グレムリン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『グレムリン』とは、ジョー・ダンテ監督による1984年の映画作品。当時、大学生だったクリス・コロンバスが書いた脚本をスティーブン・スピルバーグが気に入り映画化された。スピルバーグは制作総指揮として参加している。発明家の父親ランダル・ペルツァーから主人公の息子ビリーの元に、クリスマスの贈り物として「モグワイ」と呼ばれる地球外生命体がやってきた。素直で愛らしい姿を気に入り、ビリーは「ギズモ」と名付けて世話を始めるが、次第に予想不可能な事態へと発展していくというコメディーSFパニック映画である。

『グレムリン』の概要

『グレムリン』(Gremlins)とは、アメリカで1984年に公開された映画である。
グレムリンは機械を悪戯する”妖精”と言われ、ノームやゴブリンの遠い親戚にあたる。言わば「目には見えないと信じがたいもの」に値する。
人は目には見えず、耳では聞こえないものは「事実ではない」、「不思議なもの」として分類している。

1984年は他にも多くの話題となった映画が作られた年だ。
「ターミネーター」、「ベストキット」、「ゴーストバスターズ」などが作られたこの年、「グレムリン」はクリスマス映画として公開予定だったが、他社との競合を危惧したワーナー・ブラザーズスタジオが予定を変更し、同年6月8日の公開へと踏み切った経緯がある。
奇遇とはいえジョージ・オーウェルの「1984年」の出版日が”6月8日”だった事と重なるのは何を意味するのか、気にはなるところだが今のところ偶然の産物としか言いようがない。

日本での公開は同年12月8日で、興行成績から言えば、ライバルとされた「ゴーストバスターズ」に軍配があがった。
当時、「E・T」に続く大作「インディージョーンズ/魔宮の伝説」の準備中だったスピルバーグは、この「グレムリン」にまでは手がつけられず、信頼できるクリエイターに任せるべく人選が行われた。
そこには若き頃のティム・バートンの姿もあったという。そこで白羽の矢が立ったのがジョー・ダンテだった。
彼はスピルバーグの作品「ジョーズ」を真似て、「ピラニア」という作品を手掛けた強者でユニバーサルスタジオが訴訟まで起こそうとしたが、意外にもスピルバーグ本人が面白がった事で事態を免れたという。
そんな因果のあるジョー・ダンテが、スピルバーグの代わりに監督をすることになるとはこれもまた不思議な話だ。
ちょうどこの頃、ダンテはスランプに陥っていたらしい。そんな時に突如、「グレムリン」の話が舞い込んだ。
スピルバーグとしては低予算で効率よいヒットを目指したかったが、いざ準備に入ると目論見が外れ、かなりの予算と特殊技術が必要だという現実にぶつかる事となる。
とりあえず、予算と撮影環境は確保したダンテだが制作に当たっての方向性について、他の制作陣と意見の相違があったり苦労が絶えなかったらしい。そんな時の”相談役”としてスピルバーグという存在がいた。

ジョー・ダンテがスピルバーグに敬意を表してか、冒頭の雪の中で映し出される映画館のシーンでスピルバーグの「E・T」、「未知との遭遇」の制作時の仮タイトル「A Boy’s Life」と「Watch the Skies」という名が登場する。
また、スピルバーグ本人が一瞬だけ”発明品の見本市で電話をかけるシーン”に出演している。

ジョー・ダンテとスピルバーグの制作チーム側と、ユニバーサル側とで対立した逸話もある。
本編後半に「グレムリンの数が多すぎるのでは?」という指摘が入るが、この増殖して飲めや歌えの大騒ぎを繰り広げるシーンは人間と重ねて見せる重要なシーンだとしてスピルバーグが怒り、「じゃあ、グレムリンの登場シーンを全部カットして、タイトルを“Gremlins”じゃなくて“People”にしてやろうか!」と言ったそうだ。そのお陰で減らされる事もなくあの本編シーンとなる。

もう一つ問題となったセリフがあった。ビリーのガールフレンドが”クリスマスが嫌いな理由”を語る55秒のセリフ。
楽しいクリスマスのイメージを損なう内容にスタジオ側がカットしろと要請したが、ダンテはこの刹那的な雰囲気こそが「グレムリン」を創り上げる大事な部分だと拒み、スピルバーグの頑なさにスタジオ側が根負けした形で本編のセリフに残される事になった。

