MOTHER(マザー)のネタバレ解説・考察まとめ

『MOTHER』とはコピーライターの糸井重里がゲームデザインを手掛けた任天堂のファミリーコンピュータ用のロールプレイングゲームである。当時のRPGでは珍しい現代的な世界を舞台にした作品で、その現代的な世界観や、糸井重里が手がけるシナリオの小粋なセリフ回しなどが高い評価を得た。アメリカの田舎町、マザーズデイで暮らす少年の家である日、家具や人形がひとりでに動き出す怪奇現象が起こる。その現象が曽祖父の研究と関係があるのではないかと父に言われた少年は、怪奇現象の謎を解き明かすべく旅に出た。

『MOTHER』の概要

『MOTHER』とはコピーライターの糸井重里がゲームデザインを手掛けた任天堂のファミリーコンピュータ用のロールプレイングゲームである。発売は1989年であり、開発はパックスソフトニカとエイプが担当した。2003年6月20日には、本作『MOTHER』とシリーズ2作目『MOTHER2 ギーグの逆襲』を1つのソフト内に収録した移植作品『MOTHER1+2』がゲームボーイアドバンス用のソフトとして発売。この『MOTHER1+2』ではエンディングに主人公たちのその後の様子を描いたエピローグが追加されている。2015年には日本国外版がWii Uバーチャルコンソールとして『EarthBound Beginnings』のタイトルで配信されることが発表され、北米では同年6月14日から、日本と欧州では6月15日から配信が開始された。

本作は当時では珍しかった1980年代の現代アメリカを舞台としたノスタルジックな世界観と、児童文学的な趣のシナリオが特徴的で、テキストなどの独特の言い回しや個性的なキャラクター達、耳に残りやすい音楽など、細部の作り込みが非常に丁寧で、そこに魅了されてファンになった人も多い。直接的な繋がりこそないが、このような独特なセリフ回しや現代アメリカ風の世界観は『MOTHER2』にも引き継がれた。

1900年代の初め、アメリカの田舎町マザーズデイで、1組の夫婦が行方不明になった。夫の名はジョージ、妻の名はマリア。2年ほどの月日が経った頃に夫のジョージは家に戻ったものの、妻のマリアは帰って来なかった。ジョージはどこに行っていたのか、何をしていたのか話すことはなく、不思議な研究に没頭するようになった。
時は流れて1988年、マザーズデイでは動物が何かに操られるかのように暴れたり、墓場から屍が蘇り人を襲い出したりと不可思議な事件が起きるようになっていた。ジョージとマリアを曽祖父母に持つ主人公の家でも物が飛び交い家人に襲いかかる怪現象が起こる。怪現象に遭遇した主人公はこの不思議な事件の原因を突き止めようと決意し、冒険の旅へ出た。

『MOTHER』のあらすじ・ストーリー

曾祖父の遺した日記の謎を解くため、仲間と共に冒険を続ける主人公(中央の赤い帽子の少年)。

主人公が部屋を出ようとした直後、電気スタンドが襲い掛かってくる。

1900年代の初頭、アメリカの田舎町、マザーズデイで、ひと組の夫婦が行方不明になった。夫の名はジョージ。妻の名はマリア。2年ほどでジョージは帰ってきたものの、何も語ろうとはせず、自宅の地下室で不思議な研究に没頭するようになった。妻のマリアはついぞ帰ってくることはなかった。
それから数十年後の1988年、マザーズデイでは怪現象があちらこちらで起こるようになっていた。ジョージとマリアを曽祖父母に持つ主人公の自宅でもある日、ラップ現象が発生する。主人公目掛けて襲い掛かる家具や人形たち。主人公がそれらをどうにか撃退すると人形の中のオルゴールが鳴り出した。どこか不思議なメロディー。主人公はそれを大切に胸にしまった。主人公が自宅の広間へ向かうと、単身赴任中の父親から電話がかかってきた。そこで怪現象について話すと、父親から「曽祖父がPSIの研究をしていた、ラップ現象の手がかりになる」という言葉を貰う。主人公は大切な家族を守るため、怪現象の原因を突き止めるべく、旅に出ることに。まず主人公が向かったのは曽祖父が研究をしていたという地下室だった。地下室には曽祖父の古びた日記があったが、そこには謎の言葉が記されていただけで大した手がかりにはならなかった。主人公は情報を求めてマザーズデイの中心部へ向かった。

