アラジン（実写映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アラジン』の概要

『アラジン』（原題：Aladdin）とは、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズが制作し2019年に公開された実写版ミュージカル映画である。本作は1992年に同じくウォルト・ディズニー・ピクチャーズから公開された、同名2Dアニメーション映画の実写版リメイク作品となっている。原作は『千夜一夜物語』に収録されている『アラジンと魔法のランプ』を原案としたウォルト・ディズニー・ピクチャーズの大ヒット映画のひとつであり、日本での興行収入は41億円となった。リメイク版である本作の日本における興行収入は121.6億円であり、『アリス・イン・ワンダーランド』（2010年）の118.0億円、『美女と野獣』（2017年）の124.0億円と並んで実写リメイク映画の成功例となっている。ティーン・チョイス・アワードでチョイスムービーSF/ファンタジー賞、サターン賞でベストコスチュームデザイン賞、ピープルズ・チョイス・アワードで2019年のファミリームービー賞を受賞している。

本作の監督はイングランド出身の映画監督ガイ・リッチーだ。ガイ・リッチーは脚本家としても複数の作品を手がけており、本作の脚本制作にも関わっている。

音楽は原作に引き続きアラン・メンケンが担当している。アラン・メンケンは原作の作中歌「ホール・ニュー・ワールド」でアカデミー歌曲賞を受賞した実績を持つ、ディズニー音楽の巨匠である。

あらすじはほぼ原作を踏襲しており、アグラバーの町に暮らす貧しい青年が、魔法のランプに封印された魔人ジーニーの力を借りて、恋に落ちたプリンセスと結婚するために奮闘するストーリー。ジャスミンは原作とは異なり「国王になり国を治めたい」と高い志を持った、近代的なキャラクターに変更されている。またジーニーがストーリー終盤で人間になり、ジャスミンの侍女ダリアと結婚して子どもを授かっている点も大きな改変である。

見どころは歌唱シーンとダンスシーンである。原作でも歌われた往年の名曲「フレンド・ライク・ミー」は原曲の雰囲気はそのまま、ラップとボイスパーカッションを織り混ぜ新鮮にリメイクされた。また本作のオリジナルソング「スピーチレス〜心の声」では新たにジャスミンの心情が表現された。本作ラストシーンであるアラジンとジャスミンの結婚パーティーでは、大人数のダンサーが入り乱れて踊るインド映画のようなダンスシーンが挿入されている。

一度は続編の制作に着手していることが、監督やアラジン役メナ・マスードから明かされている。しかし2023年に全米脚本家組合と全米映画俳優組合のストライキが始まったことで制作がストップし、その後の進展は明確に明かされていない。

『アラジン』のあらすじ・ストーリー

アラジンとジャスミンの出会い

海上に小さな船で航海する家族がいた。父は幼い子ども達に「アラジンとプリンセスとランプの話だ」と、特別な物語を歌で語り始める。

砂漠の真っ只中にそびえる、獅子の頭の姿をした魔法の洞窟は「心が清いダイヤの原石のような者」のみを、洞窟の中に入れるという。家来を洞窟に送り込もうとして失敗したアグラバーの国務大臣ジャファーは、無言でその言葉を聞いていた。

アグラバーの町は活気付き、所狭しと商人が屋台を並べている。一方でスリや盗みが横行し、貧しく飢えた人々の姿も見られる。そこに暮らす青年アラジンもまた、相棒の猿アブーと共に盗みでなんとか生計を立てているのだった。そんなある日アラジンは市場で、飢えた子ども達に売り物のパンを無断で与える美しい女性と出会う。女性は店主に「盗みを働いた」と責められるが、「そんなつもりはない」と弁明し埒が明かない。見かねたアラジンは女性に「僕を信じて」と告げ仲裁に入る。アラジンは店主に女性が身につけていたブレスレットを渡すフリをしてその場を収め、素早くブレスレットを盗み出すと女性と共に逃げ出した。店主はすぐにアラジンに騙されたことに気がつき、衛兵を呼ぶ。アラジンと女性は町を縦横無尽に駆け回り、なんとか衛兵から逃げ切るのだった。

アグラバーの現状とジャスミンの望み

アグラバーの城の地下牢で、ジャファーは「ダイヤの原石」探しを何ヶ月も続けていた。狡猾なジャファーは魔法の洞窟の中にあるという魔法のランプを手に入れて、アグラバーの最高権力者になろうと執念を燃やしているのだった。「国で2番目の権力を持つ、国務大臣の地位で満足できないのか」と尋ねた兵士に激怒したジャファーは、逆上して兵士を井戸の底に突き落としてしまった。

