緋色の欠片(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『緋色の欠片』は、2006年にアイデアファクトリー(オトメイト)より発売された、恋愛アドベンチャーゲームである。『緋色の欠片シリーズ』の第1作目(原点)となる作品で、シナリオライターは西村悠、キャラクターデザインおよび原画は『薄桜鬼』で知られるカズキヨネが担当している。本作は西村悠のシナリオライターデビュー作であり、以降の『緋色の欠片シリーズ』や同ジャンルの『Code:Realize 〜創世の姫君〜』も手掛けている。

『緋色の欠片』の概要

『緋色の欠片』は、2006年にアイデアファクトリー(オトメイト)より発売された、恋愛アドベンチャーゲームである。『緋色の欠片シリーズ』の第1作目(原点)となる作品で、キャラクターデザインおよび原画は『薄桜鬼』で知られるカズキヨネが担当している。
2006年7月6日にPlayStaition 2が発売され、2007年2月15日にファンディスク『緋色の欠片~あの空の下で~』が発売された。以降、新規シナリオやミニゲームの追加を加えながら、ニンテンドーDS・PlayStaition Portable・PlayStaition 3など、さまざまな媒体でゲームソフトが開発されている。2012年にはアニメ化され、分割2クールで放送された。
2024年8月1日には、ニンテンドーSwitch用ソフト『緋色の欠片~おもいいろの記憶~』が発売予定されている。シリーズ開始から18年経った今でも、根強いファンを獲得している作品だ。

物語の舞台は、八百万の神々が住む「常世」と人間の住む「現世」の境界があいまいな「季封村」。世界を滅ぼす力を持つ刀、「鬼斬丸」を封印し管理する宿命の玉依姫と守護者たちが、「鬼斬丸」を狙うドイツの魔術組織・ロゴスと戦うさまを描く。
本作品は、古事記に影響を受けた日本独自の世界観を持つ。八百万の神々である「カミサマ」は穢れをため込むと「オボレガミ」や「妖(あやかし)」などの異形へ変化する。敵組織だけでなく、異形から主人公を守るため、守護者たちの戦闘シーンが非常に多いのも特徴だ。そのため、和風伝奇ファンタジーであるが、少年漫画の要素も兼ね備えた作品である。
また、本作は恋愛アドベンチャーゲームであるため、攻略対象となる守護者6名(内1名は隠し攻略キャラクター)との恋の行方も見どころである。

物語はノベルゲーム形式で進行し、各章に登場する選択肢によって攻略したいキャラクターの好感度を上げていく。攻略対象と絆を深めてロゴスに立ち向かい、長きに渡る鬼斬丸の宿命から解放されるため奮闘する姿が丁寧に描かれているのが魅力だ。

『緋色の欠片』のあらすじ・ストーリー

物語の進み方

本作はルート分岐前・分岐後も共通ルートが多いため、先に物語の進み方を解説する。

前世の記憶

物語の冒頭で、紅葉が舞う世界の中で顔の見えない男性が主人公(以降はデフォルト名の珠紀と表記)に対して「すまない」「許してくれ」「どうやって詫びればいい」と訴えるシーンがある。ストーリーを進めると判明するが、これは珠紀の前世の記憶であり、拓磨の前世である常世神と玉依姫命の最期の瞬間の記憶だ。
第一章~第四章の共通ルートにおいて、珠紀はこのシーンを夢として何度も見ており、男性が誰なのか分からず戸惑う。拓磨攻略ルートではより頻繁に見ており、前世の記憶を思い出すきっかけになった。他のキャラクターにルートが分岐すると、この夢のシーンは減っていき、代わりに1000年前の戦いの記憶を夢に見るようになる。珠紀は1000年前に鬼斬丸を封印した玉依姫の生まれ変わりでもあり、ルートによって3つのカミへの対応や関係性は異なる。

ルート分岐と選択肢の関係

第一章~第二章で獲得した各キャラクターの好感度によって、第三章からペアに分かれたルート分岐が始まる。
ペアは3つあり、鬼崎拓磨と鴉取真弘、狐邑祐一と犬戒慎司、大蛇卓は狐邑祐一と犬戒慎司のどちらかとペアになってストーリーが進行する。狗谷遼は隠れ攻略対象のため、三章まで他の攻略対象の好感度を満遍なく上げ、偏りが出ないように注意しなければ彼は物語に登場しない。
ゲームの仕様上、最初に攻略できるのは鬼崎拓磨か鴉取真弘のどちらかである。

