娚の一生(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『娚の一生』とは、西炯子による日本の漫画作品。小学館「月刊フラワーズ」にて連載された。
「このマンガを読め!2010」で第5位になった。単行本は全4巻。累計発行部数150万部を記録する。2015年、豊川悦司・榮倉奈々のダブル主演で映画化された。
大手企業に勤める30代女性・つぐみと50代の大学教授・海江田とのビタースゥイートでもどかしい関係を描いた漫画作品。

海江田の秘書を務めている。東京の淑愛大学学長の娘。淑愛大学に勤めていたが、海江田の移動とともに角島大学で海江田の助手として勤務している。育ちがよくて、きれいにしているし、明るくてわがまま。海江田は「可愛い子やで、西園寺くんは、君と違うて」とつぐみに話したことがある。海江田を慕っていたが、フラれてしまった。後につぐみの地元の2世議員・園田哲志と交際を始めた。それからは、つぐみと親しく付き合うようになった。

園田 哲志(そのだ てつし)

画像左が園田哲志

鶴見市の市議会議員。父親も現役の議員。2世ボンクラ議員と呼ばれている。小さい頃、手下を連れてつぐみに意地悪しにきていた。角島に戻ってきたつぐみに気があるようだが、つぐみにはそんな気は全くない。
海江田に振られた西園寺を慰めたことがきっかけで西園寺との交際が始まった。
ぼんやりしている気楽な2世だが、人の心の機微に敏いところがあり、つぐみの孤独をいち早く気づき、自分ではつぐみを支えられないと感じていた。

『娚の一生』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

海江田がつぐみのネックレスを探し出すシーン

海江田から「君、そこそこ美人やのに手入れしてへんな」と言われ、かつて自分へのご褒美として購入した高価なネックレスを付けてみた。海江田に見せようとしたが、生憎出かけていて見せることはできなかった。ネックレスを外そうとしたのだが、どこかに引っかかって取れなくなってしまった。そんな時、地元の2世議員の園田哲志が訪ねてきた。台風が近づいてきたため、様子を見に来たという。というのは建前で、小さい頃から気になっていたつぐみが地元に住むようになったので、お近づきになりたいと思ってきたのだ。他にも市役所職員や郵便局員がつぐみの家を訪れ、つぐみの役に立とうとしている。しかし、つぐみはなんでも一人で出来てしまうため、彼らの出番はない。井戸の水質検査もキットを購入し自分で検査、申請までこなすし、壊れた扇風機も自分で直せる。完璧なつぐみに、集まった男たちは何の役にも立たない。むしろ、園田は自分の家のエアコンの調子が悪いので見て欲しいと、つぐみを連れ出した。つぐみは、難しいことはできないと断るものの、家に行くと他にも調子の悪い家電があるから見て欲しいと請われ、言われるがまま、何軒もの家をまわり家電の修理をする羽目になった。夜、へとへとになって帰宅すると、朝付けていたネックレスが無くなっていることに気づいた。高価なものだっただけに呆然としていると、海江田が帰ってきた。つぐみは、ネックレスを紛失した経緯を話すが、自分で買った負け犬ジュエリーだから別に無くなっても良いと言った。海江田はつぐみに「君は自分を大切にしなさすぎや、腹立つ」と言って、ネックレスを探しに行ってしまった。
台風が激しくなってきた深夜、びしょ濡れで手も上がらないくらい疲れた様子の海江田が帰ってきた。海江田は近寄ってきたつぐみの首にネックレスをつけてやり、「きれいやで」と言った。

意地っ張りで素直になれないつぐみに対する海江田の思いやり、優しさが伝わる名シーン。

引用:娚の一生 1巻

海江田がつぐみの親戚の前でつぐみへの想いを告白するシーン

なし崩しに始まった同居生活。海江田はつぐみに自分の思いを伝えてくるが、つぐみはそれを受け入れることができない。祖母の新盆で親戚一同が集まる日、つぐみは海江田にその日は外してくださいと頼んだ。海江田のことを親戚に説明できない、というつぐみに、そんなのは自分でする、という海江田。しかし当日、つぐみは海江田を布団部屋に閉じ込めた。親戚が集まると、布団部屋を抜け出した海江田がさりげなく見つからないようにちょこちょこと現れつぐみはヒヤヒヤする。法事も終盤になり、海江田を隠し通したとつぐみがほっとした瞬間、海江田が法事に姿を見せた。
一体誰なのかとざわつく親戚に、つぐみが恐れていたとおり、海江田は自己紹介を始め、葬儀の後からつぐみと一緒に暮らしていると告白した。十和との出会いや自分が十和に片思いをしていたこと、離れの鍵を十和から貰っていたこと、そして、葬儀の日に見かけたつぐみに一目ぼれしてしまったことを説明した。

