『この世界の片隅に』とは、こうの史代の漫画作品、及びそれを原作として制作されたドラマ、アニメ映画である。漫画作品は双葉社の『漫画アクション』にて2007年から2009年にわたり連載された。
戦時下の呉を舞台に、嫁いできた浦野すずは身近な人々の死や自身の右手の喪失という過酷な現実に直面する。日常が暴力によって歪められていく中で、すずは自らの居場所や生きる意味を問い直し続ける。
ドラマは2011年と2018年に製作され、アニメ映画は2016年11月より全国公開されている。
『この世界の片隅に』の概要
『この世界の片隅に』とは、こうの史代による漫画、及びそれを原作として制作されたドラマ、アニメ映画である。原作漫画は『漫画アクション』にて2007年1月23日号から2009年1月20日号にわたり連載された。
本作は、戦時中の広島県呉市を舞台に、激しさを増す戦況の中でも日々の暮らしを懸命に営む一人の女性・浦野すずの姿を描いている。作者の前作『夕凪の街 桜の国』が原爆投下後の広島をテーマにしていたのに対し、本作では軍港の街・呉を主な舞台に設定し、原爆のみならず空襲や物資不足といった戦争全体の状況下にある人々の「生の悲しみやきらめき」に焦点を当てている。
物語は、広島市江波で育った想像力豊かな少女・すずが、1944年に呉の北條家へ嫁ぐところから本格的に動き出す。見知らぬ土地での新しい生活に戸惑いながらも、すずは持ち前のユーモアと生活の知恵で、乏しい配給や厳しさを増す制限を乗り越え、義父母や夫の周作、義姉の径子やその娘・晴美といった家族に受け入れられていく。しかし、1945年に入ると軍港である呉は幾度もの激しい空襲に晒されるようになり、すずは身近な人々の死や自身の右手の喪失という過酷な現実に直面する。日常が暴力によって歪められていく中で、すずは自らの居場所や生きる意味を問い直し続ける。
本作は、徹底した時代考証に基づき当時の風俗や風景を細やかに再現しており、単なる悲劇の記録に留まらず、戦時下であっても確かに存在した人々の営みを多層的に描き出している。2011年と2018年には実写ドラマ化され、2016年に公開された片渕須直監督による劇場アニメーション映画は、深い感動を呼び起こし異例のロングランヒットを記録。2024年にはミュージカル化も果たした。
原作漫画は、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(2009年)を受賞し、THE BEST MANGA 2010 このマンガを読め!(フリースタイル)第1位(2010年)、ダカーポ特別編集 最高の本! 2010(マガジンハウスムック)マンガ部門第1位(2010年)に選出されている。
『この世界の片隅に』のあらすじ・ストーリー
1944年。太平洋戦争が開戦してから4年の年月が流れていた。
その年、絵を描くことが好きな少女、浦野すずは、呉市に住む北條周作と言う男性の元に嫁ぐことになる。
慣れない土地での生活、更に周作の姉であり、実家へと出戻ってきた黒村径子の小言に耐えながらも、すずは周作やその家族を愛しながら、日々の生活を懸命に生きていく。
おっちょこちょいで、おっとりとした性格のすずもまた、北條家の人や呉の人たちに愛されていく。
しかしそんなすずの日常にも、戦争の影響が色濃くにじみ始める。
滞り始める配給。
そしてすずたちが生活していた呉には、海軍工廠、海軍直営の軍需工場があった。
また数多くの軍艦が出港、帰港する港もあったことから、日本でも有数の海軍軍事都市であった。
そのため、空襲の回数も増していく。
そんなある日、すずは通常空襲に混ざって投下された時限爆弾によって径子の娘、つまりすずにとっては姪にあたる晴美の命と自らの右腕を失ってしまう。
径子に責められ身につまされるような思いを抱いたすずは、見舞いに来た妹の言葉に誘われるようにして実家に帰ることにする。
しかし里帰りする当日の朝、すずは径子と和解し、北條家に残る決心をする。
奇しくもその日は1945年の8月6日。広島に原子爆弾が投下された日であった。
爆心地から距離がある北條家から、すずは閃光と衝撃波、巨大な雲を確認する。
それから9日後の8月15日。すずはラジオで戦争の終了を知る。
年が明け1946年の1月。ようやく里帰りを果たしたすずは、祖母の家に身を寄せていた妹と再会する。
両親は既に亡くなっており、妹には原爆症の症状が出始めていた。
原爆の傷跡が生々しい広島市で、すずはひとりの少女と出会う。
少女は、原爆で母親を亡くしていた戦災孤児だった。
自分を慕ってくるその少女を連れ、すずは呉の家へと帰るのだった。
『この世界の片隅に』の登場人物・キャラクター
