
『ねじ式』とは、つげ義春原作の短編漫画。1968年刊行の『月刊漫画ガロ』6月増刊号『つげ義春特集』に掲載された。同作品は、とある海岸でメメクラゲに左腕を噛まれた少年が、医者を求めて漁村を彷徨い不思議な体験をする短編漫画である。何度も単行本化されており、つげの代表作の1つに数えられている。また、1998年に浅野忠信主演の実写映画版が公開された。つげは、『ねじ式』発表までは叙情的な作風の漫画家だったが、同作品以降はシュールで前衛的な作品を多く執筆している。

ツベがクラゲに噛まれた漁村で、金太郎飴を売っている老婆。ツベに自身が営んでいる金太郎飴屋の上階にいる産婦人科女医を紹介した。
駅員(演:砂塚秀夫)

終電を逃したツベに、「やなぎ屋」を紹介した男性駅員。
家主(演:丹波哲郎)
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「大平荘」の大家である老男性。『天才バカボン』のパパのような出で立ちが特徴である。自殺を図ったツベが退院すると、過去にも同アパートで自殺した者がおり、生還したのはツベが初めてだと語った。なお、家主役の丹波哲郎(たんばてつろう)は、『ねじ式』の監督を務めた石井輝男作品の常連として知られており、『ポルノ時代劇 亡八武士道』や『盲獣VS一寸法師』などで怪演を見せた。
『ねじ式』の用語
メメクラゲ

メメクラゲによって切断された少年の左腕の血管
メメクラゲとは、『ねじ式』に登場する架空の生物。しかしながら、登場したのは名前のみで、詳しい形態や生態・毒の有無などは不明である。少年が左腕を噛まれて静脈を切断されてしまったことから、歯のようなものが存在することが示唆された。しかも、人間の皮膚や血管を簡単に切ることができるほど硬く鋭いものだと窺える。
なお、つげ義春は「××クラゲ」のつもりで執筆したが、編集を担当した権藤晋(高野慎三)が「メメクラゲ」と間違えて誤植したというエピソードが有名である。つげは、後年インタビューなどでメメクラゲで良かったという趣旨の発言をしており、権藤にもそのことを伝えたとのことだ。
金太郎飴ビル(きんたろうあめビル)
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金太郎飴ビル(きんたろうあめビル)とは、『ねじ式』に登場する架空の建造物。金太郎飴を売って財を成した老婆が建てたもので、古い石炭工場のような外観をしている。老婆は、金太郎飴ビルに産婦人科が入居していることを少年に明かしたが、ビルのどの辺りが産院なのかは不明である。また、産院以外のテナントも明かされていない。
〇✕方式(まるばつほうしき)

女医の手術で血管が繋がった少年
「〇✕方式(まるばつほうしき)」とは、『ねじ式』に登場する架空の方式。産婦人科の女医が、少年の左腕を手術した際に用いた方式であり、その影響で彼の血管はねじのような形になった。〇✕方式が、具体的にどのような方式であるのかについては不明である。
『ねじ式』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
少年「まさかこんな所にメメクラゲがいるとは思わなかった」

洗濯物の間を通って医者を捜す少年
『ねじ式』は、いきなり「まさかこんな所にメメクラゲがいるとは思わなかった」という少年のモノローグでストーリーが始まる。海水浴をしていた少年は、右手で左腕の切断された静脈を止血するように押さえた状態で海から陸へと戻って来た。このシーンは、ストーリーの冒頭で丸々1ページを使った大ゴマで描かれており、耳慣れない言葉「メメクラゲ」との相乗効果でシュールな魅力を醸し出している。『ねじ式』といえば、真っ先にこのセリフ・シーンを連想するファンも少なくない。
ロイド眼鏡の男「きみはこう言いたいのでしょう。イシャはどこだ!」

医者がどこにいるのか教えてもらえず苦悩する少年
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目次 - Contents
- 『ねじ式』の概要
- 『ねじ式』のあらすじ・ストーリー
- 『ねじ式』漫画版
- 重傷を負って彷徨う少年
- 左腕の血管がねじ式になった少年
- 『ねじ式』映画版
- ツベと国子の別離
- つべとコバヤシチヨジ
- ツベと「やなぎ屋」の娘
- ツベと女医
- 『ねじ式』の登場人物・キャラクター
- 『ねじ式』漫画版
- 少年
- ロイド眼鏡の男
- 狐のお面を被った少年
- 老婆
- 女医
- 『ねじ式』映画版
- ツべ(演:浅野忠信)
- 国子(くにこ/演:藤谷美紀)
- 看護婦(演:藤森夕子)
- 木本(きもと/演:金山一彦)
- もっきり屋の少女/コバヤシチヨジ(演:つぐみ)
- やなぎ屋の娘(演:藤田むつみ)
- ヌードの女(演:青葉みか)
- 女医(演:水木薫)
- 村の飲み客(演:杉作J太郎、海原由樹)
- 娘の母(演:三輪禮子)
- ロイド眼鏡の男(演:原マスミ)
- 村長(演:高野慎三)
- セパード/小次郎(こじろう)(演:広崎哲也)
- 医師(演:三木秀則)
- 金太郎飴売り(演:清川虹子)
- 駅員(演:砂塚秀夫)
- 家主(演:丹波哲郎)
- 『ねじ式』の用語
- メメクラゲ
- 金太郎飴ビル(きんたろうあめビル)
- 〇✕方式(まるばつほうしき)
- 『ねじ式』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 少年「まさかこんな所にメメクラゲがいるとは思わなかった」
- ロイド眼鏡の男「きみはこう言いたいのでしょう。イシャはどこだ!」
- 少年「いやこの場合テッテ的というのが正しい文法だ」
- 少年「なるほどポキン金太郎」/老婆「ポキン金太郎」
- 『ねじ式』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- つげ義春の作風を一変させたシュールな作品『ねじ式』
- 少年の顔が描き直されたバージョンが存在する『ねじ式』
- 「メメクラゲ」や「眠科」など誤字・誤植が存在する『ねじ式』
- 実は多くの元ネタがあることで知られる『ねじ式』
- 後の漫画作品に多大な影響を与えた『ねじ式』