シン・アスカ(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)の徹底解説・考察まとめ

シン・アスカとは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公の1人。遺伝子レベルで強化されたコーディネイターであり、スペースコロニー国家プラントが擁する軍事組織ザフトの新兵。
地球にあるオーブ連合首長国で生まれたシンは、戦争で家族を失い、「守りたいものを守れる力」を欲するようになる。新たな戦争が始まると、ザフトの若きエースパイロットとして活躍するも、力を求める姿勢を権力者に利用されていく。「平和のため」と言いくるめられてオーブを滅ぼす作戦に参加し、敗れた後に故郷の無事を知って涙した。

シン・アスカの概要

シン・アスカとは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公の1人。遺伝子レベルで強化処置を施されたコーディネイターという人種の少年であり、スペースコロニー国家プラントが擁する軍事組織ザフトの新兵。
地球にあるオーブ連合首長国で生まれたシンは、オーブと地球にある国々の連合国家である地球連合との間で起きた戦争で家族を失う。これにより、シンは開戦を招いた当時のオーブのトップであるアスハ家を憎むと同時に、「守りたいものを守れる力」を欲するようになる。

その後オーブの軍人トダカの計らいでプラントへと渡り、自身の求める力を手に入れるために士官学校に入学。優秀な成績で卒業し、エリートにのみ許される赤服を授与される。その後アーモリーワンコロニーで、ザフトの新型MS(モビルスーツ)ガンダムが強奪されると、レイ・ザ・バレルやルナマリア・ホークといった同期の仲間たちと共にこの奪還任務に取り掛かる。
この中で前大戦の英雄であるアスラン・ザラと上司と部下の関係になるが、彼とは折り合いが悪くいがみ合うことも少なくなかった。力と平和を求める気質と、MSパイロットとしての卓越した才能をプラント最高評議会の議長であるギルバート・デュランダルに利用され、彼の野望を達成するための手駒として利用されていく。

シン・アスカのプロフィール・人物像

CV:鈴村健一

誕生日:C.E.57年9月1日
星座:乙女座
血液型:O型
年齢:16歳
身長:168cm
体重:55kg
趣味:読書
嫌いな食べ物:貝類、きのこ類、酸っぱいもの全般、ナス

オーブ連合首長国出身。遺伝子レベルで強化処置を施されたコーディネイターと呼ばれる人種の少年。シンの場合は「両親がコーディネイター」という第二世代型だが、MSパイロットとしてすさまじい潜在能力を持つ。
2年前、地球の国家を統合する「地球連合」とオーブとの間に戦端が開かれ、戦火に巻き込まれたことで両親と妹を1度に失う。特に大切にしていた妹に目の前で死なれたことに強い衝撃を受け、「戦争を回避できなかった当時のオーブの指導者であるアスハ家への憎悪」と「守りたいものを守るための力への強い渇望」を胸の内に抱えるようになる。

基本的には善良な人物だが、兵士としては感情的に動き過ぎるところがあり、作中でも命令無視や上官のアスラン・ザラへの反発を繰り返していた。アスランは理屈で人を動かそうとするわりに口下手で身内への対応が甘いところがあり、少なくとも作中では良好な関係とは言いがたかったが、シン個人としては「上官としてもっと自分をしっかり導いてほしい」との想いを彼に対して抱いていた。
プラント最高評議会の議長であるギルバート・デュランダルは、シンのパイロットとしての適性と力への渇望を巧妙に見抜いて彼を利用し、自身の手駒としていった。シンは自分の力を認めてくれるデュランダルに傾倒する一方で、「本当に彼を信じていいのか」との疑念も心のどこかに抱いていた。