テーマソングのどこか騒々しく、どこか物悲しいように聴こえるメロディーは、この作品を捉える人によって其々違った印象を持つに違いない。

製作費:$11,000,000、興行収入:$153,000,000、配給収入:31億8200万円

『グレムリン』のあらすじ・ストーリー

モグワイ、ペルツァー家に来る

ランダル・ペルツァーに購入されたモグワイ

発明家のランダル・ペルツァーは、自らの発明品を売り込むためにチャイナタウンを訪れていた。ランダルは道でとある少年にいいものがあると誘われ、彼の祖父が店主を務める地下にある薄暗い店を訪れる。
営業をかけ、家族へのクリスマスプレゼントを探すランダルは、店内で奇妙な鳴き声を聞きつける。声の元に行ってみるとそこには見たことも無い奇妙な動物がいた。

何という生き物かと尋ねると、「モグワイだ」と言われる。かわいらしい容姿をしていることからモグワイをクリスマスプレゼントに選んだランダルは、モグワイを買うと言い出す。しかし店主はいくら積まれてもモグワイを売る気は無いと言う。しかし少年は「自分の家にはお金が必要だ」と考え、祖父に黙ってモグワイをランダルに売ってしまうのだった。
少年は最後にモグワイを飼う際の禁止事項を教える。それは1に光を当ててはいけない(太陽光に当たると死ぬ)、2に水を浴びせてはいけない、3に深夜0時以降に食べ物を与えてはいけないというものだった。

ペルツァー家は決して裕福なものではなく、ランダルの作る発明品は役に立たないものばかりだった。だが息子のビリーと妻のリンは文句を言うこと無く、むしろランダルの発明を応援していた。
裕福ではない生活だったが、家族仲はすこぶる良く、クリスマスを心待ちにしているような幸せな一家だった。ビリーは銀行員として働いており、ペットで愛犬のバーニーをとてもかわいがっていた。

そんなクリスマス前のある日、営業に行っていたランダルが帰宅し、ビリーにモグワイをプレゼントする。ランダルはモグワイにギズモ(新装置という意味)という名前をつけ、ビリーはギズモのかわいさに心を奪われる。
ランダルはビリーとリンにモグワイを飼うときのルールを教え、それを守るように言いつけるのだった。

モグワイの増殖とグレムリン

ギズモは大人しくて頭がよく、歌が好きなかわいらしい動物だった。ビリーは新しいペットを手に入れて上機嫌で、ギズモと一緒に遊ぶ。
しばらくして隣人の小学生・ピートがペルツァー家にやってくる。ビリーとピートは年は離れているが、兄弟のように仲が良かった。ビリーはピートにギズモを見せると、ピートはすぐに心を奪われ、僕も欲しいと言い出す。

ピートとギズモはすぐに仲が良くなり、二人と一匹は遊び始める。ビリーがギズモが歌が得意であることを見せると、ピートはとても驚く。
しかし、その拍子にピートはテーブルにあったジュースをこぼし、ジュースはギズモにかかってしまう。ジュースのかかったギズモは苦しみはじめ、体から煙が上がり始める。やがてギズモの体から毛玉が5つ飛び出す。毛玉はやがて大きくなり、顔と手足が生え、モグワイとなった。なんと水を浴びたギズモから飛び出した毛玉が、5匹のモグワイとなり、増殖してしまったのだった。

しかし、増えたモグワイは大人しいギズモとは違って攻撃的な性格で、ピートが触ろうとすると威嚇してくる。中でも頭から背中にかけて白色のストライプが入っている個体は非常に凶暴で、騒がしいモグワイだった。

ある日ビリーはモグワイを連れて、ピートの理科の先生であるハンソン先生を訪ねる。ハンソンはモグワイが水をかけると分裂する習性を見て興味を抱き、「調べたいから一匹置いていってくれないか?」とビリーに持ちかける。ビリーはこれを快諾し、モグワイを一匹ハンソンの研究室に置いていくのだった。