ペアの共通ルートを進めて2人の内どちらかに関わる選択肢を選び、攻略したい守護者の好感度を上げる選択肢を選び続けると、第四~五章より個人の攻略ルートに入っていく。
守護者によって封印への考え方は違うが、閉鎖的な環境で宿命に囚われて過ごしてきたため、心に傷を抱えている。物語の状況において消極的な選択肢を選び続けると、守護者の心は救われず好感度が上がらないため、バッドエンドになるので注意が必要だ。また、守護者の好感度が上がっていたとしても、基準より下回る場合は悲恋エンドになり珠紀や守護者が死ぬなど、結ばれない展開になる。

はじまり

両親の海外転勤をきっかけに、母方の実家である季封村にやってきた主人公・春日珠紀は、村に向かう山道で「カミサマ」と呼ばれる不気味な生き物に襲われる。珠紀を救ったのは、鬼崎拓磨という少年だった。彼に渡された不思議な札によってカミサマを退け、無事季封村に連れてこられた珠紀は、祖母・宇賀谷静紀から「玉依姫」と「鬼斬丸」の伝承について教えられる。
古より「玉依姫」という巫女が、世界を滅ぼす力そのものである刀「鬼斬丸」の封印と管理を担ってきたこと。宇賀谷家は玉依姫の一族で祖母は先代であり、当代の玉依姫である珠紀は弱まってきた鬼斬丸の封印を強固にするのが役目だというのだ。祖母の突然の告白に困惑する珠紀だが、戸惑いながらも守護者たちとともに宿命に立ち向かっていく。

守護者たちとの出会い(第一章)

守護者たちの日常。

玉依姫の宿命を聞いた後、玉依毘売神社にて祖母(以降、守護者からの呼び名:ババ様と表記)と言蔵美鶴との3人暮らしが始まった。
転校初日、珠紀は同級生で高校2年生の拓磨だけでなく、守護者で3年生の鴉取真弘と狐邑祐一、書道家で守護者の中で最年長の大蛇卓と出会う(なお、この時点で季封村にいる守護者は4人であり、珠紀は卓に「5人目の守護者は諸事情があり現在は季封村にいない」と教えられる)。新しい環境に不安も多かったが、珠紀は持ち前の前向きさを発揮し、守護者たちと少しずつ親睦を深めて玉依姫のことについてもっと知りたいと思う。

次の日の放課後、実家の蔵で珠紀は守護者とともに玉依姫の伝承について文献を調べた。玉依姫や鬼斬丸封印の歴史を知り、自分が何をすべきか理解するためだ。加えて、守護者たちも玉依姫や守護五家について調べることをババ様に禁じられており、より詳しい事情を知らなかったためである。
調査中、珠紀がある文献を手に取ると、玉依の血に反応した文献から太古の記憶が頭に直接流れ込む。珠紀は頭痛と貧血症状に襲われたため、調査は中断された。体調不良が治まった後、珠紀は居間に集まった守護者たちと情報共有と現状整理をした。

封印の仕組みについてだが、鬼斬丸の封印は「玉依姫の血筋」・「宝具5つ」・「村を封じる3つの結界」に守られており、5ヶ所に分けて封印された宝具は強固に保たれている。しかし、玉依姫の血筋は年月を経て薄まり、中世より弱まり続けている。また、鬼切丸の封印の強さには波があり、現在が一番弱まっている状態であった。
加えて3ヶ月以上前、卓が一瞬だけ村の結界が消えたことを察知しており、この件を聞いた他の守護者は驚く。結界消失が自然的か人為的かは分からず、鬼斬丸を狙う侵入者が村に入った可能性はあるが、敵対者が玉依姫陣営に接触を図っていない以上、守護者たちにできることはなかった。

後日、珠紀が護衛なしで下校していると、帰り道に「オボレガミ」に襲われる。玉依姫の血筋は高純度の霊力を秘めているため、妖やカミに狙われやすい。カミたちの様子がおかしく、守護者の護衛なしで帰るのは危険だと言われていたが、先日の調査だけでは玉依姫の自覚を持てず、珠紀は一人で下校してしまったのだ。
オボレガミに食われそうになったが守護者4人に救われ、この出来事から珠紀は彼らへの恩を感じ玉依姫の自覚を持った。自分のために危険な戦いに身を投じ、守ってくれた守護者の役に立ちたいと願う。珠紀は世界の存続のためではなく、守護者や自分の大事な人たちを守るため、玉依姫になるため努力すると決意する。また幕間にて、この時のオボレガミの襲撃はババ様がけしかけ、珠紀の玉依姫の力が発現するかどうかを図ろうとした描写がある。

5人目の守護者の帰還・ロゴス襲来(第二章)

