美味しんぼ(漫画・アニメ・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『美味しんぼ』とは原作:雁屋哲、作画:花咲アキラによる日本の漫画。『ビッグコミックスピリッツ』にて1983年より連載され、累計発行部数は1億3500万部を突破している。東西新聞文化部の記者、山岡士郎と栗田ゆう子が企画する「究極のメニュー」に対し、ライバル紙の帝都新聞が海原雄山の監修により「至高のメニュー」を立ち上げ、海原と山岡の間で料理を通じた親子対決が繰り広げられる。アニメ、ドラマ、映画など様々なメディア展開が行われ、グルメ漫画や日本のグルメブームの活性化に寄与した。

目次 - Contents

『美味しんぼ』の概要

『美味しんぼ』とは、原作担当の雁屋哲と、作画担当の花咲アキラによる日本の漫画作品。小学館の『ビッグコミックスピリッツ』上で1983年に連載開始し、1987年に第32回小学館漫画賞青年一般部門を受賞した。2020年10月時点での単行本累計発行部数は1億3500万部を突破している。連載は2014年5月をもって事実上打ち切り状態である。
東西新聞文化部に入ったばかりの若き女性記者栗田ゆう子は、同僚の山岡士郎と共に、東西新聞創立100周年記念事業「究極のメニュー」作りの担当者に任命される。2人に課せられたのは、文化遺産にふさわしい選りすぐりの料理を決める究極のメニュー作りであった。その企画に対してライバル紙の帝都新聞が、美食倶楽部主催の海原雄山の監修により「至高のメニュー」を立ち上げる。海原雄山と山岡士郎は絶縁状態にある実の親子であり、究極対至高の料理対決を通じての親子対決が繰り広げられる。いつもはだらしないが食に関しては見事な知識や感覚を発揮する山岡と共に、栗田はさまざまな美食家や料理と出会い、食文化の奥深さ、そしてそれにまつわる社会問題、様々な人々が抱える悩みを、食を通じて解決させるストーリーとなっている。それまでの料理漫画と違って、主人公は基本的に料理を作らず、その知識や情報を語る批評家として薀蓄を語るスタイルを確立し、グルメ漫画としてそれまでには見られなかったリアリティあふれる描写で、テレビアニメ、テレビドラマ、映画など様々なメディア展開が行われ、グルメ漫画や日本のグルメブームに大きく貢献した作品である。
小学館のビッグコミックスが刊行する単行本は2020年現在で累計1億3500万部を売り上げ、文庫版、愛蔵版、総集編以外にも、「美味しんぼ塾」「美味しんぼの料理本」などの関連書籍も存在する。
連載中は定期的に長期休載状態となっており、原作者や出版関係者が話し合った結果、連載開始から25年間ストーリーの軸として存在した山岡士郎と海原雄山の確執の和解がなされ、新たなストーリーが開始されたものの、2014年5月19日25号をもって再び休載状態となり、現在まで再開していない。

『美味しんぼ』のあらすじ・ストーリー

海原雄山と山岡士郎の対立

「究極のメニュー」の探求に臨む、山岡(左)と栗田(右)。

東京の大手新聞社・東西新聞社。その社主である大原大助は、社史に残る一大プロジェクトとして「究極のメニュー」作りを企画した。担当者に指名されたのは、新人の栗田ゆう子と、文化部の万年窓際社員・山岡士郎である。一見、居眠りばかりでやる気のない山岡だが、実は彼は稀代の美食家にして芸術家である海原雄山の実子であり、幼少期から徹底した食の英才教育を受けていた。
しかし、二人の間には深い溝があった。山岡は、雄山が自らの芸術と美食を優先するあまり家庭を顧みず、病身の母・とし子を酷使し、死に追いやったと考えていたのである。大学生の時、山岡は父の陶芸作品をことごとく破壊して家出し、姓を母方の「山岡」に変えて絶縁した。一方、ライバル社の帝都新聞はこの企画に対抗し、海原雄山を監修に据えた「至高のメニュー」を発表。ここに、料理を通じた親子二代の「食の戦争」が幕を開けたのである

卵を使った前菜対決

記念すべき最初の対決テーマは「卵料理」であった。山岡は、ゆで卵に濃厚なトリュフソースを合わせた洋風の一皿で勝利を確信する。しかし、後攻の雄山が差し出したのは、一見素朴な「卵の黄身の味噌漬け」だった。それは、自然養鶏で育てられた鶏が最初に産む「初卵」という、生命力の凝縮された素材を用いた至高の逸品であった。雄山は「素材の真理を追求せず、ソースという小細工に逃げた」と山岡を痛烈に批判する。
圧倒的な実力差に打ちのめされた山岡だったが、美食家・唐山陶人の助言により再戦の機会を得る。山岡は雄山と同じ「初卵」を使いつつ、黄身の温度と舌触りを極限まで調整した改良版を披露。雄山にその出来を認めさせ、ドローに持ち込む。この一戦は、山岡が「海原雄山の影」から脱却し、一人のプロとして歩み出す第一歩となった。

