攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』とは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の続編であるSFアニメ作品。原作は士郎正宗、監督は神山健治が務める。本作はストーリーコンセプトとして、劇場作品『イノセンス』の押井守が参加している。2004年からパーフェクト・チョイスで放送され、2005年には日本テレビ系列で放送された。主人公である草薙素子が所属する公安9課が「個別の十一人」と名乗るテロ集団と対峙する。テロリストの影で動く大きな組織に立ち向かうハードボイルドな9課の姿が描かれている。

荒巻大輔「いつの世も持つべき物は人脈だ」

第12話において、パトリック・シルベストルが書いたとされる革命評論集の幻の11編目「個別の十一人」の原書を探しにトグサは荒巻の知り合いである大学教授の元へ行った。トグサが荒巻に対し「よくこんな偏屈な大学教授が知り合いにいましたね」と話すと、荒巻は「いつの世も持つべき物は人脈だ」と返す。
荒巻は9課が動きやすいよう常に様々な後ろ盾を利用し、人脈によって9課は窮地を抜け出すことが多い。その荒巻の信条が語られるシーンである。

荒巻大輔「組織のトップに立つ人間が、自身の利権争いの道具として組織を利用し始めた時から、緩やかな死が始まる」

第16話において、各官僚が自身の利権に終始し、本題の難民問題につての議論が進まず、ため息をつく茅葺総理。総理に対し荒巻は各国の軍部や諜報機関が弱体化する理由として、「組織のトップに立つ人間が、自身の利権争いの道具として組織を利用し始めた時から、緩やかな死が始まる」と話す。
荒巻は利権にすがらず悪しきものを正すことを信条にし、そのために9課を動かし犯罪に立ち向かっている。その荒巻がトップに立つ人間のあるべき姿として語る場面である。

草薙素子「お前には勇気も才能もある。だが死んだら何も残らん。今は矜持をしまって未来をつくれ」

第17話において、素子が台湾難民のチャイをヤクザから救ったあと、チャイは空港のトイレで汗だくになる。命をかけようとしたチャイに、素子は「ロウはお前に義体化を勧めたり、ましてや命を落としてまで危険な抗争をしろと教えた訳では無いだろう?」と語りかける。そして最後に「お前には勇気も才能もある。だが死んだら何も残らん。今は矜持をしまって未来をつくれ」と話し台湾を後にする。
義体の精鋭部隊を率いる男らしい素子がチャイに対し母のような顔を見せる。最後に素子が自分の命を投げ出そうとする難民を救い生きるよう諭す姿は、クゼが行おうとしている難民解放に似ている。

クゼ・ヒデオ「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」

第23話において、荒巻洋輔に対しクゼは「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」と話し、「一度ネットを介しヒエラルキーの上層の存在を知ると、その事を忘れ皆低きに流れていってしまう。武器を持てば一度は使ってみたくなるのと同様に、力を持てばそれを誇示したくなる」と人の心理を語る。自分では何も生み出す事なく、何も理解していないのに、自分にとって都合の良い情報を見つけるといち早くそれを取り込み踊らされてしまう人々の無責任さをクゼは語った。
またその後、出島に航空機を飛ばしジャミングをかける内庁。孤立した難民は暴走を始めると予測していたゴーダもまた「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」と言い、不敵な笑みを浮かべる。

『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Individual Eleven』を制作

「個別の十一人」事件を描いたエピソードを約160分にまとめた『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Individual Eleven』が制作され、2006年にDVDでリリースされた。

押井守が投げかけたテーマは「9.11以降の戦争」

神山健治は押井守から「9.11以降の戦争を描け」と投げかけられた。そこで神山健治は元々「招慰難民」というテーマをあげていたため、在日の問題をあえてわかりにくい名称にし入れ込んだ題材であると語っている。

押井守からの唯一の具体的な指示は「不審船を描け」

押井守からの具体的な指示は、2001年に発生した九州南西海域工作船事件をもとに「不審船を描け」という指示であったと語る。実際に第22話でクゼの乗った偽装船が、海上保安庁の巡視船により撃墜され沈没したシーンが描かれた。

個別の十一人のモチーフは三島由紀夫

作中では革命評論集を書いた評論家をパトリック・シルベストルとしていたが、本来は実在する人物である三島由紀夫をベースにしようとしていた。三島由紀夫の著書『近代能楽集』は9編で構成され、あと1編を足し10編とされる逸話をもとにし「個別の十一人」という幻の一編が存在するという設定にした。しかし三島由紀夫本人の名を使用することは各方面の許可を取ることが難しく、Production I.Gに街宣車が来ることも想定し断念した。神山健治は架空の評論家をたてたことで、少しずつリアリティが失われてしまったと語っている。

『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):Origa「rise」

作詞:Tim Jensen、Origa 、作曲・編曲:菅野よう子

OP(オープニング):Ilaria Graziano「Christmas in the silent forest」

地上波放送用。
作詞:Shanti Snydar、作曲・編曲:菅野よう子

Laylahz4
Laylahz4
@Laylahz4

Related Articles関連記事

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX、S.A.C. 2nd GIG、Solid State Society(神山版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX、S.A.C. 2nd GIG、Solid State Society(神山版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊S.A.C.』は2002年放送のTVアニメ及びそのシリーズ。AD2030年、内務省直轄独立攻性部隊・公安9課が「笑い男事件」を追うストーリー。 続編の『S.A.C. 2nd GIG』ではテロリスト「個別の11人」を追う事件、『Solid State Society』は主人公・草薙素子が失踪後に謎のハッカー「傀儡廻し」に関わる事件となっている。 神山健治監督版『攻殻機動隊』シリーズ。

