ドールズフロントライン(ドルフロ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ドールズフロントライン』とは、中国のサンボーンが開発しているスマートフォン用のゲームアプリである。民間軍事会社の指揮官であるプレイヤーは、第三次世界大戦により荒廃した近未来を舞台に、人工知能の反乱により襲い来る機械の兵士たちを撃退するため、銃の名前を冠する戦術人形と呼ばれる機械の少女を率いて戦うことになる。

最初から指揮官が本物のジョゼではないことを知っていたヘンリエッタは、この仮想空間ごと滅びる道を選ぼうとしていた

グリフィンで新しい人生を楽しむことを決めた義体の少女たちは、戦術人形という新たな友を得た

指揮官は、ヘンリエッタに手を引かれて最後の一人、クラエスのヴィータへと入っていく。その最中、指揮官はヘンリエッタに、彼女自身のヴィータについて尋ねる。ヘンリエッタは、入ろうと思ったことはあるが結局入らなかった、と答える。その理由を聞く指揮官に、ヘンリエッタは、虚構の幸せからはいずれ離れなければならないからだと答えた。幸せな夢から覚めることはとてもつらいことであり、だとすれば最初から偽りの幸せを求めるべきではない、と語るヘンリエッタ。これまでのヘンリエッタらしくない厭世的な言い方に違和感を持つ指揮官だったが、ヘンリエッタは「ジョゼさんと離れていた17万時間の間に色々考えたんです」と返す。ヘンリエッタは、偽りの幸せで自分を騙したくないからずっとジョゼを待ち続けてきたのだと言う。そして、「こうしてジョゼさんが帰ってきたのだから、待っていた時間にも意味はあったんです」と微笑むのだった。
クラエスのヴィータに入った指揮官とヘンリエッタ。最初に目前に広がったのは、落ち着いた雰囲気の一室だった。ヘンリエッタによると、ここは社会福祉公社の義体担当官宿舎らしい。担当官宿舎のこともクラエスのことも知らない指揮官に「ジョゼさんはそんなことも忘れてしまったんですか」と言うヘンリエッタ。しかしその態度には、指揮官が本当のジョゼではないことを理解しているような雰囲気があった。
指揮官にクラエスのことを説明するヘンリエッタ。クラエスは物静かな少女で、担当官が不在のため任務に出ずにいつも公社内で過ごしているとのことであった。ヘンリエッタはクラエスとも仲が良く、クラエスが公社敷地内に作っている菜園の仕事を時々手伝っていると言う。クラエスに担当官がいないことを疑問に思う指揮官にヘンリエッタは、クラエスの担当官は事故死したこと、死んだ担当官についての記憶がクラエスだけでなく他の義体からも消えてしまったこと、その後クラエスは誰ともフラテッロを組まなかったことを教えた。指揮官は、カリーナから送られてきた義体についてのデータファイルでクラエスについて調べたが、他の義体と違いわずかな情報しか残っていなかった。そして、担当官については「ラバロ」という名前ぐらいしか記されていなかった。指揮官は、このヴィータにおいてラバロが現れることはないだろうと推測した。しかしヘンリエッタは、ここでは何が起こってもおかしくないのだと言う。指揮官は、これまでのヴィータでは自分が義体たちの担当官を演じることで信頼を築いて物語を終えることができたが、担当官が故人でデータも残されていないクラエスのヴィータではそれができるのだろうかと考えていた。担当官という役柄なしで、個人として義体の少女たちと信頼関係を結ぶことができるのか。
改めて宿舎の室内を見渡すと、ずいぶん長い間使われた形跡がないことが伺えた。窓の外から見える庭の光景も、雑草がびっしり生えていて手入れの痕跡が見当たらない。しかし室内は薄く埃が積もっているだけでカビや汚れは特になく、ベッドの下にはよく手入れされた機関銃が置いてある。この部屋は誰かがある程度の整理をしているようだった。特に手がかりがなかった室内から庭へと出た指揮官は、この古びて今にも崩れそうな宿舎が生い茂った雑草とツタに覆いつくされていることを確認した。この廃墟のような建物は本当に社会福祉公社なのだろうかと疑問を持ちながら、指揮官は庭を歩く。そして、いつの間にかヘンリエッタはいなくなっていた。指揮官はヴィータ内で配役がないから姿を見せられないのかとも思ったが、今度は声さえしない。やはり雑草に覆われた石のタイル沿いに歩いていくと、同様に廃墟となった射撃訓練場や公社のオフィスビルが目に入った。