SSSS.DYNAZENON（ダイナゼノン）のネタバレ解説・考察まとめ

第6回「この切なさって、なに？」、7回「集まった意味って、なに？」に登場した怪獣。四足の哺乳類のようなシルエットをしており、側頭部にはドリル状の角が一本ずつ、胸元には羽根のような大きな飾りがある。この時点までに現れた怪獣の中ではかなり強力な個体で、怪獣優生思想でも一人では扱い切れず、オニジャとムジナの二人がかりで支配している。
シャルバンデスと同じく重力操作能力を持つが、その能力は同個体の比ではなく、ダイナゼノンでも脱出が困難なほど。蓬たちの精神的なコンディションが劣悪な状態だったとはいえ、ほぼ一方的にダイナゼノンを叩き伏せ、ダイナレックスすら側頭部のドリルで打ち倒した。

『SSSS.DYNAZENON』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

ガウマ「世の中には守らなきゃならない大切なものが3つある。約束と愛と…」

ガウマがたびたび口にする、彼の信念である。それだけでなく、「約束を重視している」ことで義理堅さを、「愛を重視している」ことで見た目とのギャップを、そして「それほど大切なものの内の1つを忘れる」ことで少し抜けたところを表しており、ガウマというキャラクターの魅力と人柄を一言でまとめたものとなっている。
第1話でもこれを語り、最終話で最後に口にしたのもこの言葉だった。3つ目の“大切なもの”がなんなのかは分からないまま、物語は次の舞台へと移ることとなった。

南夢芽「私は…どうかしてるんだよ」

第1回「怪獣使いって、なに？」より。夢芽に呼び出されるも、待ち合わせをすっぽかされてしまった蓬。どういうことだと憤慨するガウマと、当惑する蓬の前で、夢芽が罪悪感をにじませながら口にした言葉が見出しのものである。
視聴者の興味を引く謎、整理された展開、迫力あるロボットバトルと見所満載の内容を繰り広げた末、勝利の興奮の中でもどこか物憂げな夢芽の顔と共に同じセリフが蓬の頭の中で再現され、『SSSS.DYNAZENON』の初回放送は幕を閉じる。夢芽が語る「どうかしてる」とは何を意味するのか、自覚がありながらなぜ他人を弄ぶようなことを繰り返すのか、蓬はそれに対してどのような答えを示していくのか。娯楽作品としての魅力をこれでもかと盛り込みながら、本作があくまでボーイ・ミーツ・ガールを基軸とすることを視聴者に示す、印象的なセリフである。

麻中蓬「守れるものは！守る！」

ダイナゼノンに乗って怪獣と戦うことに、いまいち現実感がついてこない蓬。一度は政府などの然るべき相手にダイナゼノンを渡すことも考えるが、怪獣に蹂躙された街へと夢芽と共に訪れ、「ルールばかり守っていたら守れないものもあるかもしれない」との彼女の言葉を聞いて、次第に思い直していく。
直後に現れた怪獣を相手に、当初は不慣れなこともあって苦戦するも、「自分に与えられたダイナソルジャーという力で誰かを守る」ことを改めて決意していく。見出しのセリフは、その戦闘中に発したものである。
ただの高校生だった蓬が、おびただしい破壊をもたらす怪獣と戦うことを決意し、“ヒーロー”となった瞬間である。

ガウマ「今の俺にはお前たちが必要だ！」

ガウマの正体も思惑も分からず、彼への疑念を払拭できない蓬たち。そんな心理状態のまま怪獣との戦闘が始まり、心が一つにならない一行は苦戦する。
今こそ「なんのために戦っているのか」を教えてほしい。戦闘中ながらも、蓬たちから強くそう望まれたガウマは、覚悟を決めたように「もう一度大切な人に会うために」戦っていることを打ち明ける。その相手が女性であることを知って、蓬たちはガウマが「怪獣と戦う正体不明のヒーロー」ではなく、どこにでもいる「恋に一途な少年」なのだと理解する。
気恥ずかしさからか、今までそれを黙っていたことを詫びると、ガウマは蓬たちに向かって「力を貸してほしい」と頭を下げる。見出しのセリフはその際に発したもので、彼らが本当の意味で一つのチームとしての第一歩を踏み出した瞬間だと言える。

夢芽「なんとかビーム！」

怪獣との戦闘中、ダイナゼノンの武装・ペネトレーターガンを発射しながら夢芽が叫んだセリフ。この時夢芽はいっさいふざけておらず、「武器の名前は覚えてないけど、ガウマのように何か叫びながら攻撃するのが普通なのだろう」と考え、とりあえずこのような言葉を発したのだと思われる。
ここまで夢芽はどこかミステリアスで、どことなく影を背負った印象の少女として描かれており、その彼女の口からあまりにも適当なネーミングが飛び出したことにファンは驚き、同時に「夢芽は意外とお茶目な子なのかもしれない」と彼女の人気が増すこととなった。

ちせ「あんた…贅沢なんだよ」

香乃の死の真相を調べる手掛かりが失われたことに絶望し、「姉のことを知ろうとしてがんばっても、街を守るために戦い続けても、いいことなんて何もなかった」と嘆く夢芽。突如現れた怪獣から彼女を守るため、血相を変えて駆けつけて戦う蓬を見詰めながら、ちせは夢芽に辛辣な本音と激励の言葉を送る。
「南さん。本当にいいことなんて何もなかったんですか？あの人まっすぐに突っ込んできましたよ。南さんの近くにそんな人他にいますか？あんた…贅沢なんだよ」

あんなに必死になって守ろうとしてくれる蓬との出会いは、夢芽にとって“いいこと”ではなかったというのか。形は異なりながらも同じく悩みを抱える少女として、ちせは夢芽にも前を向いてほしいと願っていた。その想いと、自分の中の蓬の存在の大きさに気付いた夢芽は、悲しみを受け入れた上で再び立ち上がる。

歴「ちせが自分で言うならきっと間違ってない」

「怪獣なら殺すべきだ」というスタンスを譲らなかったガウマとナイトの間にあって、歴があまりに鮮やかに「ゴルドバーンは悪い怪獣ではない、私の友達だ」というちせの言葉を信じたシーン。
作中での描写はほんの一瞬ながら、夢芽にとっての蓬のごとく、歴がちせをずっと信じて支えてきたことがうかがえる場面である。