クリード チャンプを継ぐ男(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『クリード チャンプを継ぐ男』とは、2015年に製作されたアメリカ映画。シルヴェスター・スタローンを一躍スターダムに押し上げた『ロッキー』シリーズ初のスピンオフ作品で、『ロッキー・ザ・ファイナル』以来9年ぶりに新たな物語を描く。今は亡き伝説のボクサー・アポロの息子アドニスは、かつて父と歴史に残る激闘を繰り広げたロッキーを探し出してトレーナーを依頼。アドニスの純粋さと情熱にアポロの面影を見たロッキーは、彼を鍛え上げ自らのすべてを託し、セコンドとして共に世界タイトルマッチに挑む。

英国の不敗のチャンピオン、リッキー・コンランのマネージャー、ホリデイは、アドニスへの対戦をロッキーに直接依頼しに来た。ロッキーはそれが明らかに利益目当てであることに否定的だった。アドニスは試合はしたいが、条件である「クリード」の名を背負うことに悩んだ。その夜、ビアンカの部屋で過ごすアドニスは、父の名を背負うことにナーバスになっているアドニスに「何を恐れているの?」と優しく問いかける。その問いに「父の名を汚したくない。ニセモノと非難される」とアドニスは抱えきれない想いをぶつけるが、その言葉に「それが何?」と応じるビアンカが言ったセリフ。

ビアンカは難聴というハンディを持ちながらも、愛する音楽のために何があろうと挑戦する覚悟を持っている。そんな強い彼女だからこそ、父の名を背負うことを恐れるアドニスが歯痒く見えるのだろう。ビアンカは、愛するボクシングのために大きなチャンスを失って欲しくないが故に、このセリフによってアドニスの闘争心に再び火をつけ、背中を押すのだ。

お前が次のチャンプだ。その名前に誇りを持て!

試合は最終12ラウンドに突入する。もはや誰も予想しなかった挑戦者の善戦に会場は総立ちとなり、壮絶な打ち合いが展開された。そして試合終了ゴングが鳴る直前、アドニスのパンチがコンランをダウンさせたが王者は立ち上がり、その瞬間終了のゴングが響いた。あと30秒あればアドニスの勝利だったが、判定は2対1で王者コンランの勝利だった。リング上で残念がるアドニスの元に来たコンランが彼の健闘を讃えて言った言葉。

「クリード」の名に誇りを持つことにずっと悩んできたアドニス。これまではビアンカにも、ロッキーにもそのことで励まされてきたが、王者の言葉は重い。試合前はアドニスを名前だけの楽勝できる相手と見下していたコンランが、彼の素晴らしいファイトを目の当たりにして本心から出た言葉なのだろう。アドニスはその後のインタビューで「父クリードを誇りに思う」と答えることが出来た。それはこの言葉を贈られたからこそであり、素晴らしいセリフである。

絆を確かめ合う感動のラストシーン

コンランとの試合が終わり、ある早朝のフィラデルフィア美術館の階段を、ロッキーとアドニスが昇っている。闘病中のロッキーは、途中で立ち止まりそうになるが、後ろからアドニスが支える。1段1段踏みしめるように昇り切った2人はフィラデルフィアの街を見下ろしながら、「悪くない人生だ」と語り合い、絆の深さを確かめあった。

本作のラストシーン、ようやく「クリード」の名に誇りを持つことが出来たアドニスは、これからの人生を見つめ、闘病中のロッキーは、これまでの人生をしみじみと振り返りながら見つめる。ロッキーのボクシング人生が、アポロの息子・アドニスに引き継がれた瞬間に出会える感動のエンディングである。

『クリード チャンプを継ぐ男』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

9年ぶり『ロッキー』シリーズの製作過程

フィラデルフィア美術館前での記者会見

『ロッキー・ザ・ファイナル』公開から7年後の2013年7月24日、製作会社であるMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)は、『ロッキー』シリーズのスピンオフ作品の製作を発表した。その時点ではライアン・クーグラーを監督に、クーグラーとアーロン・コヴィントンを脚本に起用。また、アポロの息子役にマイケル・B・ジョーダン、ロッキー役はオリジナルシリーズ同様にシルヴェスター・スタローンが演じると発表された。そして翌2014年4月25日に監督のクーグラーが『ハリウッド・レポーター』でのインタビューで、ジョーダンとスタローンを主演に起用することに同意したと述べている。その後、同年11月10日に現役ボクサーのアンソニー・ベリューとアンドレ・ウォード、12月16日にヒロイン役にテッサ・トンプソン、さらに翌年2015年1月8日にはフィリシア・ラシャドの出演がそれぞれ決定し、同月の21日にはグレアム・マクタヴィッシュが自身のTwitterで出演を発表した。
本作の撮影は2015年1月19日から開始され、最初にイギリスのリバプールで主要シーンの撮影が始まった。冒頭のシーンを撮り終えてから、ロケ地はフィラデルフィアに移る。2月上旬からはフィラデルフィアの空き店舗がボクシングジムに改装され、トレーニングシーンの撮影が行われ、続いて、地元のヴィクトール・カフェでの撮影が行われた。そのカフェを「エイドリアンズ」のレストランに改装して、別のシーンの撮影も行われた。そして2月下旬から、サン・センター・スタジオに移り、残りのスタジオ撮影が行われている。

クーグラーの恐るべきアイデアはスタローンを驚かせた

演出するクーグラー監督(左)

