銃夢(木城ゆきと)のネタバレ解説・考察まとめ

『銃夢(がんむ)』とは木城ゆきと原作のSFサイボーグ格闘漫画。集英社の雑誌「ビジネスジャンプ」で1991年3号から連載された。その独特な世界観が人気となり、OVA化、そして続編や前日譚も描かれた。作品の人気は衰えず、ゲームや小説化もされ、2019年にはハリウッドで実写映画化された。全身サイボーグの少女ガリィが、「機甲術(パンツァークンスト)」と呼ばれる格闘術を駆使して、様々な敵と戦う姿が描かれている。

『銃夢』の概要

『銃夢』とは、木城ゆきとによる日本のSF格闘漫画。全身サイボーグの少女ガリィが「機甲術」(パンツァークンスト)というサイバネティクス戦闘技術(作者考案のオリジナル戦闘術)を駆使してさまざまな強敵と戦うという、サイバーパンク格闘アクションである。さらにガリィは記憶喪失であり、戦うことで自身の記憶やルーツを探していく。

集英社の雑誌「ビジネスジャンプ」で1991年3号から1995年10号にかけて連載された。単行本は全9巻が発売された。
1998年からB5判の愛蔵版(全6巻)が発刊され、外伝3本が収録されている。続編『銃夢 LastOrder』への流れに合わせて、結末部分が差し替えられている。2010年6月には新装版(全7巻)が発売された。
しかし集英社法務部とのコンプライアンス上の台詞問題により、木城ゆきとは続編の連載を終了させ講談社へ移籍した。
講談社『イブニング』2014年22号より、『銃夢』の前日談および『銃夢 LastOrder』の後日談を描く「最終章」と銘打たれた続編『銃夢火星戦記』が連載。
サイドストーリーとしてモーターボール編の外伝的作品『灰者』、小説版として、川村泰久の『銃夢』(ジャンプ ジェイ ブックス)が刊行されている。
他メディア展開としては、OVA『銃夢〜ラスティ・エンジェル』とCDドラマが発売され、本編完結後にはプレイステーション用ゲームソフトとして『銃夢〜火星の記憶〜』が発表された。
2018年11月、講談社イブニングKCDXより新たに新装版の刊行が始まる。

また、2016年7月ハリウッドでの映画化が発表となり、2019年2月にジェームズ・キャメロン制作、監督をロバート・ロドリゲスが務めた『アリータ:バトル・エンジェル』が公開された。
人気の元になっているのがサイボーグだけでなく、格闘技やモータースポーツに軌道エレベータやナノマシン、量子力学などの最先端技術が盛り込まれている点である。
また同じように実際の科学では際物扱いとなっているSF理論のハチソン効果やサイコメトリー、ニコラ・テスラのスカラー波兵器などといったものも描かれている。扱うテーマの幅の広さと情報量が圧倒的なところがヒットの大きな要因となっている。

『銃夢』のあらすじ・ストーリー

マカク編

空中都市「ザレム」の下にあるクズ鉄町で人々はザレムから廃棄されたゴミや瓦礫を再利用して暮らしていた。
サイバネ医師のイドは瓦礫の山の中からまだ生きているサイボーグの少女を発見。彼女を保護するとボディを与え修理を施した。
少女は気付いたものの記憶を失っていたのでイドはガリィと名付けた。
イドはガリィを過剰に可愛がる。
そんな彼のに立ちたいと考えるガリィだったが、夜中にイドが家を抜け出していることに気が付く。
ガリィはイドが巷で起きている連続殺人事件の犯人ではないかと疑い、彼の尾行する。そこでイドが副業でハンターウォーリア(賞金稼ぎ)をしていたことを知ったのだった。
ガリィは火星古武術の「機甲術」(パンツァークンスト)を偶然無意識で繰り出し、習得していることが分かった。ガリィはイドの役に立ちたい一心でハンターウォーリア登録する。
そのころ巷ではマカクが人々を襲い脳を食らう事件を起こしていてファクトリーの賞金首リストに名前が挙がっていた。
コロッセオチャンピオン・キヌバのボディを手に入れたマカクは町で次々に人々を襲い、遭遇したガリィはボディを破壊されてしまった。
そこでイドが以前発見した、数百前の大戦時に使用されていた戦闘用ボディ・バーサーカーボディをガリィに与える。
ガリィはバーサーカーボディのパワーと「機甲術」(パンツァークンスト)を駆使してマカクを打ち倒した。