シンが最終的にデュランダルに従うことを決めたのは、士官学校時代からの友人で相棒でもあるレイが余命少ないこと、「デュランダルの理想の結実こそが自分の最後の望みだ」との話を彼から聞いたことが大きい。「デュランダルの理想を実現させる」ために利用される形にはなったが、シンとレイは戦友として深い絆で結ばれ、戦闘では抜群の連携を見せた。
同期の新兵であるルナマリア・ホークとは、当初はただ同じ艦に乗る仲間という認識でいたものの、シンがルナマリアの妹であるメイリン・ホークごと脱走しようとしたアスランを撃墜したことで大きく関係が変わる。シンはルナマリアへの罪悪感から、ルナマリアは「シンは兵士として命令に従っただけなのだから責めてはいけない、今後も一緒に戦っていくためにも許さなければならない」との想いから、互いの傷を舐める合うような形で共依存的に強く結びつき、やがて恋仲となる。2人の恋愛は始まり方こそ歪んだものだったが、相性自体は良かったらしく、戦争が終わった後もその関係を維持していた。

シン・アスカの来歴・活躍

喪失と渇望

地球にあるオーブ連合首長国で生まれる。両親が共に遺伝子レベルで強化処置を受けた仁寿であるコーディネイターで、その血を継いだシンも第二世代型の優れたコーディネイターだった。シンが生まれた頃には、コーディネイターとナチュラル(遺伝子の強化処置を受けていないごく普通の人間)との対立はいよいよ深刻化し、物語開始の2年前には互いに相手を絶滅させんとする大規模な戦争が発生する。
やがてオーブは地球圏を統括する地球連合と戦争状態となり、その各地が蹂躙される。シンは両親や妹のマユ・アスカと共に戦地と化した街から逃げようとするも、白いMSが別の敵と戦う余波に巻き込まれて吹き飛ばされ、3人の家族を一瞬にして失う。この衝撃はすさまじく、シンは「戦争を阻止できなかった当時のオーブのトップであるアスハ家への憎悪」と「守りたいものを確実に守れる強大な力への渇望」を胸に深く刻み込む。

その後オーブの軍人トダカの差配で、スペースコロニー群プラントに移動。プラントはコーディネイターたちによる国家でもあり、彼らなら同じコーディネイターのシンを受け入れるだろうとの配慮だった。家族を失った衝撃をとりあえず飲み込んだシンは、アスハ家への憎悪を糧にしながら強大な力を求めて動き出し、プラントの軍事組織ザフトの士官学校に入学する。
シンはMSパイロットとしての適性が非常に高く、士官学校を優秀な成績で卒業。この時一緒にレイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、メイリン・ホークといった同期とも知り合いになり、全員が新型戦艦ミネルバに配属される。プラント最高評議会の議長ギルバート・デュランダルは、この時点でシンのMS適性の高さに注目。本人に気付かれないようにしながら、彼を自分の目の届く場所に置こうと画策しており、この人事もその一環である可能性が高い。シンの実力自体は周囲の誰もが認めるところで、この時は誰も不審に思っていなかった。

新たな戦争の始まり

シンが新兵としてミネルバに乗り込んで間もなく、アーモリーワンというスペースコロニーからザフトの新型MSが地球連合の特殊部隊に奪われる。さらに一部の過激なコーディネイターたちがコロニーの残骸を地球に落下させてそこに住むナチュラルを滅ぼそうとする事件が発生し、2年前に1度は収まった戦争の火種が再び燻り始める。
シンはザフトの兵士として、ミネルバの仲間たちと共に新型MS奪還の任に就く。この時、前大戦の英雄として知られるアスラン・ザラという青年がミネルバに配属され、シンは彼の直属の部下になる。アスランに対しては、MSパイロットとして自分を上回る力を持つことを認めて信頼する一方、どこか煮え切らない性格に業を煮やして衝突することが増えていく。

新型MS奪還のために地球各地を回る中、シンはステラ・ルーシェという少女と知り合う。天真爛漫でどこか危なっかしい雰囲気を持つ彼女に、シンは死んでしまった妹の影を重ね、「自分の力で守るべき存在」との認識を抱いていく。実はステラは地球連合が生み出した、強化手術と薬物投与によって兵士として高い能力を発揮するエクステンデッドという存在で、新型MSを強奪したチームの一員だった。後にシンはこの事実を知って衝撃を受けるも、「ステラを守りたい」との思いを優先して捕虜とした彼女を地球連合側に返している。これは「エクステンデッドの延命には、地球連合側が持つ特殊な薬品が必要」という事情もあった。
同じ頃、シンは戦場でかつてオーブで見た白いMSと遭遇する。この機体はかつてアスランと共に前大戦で活躍したキラ・ヤマトという青年が駆るもので、シンの家族を奪った攻撃を放ったわけではなかったが、彼にとっては「大切な家族の死に関わった忌まわしい機体」であることに違いはなかった。この時キラはオーブの公人であるカガリ・ユラ・アスハと行動を共にしており、彼女の頼みで「オーブが戦争に加担しないよう、オーブの兵士が乗った機体と自身の邪魔をする者たちの武器と推進装置だけ破壊して誰も殺さないまま撤退する」という離れ業を繰り返していた。