かつて一介の兵士として訓練を受けていた頃のことを思い出しながら、指揮官は射撃訓練場へと向かう。すると、公社ビルと射撃訓練場の間には色々な花が咲いている花壇があった。その近くには野菜畑もある。ここには誰かが暮らしているという確信を得た指揮官の前に、眼鏡をかけた一人の少女が現れた。「あなたは誰?」と尋ねてきたその少女は、なぜかひどく怒っているようだった。「私にかまわないで」と厳しい口調で言い放つ少女に、指揮官は思わずクラエスの名を呼ぶ。しかし少女はお構いなしに、「どんな物事にも終わりはあると知っているはず」「余計なことをしないで」と言い続けた。心当たりがなくきょとんとしている指揮官にクラエスは、外部からこの仮想空間を無理に維持しようとするから”アイツら”が来るのだ、と言って走り去った。そのクラエスを追うように現れたのはメンタルイーターに囚われた人形の最後の一人、S.A.T.8であった。S.A.T.8は記憶を改竄されていた他の人形たちと違い、ヴィータの中でも指揮官を認識していつもと同じように接してきた。S.A.T.8は、指揮官がこの仮想空間に来たことに驚いていた。指揮官は、先ほどクラエスに一方的に罵られた挙句に逃げられたことを伝える。するとS.A.T.8は、クラエスが指揮官をS.A.T.8が化けた人間だと勘違いしているのだろうと言う。S.A.T.8によるとクラエスのヴィータには特に物語はなく、当初はクラエスとS.A.T.8は仲良く暮らしていたとのことだった。しかし、S.A.T.8に「クラエスは一人での暮らしを望んでいる」と語りかけてきた何者かによってこのヴィータを作り変える能力を授けられたS.A.T.8は、クラエスのためになることだと思ってこの世界に配置された他の人物を全部消してしまったのだ。そのことをクラエスに告げて以降、彼女はS.A.T.8に対して冷たい態度を取り続けている。しかし、S.A.T.8はクラエスから消した配役を戻せとは言われていないので、それ以降は世界を改変していないと言う。
S.A.T.8によると、クラエスはS.A.T.8のやっていることは「皆の苦痛を長引かせているだけだ」と言っている。その理由はよくわからなかった。指揮官は、S.A.T.8にこの空間から離れるつもりはないのかと尋ねるが、S.A.T.8はグリフィンへ戻りたい気持ちよりもクラエスを幸せにしたいという気持ちの方が今は強く、それに指揮官はいずれ自分たちを連れ戻しに来るだろうからそれまで待つつもりだったと答える。指揮官は、緊張感のないS.A.T.8の態度に呆れ気味だった。カルカノ姉妹やSPASはもう仮想空間から解放されたと言う指揮官に、この場所で長く遊び過ぎたことを反省するS.A.T.8。指揮官は、この仮想空間について何か手がかりはないのかとS.A.T.8に尋ねるが、S.A.T.8は誰かが人形のメンタルモデルをこの空間を演算するのに使っていると答える。この空間のデータは相当に古い形式らしい。劣化によりシステム効率が大幅に悪化しているため、このヴィータの維持にはS.A.T.8の存在が必要なのだと言う。そして、もうこれ以上の維持はたとえ自分がいても難しい、とも。旧式のシステムを長期間維持し続けてきたことで、発生したロジックのエラーが積み重なってバグとなり、システムそのものを攻撃しているのだと説明するS.A.T.8。これまでヴィータの中で、本来物語内では発生しないはずの敵が出現したのはそういう理屈であるらしい。S.A.T.8は、この仮想空間はまもなく滅んでしまうので、その前にクラエスの願いを叶えてやりたいと言う。指揮官もS.A.T.8に賛成したが、次の瞬間クラエスが機関銃を持って駆けてきた。バグによって発生したテロリストが攻めてきたのだ。これまではS.A.T.8が彼らを撃退していたが、今回はあまりにも数が多いためにこれまで戦わない誓いを立てていたクラエスも銃を手にせざるを得ないという。S.A.T.8と並んで立つ指揮官を見たクラエスは、S.A.T.8が演算で作り出した新手の配役だと思って渋い顔をするが、S.A.T.8からこれは本物の人間だと聞かされて驚く。指揮官は、S.A.T.8とクラエスに、敵は多いが不意をつけば切り崩せると言う。「射撃は腕より抜くタイミングだ」という指揮官の言葉に今は亡きラバロの教えを思い出したクラエスは、この戦いが終わったら指揮官に話したいことがあると言うのだった。