ユーゴ編

廃工場でユーゴという少年に出会ったガリィ。ザレムに行くことを夢見る彼に、ガリィは惹かれていく。
クズ鉄町を牛耳るベクターは、ユーゴを右腕に引き入れるために「1千万チップ集めればザレムへと送り届ける」と嘘を言っていた。そんなこととは知らずにユーゴは脊椎強盗に手を染め、3年もコツコツとチップを貯めてきた。
ガリィはハンターの仕事で稼いだチップを、ユーゴの夢の実現のために貯め始める。
しかしハンターのザパンに脊椎強盗の犯人であると突き止められたユーゴは、賞金首になってしまった。
ガリィはユーゴと出会った廃工場でユーゴを見つけ恋心を告白し、稼ぎ貯めてきたチップをユーゴに渡す。ユーゴの3年間貯めてきたチップと合わせて1千万チップを超え、ザレムへの資金は貯まった。
だがユーゴはハンターのクライブ・李(くらいぶ・りー)に瀕死の重傷を負わされてしまう。ガリィはクライブ・李を倒し、重傷を負ったユーゴを救うためにイドの元へ急ぐ。しかしザパンらが襲ってきたのでユーゴが死んだことにした。
ガリィは自分の生命維持装置にユーゴの頭部のみを接続して生かしていたのだった。
納得がいかないザパンはガリィに襲い掛かるが、ガリィの一撃で顔を失う。
イドの手術でサイボーグとなり、一命を取り留めたユーゴは真実を確かめるため、1千万チップを持ってガリィと共にベクターの元へ向かう。そこで自分が騙されていたことを知り、ショックを受けるのだった。
失意のユーゴはザレムへと行こうと巨大チューブをよじ登るが、ザレムからの防御リングがユーゴに襲い掛かる。
ガリィはユーゴを追いかけ、一緒に帰ろうと必死に説得した。しかしユーゴは防御リングに弾き飛ばされて奈落へ転落してしまった。

モーターボール編

ガリィが失踪して1か月、ガリィの行方を探していらイドは路地裏で襲われていたモーターボール選手「帝王」ジャシュガンの妹シュミラを助けた。シュミラに病気に蝕まれている兄ジャシュガンを救ってほしいと頼まれ、モーターボール場に向かったイド。彼はそこで選手として活躍するガリィを発見した。
モーターボールとはローラーボールとカーレースに格闘技を合わせたような激しいスポーツで、他選手を破壊・殺害してもルール違反にならない命がけの戦いである。
ジャシュガンは試合の最中に倒れてしまうが、イドの治療で復調して見事にゲームに勝利する。
そのゲームを見て刺激を受けたガリィは、打倒ジャシュガンを目標にするようになる。
ガリィは順調に勝ち進みサードリーグからセカンドリーグへと昇格する。ガリィはナンバー99にこだわり、ナンバー99を持つ「破壊王」アジャカティと勝負。見事勝利してナンバー99を手にした。
ガリィがジャシュガンとの対戦を目指して奮闘している間、イドはジャシュガンが謎の元ザレム人医師の脳手術を受け超人的な能力を得たこと、その代償に脳が少しずつ蝕まれているという情報を手にする。イドにできるのは脳の発作が起きた時に意識を戻しやすくするために、シュミラの脳波をジャシュガンの脳に送り込む装置を埋め込むことくらいだった。
いよいよジャシュガン対ガリィ率いる挑戦者チームの試合が行われる。
スタート直後にジャシュガンの一撃を受け、挑戦者チームはガリィ以外一瞬でバラバラにされてしまう。仲間を失ったガリィは、ジャシュガンとの一騎打ちに挑む。
ガリィ対ジャシュガンの一対一の戦いが始まった。
互いの全力をかけた戦いだったが、ジャシュガンは脳死発作で体がだんだんと動かなくなっていく。薄れゆく感覚にあせり、ジャシュガンに一瞬スキが生まれた。ガリィはそのスキをついて連打を入れジャシュガンをダウンさせる。
だがジャシュガンは機械の体の限界を超えて立ち上がり、ガリィに渾身の一撃を加えた。見事にジャシュガンは勝利するが立ったまますでに力尽きていた。
コース外に搬送されて意識を取り戻したガリィは立ったまま燃え尽きたチャンピオンに敬服するのだった。

