ペンギン・ハイウェイ(小説・アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ペンギン・ハイウェイ』とは、突如街に現れたペンギンの謎を突き止めようとする少年の恋と成長を描いた、森見登美彦のSF小説。2018年にアニメ映画化され、Netflixで公開された。
小学生のアオヤマの暮らす町に、突如大量のペンギンが現れる。淡い思いを寄せるお姉さんから「この謎を解いてごらん」と焚きつけられたアオヤマは、ペンギンについて独自に調査を開始する。アオヤマの研究は、やがて町の奥に眠っていた壮大な秘密と、お姉さん自身がその謎と深く結びついていることを明らかにしていく。

ハマモト

CV:潘めぐみ

アオヤマのクラスメイト。彼に負けず劣らずの研究者気質で、小学生ながらチェスの腕前はかなりのもの。
森の中で見つけた不思議な水の塊に“海”と名付けて研究を進めおり、アオヤマとウチダに共同研究を持ちかける。これはアオヤマの分析力を買ってのことでもあるが、同時に彼に好意を抱いているためでもあり、お姉さんに対しては嫉妬を覗かせる。

スズキ

CV:福井美樹

アオヤマのクラスメイト。暴れん坊のガキ大将気質。
ハマモトのことが好きで、素直になれずに意地悪ばかりしている。ハマモトがアオヤマに好意を抱いていることも薄々察しており、彼に対しては当たりが強い。

『ペンギン・ハイウェイ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

アオヤマ「なぜこの人の顔は、こういう形に出来上がったのだろう」

お姉さんの自宅に招待され、寝ている彼女を見ながら、アオヤマが心の中で吐いたセリフ。以下がその全文である。

「なぜこの人の顔は、こういう形に出来上がったのだろう。
なぜお姉さんの顔を見ていると、嬉しい感じがするのだろう。
なぜ僕が嬉しく思う顔が、遺伝子によって完璧に作られて、今ここにあるのだろう」

初恋に戸惑う科学少年アオヤマの心情が端的に表されている。子供が聞くとむず痒い、大人が聞くとほっこりする、きっと誰にも覚えのある感覚が味わえるセリフだ。

アオヤマ「僕はおっぱいが好きであることを認める」

“海”に関する研究を打ち切ろうと提案したアオヤマは、大人たちの調査がお姉さんにまで及ぶのを恐れていた。それを見抜いたハマモトは、「お姉さんのことを庇いたいだけ」だと彼を糾弾し、嫉妬混じりにおっぱいが好きだからあの人のことが好きなのだろうと揶揄する。これに対し、アオヤマは真顔で見出しの言葉を返す。
誰しも自分の性癖を真正面から語るのは恥ずかしさが伴うものである。しかしアオヤマはそんな場面でもまったく気負うことなく、同年代の女子相手に堂々と「おっぱいが好き」だと公言する。もしかしたらこの少年はとんでもない大器の持ち主かもしれない、などと謎の敗北感を覚えてしまう迷セリフである。

お姉さん「そしたら、私を見つけて会いにおいでよ」

“海”を消滅させることを決意したお姉さんは、一番近くで自分を見詰めて、最後の最後までついてきてくれたアオヤマを優しく抱き寄せて、静かに別れの言葉を告げる。君は見所がある少年だと言われたアオヤマは、「もっと勉強して、誰よりも立派で偉い大人になる」と涙をこらえながら言葉を返す。それに対して、お姉さんは「それだけ偉くなったら、私の謎も解けるだろうな」と言い、見出しの言葉を付け加える。
お姉さんが何者だったのか、最終的にどうなったのか、物語は明確な解答を用意していない。しかしアオヤマは本当にお姉さんに恋をしていたこと、必死に自分に追いつこうとする彼をお姉さんもまた愛おしく思っていたことは間違いの無い事実である。

いつかアオヤマが“海”の謎を解明した時、どんな形であってもいいから2人には再開してほしい。そんなことを考えてしまう、物語のクライマックスを彩る名セリフ。

『ペンギン・ハイウェイ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「ペンギン・ハイウェイ」は実在する言葉である

物語のタイトルにもなっている「ペンギン・ハイウェイ」だが、これは実在する同じ言葉が元ネタとなっている。
日本で「ハイウェイ」というと高速道路を意味する言葉として使われることが多いが、これはもともと英語では「主要な道路」といった意味合いの言葉である。海から上がったペンギンは、天敵に襲われにくくするため一塊になって営巣地まで移動するのが常で、この時にペンギンたちが歩くルートのことを「ペンギン・ハイウェイ」と呼ぶ。

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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