クラエスが野菜を作ろうと思ったのは、かつて「野菜型の宇宙人が攻めてきた時に役に立つ」と軽口を叩くラバロに勧められて野菜作りの本を読んだからだった。ラバロは、訓練と称してクラエスを釣りへと連れていった。ラバロと過ごした日々からクラエスが学んだことは多かった。
轢き逃げに遭い瀕死になったラバロは、最期にクラエスに眼鏡を渡した。それは、義体に改造される前のクラエスのものだった。「この眼鏡をかけている時はおとなしいクラエスでいてほしい」「書き換え可能な命令じゃない、血の通った約束だ」この遺言を残してラバロは死んだ。条件付けの上書きでラバロについての記憶を失ってからも、クラエスは約束を守り続けた。

テロリストたちを殲滅したS.A.T.8は、このヴィータのエラーを応急修復した。S.A.T.8によるとこれが最後の修正で、もうこれ以上は修復できないと言う。クラエスは「どうしてここまでしてくれるの?」と言う。クラエスはこの空間がいずれ崩壊することは承知しており、それまで静かに暮らせればそれでよかったのだ。S.A.T.8は、誰かがクラエスの幸せのためにヴィータを改変する力をくれたのだからその通りにしただけだと答えた。しかしクラエスは、「中途半端な好意は虚しさが増すだけ」と言い、「ニセモノのおままごとも必ず終わる時がくる」とヴィータの崩壊を示唆する。
クラエスは、指揮官の姿を見ると理由もなく胸が痛むと言い、名前を尋ねる。指揮官は、「ラバロ大尉」と名乗った。事故死したクラエスの担当官の名前だった。その名を聞いたクラエスの目からひとすじの涙が流れたが、クラエスはそのことに気付いていなかった。大切な思い出のはずなのに思い出せないことを悲しむクラエスに、自分が名乗ったこの名前はクラエスの担当官のものだと明かす。クラエスは失われたはずの自分の思い出を教えてくれた指揮官に礼を言い、S.A.T.8を連れ帰るように頼む。そしてクラエスは、一連の事件は自分たちの仲間が「この空間が終わること」「自分たちが偽物であること」を認めたくないあまりに引き起こしたのだ、と指揮官に告げる。クラエスは、このサーバーが既に放棄されていて誰も訪ねてこなくなったことを理解しており、サーバーの停止により自分たちが滅びる日を待っていたのだ。クラエスは、自分たちは自身の意志でヴィータを離れることができないのだと言う。そして、ヴィータの外にある仮想空間も同様に崩壊の危機にあり、それを犯人が人形のメンタルから得られる演算能力を使って止めようとしているのだと言う。指揮官はその言葉で事件の犯人が誰だったのかを確信し、S.A.T.8にクラエスを連れてこのヴィータから離れるよう命じた。そして、自分自身は最後のヴィータへ行かなければならないと言う。そこに必ず犯人、すなわちヘンリエッタが待っていると言う指揮官。