ザパン編

モーターボールでガリィが活躍していた時、ザパンは改心してサラとともにボランティア活動に従事していた。
しかし、モニターに映るガリィの姿を見たザパンはパニックに陥り、自分の顔をむしり取った上にあやまってサラを殺害してしてしまう。ザパンは失意の中、姿を消した。
2年後、ザパンが殺人鬼となって戻ってきていたが、サラの父親マードックによって仕留められる。
ガリィはモーターボールのメカニック・ウンバによって行方不明になっていたバーサーカーボディを最後に買い取った人物がディスティ・ノヴァ博士だと突き止めていた。
バーサーカーボディは昔の大戦時に「死ぬまで殺戮をまき散らした」と言われる非常に危険な代物であるため捜索していたのだった。
ガリィから話を聞いたイドはディスティ・ノヴァ博士の隠れ家へとバーサーカーボディを取り戻しに行くが、逆にとらえられてしまう。
ディスティ・ノヴァ博士がひそかに回収していたザパンの脳にバーサーカーボディを与えた結果、暴走して怪物と化してしまいイドを襲い殺してしまった。
イドを探しに来たガリィにディスティ・ノヴァ博士はザパンを処分するかわりにイドを生き返らせると約束して、銃と「細胞破壊体(コラプサー)」の弾丸を与えた。
ボディを変形させ羽を生やし飛び去ったザパンはクズ鉄町に現れて大暴れしその度に巨大化していく。
暴走したザパンにファクトリーのネットマンや殲滅兵器の攻撃がまったく歯が立たず町は破壊され瓦礫の山となっていった。
ガリィはディスティ・ノヴァ博士に渡された銃と「細胞破壊体(コラプサー)」でザパンに戦いを挑む。
苦戦の末、ガリィは「細胞破壊体」をザパンに打ち込んでなんとか勝利するが、激しい戦いで自身も片腕と下半身を破壊され気を失ってしまった。

TUNED編

ザパンとの戦いで御禁制の銃を使用したことで処分を受け、ガリィは死にかけていた。ザレムの地上監察局局長ビゴットが命を救う代わりに、ザレムのエージェントになることを持ち掛ける。ガリィは生き残るためにエージェントTUNED(チューンド)として活動し、「死の天使」と恐れられるようになった。
ザレムに反乱する組織バージャックとその頭目である電(でん)を制圧する指令がガリィに下される。
電を探し旅する間に、バージャックを制圧するためのファクトリーの戦力・列車猟兵に志願したフォギアと出会い、互いに思いを通じさせるようになる。またTUNEDオペレーター・ルゥと出会い仲良くなったり、コヨミとの再会やケイオスとの出会いで地上の人々が必死に生きていることを実感し守りたいと思うようになる。
しかしケイオスは二重人格でもう一つの人格が電であることが発覚した。巨大な鎧武者の電の姿は、EPR通信機で電の人格が操っていた鎧人形だった。電は巨大砲列車砲へングでザレムを打ち落とそうとするが、ガリィのレプリカ・GR2がへングを破壊。電はファクトリーに突撃して、死を迎えた。
ガリィはディスティ・ノヴァ博士の元に決着を付けに向かうが、ディスティ・ノヴァ博士が開発した仮想現実システム「ウロボロス」に取り込まれてしまう。
ガリィは「ウロボロス」の中で幸せな夢を見せられていたが、戦うことを決意して自ら現実に戻った。だがディスティ・ノヴァ博士の送り込んだ爆弾人形の爆発で死亡してしまう。
気が付くとザレムの研究設備の一室でディスティ・ノヴァ博士とラッセルに甦らされた。ディスティ・ノヴァ博士はガリィの業(カルマ)を研究するために、最強のボディ・イマジノスボディを与える。
ザレム人を管理する中央電脳「メルキゼデク」のもとにたどり着いたガリィはザレムが巨大な実験施設だったと知らされる。
ディスティ・ノヴァ博士の干渉で「メルキゼデク」は発狂し、自殺してしまいコア部分をクズ鉄町に投下してしまった。そのせいでコントロールを失ったザレムを含む巨大軌道エレベータは崩壊を開始してしまう。
これを止めるためには、軌道エレベータを繋ぎとめているスカイフックの巨大ボルトを固定しなおさなけれならない。唯一の方法は、軌道上のスカイフックでガリィのイマジノスボディごとボルトを固定させることだった。
ガリィは皆に心で別れを告げ、一瞬でスカイフックに到達して「誘発因子」を射ち、変形した。爆発的にザレムから衛星都市「イエール」までを覆う巨大な樹木になりスカイフックの固定は成功した。
軌道上には大きな花が咲いていた。