アスランとの決別

無理な強化を施したエクステンデッドは、もともと長く生きられない存在で、短期間ながら必要な投薬を受けられなかったステラは寿命を迎えつつあった。地球連合は彼女に最後に役に立ってもらおうと、半ば暴走状態のステラをむりやり超大型MSに乗せて出撃させ、敵地を蹂躙させる。シンはなんとかこれを止めようとするも力及ばず、「民間人にまで被害が出ている、これ以上の犠牲は看過できない」と判断したキラによってステラの機体は大破。ステラを守れなかったシンは、いよいよ白いMSに対する憎悪に心を支配されていく。
戦場を掻き乱すキラの存在は、ザフトからも地球連合からも敵性存在と目されるようになっていく。キラと親友の間柄であるアスランは、「キラにはキラで考えがあるのだろう」とこの流れを疎んでいたが、シンはレイと共に特訓を重ねてキラの攻略に取り掛かる。「敵兵を殺さないためにコックピットを狙わない」という相手の戦法を逆手に取って、シンはついにキラを撃破する。

この少し前にキラと接触し、彼から「デュランダルが怪しい動きを見せている」との情報を得ていたアスランは、次第にデュランダルに対する不信を強めていた。彼の心境の変化を敏感に察知したデュランダルは、「自分の思い通りに動かないのであれば、アスランは放置するには危険な存在だ」と判断し、彼の抹殺を決定。デュランダル側の動きに気付いたアスランは、「ここで自分を殺そうとすること自体、デュランダルが後ろめたい何かのために動いている証拠だ。キラの言っていたことは正しかった」としてザフトを脱走する。
この時、たまたまアスランと鉢合わせたメイリンは、彼が友軍から追われていることに気付いて「アスランが悪いことをして軍に追われるはずがない、何か事情があるのだろう」と考え、咄嗟に脱走を手助けしてしまう。これはもちろん重罪で、ザフトにおける自分の立場が消滅した以上メイリンが厳しく罰せられることは必然だと考えたアスランは、稼働可能な状態のMSを奪って逃げだす際に、罪悪感もあって彼女も一緒に連れ出す。

こういった経緯を全く知らないまま、シンは「アスランとメイリンが脱走した」とだけ説明されて追撃するよう命じられ、メイリンを庇って本気で戦えないアスランの機体を撃墜。衝突することはあっても心の底では尊敬していたアスランと、士官学校時代からの知り合いであるメイリンを「自分の手で殺した」という事実に打ちひしがれる。

転変する運命

アスランとメイリンの乗る機体を撃墜したことで、ルナマリアとの関係にも大きな変化が生まれる。これまでは同期の戦友というだけだったが、「仲間であるルナマリアの妹のメイリンを殺してしまった」という負い目は強い罪悪感となってシンの心に影を落とし、ルナマリアはルナマリアで「どうしてそんなことになったのか分からないが、悪いのは脱走しようとしたアスランとメイリンであり、シンは兵士として命令に従っただけなのだから責めてはいけない」と必死で自制しようとして完全にはできず、互いに深い心の傷を負った2人は共依存のように関係を強くしていった。
もう1人の戦友であるレイとの関係も、この頃には信頼と依存が混ざった歪なものへと変化していた。シンはレイが遺伝子の不具合で余命が少ないことを知り、一方で自分が家族やステラを失った時の心の傷に今も苦しんでいることを彼に知られる。2人は互いの苦しみを理解し、共に戦う仲間としてさらに強い絆で結ばれていくが、裏でデュランダルと通じているレイにとってこれは「シンをデュランダルの手駒として利用する」ための行為でもあった。