カレー対決

雄山から突きつけられた次なる課題は「カレー」であった。山岡と栗田は、カレーの真髄を探るべく本場インドとスリランカへ飛ぶ。そこで彼らが知ったのは、本場には「カレー粉」という定形概念はなく、各家庭がスパイスを自由自在に操り、その日の体調や食材に合わせて香りを組み立てるという事実だった。
山岡は、日本人に馴染み深い「鰹節」のルーツとされる「モルジブ・フィッシュ」と、高級食材マッドクラブを用いたスリランカ風カレーを考案する。それに対し、雄山は「ポーク・ビリヤニ」を提示し、スパイスが幾重にも重なる「香りの多重層」の概念を説いた。山岡のカレーを「具材の味に頼った平面的な構成」と一刀両断する雄山の知識量は、山岡を戦慄させる。判定は再び引き分けとなったものの、山岡は自分の未熟さと、父が持つ「食に対する狂気的なまでの探究心」を認めざるを得なかった。

鍋対決

物語が中盤に差し掛かり、一つの到達点となったのが「鍋料理対決」である。山岡は、誰もが好きな具材を選べる「万鍋(よろずなべ)」という寄せ鍋形式を提案する。そこには、茶人・丿貫(へちかん)から学んだはずの「もてなしの心」が込められているはずだった。しかし、雄山はスッポン、フグ、アワビといった、素材を極限まで削ぎ落とした五つの鍋を順番に供し、食の完成度を見せつける。
雄山は山岡に対し、「もてなしとは相手に媚を売ることではない。自らが最高と信じるものを誠心誠意ぶつけることだ」と断じる。山岡の万鍋は、周りの目を気にしすぎた「芯のない料理」であると否定されたのだ。この対決で、山岡は料理技術以前の「精神性」において完敗を喫し、父という巨大な壁を改めて思い知らされることとなった。

山岡士郎と栗田ゆう子の結婚と、海原雄山との和解

月日は流れ、山岡は栗田ゆう子と結婚し、双子の親となった。孫たちの存在や、ゆう子の献身的な橋渡しによって、山岡と雄山の関係には少しずつ変化が生じていた。そんな中、決定的な転機となったのが東日本大震災であった。
二人は母・とし子の故郷である福島を訪れる。震災後の風景を前に、雄山は初めて山岡の前で自らの過去を語り始めた。若き日の傲慢さ、病床の妻に対して「お茶がまずい」と怒鳴り散らしたことへの後悔、そして、冷酷に接してきた息子への歪んだ愛情。山岡は、父もまた一人の人間として苦しみ、母を愛していたことを悟る。
山岡は、家出の際に唯一持ち出した母の思い出の皿を父へ返し、雄山は長年大切に持っていた家族写真を山岡へ手渡した。山岡が静かに「父さん」と呼びかけたその瞬間、数十年に及ぶ凄絶な親子喧嘩はついに幕を閉じた。

『美味しんぼ』の登場人物・キャラクター

山岡士郎と栗田ゆう子一家

山岡 士郎(やまおか しろう/演:唐沢寿明(テレビドラマ・金曜エンタテイメント版)、松岡昌宏(テレビドラマ・土曜プレミアム版)、佐藤浩市(映画))

松岡昌宏(テレビドラマ・土曜プレミアム版)

CV:井上和彦
本作の主人公。東西新聞社文化部所属の窓際族の新聞記者で、仕事中は居眠りばかりしているが、鋭い味覚と豊富な食の知識で、栗田とともに究極のメニュー作りの担当者に任命された。美食倶楽部主催の海原雄山の実の息子で、海原とは長年確執が続いていて勘当状態が続いている。当初は究極のメニュー作りに乗り気でなかったが、憎むべき雄山の登場により本腰を入れる事となる。

栗田 ゆう子(くりた ゆうこ)

CV:荘真由美
東西新聞社文化部へ配属された新人の記者で、ストーリーが進むに連れて山岡に恋愛感情を持ち始め、後に山岡士郎の妻となる。優れた味覚を持ち、山岡とともに東西新聞の究極のメニュー作りの担当者に任命された。活発で、いつもだらだらしている山岡をたきつける相棒役で、結婚後は子供を3人もうけた。結婚後も夫婦揃って東西新聞社に勤務している。

山岡 遊美 & 山岡 陽士(やまおか ゆみ & やまおか ようじ)

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