その夜、ビリーは銀行の同僚の女性・ケイトがボランティアで働くパブに顔を出す。ビリーとケイトは密かにお互いを想いあっていた。
パブはそろそろ閉店の時間だったが、そこに外国製のものが大嫌い(米国産びいき)なファッターマンが酔っ払ってケイトに絡んでいた。ファッターマンはビリーをみつけると、自分が外国製品を嫌いな理由を語り始める。
その理由とは「海外製品にはいたずら好きの小悪魔・グレムリンが取り憑いているから」というものだった。ファッターマンは妖精グレムリンの存在を信じている珍しい人間だったのである。

グレムリンの誕生

ある夜増殖したモグワイたちが腹が減ったと騒ぎ出す。時計を確認すると0時より前だったため、言いつけは守れると考えたビリーはチキンをモグワイたちに与える。ギズモにも食べるか尋ねると、ギズモは首を横に振る。同日の0時過ぎ、ハンソンの元にいたモグワイもハンソンが食べ残したサンドイッチをこっそりと食べるのだった。

次の日のクリスマスイブ。ビリーが起きるとギズモを除くモグワイたちの姿はなく、部屋に5つの蛹のようなものがいた。水をかけた訳でもないのにモグワイたちに変化があったことを不審に思ったビリーはリンに相談をし、「0時過ぎに食べ物をあげたのでは?」と言われる。ビリーは少し考えて、改めて自室の時計を確認すると、時計のコードが切られていた。
モグワイたちに食事を与えた時間が0時過ぎの可能性があるのだ。また時計のコードを切ったのは、ギズモを除くモグワイたちの仕業としか考えられなかった。

やがてハンソンから「蛹が孵った!」という連絡が届き、ビリーはハンソンのいる研究室へと向かう。ビリーが研究室に到着すると、ハンソンが床に倒れていた。
驚いたビリーが助けを呼ぼうと電話に手を伸ばすと、突如何かが手をひっかき出血する。手当てをしようと救急箱のある部屋に飛び込むビリー。

しかし突如棚扉から小さなグロテスクなモンスター(以下グレムリンとする)が飛び出す。グレムリンは扉の空気口からとびだしてどこかに行ってしまう。ビリーは咄嗟に家の蛹を思い出し、母のリンに危機が迫っていることを察する。

一方ペルツァー家では蛹が孵り、五匹のグレムリンが誕生していた。リンは包丁を持ってグレムリンたちと戦う。なんとか三匹のグレムリンを倒すも、一匹のグレムリンに襲われ、クリスマスツリーのコードで首を締め上げられてしまう。
そこにビリーが戻ってきて、玄関にあった飾り物の剣で母を襲うグレムリンを撃退する。4匹のグレムリンを倒し、残り一匹となったところで、ビリーは白いストライプのグレムリンを目撃する。
モグワイのなかでもとりわけ凶暴だったストライプがグレムリンのボスだったのである。ストライプはペルツァー家を飛び出しどこかに行く。ビリーはリンを医者の家に預け、家にいたギズモを連れてストライプを追うことにする。

ビリーは積雪についたストライプの足跡を追い、YMCA体育館にたどり着く。体育館の入り口は破壊され、ビリーたちもそこから侵入する。すると急に体育館の非常ベルが鳴り、ストライプがビリーに飛びかかる。そのままストライプは体育館のプールに飛び込み、やがてプールはボコボコと泡立ち変色し始める。ストライプは増殖して仲間を増やすつもりなのである。

体育館を離れ、警察署にむかうビリーだったが、警官たちはグレムリンの存在を信用しようとしない。やがて警察に通報がくる。グレムリンたちによるものに間違いないと考えるビリーだったが、警官たちはビリーに家に帰ってクリスマスを楽しめと馬鹿にしたように去って行く。
しかし町中ではビリーの言うとおり、増殖したグレムリンたちが暴れ回っていた。グレムリンたちは機械にいたずらをしたりなど、町で好き放題をしていた。
警官たちも通報先でグレムリンを見つける。警官たちは見たこともないモンスターに恐怖し逃げ出すも、パトカーをグレムリンに壊され、操縦不能になり横転してしまう。

