メッセージ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『メッセージ』(原題:Arrival)とは、本作後に「ブレードランナー2049」を撮るドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSFムービー。
突如地球上に現れた巨大な宇宙船。飛来した目的を探ろうと、船内の異星人とコミュニケーションをとるため軍に依頼された女性言語学者が、彼らと接触するうちに未来を見ることが出来るようになり、自分の人生を見つめ直していくシリアスタッチの知的なドラマ。2016年製作のアメリカ作品。

『メッセージ』の概要

『メッセージ』とは、突如地球の各地に飛来した巨大な宇宙船の異星人と意思疎通を図り、彼らの目的を探ろうと女性言語学者が理論物理学者と共に彼らに接触しコミュニケーションをとろうとする、2016年製作のアメリカ映画。
第89回アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞・撮影賞など8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
原作は、1999年にネビュラ賞中編小説部門で受賞したテッド・チャンのSF小説「あなたの人生の物語(Story of Your Life)」。
監督は、アカデミー外国語映画賞にノミネートされたカナダ映画「灼熱の魂」(10)で注目を浴び、「プリズナーズ」(13)「ボーダーライン」(15)などアメリカ映画界に進出したカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。彼にとって初めてのSF映画がこの『メッセージ』だ。
出演は、「魔法にかけられて」(07)や「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」(16)「ジャスティス・リーグ」(17)でロイス・レインを演じたエイミー・アダムス、「アベンジャーズ」シリーズ(12~16)のホークアイや「ボーン・レガシー」(12)で知られるジェレミー・レナー、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(16)「ブラックパンサー」(18)に出ているフォレスト・ウィテカー、「ドクター・ストレンジ」(17)「シェイプ・オブ・ウォーター」(17)に出演したマイケル・スタールバーグ。
音楽は、ヴィルヌーヴ監督の「プリズナーズ」「ボーダーライン」も担当したアイスランド出身のヨハン・ヨハンソン。

『メッセージ』のあらすじ・ストーリー

謎の巨大物体が現れた日

モンタナ州で暮らす独身の言語学者ルイーズ・バンクスが、大学で講義するため教室に入ると、いつもと違って生徒は数人しかいなかった。ルイーズが諦めて講義を始めようとすると、スマホを見ていた女生徒がテレビのニュースを付けて欲しいと言った。

ルイーズはいぶかしそうにテレビをつけると、謎の巨大物体がモンタナ州に突如出現しアメリカ軍が向かったこと、そしてそれとよく似た物体が世界各地に出現していることを伝えていた。
ニュースの最中にサイレンベルが鳴り、すべて講義が中止となり生徒や教授たちは帰宅を促された。慌ただしい雰囲気に包まれる中、ルイーズも家路に着いた。

翌朝ルイーズは大学に行くが、生徒や教授は誰も来ていなかった。ルイーズがパソコンでニュースを見ると、政府が非常事態宣言を発令していた。そして5,000人の州兵が、モンタナ州に派遣されたことを伝えていた。

その時、ルイーズの元にアメリカ軍のウェバー大佐が現れた。ルイーズは軍の諜報機関の依頼で、ペルシャ語を翻訳したことがあった。その時の功績が買われたようで、ウェバーはミニ録音機を取り出し、音声を流した。内容は異星人らしきものへの問いかけと、それに対する意味不明の雑音のような声だった。

ウェバーは異星人の声を翻訳して欲しいとルイーズに頼むが、ルイーズは未知の言語だから直接話さないと解読できないと答えた。
それを聞いたウェバーは彼女が単に好奇心で異星人を見たがっていると思い、次の翻訳の候補者の所へ向かった。

異世界人の言語

夜、寝ていたルイーズは、ヘリコブターの轟音で目を覚ました。何事かと玄関のドアを開けると、ウェバーが立っていた。候補者が見つからなかったため、ウェバーはルイーズの要求を受け入れ現場に連れて行くことにした。

ルイーズは慌ててヘリコブターに乗り込むと、機内には理論物理学者のイアン・ドネリーがいた。ウェバーの考えで、ルイーズとイアンがコンビを組んで異星人との接触を試みることになった。