ヘンリエッタが持っているいちばん古い記憶。それは、初めてジョゼがヘンリエッタの部屋を訪ねた時のことだった。ジョゼは1台のカメラをヘンリエッタへプレゼントした。「これがあれば、この世界をもっと観察できる」と。義体は作戦や命令のことだけを考えればいいと思っていたヘンリエッタは、その言葉に戸惑っていたが、担当官の命令であればと受け入れた。そして、それ以降ヘンリエッタはカメラを通じて自分の人生を観察するようになった。ヘンリエッタにとって、ジョゼは自分の人生に彩りを与えてくれた存在となった。ヘンリエッタにとってジョゼは人生の全てであり、ヘンリエッタが死ぬ時はジョゼを守って死ぬのだ、そう考えていた。
しかし、現実はそうならなかった。ヘンリエッタはジョゼを撃ち、彼は死んだ。ヘンリエッタは最後の最後で間違えて、全てを失ってしまったのだ(註:原作終盤での新トリノ原発占拠事件において、義体に改造される以前の記憶がよみがえったことで錯乱したヘンリエッタはジョゼを誤射。瀕死のジョゼにヘンリエッタは自分を射殺するよう頼み、二人は共に死んだ)。
そして、死んだはずの自分にまた新たな生が始まってしまった。その新しい人生でも、ヘンリエッタはジョゼを助けることができずに終わっていた。何度繰り返しても変わらない。
そんなある時、この空間の創設者を名乗る何者かがヘンリエッタへ語りかけてきた。その人物は、ヘンリエッタたち義体の少女たちが時間の中に埋もれて忘れ去られることも、同じことを繰り返し続けることも望んでいないと言う。そして、ヘンリエッタへの命令を書き換え、「この仮想空間で暮らす少女たちを救うための力を与えた」と告げた。それが、その人物とヘンリエッタの最初で最後の会話だった。ヘンリエッタは、その人物はジョゼであり、ジョゼはヘンリエッタの過ちを許し、悲劇を繰り返さなくていいようにヴィータから離れる許可をくれたのだと思った。それから、ヘンリエッタはヴィータの外にある庭園でジョゼの訪れを待ち続けた。しかし、ジョゼがヘンリエッタのところへ来ることはなかった。待ち続ける時間の中で、ヘンリエッタは他の義体たちのヴィータへ入れることに気が付いた。しかし、ヘンリエッタがいくら呼び掛けても、他の義体たちはそれに応えることなく夢の世界を繰り返し続けるだけだった。もしかしたら自分たちは外の世界から忘れ去られてしまったのではないかと考えたヘンリエッタは、この仮想空間の正体について調べはじめた。そして、自分たちがデータベースサーバーの中の仮想人格であり、そして旧式化したこのサーバーのデータは崩壊をはじめていることを理解した。ヘンリエッタは、ジョゼが戻ってくるまでこの世界を維持しなければならないと考えた。外部の世界へ助けを求めたヘンリエッタだったが、誰もその呼び声に応えてくれない。それから長い時が経ち、誰かがこの仮想空間へやってきた。「彼女たちの力を使えば、この空間の寿命を引き延ばすことができる」そう考えたヘンリエッタは彼女たちを騙して義体たちのヴィータへ向かわせ、そして彼女たちの持つ演算能力を仮想空間の維持と修復に利用していた。それが身勝手な行いであることはヘンリエッタにもわかっていたが、ジョゼはそんな自分を許してくれるはずだと思った。
しかし、旧式に過ぎるこの空間の維持と修復はうまくいかなかった。ヘンリエッタが諦めかけたその時、この空間にジョゼがやってきたのだ。以前と変わらず優しいジョゼだったが、ジョゼの目的は自分に会うことではなく誰かを探すことだった。ジョゼが彼女たちを連れ戻すためにここに来たことを知ったヘンリエッタは、彼がかつてのように自分だけを見てくれないことに悲しみを感じながらもジョゼの手助けをすることになった。ジョゼが彼女たちを助け出すたびにこの空間を修復する手段は失われ、そして最後の一人を助け出したことでこの空間の終わりは確定した。しかし、ヘンリエッタはそれがジョゼの望みであるなら受け入れることにした。ヘンリエッタの望みは、再びジョゼと会えたことで半分は叶っていた。そして、残り半分の望みは、ジョゼと二人で悲劇的な結末を書き換えて、幸せな物語のエンディングを迎えること。そのために、ヘンリエッタは自分のヴィータでジョゼの訪れを待つのだった。