衛兵から逃げ切ったアラジンは、安全な隠れ家として自分の家に女性を招待する。女性は自身を、プリンセスの侍女をしているダリアと名乗った。2人は身の上を語り合ううちに、運命に囚われているお互いの人生に共感し合うのだった。その時アラジンの部屋から、アグラバーの町にプリンセスに婚姻を申し込みにスカンランドの王子がやってきた様子が見えた。出迎えの準備のために大慌てで城に帰ろうとするダリアは、アラジンと別れ際にブレスレットを返してもらおうとする。しかしアブーが隠したブレスレットを見つけられないアラジンは、ブレスレットを返せない。アラジンがブレスレットを盗んだと誤解したダリアは、失望した様子で母の形見のブレスレットを諦め、城に帰っていった。城に帰ったダリアは美しいプリンセスの姿で、求婚に来たスカンランドのアンダース王子の前に現れる。ダリアの正体はアグラバーのプリンセス、ジャスミンであり、ダリアは親しい侍女の名前であった。ジャスミンは軟派な様子のアンダース王子を、ペットの虎ラジャーで怖がらせて追い返してしまう。

ジャスミンがアンダース王子からの求婚を断われば、アグラバーは同盟の機会を失ってしまう。アグラバーは同盟の支えがなければ存続が厳しい状態にある。ジャファーは新たな戦略としてシラバートを侵略することを、国王サルタンに提案していた。しかしシラバートはアグラバーと長年友好な関係を築いてきた、亡き王妃の出身国であるため、サルタンとジャスミンは侵略に強く反対した。ジャスミンは自分が王女となり王国を治めることを望んでいたが、サルタンは「女性は王になれない」と結婚を勧めるのだった。

アラジンとジャスミンの再会

アラジンは町で出会った女性にブレスレットを返し、誤解を解こうと城に忍び込みジャスミンの元に辿り着いた。ジャスミンはダリアと話を合わせ、プリンセスの侍女ダリアのふりを続ける。アラジンはジャスミンに「また明日も来て話をしよう」と強引に約束すると、城から立ち去ろうとする。しかし侵入に気がついていたジャファーと相棒の鳥イアーゴに捕まり、砂漠に連れ去られた。ジャファーはアラジンの鮮やかな侵入の手口を見て、アラジンこそ「ダイヤの原石」だと見い出したのだった。

ジャファーは魔法の洞窟の前にアラジンを連れてくると、アラジンと親しくなった女性の正体がジャスミンであることを伝えた。そして人生を大きく変えるチャンスを与えると切り出した。魔法の洞窟に入ってランプを取って来れば、プリンセスが振り向くほどの財産と自由を与えるというのだ。ジャファーは「魔法の洞窟の中には目が眩むほどの財宝で溢れているが、決して手を触れないように」と忠告すると、有無を言わせずアラジンを魔法の洞窟に送り込んだ。魔法の洞窟の中には金銀財宝が溢れており、アラジンはアブーに財宝に触らないよう再三注意しながら奥へ進む。そこで岩の下敷きになっていた魔法の絨毯を助ける。すっかり懐いた魔法の絨毯を引き連れて、アラジンは洞窟内に高くそびえる岩の上のランプを目指す。アラジンがなんとか魔法のランプを手にしたその時、アブーがルビーの輝きに心を奪われ拾い上げてしまう。怒った魔法の洞窟はマグマを噴き出し、アラジン達を飲み込もうとする。魔法の絨毯の力を借りてアラジンは洞窟の入り口までたどり着くが、魔法の絨毯が岩に叩き落とされたため、ジャファーの手助けがなければ洞窟の底に落ちてしまいそうである。しかしジャファーはアラジンから魔法のランプだけ奪うと、アラジンを洞窟の底に蹴り落としてしまった。