棺から女の子を助け出す。

マザーズデイでは1人の女の子が行方不明になり大騒ぎとなっていた。主人公は町長に助けを求められ、最近怪しい声が聞こえるという墓地へ向かった。墓地ではなぜか大量のゾンビが闊歩している。主人公はゾンビで溢れる墓地を探索し、棺の中に閉じ込められている女の子を発見する。無事に女の子を助け出し、お礼に「フランクリンバッヂ」を貰った。主人公は町へと戻った。

無事に女の子を送り届けた主人公は、今度は町長から動物園から動物が逃げ出したという騒ぎを聞いた。これも巷を騒がす怪現象の1つかもしれないと考えた主人公は動物園に赴くことにした。その途中で立ち寄ったカナリア村で、離れ離れになっていたカナリアの親子を引き合わせてあげると、喜んだ母鳥が歌を歌ってくれた。主人公はそのどこか不思議なメロディーを大切に胸にしまった。

主人公が動物園に辿り着く。動物たちは逃げ出しただけでなく凶暴化しており、主人公に襲い掛かってきた。どうにか振り切った主人公が管理小屋に入ると、中にぷかぷかと浮かぶ怪しいUFOを発見した。UFOには異星人が乗っており、近づく主人公に向けて強烈なビームを放った。当たれば命はないほどの攻撃であったが、異星人のビームは偶然にも「フランクリンバッジ」が跳ね返し、異星人を撃退。動物たちはUFOから放たれる怪電波でおかしくなっていたようで、UFOが壊れたことで落ち着きを取り戻し、動物園に平和が戻った。動物園を後にする最中、主人公は名物の「歌う猿」の檻の前で立ち止まる。猿は主人公に気づくと歌い始めた。主人公はどこか不思議な感じのするメロディーを胸にしまい、次の町へと向かった。

主人公は次の町へ向かう途中、洞窟の中でピンクの岩のようなものを発見した。気になって近寄ってみると妙な言葉が頭に響いた。不思議な詩だった。しかし主人公にはどこか覚えがあった。曾祖父の日記だ。曾祖父の日記の中に、これと同じ詩があったのだ。主人公が曾祖父の日記を開くと突如として空間が歪み、主人公は柔らかな光に包まれ意識を失った。

主人公はマジカントでどこか自分と似たクイーンマリーと出会う。

主人公が目を覚ました場所はマジカントという一面に桃色の大地が広がる異世界だった。マジカントに住む人々は皆優しく、主人公に親切だった。主人公が元の世界に戻る手がかりを探すべくマジカントの女王、クイーンマリーに面会する。クイーンマリーには思い出せない歌があり、その歌を歌うことで何かが起こるはずだと言うが、今は思い出せないようだった。主人公は彼女から井戸を抜けると出られるという情報を得た。早速井戸を使って地下大河へ行き、マジカントを離れた主人公。その先で辿り着いたサンクスギビングという町には大きな学校があった。学校ではゴミ箱に入って震える臆病者のロイドと知り合った。ロイドはペンシルロケットを欲しがっていた。主人公がスイートリトル工場へ行き、ペンシルロケットを持ってきてあげると、ロイドはその勇気に感動して主人公についてくることになった。

主人公とロイドはより大きなロケットを求め、ダンカン工場に向かった。最深部に安置されていた大きなロケットに感動したロイドが色々と弄っていると、ロケットが誤発射してしまった。偶然にもその誤発射されたロケットが道を塞いでいた大岩を破壊し、主人公たちは次の町へ進めるようになった。

次の町へは電車で行けるらしい。主人公たちは駅で忘れ物の帽子を預かったため、次の町ではまず帽子を届けに行くことになった。帽子の持ち主は教会に住む女の子だった。彼女の名前はアナ。主人公と同じく、PSIという不思議な力を持つ少女だった。彼女の母親はイースターのボランティアに行って以降帰って来ないらしい。アナは主人公についていけば母親の手掛かりがつかめるかもしれないと考え、彼らの旅仲間に加わることとなった。

3人になった主人公一行は、次の町で幽霊騒ぎに遭遇した。なんでも町一番の大きな屋敷に幽霊が出て、町民が困り果てているらしい。これにも動物園と同じく異星人が関係しているかもしれないと考えた主人公たちは、幽霊が出るという大きな屋敷に向かった。広い屋敷の最深部にはピアノがあり、主人公たちが近づくと独りでに音楽を奏で始めた。どこか不思議なメロディー。主人公はそれを大切に胸にしまった。主人公たちが演奏を聞き終えると屋敷に跋扈していた幽霊たちの気配が消えた。主人公たちは幽霊騒動を解決したとして町民に感謝され、次の町へと向かった。