一方その頃、ヘンリエッタがこれまでに記した記録を見たカリーナは、このサーバーにおける事の顛末を指揮官に報告していた。60年以上も前のデータベースサーバーがまともなメンテナンスなしでここまで維持されていたことが奇跡だと言うカリーナ。このサーバーの創設者が最後にヘンリエッタの権限を書き換えたことで、仮想人格のヘンリエッタがサーバーを維持するために頑張っていたのだと言う。指揮官はその創設者を探すことができないかとカリーナに尋ねるが、カリーナは時間が経ち過ぎていて困難だろうと答える。ヘンリエッタは人形たちの演算能力を使ってこのデータベースを再構築しようとしていたが、規格が古過ぎて現行システムとの互換性がないので人形の能力をもってしても無理だったのだろうと指揮官は推測した。カリーナは、人形たち全員は既に解放されているが、指揮官は義体たちのことも助けるつもりだろうと予測してその準備を進めていた。後でヘリアンからひどく叱責されるはず、と愚痴るカリーナは指揮官も連帯責任で一緒に叱られてもらうと言うが、指揮官は何でも言うことを聞くからそれは勘弁してほしいと答える。指揮官の言質を取ったカリーナは、グリフィン本部のシステムエンジニアの協力を得て、このデータベースサーバー内のデータ一式をグリフィン基地のサーバーへ移設する準備を整えていることを告げる。そして、後はサーバーの権限を持つヘンリエッタをヴィータから連れ出せばいい、と。

ヘンリエッタが待つ最後のヴィータへ入った指揮官。しかし、このヴィータは既に崩壊しかけていた。このヴィータでは、もう物語のエンディングを迎えることはそれほど重要ではなく、ヴィータの制御権を持つヘンリエッタを見つけ出すことが大事だと言うカリーナ。ヘンリエッタさえ見つけ出せば、あとはカリーナが権限を解除すると言う。しかし、ヴィータ内には大量の敵データが確認されている。人形に頼らず自分で頑張って戦えと言うカリーナは、他人事なのでどこか楽しそうだった。指揮官は、これからはもっと自身の戦闘訓練時間も増やそうと思いながらヴィータへと降り立つのだった。
ヘンリエッタのヴィータは、社会福祉公社が最後の大規模作戦を行った新トリノ原子力発電所を模していた。場所はデータによるとヘンリエッタとジョゼが戦死したタービンフロア内部である。持っている武器は完全武装の兵士を相手にするには心許ないサブマシンガンで、身に着けているボディアーマーもグリフィンで使っていたものに比べると頼りない。指揮官は無線でヘンリエッタに呼びかけるが応答はない。指揮官は、聞こえてくる銃声の方向から現在地点の向こう側に敵がいると判断し、急いで直線通路を走る。通路の両脇には多くの死体が転がっており、既に激戦が行われた痕跡があった。途中で指揮官を見つけた敵兵を銃撃した指揮官だったが、1人は倒したもののサブマシンガンでは威力が足りず、倒し損ねたもう1人は物陰に隠れて救援を呼び始めた。指揮官はすぐに拳銃でその兵士の頭部を撃ち抜き、持っていたアサルトライフルと予備弾薬を奪い取る。
ようやく武装を整えた指揮官だったが、敵の増援は想定よりも早く、そして多かった。敵の制圧射撃に身動きが取れない指揮官。手榴弾を投げて怯んだ隙に反撃したものの、被弾して負傷してしまった。それを見てとどめを刺すべく突っ込んできた敵増援部隊だったが、そこに駆け付けたのは完全武装したヘンリエッタだった。素早く敵兵士たちの死角に入り込み、頭部を撃ち抜いて的確に仕留めていくヘンリエッタ。指揮官は腹部へ銃弾を受けていた。止血しようとするヘンリエッタだったが、敵の増援は数を増す。指揮官は、自分の手当てよりまずは敵を減らすことを優先するようヘンリエッタに命じると、自身も再び銃を手に取った。指揮官はヘンリエッタに的確な指示を出して敵を近づけさせないようにすると、物陰に隠れて自分で止血処置を行う。これまでの危険な戦いに比べればこのぐらい何でもない、指揮官はそう思いながらヘンリエッタと共に敵の数を減らしつつ、カリーナに連絡を取る。カリーナは、もう少し持ちこたえればこのヴィータの権限を解除できると言う。