その後もシンはザフトのエースとして、ミネルバの主力として活躍していく。しかし戦争を裏から操っていた軍産複合体「ロゴス」を追い詰める中で再びオーブが戦場となり、複雑な思いを飲み込んで故郷に侵攻した際、戦場で新型機に乗ったキラと遭遇。「あのパイロットは生きていたのか」と驚く矢先に、今度は同じく新型機に乗ったアスランまでも現れ、迷いを捨てた彼らを前に撤退を余儀なくされる。
政治的に混乱していたオーブは、ここに至って悪徳政治家を一掃し、ロゴスと手を切る。内心で安堵しつつオーブから退いたシンたちは、そのままロゴスの拠点を叩き、戦争の裏で暗躍していた組織の1つを完全に排除する。

メサイア攻防戦

デュランダルの真意は、地球連合の主戦派を裏から操る軍産複合体であるロゴスを表舞台に引きずり出し、これを滅ぼした上で自身の提唱する「デスティニープラン」を全ての人々に適応することだった。デスティニープランは、当人の持つ才能に合わせた人生を提唱するもので、それだけなら悪くないようにも思えるが実質的には「生き方の強制」に等しい計画だった。それでもデュランダルは「デスティニープランが完全に機能すれば、誰もが幸せになれるし戦争も起きない」と確信していた。
オーブがデスティニープランの問題点を指摘して反対の立場を表明すると、デュランダルは大量破壊兵器メサイアによってオーブを焼き尽くそうと画策。キラやアスランはオーブを守るため、世界から自由を失わせないため、仲間たちと共にデュランダルとの対決に臨む。内心では「デスティニープランは本当に正しいのか」との疑問を感じていたシンだったが、親友といっていい間柄となったレイの「間もなく死ぬとしてもデュランダルの理想が実現すれば満足だ」との言葉と、「多少の問題があるにしても、戦争が無い世界以上の正しさなんてあるわけがない」との想いから、故郷を滅ぼさんとする戦いに参加する。

キラやアスラン、オーブから派遣された部隊、彼らと志を同じくする者たちを相手に獅子奮迅の戦いぶりを見せるシンだったが、迷いを抱えたままでは十全に力を発揮できず、アスランに敗北。この頃にはデュランダルもキラの説得を受けて「自分の命が間もなく尽きるとしても、世界から希望を奪いたくない」と考えたレイの凶弾に倒れる。メサイアも破壊され、デュランダルの野望は道半ばで閉ざされるのだった。
戦後オーブの戦没者記念碑にルナマリアと共に赴いたシンは、ここでアスランやメイリンと再会し、さらに初めてキラと直接対面。「今度こそ、戦わなくていい世界のために一緒に力を尽くそう」と彼から手を差し伸べられ、「デュランダルやデスティニープランの全てが間違っていたとは思わないが、自分で考えようとせずに従っていた自分は間違っていたのだ」と悟り涙を流した。アスランの見守る中でシンはキラの手を取り、彼らはそれぞれの場所で世界のために働き続ける。

シン・アスカの関連人物・キャラクター

アスラン・ザラ

前大戦の英雄で、ザフトのエースパイロット。物語序盤でミネルバに派遣され、シンの上司となる。
理屈っぽい一方で口下手なところがあり、身内に対しては判断が甘い。感情的なシンとはそりが合わずに衝突を繰り返したが、シンは内心では「自分を正しく導いてほしい」とアスランに期待しており、アスランもまた「シンが間違った方向に突き進んでしまったのは自分にも責任がある」と負い目を抱えていた。

renote.net

レイ・ザ・バレル

ザフトの新兵で、シンとは士官学校からの友人。コーディネイターを生み出す技術を応用して作られたクローンであり、すでに余命少ない状態にある。
デュランダルに傾倒し、彼のために様々に暗躍。シンに近づいたのもその一環ではあったが、友情を感じていたのも事実であり、内心では彼を利用することへの罪悪感を抱えていた。

ルナマリア・ホーク

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