次の町へ行くためには砂漠を超えなければならなかった。延々と続く砂の丘に嫌気がさし始めた時、丘の向こうにオアシスが見えた。オアシスにいたのは1人の老人。老人は飛行機に乗せてくれるとのことで、主人公たちはしばし飛行機での遊覧を楽しんだ。その最中、顔の付いたサボテンを発見する。気になった主人公たちが飛行機から降りてサボテンのもとへ向かうと、サボテンは歌い始めた。その不思議なメロディーを、主人公は胸にしまった。

猿が跋扈する遺跡を進む。

何度も飛行機を乗ってチケットの半券が10枚溜まった主人公たちは、オアシスの老人から戦車を借りられるようになった。戦車で東に向かうとそこには朽ち果てた遺跡があった。遺跡の前には機械の兵士がいて遺跡を守っていたが、戦車のおかげで突破することができた。しかしその代償として戦車は壊れてしまった。主人公たちは猿だらけの遺跡の中を進み、いつかの洞窟で見たピンクの岩を発見した。彼らは再び異世界マジカントへ向かった。

主人公たちは女王クイーンマリーと久々に再会した後、前回と同じように井戸から地下大河へと向かった。地下大河には眠っているドラゴンがいる。前回はピクリとも動かなかったドラゴンだが、今度は主人公に反応して襲い掛かってきた。これを見事に撃退した主人公は、ドラゴンから古い楽譜を見せてもらった。楽譜に記されたメロディーを、主人公は大切に胸にしまった。

地下大河を抜けた先はサンクスギビングではなく、イースターという別の町だった。イースターには大人がいなかった。子どもたち曰く、数ヶ月前から大人達が次々と行方不明になっていったとのこと。町で聞き込みを続けていると、主人公たちは不思議な赤ん坊と出会う。その赤ん坊から主人公は、一度行った町にワープできるテレポーテーションの力を授かった。主人公たちは子供たちの寂しげな泣き声を背中に受け、次の町へと向かった。

湿地帯を超えた先にあった町はバレンタイン。バレンタインではブラブラ団と名乗るゴロツキがはびこっている。主人公たちはライブハウスでもブラブラ団に絡まれた。そのボスだというテディという少年との一騎打ちに主人公が制すると、テディが主人公の実力にほれ込み、同行を申し出た。テディは両親を怪物に殺されており、その敵討ちに協力してほしいのだという。主人公は頷くが、ロイドは「僕みたいな弱虫じゃ足手まといになっちゃうよ」と言い、彼らと別れることを選んだ。

主人公たちはテディの両親の敵を討つため、ホーリーローリーマウンテンという山に向かった。洞窟を抜け険しい山道を登り、中腹の山小屋に辿り着くとそこで一泊することになる。テディの計らいで主人公とアナは2人きりになり、一緒に踊るなどをしてお互いの気持ちを確かめ合った。しかしその直後、山小屋の外から凄まじい音が響き、3人は慌てて外へ飛び出した。主人公たちの目に映ったのは巨大なロボットだった。ロボットの力は強大で、為す術のない主人公たち。彼らが力尽きそうになった時、「しまった!間に合わなかった」と聞き慣れた声が聞こえたのだった。

ロイドはテディの代わりに戦う決意を固める。

気が付くと主人公たちは山の麓にいた。そしてそこには別れたはずのロイドの姿があった。主人公たちはロイドに助けられたのだ。ロイドは旅を辞めると言ったものの、主人公たちが心配でついてきていたのだった。ロイドのおかげで一命はとりとめた主人公たちだったが、テディの傷は深く、ベッドから起きだせないような状態だった。そんなテディにロイドは「今度こそ弱虫の僕が戦う番だ。テディ!君はここで休んでいてくれ」と告げ、再び旅に同行することを決意した。

今度はアナとロイドの3人でホーリーローリーマウンテンを登る主人公。山小屋を越えて歩みを進めると湖が見えてくる。湖にはボートが浮かべてあった。エンジンの調子が悪いようだったが、ロイドのおかげで無事に発進し、一行は湖の中心に発生していた渦の中に飛び込んだ。そして辿り着いたのは湖の底に造られた工場だった。主人公たちは工場内でロボットを発見した。ロボットはイヴと名乗り、さらに「私の父はジョージ」だと語った。ジョージは主人公の曾祖父だ。イヴは主人公を守るのが自分の務めだとして、主人公たちに同行することになった。