現地に着き、ルイーズは初めて宇宙船を目の当たりにした。周囲には軍のキャンプ地が設けられ、多数の兵士たちが宇宙船を監視していた。

キャンプ地のテントに入ったルイーズとイアンは、血液検査と予防接種を受けると、モニターが並んだ場所に連れて行かれた。そこは宇宙船が現れた国とライン回線で繋がっており、モニター画面を通して情報交換をしている部屋だった。ルイーズ達は、そこを取り仕切っているCIAのデヴィッド・ハルペーンをウェバーから紹介された。

ルイーズとイアンは防護服を身に着けると、ウェバーやマークス大尉らと共に宇宙船に入り、奥の方へと向かった。

異星人との接触

奥は薄暗くだだっ広い空間で、目の前は透明板のようなもので仕切られていた。そして透明板の向こうで、2体のタコのような形をした大きな異星人が、奇妙な声を発しながら現れた。ルイーズやイアンは、初めて目にした異星人に驚いて立ち尽くすばかりで何もできなかった。

1回目の異星人とのセッションが終わり、キャンプに戻ったルイーズ達。何も出来なかったとルイーズは落ち込むが、ウェバーに研究を続けるようにと言われる。
2回目の異星人とのセッションに向かうとき、ルイーズは白いボードに目をとめた。文字による視覚言語でなら、意思疎通が図れるかもしれないと考えたのだ。

宇宙船内に入ると、ルイーズはボードに「HUMAN」と書き異星人達に見せた。そして、「私は人間」と言いながらボードを指し示したが、何の反応もなかった。
しばらくすると異界人が近づいて手から墨のようなものを出し、透明板に円形の形を描いた。それは初めての異星人の反応だった。
2回目のミッションを終えてキャンプに戻ると、ウェバーはコンタクトできたことは認めるものの、方向性は正しいのかと文句を言っていた。

3回目のセッションの時、ルイーズは自分の名前をボードに書いて異星人に見せた。異星人は、2回目の時と同じように手から墨を出し円形を描いたが、描き方が前回と違って見えた。
言葉が異星人にうまく伝わらなかったと思ったルイーズは、「顔を見せなきゃ」と思い防護服を脱いで透明板に近づく。

ルイーズが透明板に右手を当てると、異星人も近寄り透明板に手のひらを押し当てた。ルイーズは異星人とやっと挨拶が出来たと思った。

ヘプタポッド

キャンプに戻ったウェバーは、今後防護服無しでコンタクトを続けると決めた。ルイーズはテントの中で異星人の描いた円形の数々を並べ、彼らの言葉の意味を探ろうとした。
その時彼女の脳裏に突然、幼い少女が野原や小川で戯れているイメージが浮かんだ。なぜそんなイメージが浮かんだのか、彼女には分からなかった。

イアンやルイーズ達は、異星人を「ヘプタポッド」と名づけることにした。ギリシャ語でヘプタは「7」、ポッドは「足」を意味し、異星人の足が7本だったことが由来だった。
異星人とのセッションを続ける中でルイーズの研究チームは、異星人の声と描く円形に関連がないことを突き止めた。

異星人の文字は、意味を形や絵に置き換えて表した文字の集まりである表意文字だった。また文字の解読に協力したパキスタンチームにより、異星人の文字には現在や過去、未来という時系列の概念がないことも分かった。

ウェバーが求める異星人が地球に飛来した目的を彼らから聞き出すためには、まだもう少し時間がかかるようだった。ルイーズとイアンは熱心に仕事を続け、互いに励まし合い親しくなっていった。

繰り返すルイーズのイメージ

ある日、ヘプタポッドの画像が流出してしまった。それは拡散されて世界各地で波紋を呼び、政府やヘプタポッドへの風当たりが強くなった。

ルイーズがヘプタポッドの文字を解読に疲れて一休みをとった時、また彼女の脳裏に少女の姿が現れた。脳裏に浮かんだイメージには、ルイーズの姿もあった。最初の時より少し成長し小学生になった少女は、学校の授業で描いた絵をルイーズに見せていた。

ルイーズは、最初彼女の脳裏に現れた幼い少女が誰なのか分からなかった。しかし少女の名前が「ハンナ」であり、どうやら少女が自分の娘らしいと感じた。でもそれは脳内のイメージの中だけの出来事なのか、予知夢と呼べるようなものなのか、彼女には分からなかった。