ヴィータに設定されたタービンフロアの外壁が消滅し始める中で、テロリストの残数も残りわずかになっていた。しかし、テロリストたちはこちらの残弾が少ないと見て強引に突撃してきた。あと3人というところでアサルトライフルの残弾も尽き、拳銃の弾も尽きた。目の前に迫ってきたテロリストの銃口を見て、これまでかと思った指揮官だったが、次の瞬間割って入ったヘンリエッタは、銃弾を自分の胸で受けるとナイフを投げる。そのナイフは、テロリストの頭部を貫いた。銃弾の衝撃でヘンリエッタが指揮官に覆い被さるように倒れたのを見た残り2人は、とどめを刺しに向かってくる。指揮官は、咄嗟の判断で自分の拳銃を捨て、ヘンリエッタが腰に差していた拳銃を手にして2人の顔面を撃ち抜いた。この銃は、ヘンリエッタが最初にジョゼからもらって以来ずっと大事にしていたものだった。全ての敵を倒し、安堵のため息をつく指揮官。ヘンリエッタは、指揮官が無事であることを喜んでいた。ヘンリエッタの胸に当たった銃弾はボディアーマーを貫通できず止まっていた。

原子力発電所内全ての敵を倒し終えたヘンリエッタは、肩を震わせていた。「私はここで何万回も戦ってきました。そしてやっと……」と言うヘンリエッタは、悲願を成し遂げて涙を流していた。勝利を改めて確認したヘンリエッタに、ここから離れようと言う指揮官。しかし、ヘンリエッタは指揮官に銃を向けた。「あなたはジョゼさんじゃない」と言うヘンリエッタは、最初から指揮官がジョゼではないと知っていたのだ。義体と担当官の絆も、義体たちのことも何も知らない部外者にすぎない、と。そして、自分自身もヘンリエッタではなくヘンリエッタの記憶を持つまがい物でしかないのだと言う。指揮官が来たことで、この世界は全てが偽物にすぎないのだと再確認したのだと語るヘンリエッタ。指揮官は、カリーナに通信を送り、状況を尋ねる。カリーナは全ての権限を解除してこの仮想空間のデータをグリフィンへ移設したことを指揮官に報告するが、その際にヘンリエッタからの逆ハッキングでグリフィンについてのデータを一部見られてしまったと言う。グリフィンのデータを見たことでこれまでの状況を全て知ってしまったヘンリエッタは、この空間が終わる前に今まで何度やっても勝てなかった新トリノ原子力発電所内の戦いに指揮官の力を借りて勝利することで、「ジョゼと共に勝利した」という最後の記憶を持ったまま消えるつもりだったのだ。
指揮官はヘンリエッタに「まだ終わる時じゃない」と言う。指揮官は、義体の少女たちのデータはグリフィンに移設され、また新しい生活が待っていると言う。しかし、ヘンリエッタは他の義体たちはともかくグリフィンの人形たちを騙して利用した自分にはその資格がないと言って拒否する。それに、ヘンリエッタにとってはジョゼとの絆が全てであり、それがない世界では生きていけないと言う。それでもヘンリエッタを連れ帰ろうとする指揮官にヘンリエッタは銃を向け、「私に構わないでください」と拒絶し続ける。そんなヘンリエッタに、指揮官はたとえこのヘンリエッタが死人の過去を背負った作り物でも、今ここにいて泣いている女の子を見捨てることはできないと力説する。それでもヘンリエッタは、「自分は悪夢に囚われた幽霊でしかない」「存在意義はない」と言う。
指揮官は、根負けしたように装うと、さっきの戦いでヘンリエッタから拝借した拳銃を見せながら去ろうとする。それを見て、ジョゼとの思い出の品を慌てて取り返そうとするヘンリエッタに、指揮官は「もう未練はなかったんじゃないのか」と言う。たとえシミュレートによる記憶でも、ジョゼとの思い出を諦められないのならそれは本物の感情と同じだ、と指揮官は言い、ヘンリエッタに拳銃を返す。その銃を抱き締めたヘンリエッタは、もうジョゼとは永遠に会えないという事実を自分の中で受け入れながら泣き続けていた。指揮官は、迷った末にヘンリエッタの頭を撫でた。ヘンリエッタは、これからどうすればいいのかを自問自答した末に、顔をまっすぐに上げて指揮官の顔を見て、名前を尋ねた。初めてジョゼとしてではなくグリフィンの指揮官としてヘンリエッタと相対した指揮官は自分の名を名乗り、今後どうするべきかを尋ねるヘンリエッタに、生きている者は生き続けなければならないこと、たとえ偽物だろうと何だろうと生き続ける資格があることを告げる。義体でもなければ本物のヘンリエッタでもない自分は何者として生きればいいのかわからないと言うヘンリエッタに、指揮官は、過去に縛られず幸せになればいいのだと答える。
指揮官の言葉から、かつて自分にこのサーバーの権限を与えた何者かに言われたことを思い出したヘンリエッタは、死んだ過去のヘンリエッタの記憶を背負った上で新しいヘンリエッタとして未来を生きるためにグリフィンへ行くことを決断するのだった。自分たちが生き続ける限り、ジョゼたち社会福祉公社の人々や義体たちのことは忘れ去られないのだと信じて。指揮官も、ヘンリエッタから公社や義体たちの話を聞くことを楽しみにしていた。

