君」に想いを寄せ続けた一生にスポットを当てたストーリー展開となっている。
『千年女優』のあらすじ・ストーリー
映像制作会社「VISUAL STUDIO LOTUS」の社長である立花源也は銀映撮影所70周年記念女優の藤原千代子からインタビューを作ろうとしていた。藤原千代子は映画会社「銀映」の看板女優で日本映画史に名を残すほどの大女優である。
会社のカメラマンである井田恭二とともに千代子に取材しに行く立花。取材の前に立花は昔拾ったという鍵を千代子に差し出した。千代子がその鍵を見て昔を懐かしむとともに舞台は千代子が幼少の頃へと移る。
第二次世界大戦中、千代子は女学校の帰りに映画のスカウトに会い、帰宅してから親にそのことを話すが親には芸能界入りを反対されてしまう。その夜、千代子は思想犯として追われる身であった「鍵の君」と遭遇、千代子は親切心から彼を家の蔵に匿った。「鍵の君」はいつか故郷で絵を描きたいと千代子に語り、満州へ行きたいということや、持っている鍵を千代子に見せていちばん大切なものを開ける鍵であるということを話した。千代子は夢を語る「鍵の君」の前向きな姿勢に共感し、恋心を抱くようになる。翌日、思想犯の取締を行なっている傷の男が「鍵の君」を追って家に来るもすでに彼は逃げており、千代子は雪の中で彼が落とした鍵を拾った。
「鍵の君」に会うため、千代子は女優となり満州に赴いた。先輩女優である島尾詠子の薦めによって占いをしてもらい、彼が北の方角へいるという情報を得ると撮影中にもかかわらず彼を探しに出かけた。しかし、その最中に馬賊に捕まってしまう。場面は別の映画のシーンへと移り、炎の中の天守閣で姫役を演じている千代子は千年の間、恋に身を焼かれるとされる薬湯を老婆に飲まされる。場面は更に変わり、火事の京都に移る。そこで「鍵の君」に再会するが、追われる身の彼は「いつか約束した場所で」と言い、去ってしまう。さらに次の場面では囚人として収監される千代子と入れ違いに収監される彼を見つけるもあと一歩のところで扉が閉まってしまう。その後、第二次世界大戦が終わり、家に帰った千代子は匿っていた蔵に自身の絵と「いつかきっと」という彼からのメッセージを見つける。
舞台は現代に戻り、千代子は発作によって倒れてしまう。千代子の体を心配する立花や井田だが千代子はそれでも話を続けた。手がかりがなくなり「鍵の君」を探せなくなった千代子は女優として出続けることで「鍵の君」が自分を見つけてくれると信じて映画に出演し続けた。一方、若い頃の立花は「銀映」の新人スタッフとして入社していた。時が進み、大人の女優として成長した千代子は映画監督の大滝から告白される。「鍵の君」のことが忘れられずに渋る千代子であったが、撮影中に鍵をなくしてしまう。このことでひとつの踏ん切りがついた千代子は大滝と結婚する。しかし、後に大滝の書斎から鍵を見つけ、大滝と詠子が鍵を意図的に隠したことが判明する。そのことで3人は口論となるが、ちょうど「鍵の君」を追っていた傷の男が現れ、独房で「鍵の君」を殺してしまった自身の過去に対する贖罪として千代子に一通の手紙を渡した。この手紙によって「鍵の君」が北海道出身であるという情報を得る。
千代子はすぐさま北海道に向かい、雪原を歩いているとイーゼルを見つける。そのイーゼルには「鍵の君」が描かれており、絵の中の「鍵の君」は千代子に手を振りながら絵の奥へと去っていった(このシーンは千代子の幻覚と思われるが、本編では言及されていない)。
場面は変わり、とある映画のロケットに乗るシーンとなる。しかし、撮影中に地震が起き千代子や立花がセットの下敷きとなる。その際に鍵を落とし、立花が拾うことになる。この事故により千代子は姿をくらまし、事実上の引退となった。姿を消した理由について、千代子は老いた自分を「鍵の君」に見られたくないという思いからだと話した。ここでインタビューは終了し、発作によって倒れた千代子はそのまま救急車に運ばれた。その道中で立花は井田に「鍵の君」が傷の男らによる拷問ですでに亡くなっていたことを話す。その後、千代子は病院のベッドで鍵が手元に戻ってきたことに安堵しながら静かに息を引き取った。場面は再びロケットのシーンとなり、若い頃の姿となった千代子は晴れ晴れとした表情だった。
『千年女優』の登場人物・キャラクター
藤原 千代子(ふじわら ちよこ)
CVは70代を荘司美代子、20代から40代を小山茉美、10代を折笠富美子が担当している。本作の主人公であり、日本映画でも名を残すほどのベテラン女優。関東大震災が起こった日に生まれる。
まだ学生だった頃に「鍵の君」と出会い、それ以降「鍵の君」を想い続けている。彼との再会を望みながら映画会社「銀映」に所属する。その後、数多くの作品に出演し日本映画界の中でもトップの存在となるがある作品の撮影中に行方をくらまし、そのまま引退することになる。
引退から30年後、本編の内容である取材を受けることになる。その際に立花からなくしたと思っていた鍵を受け取ることで鍵の君と今までの女優人生について語り始める。
立花 源也(たちばな げんや)
CVは60歳の頃を飯塚昭三、青年の頃を佐藤政道が担当している。映像制作会社「VISUAL STUDIO LOTUS」の社長であるが、若い頃は「銀映」のスタッフとして働いていた。
千代子の熱烈なファンであり、彼女に対する批判的な発言があれば憤慨する。「銀映」の撮影所が閉鎖するに際して、千代子に取材を申し込む。実は「銀映」で働いていた頃に千代子がなくしたと思っていた鍵を拾い、取材の際に千代子に返した。これを返すことで千代子は今までの女優人生と鍵の君への想いを振り返ることとなる。千代子が思い出を振り返る場面ではシーンに応じた役になって登場する。
井田 恭二(いだ きょうじ)
CVは小野寺昌也。立花が経営している会社「VISUAL STUDIO LOTUS」に所属しているカメラマン。立花と同じく若い頃は「銀映」に所属していた。
千代子については昔の有名な女優という程度の認識しか持っていない。千代子の思い出を振り返る場面では序盤はカメラを回していたが、中盤以降は立花と同じく思い出の中の登場人物になりきる。
島尾 詠子(しまお えいこ)
CVは津田匠子。千代子が「銀映」に入社するまでは看板女優として通っていたが、その後は千代子のライバル役としての出番が増え千代子に対し嫉妬心を抱くようになる。
千代子が思い出を振り返る場面では鍵の君の捜索を妨害していた。
鍵の君
CVは山寺宏一。絵かきの青年であり、千代子が片想いをしている相手。思想犯として追われていたところを千代子に助けられる。その後、千代子と約束の場所での再会を誓った後に行方をくらます。
傷の男
CVは津嘉山正種。左の頬に傷がある。思想犯として扱われていた鍵の君を探していた。千代子が思い出を振り返る場面では千代子と鍵の君の間を引き裂く役として登場する。
大滝 諄一(おおたき じゅんいち)
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