Read Article

攻殻機動隊シリーズ(原作漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊シリーズ(原作漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は士郎正宗によるSF漫画。1巻は草薙素子こと少佐が公安9課で事件を追う中人形使いと出会い融合するまで、1.5巻『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』は少佐が去った後の公安9課の活躍、2巻『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』は荒巻素子がテロ事件を追う内に草薙素子と邂逅するまでを描いている。

Read Article

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊・イノセンス(押井版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊・イノセンス(押井版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作とし、1995年に公開された日本のアニメ映画である。AD2029年、公安九課のリーダー草薙素子が事件を追う中、正体不明のハッカー“人形使い”と遭遇する。押井守監督版『攻殻機動隊』シリーズの1つであり、続編の『イノセンス』は2004年に公開された。ガイノイド“ハダリ”の暴走した原因を九課のバトーとトグサが追う。

Read Article

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年11月18日公開)は、士郎正宗原作のSF漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を映画化したアニメーション作品。製作会社はProduction I.G 。 その革新的ともいえるアニメーション技術から映像面で評価が高い本作だが、キャラクターの巧みな台詞回しもその人気の一因だ。当記事では、ファンの間で特に知られている名言・名セリフを紹介する。

Read Article

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(S.A.C.)』とは、士郎正宗が原作、神山健治が監督を務めたSFアニメ作品。2002年から2003年まで日本テレビ系列で放送された。舞台は、西暦2030年の日本。主人公の草薙素子(くさなぎ もとこ)が属する国の秘密組織「公安9課」が様々な事件を解決しながら「一つの陰謀」を明かしていく様子が描かれている。

Read Article

攻殻機動隊 SAC_2045(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 SAC_2045(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 SAC_2045』とは、Netflixで配信されているSFアニメシリーズ。『攻殻機動隊』シリーズでは史上初となるフル3DCG作品である。各メンバーが卓越したスキルを有する内務省元公安9課の「少佐」こと草薙素子はアメリカで傭兵となっていた。AIの急速進化の反動で世界的に持続可能性を追及した産業戦争’サスティナブル・ウォー’が勃発する中、驚異的な身体能力を持つ新人類’ポスト・ヒューマン’が出現。少佐たち元9課のメンバーは、新人類の謎に迫るうち、部隊再編を余儀なくされていく。

Read Article

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(S.A.C. SSS)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(S.A.C. SSS)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』とは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG』に続く長編SFアニメ作品である。原作は士郎正宗、監督は神山健治が務める。2006年にパーフェクト・チョイスで公開され、2011年には劇場で公開された。 主人公である草薙素子が公安9課を去り、トグサが新隊長として事件解決に挑む。現代にも通ずる社会問題と、その裏で動く組織と対峙するハードボイルドな作品である。

Read Article

攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE(DUAL DEVICE)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE(DUAL DEVICE)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』とは、『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の続編に位置づけられるサイバーパンク漫画である。士郎正宗が1997年7月~9月までに『週刊ヤングマガジン』で「DUAL DEVICE」という副題で連載していた作品群に、大幅加筆修正を加え単行本として発行された。ネットも普及していない時代に、ネット全盛の世界感を描いた事で多くのSFファンを魅了した攻殻機動隊シリーズの中で、第一巻を超えると言われる難解さが今作の魅力ともいえる。

Read Article

攻殻機動隊ARISE(アライズ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE(アライズ)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE(Ghost in the Shell: Arise)とは、Production I.Gが制作を務める、士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」を原作としたアニメ作品である。本作は主人公の草薙素子が公安9課を結成する前の物語に焦点が当てられており、バトーやトグサら9課の仲間たちがどのような形で素子と出会い、彼女と行動するようになったかが描かれているのが特徴となっている。

Read Article

攻殻機動隊ARISE、攻殻機動隊 新劇場版(黄瀬・冲方版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

攻殻機動隊ARISE、攻殻機動隊 新劇場版(黄瀬・冲方版攻殻機動隊)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊ARISE』は2013年6月に公開された劇場用アニメ。公安9課結束以前の物語で、正体不明のハッカー・ファイアスターターを巡る事件を追う。『攻殻機動隊 新劇場版』は『攻殻機動隊ARISE』の続編で2015年6月全国公開。ファイアスターターと草薙素子の出生の秘密が繋がっていくストーリー。 黄瀬和哉総監督・冲方丁脚本版『攻殻機動隊』シリーズ。

Read Article

【必見】高評価おすすめアニメまとめ【攻殻機動隊・コードギアスなど】

【必見】高評価おすすめアニメまとめ【攻殻機動隊・コードギアスなど】

アニメ大国と言われる日本。毎年数多くのアニメが制作されており、何を見たらいいのか迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。そんな数々のアニメの中でも、長年にわたり高い評価を得ている作品を、あらすじ・レビューとともにまとめました。これさえ見ておけば間違いない、見て損はないという作品ばかりです!

Read Article

目次 - Contents