グレムリンとの対決

その頃パブで働いていたケイトは、押し掛けたグレムリンたちの接客をさせられていた。
酒を飲んだり、カードゲームをしたりと好き勝手に振る舞う。一匹のグレムリンが煙草をくわえてケイトに近寄る。火をつけろということだった。マッチを擦って火を近づけると、グレムリンは怯えて後ずさる。

グレムリンたちが光が苦手であることに気づいたケイトは、ポラロイドカメラのフラッシュを使って、グレムリンたちと戦い始める。しかしポラロイドカメラが壊れたうえ、一匹の目出し帽をかぶったグレムリンに銃を向けられ、ケイトは窮地に陥る。そのとき店の外から車のライトが店内を照らす。ビリーの車だった。ケイトはビリーと合流し、動かなくなった車を捨て、一件の建物に身を隠すのだった。

少し経って、外を確認すると町は静かになっていた。もうじき朝が来るのでグレムリンたちは映画館に身を隠しているのだ。
グレムリンたちはモグワイと同じく、日の光に当たると死んでしまう。ビリーとケイトはこれを好機と考え、映画館のボイラー室を爆発させグレムリンたちを一網打尽にすることを計画する。

計画は上手くいき、爆発によって大量のグレムリンを仕留めたふたりだったが、大量のお菓子を抱えたストライプを目撃する。ストライプは一匹でデパートのお菓子を奪っていたため、難を逃れていたのだ。

ビリーとケイトはグレムリンのボスであるストライプを倒すため、デパートに侵入する。ギズモをケイトに預け、別行動をすることにした二人。不安そうなケイトにビリーがキスをする。

やがてビリーとストライプの戦いが始まる。狡猾なストライプは罠を仕掛けてビリーを襲う。窮地に陥るビリーだったがそこにケイトに預けたギズモが現れる。ギズモの活躍によってストライプは太陽光に照らされ、倒されるのだった。

ギズモとの別れ

家に帰るとテレビでは町で起こった混乱が報道されていた。ペルツァー一家とケイト、ギズモはそれを見ている。そこにランダルにモグワイを売った老人のミスター・ウィングが現れる。老人はギズモを連れ帰りに来たのだった。
ウィングは金をランダルに返し、ギズモをかごに入れる。そしてペルツァー家に言いつけを守らずに飼わなかったことを説教する。

そのまま帰ろうとするウィングだったが、「モグワイ(ギズモ)がビリーに言いたいことがあるようだ」と立ち止まる。かごを開けるとギズモは「さよなら、ビリー」と悲しげな笑顔を見せた。
本当は離れたくないビリーの心中を察して、ウィングはビリーに声をかける。「君にもいつかモグワイを飼える時がくる。その時をモグワイは楽しみにまっておるよ」と優しくビリーにほほ笑んだウィングは、ギズモを連れてペルツァー家を出る。

最後にランダルのナレーションが入り、こう締めくくる。
ランダル「もし君の家でもエアコンや洗濯機・ビデオが壊れたら、電気屋さんを呼ぶ前に家中の電気を消して、戸棚やベットの下を探してみるといい。もしかしたらグレムリンが忍び込んでいるかもしれないから」

『グレムリン』の登場人物・キャラクター

ペルツァー家

ビリー・ペルツァー(演:ザック・ギャリガン、日本語吹替:関俊彦)

田舎街・キングトン・フェールズの銀行員。愛犬バーニーをとても可愛がっている。穏やかで優しい家族想いの青年。銀行の同僚で友人・ケイトに好意を寄せる。趣味は漫画を描く事。ディーグル夫人には愛犬バーニーが雪だるまを壊した事で犬を殺すと脅されている。ギズモをとても可愛がり、面倒をみる内に増殖したグレムリンの騒動に巻き込まれ、ケイトと共にグレムリンに立ち向かう。

ランダル・ペルツァー(演:ホイト・アクストン、日本語吹替:富田耕生)

ビリーの父親。発明家。発明品は奇抜で実用性に欠ける為、収入は少ない。セールスで立ち寄ったチャイナタウンの骨董店でモグワイ(ギズモ)を購入し、ビリーへクリスマスの贈り物として渡す。アイデアで暮らしを豊かにする事を夢みて、日々発明に明け暮れている。楽観的で穏やかな性格。

リン・ペルツァー(演:フランシス・リー・マッケイン、日本語吹替:池田昌子)

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