ランプの魔人ジーニーの登場

アラジンとアブーは岩を抜け出した魔法の絨毯に救われたが、魔法の洞窟に閉じ込められてしまう。その時アブーは、ジャファーに蹴落とされる瞬間に奪い去った魔法のランプを取り出してみせた。アラジンが汚れたランプを擦ると、中から青く巨大なランプの魔人が現れる。陽気な魔人ジーニーはアラジンをご主人様と呼び、魔法の力でなんでも3つ願いを叶えるという。ただし願いことを増やすこと、人を惚れさせること、死者を生き返らせることはできないという。アラジンは「願い事はじっくり考える」とはぐらかしながらジーニーを口車に乗せ、願いを使うことなく魔法の洞窟の外に脱出した。砂漠に脱出してはしゃぐジーニーに、アラジンは「ジーニー自身の願い」を尋ねる。ジーニーの願いは自由になり人間になることだった。アラジンは最後の願いでジーニーを自由にすると約束するが、ジーニーは本気にしないのだった。

アラジンはジーニーに、ジャスミンと結婚するために王子になりたいと願った。アラジンはジーニーの魔法の力で架空の王国アバブワのアリ王子となり、アブーは乗り物の象になった。ジーニーの魔法があれば、誰もアラジンの正体を見抜けないという。アラジンはジーニーが生み出した行列を引き連れて、派手なパレードでアグラバーの城に押しかける。ジーニーが生み出した派手なパレードは、アリ王子の豊かな財力や国民への思いやりを表現するもので、アグラバーの町の人々を大いに盛り上げた。サリバン、ダリアはアリ王子の訪問を友好的に受け入れるが、不安と緊張でアリ王子としてうまく振る舞えないアラジンにジャスミンは惹かれない様子であった。

実った恋と狙われる魔法のランプ

アラジンがアリ王子としてアグラバーを訪問した夜、城ではパーティーが開かれた。アラジンは上流社会での振る舞いがわからず、ジャスミンにアプローチもできないでいる。見かねたジーニーの手助けでジャスミンとアラジンは一曲ダンスを踊る。アラジンはやりすぎなほど見事に踊り切るが、相変わらずジャスミンの態度はそっけなく、ジャファーに目をつけられるきっかけを作ってしまう。

パーティーの後、ジーニーはパーティーの時から魅力的だと感じていたダリアを散歩に誘い出し、アラジンはその隙にジャスミンを魔法の絨毯での空の散歩に誘った。一緒に世界を見て周り2人の仲は深まったが、ジャスミンはアリ王子の正体がアラジンだと見破ってしまう。その事実がバレてもなお、アラジンは「アラジンの正体がアリ王子」だと自分の出自を誤魔化す。それでも2人は心を通わせ口づけまで交わす。ジーニーにデートの報告をしたアラジンは、「いつかは真実を話す」と正体の告白を先延ばしにした。

翌朝、アラジンはジャファーに囚われる。ジャファーはアリ王子が魔法の絨毯に乗っている姿を見て、アリ王子の正体がアラジンだと確信していた。ジャファーはアラジンを城から海に突き落とし、アラジンが死ぬか生き延びるか観察して、アラジンがランプの主人か確かめようとする。アラジンが海中に落ちたその時、魔法の絨毯に乗ってきたアブーがランプを海に投げ込んだ。アラジンは気絶していたが、ジーニーの計らいで2つ目の願いを使い命を助けられた。

アラジンはその後ジャスミンと共に、ジャファーが王座を狙っていることをサルタンに告発した。アラジンはジャファーが杖を使ってサルタンに催眠術をかけていることに気がつき、杖を破壊してジャファーの企てを明らかにした。サルタンはアラジンのこの行いを高く評価し、アラジンとジャスミンの結婚を認め、ジャファーを地下牢に入れたのだった。

アラジンはジャスミンとの結婚が決まったことに浮かれ、「これからも正体を隠すために、最後の願いも自分が使う」と言い始めた。ジーニーは友情から、アラジンに「大切な人を騙し続ける人生になる」と秘密を抱え続けることへの忠告をし、失望した様子でランプに戻っていった。アラジンは自分の正体を明かすべきだとようやく決心するが、それは脱走したジャファーにランプを奪われた直後だった。

ジャファーとの戦いと3つ目の願い

城に戻ったジャファーは、サルタンやジャスミン達の目の前でジーニーを呼び出し、自分をアグラバーの国王にした。ジャファーは早速シラバートへの侵攻を衛兵に命じる。衛兵のリーダー格であるハキームは一度は国王となったジャファーに付くが、ジャスミンの訴えを聞いてジャファーと戦い、ジャスミンとサルタンを守ることを決める。これを受けたジャファーは2つ目の願いを使い、自身を最強の魔法使いにする。ジャファーは魔法を使い、ハキーム達衛兵とラジャーを地下牢に送り込んだ。さらに魔法のランプ奪還に現れたアラジンを捕らえると、ジャスミンに「アリ王子の正体は町の泥棒だ」と明かしたうえで、アラジンを世界の果てに飛ばしてしまった。自分の扱いに長年不満を抱いていたジャファーは、サルタンへの復讐のためにジャスミンと結婚することにし、すぐに結婚式を開く。