珠紀は学校の廊下で後輩の少年にぶつかり、転倒しかけたが相手の少年の不思議な力によって助けられる。彼は犬戒慎司という5人目の守護者で、数年間季封村の外で修行をして帰ってきたのだ。修行を行っても守護者の能力は発現しなかったが、代わりに言霊によって望む現象を引き起こす「御言葉使い」の才能を磨いた慎司は、守護者として玉依姫の守護の任に就くことを誓う。直接的な攻撃力は低いが、言霊によって他の守護者たちの戦いをサポートできるようになったのだ。
他の守護者たちや美鶴は幼馴染である慎司にまた会えたことを嬉しく思うが、同時に慎司が宿命に再び縛られることを憂い、複雑な心情を抱えていた。玉依の血筋と守護者たちは鬼斬丸封印の守護の役目と責任から逃れられず、村の外に出ることも許されない。そのため、一度役目から解放されて外の世界に出た慎司に対する憧れや、宿命から離れたところで幸せになって欲しい気持ちがあったのだ。珠紀は卓から守護者たちの気持ちを代弁され、慎司と他の守護者たちの関係性が良くなるよう努力しようと決める。

さまざまな思いが交錯する中、守護者たちと珠紀は昼休みや放課後の交流を経て絆を少しずつ深めていく中、遂に鬼斬丸を狙う者たちが現れる。ドイツの魔術組織「ロゴス」の聖女(モナド)である10歳頃の少女、アリア=ローゼンブルグをリーダーとした従者4人。拳で全ての敵をねじ伏せる力の求道者、アイン。生者から生気を奪う黒い鎌「ソウルイーター」を操る不気味な男、ツヴァイ。老紳士風の魔術師(マグス)ドライ。言霊に似た力で他者の行動を縛る「サイレンの魔女」フィーア。彼らは鬼斬丸をアーティファクトと呼び、封印を破り本国へ持ち帰ることが目的だった。

ロゴスの従者たちと2度の邂逅の後、ロゴスの5名は宝具が封印された「封印域」に全員揃って現れ、珠紀たちに宣戦布告をする。1つ目の宝具の封印を守るため、従者4人と守護者5人は戦う。当初、両者の戦いは守護者たちの方が優勢に見えたが、ロゴスの従者たちの力は強く、守護者たちは敗北する。宝具には結界が張ってあり、本来玉依姫以外には触れられないが、アリアは何故か結界を無効にする力・セフィロトを持っており、封印は破壊され宝具は奪われる。

2度目のロゴス襲撃(第三章~第四章の共通ルート)

守護者たちは超常の力を持つため、守護者たちの傷は早々に回復した。ロゴスとの実力差を感じ、珠紀と守護者たちは各々の気持ちを抱える中、宇賀谷家に招集される。珠紀たちはババ様へロゴス襲撃の顛末を伝えると、今後の方針が決まった。
宝具は5つ揃って初めて効力を持つ。宝具を1つ奪われたことで封印の調和がとれず、鬼斬丸の気が漏れて周囲のカミへの影響が強くなり、オボレガミが生まれやすくなった。他の宝具が奪われる度に影響は大きくなるため、守護者と珠紀は残り4つの宝具を奪われないようにするのが当面の方針となる(この章よりルートがペアごとに分岐し、2人の共通ルートを経て攻略したいキャラクターの個別ルートに入る)。また、ババ様は珠紀が玉依姫の力に覚醒すれば封印の儀を行えると伝えた。
珠紀は玉依姫の力に覚醒するため、より玉依姫の情報を知りたいと望むようになり、自分なりに力を高める修行をするようになる。 数日後、封印守護のため、守護者たちは分担して見回りを行なっていた。放課後に珠紀は封印域への異常を察知し、相談相手を探しに行く。珠紀と守護者2人は封印域へ向かったが、封印自体に異常はなかった。念のため、守護者2人が周囲の状態を確認しに良き、珠紀は封印の社の前で待つことになった。

やがて日が暮れ夜になるほど時間が経った時、アリアが珠紀に接触してくる。アリアは基本的に争いを好んでおらず、慈悲の心から封印から手を引くよう珠紀に説くが、珠紀は死の恐怖を感じながらも戦うことを選ぶ。鬼斬丸のことはよく分からないが、今まで自分の命を守ってくれた守護者たちに応えるため、玉依姫の役目を放棄する気はないと伝えた。
珠紀の意思が固いことを理解したアリアは、明日の同じ時間にこの場所で決戦しようと再度宣戦布告して去り、珠紀は守護者に支えられながら、明日の決戦に勝って大切な日常を守ろうと誓う。
次の日の決戦時、珠紀とアリアが見守る中、守護者たちは作戦を立ててロゴスへ挑む。武闘派の拓磨と真弘が純粋な戦闘力の高いアインとツヴァイと戦い、一番戦闘力が低そうな魔術師ドライを遠隔攻撃ができる祐一と慎司が倒した後、2人の戦いのフォローに行く。卓はサポート役であるフィーアを抑えるというものだった。
しかし、守護者たちは次第に追い詰められていき、勝ち目がないと感じた守護者は珠紀に隙を作るから逃げろと言う。だが、珠紀は逃げずに立ち向かい、事前に美鶴から渡されていた霊符3枚を使用してアインとツヴァイに反撃する。強力な霊符のため連続使用は禁じられていたが、珠紀は戦況を変えるべく3連続で使用したため、力を使い果たし疲労で倒れそうになった。