ルイーズはイアンの呼び声でふと我に返った。イアンは心配するが、ルイーズは外の空気を吸うと言い、1人でテントから出た。

草原を歩いていたら、また10代後半になった少女ハンナが、病院のベッドに横たわっているイメージが脳裏に浮かんだ。母であるルイーズはハンナに添い寝し、腕をまわして彼女をそっと抱いた。その時、急にヘプタポッドが霧の中から現れた。

どうしてそんなイメージが浮かぶのかルイーズは分からなかったが、睡眠不足と疲労のせいかもしれないと考えた。

各国の動き

ルイーズが仮眠をとっていると、ウェバーに起こされた。ウェバーは「中国人民解放軍のシャン上将の会話を訳して欲しい」と言い、ルイーズに録音した会話を聞かせた。
会話に出てくる単語から、中国は麻雀パイを使って異星人とコミュニケーションをとろうとしているとルイーズは推測した。しかし、詳しい内容までは分からなかった。
ウェバーは1時間前に中国が軍を招集したのが分かり、武力という切り札を異星人に対して出そうとしていると思っていた。

ウェバーは準備不足でも異星人の目的を聞くしかないと言い、ルイーズもイアンもそれに従う。ルイーズはそれまでに分析した文字で、ヘプタポッドに「地球に来た目的は?」と質問した。すると返ってきた言葉は「武器を提供」だった。ヘプタポッドの返事に「武器」という言葉が出たことで、キャンプ地にいた人間達は動揺した。

ルイーズとイアンは、ヘプタポッドの意図をはっきりと確認するため、もう一度彼らとセッションする必要があるとウェバーに訴えた。

その直後、中国とロシアがライン回線を切った。異星人達の目的がおそらく地球攻撃だろうと決め付け、他国と協力する必要がなくなったと判断したからだ。アメリカも大統領の命令で各国との回線を切った。

ヘプタポッドへの攻撃

同じ頃、キャンプ地の兵士達には待機命令が出ていた。しかしマークスは命令を無視し、宇宙船に時限爆弾をセットした。彼はヘプタポッドを人類の敵と見なし、亡き者にしようと図ったのだ。
マークスがテントに戻ろうとした時、ルイーズとイアンがヘプタポッドとセッションをすると言い出した。マークスは始めは拒否したが、説得され承諾する。

マークスは同行せず、ルイーズとイアンの2人だけで船内に入った。ルイーズがパソコンを使って、ヘプタポッドの言葉で「地球に来た目的は何?」と問いかける。すると左側のヘプタポッドが透明板をコツコツと叩き、直接書けと指示して手を広げた。
そんなことが自分に出来るのかルイーズは分からなかったが、透明板に近づきヘプタポッドの手に合わせるように自分の手を当てた。

それと同時に、生まれたばかりの赤ん坊のハンナを抱く自分の姿がルイーズの脳裏に浮かんだ。すると、ヘプタポッドの手先から出た墨がルイーズの手先にも移り、知らぬ間に彼女はヘプタポッドの言葉を描いていた。

その時、急に右側のヘプタポッドが、鋭い動きをした。そして墨を出し、幾つもの小さな円形が透明板一面を覆う。
宇宙船の外部で突然銃撃戦が始まりルイーズ達は驚くが、すぐさまヘプタポッドが透明板を強く叩いた。
その衝撃で二人は後ろの方へ吹き飛ばされたと同時に、マークスが仕掛けた時限爆弾が爆発した。ヘプタポッドが2人を助けてくれたのだ。

銃撃戦は、爆弾を仕掛けたマークス達と警備兵達とのものだった。爆発の衝撃で気絶していたルイーズは目が覚めると、ヘプタポッドが最後に出した無数の円形の文字を解読するため、キャンプの解読部屋へ急いだ。

ルイーズが部屋に入ると、急に轟音が響いた。ウェバーやルイーズがテントの外に出ると、宇宙船がゆっくりと上空800メートルまで上昇した。

一触即発の危機

その夜、CIA本部からデヴィッドに連絡が入った。ヘプタポッドへの攻撃準備をすると彼の上司は言った。ニュースでは、中国が宇宙船に対し宣戦布告したことや、ロシアやスーダンも武装を固めたことを伝えた。

世界が一触即発の危機を迎える中、ルイーズとイアンはヘプタポッドの真意を知るために、必死で無数の円形の文字の解読に取り組んだ。ルイーズが円形の文字を見つめていた時、彼女の脳裏にまた娘ハンナと自分が会話しているイメージが現れた。