アラジンとアブーが飛ばされたのは極寒の雪山であった。魔法の絨毯に助けられたアラジンは急いで城に戻る。結婚式で誓いの宣言をするよう迫られたジャスミンは、アラジンが魔法の絨毯で助けに来ていることに気がつき、魔法のランプを奪ってテラスから飛び降りた。魔法の絨毯で逃げるアラジンとジャスミンを、ジャファーの魔法で巨大化したイアーゴが追う。ランプに気を取られ油断したジャファーの隙を突いたサルタンは、ジャファーが魔法に使う杖をはたき落とした。「杖がなければ何もできない」とサルタンに罵られたジャファーは激怒し、すぐに杖を手元に戻すとすさまじい魔力でアラジン達を城に引き込んでしまう。この時ランプもジャファーの手に渡ってしまった。

権力と魔力を手にしたジャファーは、アラジンの愚かさを罵る。しかしアラジンは「ジャファーの力は所詮アラジンに与えられたものだ」と挑発する。これを聞いたジャファーはジーニーに3つ目の願いで、自身を「宇宙で一番強い存在」にするように命じる。これを聞いたジーニーは、ジャファーを宇宙一の力を持つ「魔人ジーニー」に変えてしまう。ジャファーは宇宙一の力は手に入ったが、契約に縛られランプに封じられてしまった。その瞬間ジャファーの魔法が消え去り、アグラバーには平穏が戻った。ジーニーはジャファーが封じられたランプを、砂漠の彼方に投げ捨ててしまった。

ジーニーはアラジンに3つ目の願いで、アグラバーの法律を変え「王子でなくてもプリンセスと結婚できるようにしよう」と提案する。しかしアラジンは3つ目の願いを使って、ジーニーを自由にすることを願った。するとアラジンは主人の願いを叶える契約から解放され、人間の姿を手に入れた。人間になり何をしたいかアラジンに問われたジーニーは、ダリアに「一緒に船で世界中を旅しよう」と提案し、ダリアも即答で快諾した。この時ダリアは「女の子の名前はリアン、男の子の名前はオマールにしたい」と、早くも将来迎える子どもたちの姿を夢見る。ストーリー冒頭で航海していた家族は、ジーニーとダリア夫婦とその子ども達のリアンとオマールであった。

また、サルタンはジャスミンの知恵と勇気ある姿を見て、ジャスミンを次の国王として認めた。正体がばれたアラジンはジャスミンから身を引いて町に戻ろうとしたが、国王となったジャスミンに呼び止められる。その後ジャスミンは王子相手でなくても結婚できるよう法律を変え、アラジンと結婚した。物語はアラジンとジャスミンの結婚パーティーのダンスシーンで幕を閉じる。パーティーには見届人としてジーニーとダリアも出席し、アラジンとジャスミンの門出を祝ったのだった。

『アラジン』の登場人物・キャラクター

主要キャラクター

アラジン（演：メナ・マスード）

日本語版吹替：中村倫也

本作の主人公。
アグラバーの町で、生き抜くために泥棒として暮らしている青年。幼い頃に両親を亡くしており、今は相棒の猿アブーと2人で暮らしている。飄々とした態度でありながら、誠実で優しい心を持っている。町中にお忍びで訪れていた王女ジャスミンと偶然出会い恋に落ち、彼女と結ばれるために魔法のランプの魔人ジーニーの助けを借りる。ジーニーの魔法でアリ王子に変身した。

ジーニー（演：ウィル・スミス）

日本語版吹替：山寺宏一

魔法のランプに封印されている魔人。陽気でおしゃべりなキャラクター。魔法のランプを擦って自身を召喚した人物を主人として、魔法の力でどんな願いも3つ叶えてくれる。しかし願いを増やすこと、人を惚れさせること、死者を生き返らせることは禁じられている。宇宙を支配できるほどの圧倒的な魔力を持つが、契約に縛られ主人の願いのためにしか魔法を使えない。実は自由になり人間として暮らしたいという願いを抱えている。プリンセスの侍女ダリアに恋しており、物語のラストでは結ばれ人間として結婚している。