エピローグ

5年後、コヨミは18歳になりフリーカメラマンとして活躍していた。
クズ鉄町からザレムに届く塔が完成し、地上人もザレム人もなく往来できるようになり、「イエール」は「ナノマン樹」という観光名所になっていた。
コヨミは偶然、ガリィの恋人のフォギアと出会う。一緒に「イエール」へと行くことにした二人は、ディスティ・ノヴァ博士らしき人物を見つけたという知らせを受けた。向かった先には、言葉も通じないほどボロボロの状態になったディスティ・ノヴァ博士がいた。唯一、「ガリィ」という言葉だけには反応し、どこかへ行こうとする。
ついていくと、ナノマン樹の一角に培養層のようなものがあり、ディスティ・ノヴァ博士のメッセージが書いてあった。既に発狂している博士だが、たまに正気に戻ることがあり、その時に研究内容を書き残していたのだ。
メッセージによるとナノマン樹の中にはガリィの遺伝情報が含まれていて、ナノ操作してやればゆっくりと再構成されると書いてあった。
フォギアが培養層の外皮をむしると中から再構成された生身のガリィが流れ出てきた。フォギアはしっかり抱きとめる。
それは5年ぶりの奇跡の再会であった。

『銃夢』の登場人物・キャラクター

主要人物

ガリィ

CV:伊藤美紀
本作の主人公で少女型のサイボーグ。ザレム下の瓦礫の中からイドに発見・修理されて新しいボディを得る。記憶喪失で自分の名前を思い出せなかったため、イドのかつての飼い猫から名前をとって、「ガリィ」と名付けられた。イドに着せ替え人形のように扱われることに嫌気が差し、ハンターウォーリアの登録を独断で行う。実は数百年前の大戦時に大気圏外から地上に落下。奇跡的に生き残り、そのまま眠りについていた。大戦時に身に着けた「機甲術」(パンツァークンスト)で達人級の腕前を発揮する。以前の記憶がないため、戦いの中で自分が何者であるのかを問い続けるようになる。
ノヴァ博士による仮想現実システム「ウロボロス」の中では、「アリタ」と名付けられて幸せに暮らしていた。元の名前は「陽子(ヨーコ)」である。ハリウッド版「アリータ:バトルエンジェル」では、「ウロボロス」の時の名前をもとに「ガリィ」ではなく「アリータ」に変更されている。

イド・ダイスケ

CV:苅谷俊介
クズ鉄町でサイバネ医師をしている。夜になるとハンターウォーリアとして活動。サイボーグ化していない生身ではあるが、ジェットエンジンを仕込んだハンマーを武器に犯罪者を残虐に狩っていく。犯罪者を狩ることに喜びを感じており、温和な外見からは想像できない異常者としての一面を持ち合わせる。ザパンの暴走に巻き込まれ死亡してしまうが、ノヴァ博士により蘇生される。しかしノヴァ博士に知らされた「ザレム人の秘密」である、「自身の脳がイニシエーションにより脳チップに置き換えられている」ことに耐え切れず、自ら記憶を消去した。その後はとある農場でサイバネ医師をしている。

ゴンズ

manayume12
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@manayume12

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