ルイーズはイアンに声をかけられ我に返る。イアンは数の円形文字を示しながら、どうやら時間の話のようだと言う。
そして分析結果から2人は「円形の文字の群れは12分の1の情報を示していて、他の地域に飛来した宇宙船のヘプタポッドもそれぞれ情報を持っている。それらを合わせれば彼らの目的が分かる」と推論した。

ウェバー達にそれを報告すると、デヴィッドが「なぜ、メッセージをバラバラに渡す」と問う。それに対しルイーズは「人類を団結させるため」と答えた。
「諸国にとって、アメリカにデータを渡すメリットはあるのか?」とデヴィッドが反論すると、イアンが「こちらのデータも渡す」と言った。イアンの意見をウェバーは認めたが、複数の地域はライン回線を切っており連絡できなかった。

そこでイアンは、宇宙船同士なら連絡を取り合っているはずだから、宇宙船ならできると言い出す。
その時、ルイーズはヘプタポッドの文字を自分が描いたことを思い出した。自分なら異星人の目的を各国に伝えて欲しいと頼むことが出来るかもと思い、そっとテントから外に出た。

ヘプタポッドの目的

ルイーズが宇宙船に入ると、ヘプタポッドが現れた。「他の地域の宇宙船にメッセージを送って」と頼むと、ヘプタポッドはルイーズの武器を使えと返答する。どういうことか分からないルイーズが、それを問うとヘプタポッドは「人類を助ける」と答えた。そして、地球に飛来した理由は「3000年後に人類の助けが要る」と伝えられる。

ヘプタポッドは時間を超越した生命体であり、未来に起こることを認識できるのだ。ルイーズは言語を解読する中で、いつしか未来を認識できるようになっていた。彼女の脳裏をよぎるハンナという名の少女と自分の姿は、ルイーズの未来の姿だったのだ。

ヘプタポッドは「武器は時を開く」と意味深な言葉をルイーズに送ると、彼女の前から遠ざかり、知らぬ間に彼女も地上に降りていた。
イアンやウェバーが、ルイーズのそばにやって来た。ウェバーは「我々はここからの撤退命令が出た」と彼女に告げた。

テントに戻ると、ルイーズはもう一度ヘプタポッドの円形の文字を見直した。そして彼女はヘプタポッドが語った「武器」とは「言葉」のことだと理解した。早速、ルイーズは未来が見えることをウェバーに言ったが、彼は聞く耳を持たない。

中国による宇宙船への攻撃が迫る最中、ルイーズはヘプタポッドが言った「ルイーズには武器がある。武器を使え」という言葉の意味を考えた。
するとルイーズの脳内に、ある祝賀会でシャン上将が彼女に会いに来る映像が浮かんだ。そこではシャン上将が、ルイーズに携帯の電話番号を教えてくれていた。
自分が今何をするべきか悟ったルイーズは1人でテントに戻り、デヴィッドの携帯電話で中国のシャン上将に電話をかけた。

ルイーズは隠れながら電話をかけ続けた。やっとシャン上将が電話口に出た時、ルイーズは未来の祝賀会の映像を脳内に浮かべた。そしてルイ-ズはシャン上将が妻の死ぬ間際の言葉を話すのを、そのままなぞるように電話で話して聞かせた。

シャン上将は、自分しか知らないことを話すルイーズに驚いた。ルイーズはヘプタポッドの言語を学んだおかげで未来を見ることが出来たからで、彼らは決して地球を侵略しようとしていないと言う。
シャン上将は、妻の死ぬ間際の言葉を知っていた理由に納得し、ルイーズの言葉を信じることにした。

シャン上将は緊急会見を開いて武装を解除すると発表し、再び各国が協力し合うこととなった。そのことを異星人達は分かったのか、世界各地に現れた12の宇宙船は次々と姿を消していった。

エピローグ

宇宙船が去り、撤退するキャンプ地のそばで佇むルイーズとイアン。

ルイーズが「この先の人生が見えたら、選択を変える?」とイアンに尋ねると、彼は「自分の気持ちをもっと相手に伝えるかも」と答えた。そして、イアンはルイーズに結婚を申し込む。

ルイーズは辛い運命になることが分かっていたが、どんな瞬間も大切にすると誓いイアンのプロポーズを受け入れた。

『メッセージ』の登場人物・キャラクター

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