それから一ヶ月が過ぎた。案の定指揮官とカリーナはヘリアンから手厳しい叱責を受けることになった。由来がよくわからないサーバーのデータをグリフィンのサーバーに丸ごと移設したのだから当然ではあった。カリーナは、「何でも言うことを聞く」という話はどうなったのかと指揮官に迫るが、指揮官はこの後24週間の体力訓練が終わったらその話をすると言う。この訓練にはカリーナも巻き込まれており、指揮官はカリーナに訓練の免除で手を打とうと言うがカリーナはそれを拒否する。カリーナは、そんなことで命令権を消費するつもりはなかった。
指揮官は、叱られた原因である社会福祉公社のサーバーデータはどうなったかをカリーナに尋ねる。公社のデータは、現行のシステムに合わせて再構築されていた。古いデータだったため容量を圧迫するほどの大きさではなく、それにヘリアンも最終的にはデータの維持管理を許可してくれたとのことであった。そして、戦術人形たちにとっては新しい遊び場ができたと好評であった。
カリーナから様子を見に行くよう提案された指揮官は、再び仮想空間へ潜るためのシステムを装着して義体たちが待つ庭園へと向かう。庭園では、ちょうどお茶会の真っ最中であった。かつてヴィータがあった場所は別の建物になっており、また庭園自体も権限を与えられた義体たちの趣味でより少女らしくかわいらしいものへと改築されていた。グリフィンの戦術人形たちの多くがこの庭園に入り浸るようになり、そのため以前は問題児だった人形たちがおとなしくなったことでグリフィンの後方スタッフは助かっているようであった。一方の義体たちも、戦闘の感覚を忘れたくないようでグリフィンの人形たちの戦闘演習に時々は参加しているという。
楽しそうに指揮官の来訪を待つ義体の少女たちの中で、トリエラだけが少し冷めた様子であった。クラエスから指揮官がヒルシャーを演じていたことをまだ根に持っているのだろうと指摘されたトリエラは、図星だったのか珍しく声を荒げる。テーブルでは、用意されたマカロンを食い意地の張ったSPASが全部食べてしまい、S.A.T.8に叱られていた。義体たちに年齢を合わせるためか電脳空間での姿を子供サイズに縮めているシノは、いたずらでカプチーノに塩を入れようとしてトリエラにやんわり制止されており、ケーキで懐柔しようとするアンジェリカに「ケーキなんか好きじゃない」とまた嘘をついていた。指揮官が本当に来てくれるか不安がっていたヘンリエッタも、カノから指揮官が来たことを聞かされるとすぐに出迎えに駆け出した。慌てて転びそうになったところを指揮官に抱き止められて笑顔を見せるヘンリエッタ。
少女たちの楽しそうなお茶会を眺める指揮官は、自分の決断は長い目で見て正しかったかはわからないが、彼女たちに笑顔がある限り、やったことには意味があるはずだと考えていた。