珠紀の行動によって、一時戦況は守護者側が優勢に見えた。だが、ロゴス側は全力で戦っておらず、満身創痍な守護者たちに勝ち目はなかった。アリアは力の差を見せつけ、降伏し珠紀がロゴスへ来るならこれ以上守護者たちを傷つけないと条件を出す。ドライによって、玉依姫の血と宝具が鬼斬丸の制御に必要だと解析されていたためだ。しかし、珠紀は守護者を信じ降伏はしないと告げる。守護者たちがまだ戦えると言っているのに、自分が諦めるわけにはいかないと思ったからだ。守護者たちも珠紀の姿に心打たれ、戦う意志をより強くする。アリアとの交渉は決裂し、守護者たちは再度ロゴスの従者たちと戦うが、戦力差は歴然で一方的な戦いになり守護者たちはなす術なく惨敗する。
倒れる守護者たちに珠紀は駆け寄り、守護者たちを守ろうと身一つで立ちふさがる。その姿に思うところがあったアリアは、戦いをやめるよう従者たちへ呼びかけ、2つ目の宝具を奪っていった。アリアは「次に抗えば、この程度では済まさない」と言い残し、従者たちとともに森の奥へと去る。取り残された珠紀は、戦いの辛さや悲しみを知らないまま無責任に負けないと思い上がり、結果守護者たちを戦わせ、深く傷つけたことを後悔して泣いた。

2度目のロゴス襲撃後(第三章~終章の個別ルート)

封印は残り3つとなり、封印が弱まったことでロゴスの従者でも宝具に干渉できるようになり、第3の宝具は奪われる。急速に悪化する状況を鑑み、ババ様は守護者に宇賀谷家に泊まり込んで珠紀を守るよう命じる。ロゴスの襲撃に備えるだけでなく、オボレガミや妖が増えたため、不測の事態に対応できるようにするためだ。
同居生活が始まり、話す機会が増えた珠紀と守護者の仲は深まっていく。珠紀は現状を変えるべく、守護者を誘い宇賀谷家の蔵や学校の図書館で独自調査を継続的に行なった。そして、珠紀たちは鬼斬丸の前身である最初のカミの力を玉依姫が管理することになった経緯や、ロゴスが過去に何度も季封村を訪れていたことを突き止める。調査を勧める中、守護者たちが抱える潜在的な悩みの片鱗が垣間見え、珠紀は攻略対象を救いたい気持ちを強め、玉依姫として覚醒したいとより強く願うようになる。

鬼崎拓磨ルート

拓磨と珠紀は蔵でとある文献を発見し、1000年前に鬼が暴れた際に刀の力が開放され、鬼を斬ったことから鬼斬丸の名がついた事実を知る。拓磨は幼い頃、自分が化け物となって周囲の人々や大切なものを壊し、世界を滅ぼす夢を見ていた。以来、成長してさらに力が強くなると自分が化け物になるのではないかと恐怖し、本来の力を制御し拒んできたのだ。
しかし珠紀により、珠紀が玉依姫命の生まれ変わりであること、拓磨は常世神の生まれ変わりであることが判明する。これが1つの要因となって拓磨は守護者の真の力に目覚めることができ、鬼斬丸の力に飲まれたアインを倒すことに成功する。

鴉取真弘ルート

ヤタガラスの子孫である真弘は有事の際に自身の命を捧げ、鬼斬丸を完全に封印する使命を負っていたために達観した死生観を持っていた。それを知った珠紀は怒りを露わにするが、真弘は既に宿命を受け入れて自分が犠牲になり珠紀が救われるならそれで良いと考えていた。しかし他の守護者との会話の中で真弘は珠紀を一人残して死ねば心配で死にきれないと本音を吐露し、彼女と共に生きるため抗うことを誓った。
お互いの気持ちを確認しあった珠紀と真弘は封印にまつわる何もかもを壊すことを決意。玉依姫とヤタガラスの血に眠る封印の力、さらに自分たちの生命力を注ぎこんで鬼斬丸を破壊する。

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