ある日、『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)で、自らシリーズに終止符を打ったシルベスター・スタローンの元に、若きクリエイター、ライアン・クーグラーが訪れた。クーグラーから「アポロ・クリードにアドニスという息子がいたら…」という構想を聞いたスタローンは、「これはすごい、このフィルムメーカーはこんなに若いのに、私たちが何十年も前に始めた作品にこれほどまで魅了されているなんて」と感じ、思わず舌を巻いたそうだ。スタローンは、自分が創ったロッキーという特別な存在について、「ロッキーが人々に残した印象に大きさには、私は当惑すると同時に圧倒されている。だからこそ、私はこのキャラクターを損なってはいけないという計り知れない責任をつねに感じてきたんだ」と語る。スタローンとライアンとの年齢差は実に40年、孫といっても良い世代なのだが、凄く興味をそそられる構想に対し驚きを隠せなかった。
本作のアイデアは、映画『フルートベール駅で』(2013)でライアンが監督デビューする前の大学時代に生まれたそうで、「僕は父親と『ロッキー』映画を観て育った。ロッキーは誰もが共感できるキャラクター。それは『ロッキー』映画にはどんな人でも楽しめる要素があるからなんだ。父と僕は最終的にはシリーズ全作を一緒に観て、僕は父を通してあのストーリーに夢中になったんだ」と、ロッキー・ファンとしての少年時代を振り返る。
ライアンはスタローンとの脚本化に向けての共同作業を振り返り、「僕らは脚本を書きながら、『このシーンだとロッキーは何をするのかな?』と彼に電話して相談したよ。僕が何か思いついたら、最初に電話したのが彼だったし、彼のほうでも僕に真っ先に連絡してくれた。彼はほんとうに寛大だったし、すばらしい共同作業だった」と語っている。

結末を3パターン撮影していた

本作は、最後の試合のシーンにおいて3つの異なった結末のバージョンを撮影したことが明らかになった。
ある関係者はニューヨーク・ポスト紙に「最終シーンは3つの違ったパターンが撮影された。撮影中に本作の続編の話が持ち上がったため、クーグラー監督は最終シーンを選ぶことが出来る様にいくつかのパターンを撮影したようだ。それにより公開された映画の最終シーンは当初の予定と違うパターンになった」と明かしている。
因みに続編の構想ではアドニスの亡き父、アポロ・クリードが登場する可能性もあるそうで、それが実現した場合には1985年の『ロッキー4/炎の友情』ぶりにカール・ウェザースがアポロ役に返り咲くことになる。スタローンは「ライアンは、ロッキーとアポロを一緒に登場させることも構想に入れているんだ。『ゴッドファーザー PART II』みたいな感じで、彼はそんなイメージを抱いているんだけど、それはちょっと大きな望みだよね」と話している。

アドニスの対戦相手は現役ボクサー

本作では、アドニスを演じた主演のマイケル・B・ジョーダンの対戦相手の役には3人の現役ボクサーたちが起用されている。
アポロジム内でアドニスがカッとなって勝負を挑んだボクサー、ダニー・ウィーラー役のアンドレ・ウォード(元WBA、WBC世界スーパーミドル級王者)
ミッキージム所属でアドニスが最初の試合をする相手、レオ役のガブリエル・ロサド(スーパーウェルター、ミドル級世界ランカー)
英国の不敗の現ボクシングチャンピオン、リッキー・コンラン役のトニー・ペリュー(ライトヘビー、クルーザー級世界ランカー)
彼等の出演によってファイトシーンのみならず、ジムでの様子、会見での振る舞い、試合時の物腰など、すべてにリアリティを出すことに成功している。
また、クライマックスのファイトシーンでは、HBO(アメリカの放送局)のジム・ランプリー、マックス・ケラーマンが本人役で実況、解説を担当。同局のドキュメンタリー番組「24/7」では、リーブ・シュライバーが独特の落ち着いたナレーションを繰り広げている。

『クリード チャンプを継ぐ男』の受賞歴

2015年
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞
<受賞>
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)
<入賞>
作品賞トップ10

ボストン・オンライン映画批評家協会賞
<受賞>
作品トップ10(2位)
主演男優賞(マイケル・B・ジョーダン)
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)

第41回ロサンゼルス映画批評家協会賞[26]
<受賞>
新人賞(ライアン・クーグラー)

第19回オンライン映画批評家協会賞
<ノミネート>
主演男優賞(マイケル・B・ジョーダン)
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)

2016年
第50回全米映画批評家協会賞
<受賞>
主演男優賞1位(マイケル・B・ジョーダン)
助演男優賞3位(シルヴェスター・スタローン)

第73回ゴールデングローブ賞
<受賞>
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)

第47回NAACP賞映画部門
<受賞>
主演男優賞(マイケル・B・ジョーダン)
助演女優賞(フィリシア・ラシャド)
<ノミネート>
助演女優賞(テッサ・トンプソン)
作品賞

第20回サテライト賞
<ノミネート>
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)

第36回ラジー賞
<受賞>
名誉挽回賞(シルヴェスター・スタローン)

第88回アカデミー賞
<ノミネート>
助演男優賞(シルヴェスター・スタローン)

MTVムービー・アワード 2016
<ノミネート>
最優秀映画賞
最優秀男優賞(マイケル・B・ジョーダン)

第41回報知映画賞
<受賞>
作品賞・海外

『クリード チャンプを継ぐ男』の主題歌・挿入歌

挿入曲:ジョン・レジェンド&ザ・ルーツ 「The Fire」

5chario528
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