『ドールズフロントライン』のゲームシステム

基本的には「戦術人形」と呼ばれるキャラクターユニットで部隊を編成し、戦闘マップへ出撃を繰り返して育成して更に次の戦闘マップを攻略していくストラテジー(戦術)ゲームである。同ジャンルの「艦隊これくしょん」からの影響が強く、兵站の要素がある程度重要視されるのも特徴である。

資材

戦術人形の製造や修復、装備の製造や強化、出撃などゲーム進行のために消費するポイント。4種類ある。

人力

人材による労働力。
戦術人形や装備の製造だけでなく戦術人形の修復や部隊の出撃にも消費される。3分につき3ポイント供給される。
人力が枯渇すると出撃自体が不可能になる。

弾薬

名前の通り銃火器の弾薬。
戦術人形や装備の製造だけでなく戦闘マップ上での戦術人形への補給にも消費される。3分につき3ポイント供給される。
戦闘マップ上で部隊の弾薬が枯渇すると戦闘時に敵への攻撃ができなくなる。

配給

食糧全般。
戦術人形や装備の製造だけでなく戦闘マップ上での戦術人形への補給にも消費される。3分につき3ポイント供給される。
戦闘マップ上で配給が枯渇した部隊は戦闘能力が大幅にダウンする。

部品

戦術人形や装備に使用する部品。
戦術人形や装備の製造だけでなく戦術人形の修復にも消費される。3分につき1ポイント供給される。(これのみ供給量が少ない)
部品が枯渇すると修復そのものが不可能になる。

作戦任務

戦術人形で編成された部隊を戦闘マップへと派遣する。
通常クリアで銅星勲章、全マス占領で銀星勲章、特定条件を満たしてのクリアで金星勲章が獲得でき、勲章3つを獲得したマップでは自動での作戦任務が可能となる「自律作戦」が可能となる。また、金星勲章は獲得数が特定機能の開放トリガーになることがあるので合間を見て取っていくことが望ましい。
夜戦はクリアするだけで金星勲章となるためそれ以外の条件は存在しない。また、イベントマップには勲章は存在しない。

通常

メインストーリーが展開する戦闘マップである。全6戦で1エピソードとなる。(EP00のみ全4戦)

緊急

そのエピソードにおける通常マップを全てクリアすると開放される。全4戦で1エピソードとなる。
通常ストーリーの後日談や幕間などが語られる。使用されるマップは通常のものと同じだが、出現する敵が強力で配置も厄介になっているため難易度はやや高め。

夜戦

そのエピソードにおける緊急マップを全てクリアすると開放される。
特殊なルールに基づく戦闘であり、夜戦マップにしか登場しない敵ユニットもいる。
特定夜戦マップのクリアが開放条件となる機能があるためできれば早めにクリアしておきたいが、夜戦マップのクリアには相応の準備が必要になる。
イベントを除いた夜戦マップでの戦闘では戦闘報酬として戦術人形を獲得することができないが、その代わり装備がドロップする。特に各エピソードの最終マップでは特定人形の専用装備が低確率でドロップするので狙いに行くのも良いだろう。

夜戦のストーリーパートはEP03まではアクが強く傍迷惑な戦術人形たちによるコミカルな幕間劇となっているが、EP04以降はメインストーリーにサブキャラとして登場する戦術人形を主人公にした外伝的なストーリーになっている。

夜戦の特殊ルール

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