浦野 すず(うらの すず/CV:のん)
浦野すず(結婚後は北條すず)。今作の主人公。
広島市江波の海苔梳きの家で育った。
まじめで働き者なのだが、おっちょこちょいな性格であることから、たびたび小さなアクシデントを起こして周りを呆れさせることもある。
戦争の影響が色濃くなっていく中で、それでも北條家のためにアイディアを尽くしながら、懸命に、けれど明るく、楽しみながら生活を営んでいく。
北條 周作 (ほうじょう しゅうさく/CV:細谷 佳正)
北條周作…すずの夫。すずより4つ、年が上で、呉鎮守府の軍帽書記官を務めている。
突然、すずのもとを訪れ結婚を申し込む。すずは覚えていないが、実は幼い頃、すずと一度だけ会っていた。
非常にまじめな性格で、それゆえ親族から『暗い』と言われることを気にしている。
すずに対して愛情深く接しているが、一方ですずが幼馴染の水原哲に淡い思いを抱いていることに気がついている。
黒村 径子 (くろむら けいこ/CV:尾身 美詞)
黒村径子…周作の姉。結婚して家を出ていたが、時計屋を営んでいた夫が亡くなってしまう。
それが契機となり嫁ぎ先の家族との折り合いが悪くなってしまったため、娘の晴美と共に実家へと戻ってきた。
自分の意見をしっかりと持っているおり、はっきりと物事を言わなければ済まない性格。
そのため嫁にやって来たすずに対しても、何かときつくあたる。
だがその裏側には、自らの結婚生活がうまくいかなかったことに対する複雑な思いもある。
晴美の死に関してもすずを強く非難するが、じょじょにその態度を軟化させ、最終的には右手を失ってしまった彼女の身の回りの世話をするまでになる。
黒村 晴美 (くろむら はるみ/CV:稲葉 菜月)
黒村晴美…径子の娘。すずにとても懐いていたが、時限爆弾に巻き込まれ亡くなってしまう。
北條 円太郎 (ほうじょう えんたろう/CV:牛山 茂)
北條円太郎…周作の父親。技師として働いている。
化学を専攻としており、そちらに話が傾くと口が止まらなくなる。
非常に温厚で、すずに対してもやさしく接する。
北條 サン (ほうじょう さん/CV:新谷 真弓)
北條サン…周作の母親。足が不自由で、虚弱体質のため体を思うように動かすことが難しい。
ただそれでも、こまかな家事など、自分ができることは精一杯行っている。
すずに対しても親身に接している。
水原 哲 (みずはら てつ/CV:小野 大輔)
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目次 - Contents
- 『この世界の片隅に』の概要
- 『この世界の片隅に』のあらすじ・ストーリー
- 『この世界の片隅に』の登場人物・キャラクター
- 浦野 すず(うらの すず/CV:のん)
- 北條 周作 (ほうじょう しゅうさく/CV:細谷 佳正)
- 黒村 径子 (くろむら けいこ/CV:尾身 美詞)
- 黒村 晴美 (くろむら はるみ/CV:稲葉 菜月)
- 北條 円太郎 (ほうじょう えんたろう/CV:牛山 茂)
- 北條 サン (ほうじょう さん/CV:新谷 真弓)
- 水原 哲 (みずはら てつ/CV:小野 大輔)
- 浦野 すみ (うらの すみ/CV:藩 めぐみ)
- 白木 リン (しろき りん/CV:岩井 七世)
- 『この世界の片隅に』の時代背景
- 『この世界の片隅に』の用語
- 『青葉』
- 『呉』
- 『配給』
- 『楠公飯』
- 『入湯上陸』
- 『大和』
- 『この世界の片隅に』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- すずの絵によって表現されるシーン
- 周作との関係が描かれるシーン
- すずたちの日常
- 「何でも使うて、暮らし続けにゃならんのですけぇ、うちらは。」
- 「警報もうあきたー」
- 「この世界にそうそう居場所は無くなりゃあせんよ」
- 「ずうっとこの世界で普通で……まともで居ってくれ」
- アニメ映画『この世界の片隅に』制作までの流れ
- 声優に関して
- 封切に関して
- 評価に関して
- 著名人のコメント
- 『この世界の片隅に』の原作漫画とアニメ映画の違い
- リンとのエピソード
- 周作とのエピソード
- エピソードに違いがうまれた理由
- 『この世界の片隅に』の原作漫画とドラマ版の違い
- 『この世界の片隅に』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
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