工場から山を登り、頂上付近まで到達すると、巨大なロボットが現れた。主人公の危機にイヴが反応し、巨大ロボットに立ち向かっていく。激戦の末、巨大ロボットを撃破することに成功するも、イヴもまた大破してしまうのだった。残されたイヴの残骸を調べると、不思議なメロディーが聞こえてきた。主人公はそれを大切に胸にしまった。

イヴとの別れを経てついに主人公たちは頂上へ辿り着く。頂上には石碑があり、調べると石碑が語り掛けてきた。主人公はそのメロディーを大切に胸にしまった。今まで集めたメロディーは8つ。これで1つの歌が完成した。この歌はマジカントの女王クイーンマリーが思い出せなかった歌。早速マジカントに移動して、主人公は彼女に歌を聞かせた。流れ出すメロディに彼女は記憶を取り戻していく。なんとクイーンマリーの正体は主人公の曾祖母マリアだった。

彼女とその夫のジョージは、生まれて間もないギーグという宇宙人の子守役として拉致されたのだ。マリアとジョージは深い愛情をもってギーグを育てていたが、それも空しくギーグは邪悪な存在として育っていった。やがてジョージは邪悪になってしまったギーグに対抗するPSIの研究のため、ギーグの母星から重要な情報を盗み出して地球へと帰還した。しかしながらマリアは地球へ帰ることができずにその生涯を終えた。その後、マリアの精神はマジカントを平和の国を生み出し、自身はクイーンマリーとして女王の座に着いた。クイーンマリーとなったマリアは生前の記憶を失っていたが、歌の存在は覚えていた。主人公が集めた歌は、実はマリアがギーグに聞かせていた子守唄だったのだ。すべてを思い出したクイーンマリーは主人公にギーグのための子守唄を託し、ジョージのもとへ旅立っていった。

主人公たちがギーグに勝利したことで、捕まっていた人々が解放される。

クイーンマリーが去ると彼女の生んだマジカントもまた消滅し、主人公たちは気づけば最後のメロディーを手に入れた石碑の前に立っていた。マザーズデイなどで起こる怪現象の原因は、地球に来襲したギーグの影響だった。主人公たちはギーグを止めるため、ホーリーローリーマウンテンの洞窟に進んだ。そこで目にしたのは、培養カプセルの中に閉じ込められた大人たちの姿だった。彼らからアナの母親もカプセルに閉じ込められているということを聞く。しかし今彼らを助けることは不可能だった。主人公たちはさらに奥へと進み、ギーグが乗ってきた宇宙船のマザーシップを発見した。

マザーシップから飛び出してきたのはカプセル状の器に入った手足の長い生き物だった。彼こそがギーグ。すべての元凶だ。ギーグは地球を滅ぼすつもりだったが、「主人公だけは助けてもよい」と言う。ギーグは自分と共にマザーシップに乗るように言うが、主人公はこれを拒否し、ギーグに立ち向かっていった。ギーグはカプセルに入っていることであらゆる攻撃が効かず、主人公たちは苦戦する。ギーグの激しい攻撃の中、主人公はギーグに歌っていたという子守唄を思い出す。主人公は一縷の望みをかけ、子守唄を歌った。するとギーグの様子がおかしくなる。それを見てここぞとばかりにロイドもアナも歌を歌う。何度も何度も歌うとついにギーグは戦意を失った。ギーグは恨めしそうにしながらも「また会おう」と言い、マザーシップに乗り地球から離れていった。主人公たちの冒険は終わったのだ。

カプセルに閉じ込められた人々は無事に救出され、アナは母親との再会を果たした。テディの怪我はすっかり良くなり、彼はライブハウスのスターとなった。弱虫だったロイドは人気者となり、主人公は家族の待つ家に帰っていった。

『MOTHER』のゲームシステム

移動について

方向キーを入力することで上下左右に動くことができる他、同時に押すことで斜めにも移動できる。場所によっては斜め移動を駆使しないと行けないところもある。

パラダイス鉄道

多くの町を結ぶ大陸横断鉄道。駅で距離に応じた運賃を支払って乗車し目的の町まで行くことができる。

テレポーテーション

これまで訪れた町へ瞬時に移動できるPSI。使用すると高速で助走し始め数秒後に目的地へ転移するが、助走中に障害物にぶつかると失敗し黒焦げになる。助走方向は十字キーで変えることも可能。

パンくず

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