親戚一同の前で堂々と臆することなくつぐみに「恋をした」と告げた海江田の潔さ、誠実さが伝わる名シーン。

引用:娚の一生 1巻

「君をひとりにはせえへん」

海江田に想いを寄せている秘書の西園寺真保が角島にやってきた。海江田の世話は自分がすると洗濯や食事など、家事をしようとするのだが、お嬢様育ちで家事などやったこともなく、何をしても上手くできない。夕食を作ったものの、とてもじゃないが食べられる代物ではないので、その日の夜に行われる夏まつりで食事を済ますことに決めた。海江田は西園寺の思いには気づいているが、応えることができないため、西園寺につれなく接している。祭りの最中、西園寺が目を離した隙に海江田はつぐみと一緒に逃げてしまった。こんなふうに2人で抜け出して西園寺に悪い、というつぐみに、下手に気を持たせるほうが残酷だと海江田は言う。好きな人を追いかける幸せもある、と反論するつぐみにそんな幸せはないと海江田は言い切る。海江田は今こうしてつぐみと2人きりでいることが幸せと言うのだが、つぐみは受け入れようとせず、過去の話を持ち出して逃げようと俯いた。海江田は過去ばかり振り返って、今目の前にいる自分に向かい合おうとしないつぐみに「君をひとりにはせえへん」と迫った。

かつて不倫の末、捨てられた過去を持つつぐみは、恋愛に対して臆病になっており、好きになった人を失うことに恐れを抱いていた。誰かを失うくらいならばもう誰も愛さない、と思っていたつぐみは、海江田のこの一言に心が揺れた。

過去に囚われて前に進めなくなっていたつぐみの殻を打ち破る海江田の名言。

引用:娚の一生 2巻

つぐみが海江田宛の手紙の差出人を妻だと勘違いしたシーン

海江田に一通の手紙が届いた。最出し人は「海江田小夜子」それを見たつぐみはとうとう海江田が妻に呼び戻されるのかと恐れを抱き、なかなか海江田に渡せずにいた。しかし、意を決して海江田に手紙を渡すと、海江田の様子がおかしくなってきた。海江田がいない隙に海江田の手紙を読もうとするが、海江田のプライバシーを侵害することもできず、一人でいろいろ考えすぎて、海江田にも何も聞けず、家を出ようとした。つぐみが何か隠していると気づいた海江田が問い詰めると、海江田に届いた手紙が気になっていると白状した。
「海江田小夜子」とは、海江田の戸籍上の姉だった。海江田は2歳の時、施設前の公園に捨てられており、育ての母、海江田に拾われ育てられたのだ。海江田の養母は資産家の娘で独身で身寄りのない子の世話をずっとしていた。海江田が高2の頃、養母に求婚する男性が現れ、それがきっかけで海江田はそれまで育った家を飛び出したのだ。その育ての母が亡くなったという知らせだったのだ。

自分の言うことを信じず、にも関わらず疑問を持っても何も聞かず、自分は不幸になるものと勝手に決めつけているつぐみに対して海江田は「本当のことを信じひんというのは…、もはや君の信仰や」と、つぐみを窘めた。自分はつぐみを裏切らない、聞きたいことは何でも聞いて良いのだと、海江田はつぐみに伝えた。
つぐみは海江田を失うかも知れないと思い、その現実から逃げだそうとした。つぐみの気持ちが海江田に傾いてきていることを示している名シーン。

引用:娚の一生 2巻

酒に飲まれて間違いを犯しそうになった海江田をつぐみが怒るシーン

海江田とつぐみが結ばれて、海江田はつぐみに結婚しようと働きかけるが、過去に不倫相手に騙され捨てられたことから恋愛に臆病になっているつぐみは、なかなか結婚に踏み切ることはできない。そんな時、海江田が「日本エッセイスト賞」を受賞した。授賞式に妻としてつぐみを連れて行くとし、乗り気ではないつぐみを言いくるめて授賞式に出席した。そこには、大学の同級生や海江田の教え子、著名な作家や評論家など、そうそうたるメンバーが揃っており、つぐみは気後れしてしまう。海江田に色目を使う人妻も現れ、つぐみは気が気ではない。とうとう海江田は人妻に強い酒を飲まされて、部屋に連れ込まれてしまった。つぐみは海江田が落とした衣服から海江田が連れ込まれた部屋を見つけ出し、海江田を取り戻した。
酔いが覚め、海江田はつぐみに「怒ってんの」と聞くが、つぐみは何も答えない。「…ぼくは、君がそやって言いたいことを溜めて不機嫌にしてるんが正直一番こたえるんや。そんなんやったら思きしどついてくれたほうがなんぼかましや」とつぐみの目の前に立った。その言葉を聞いたつぐみは、目に涙を浮かべながら、海江田の頬を思い切りひっぱたいた。つぐみが初めて見せた嫉妬に海江田は喜び、つぐみは海江田が好きなのだと自覚した名シーン。

引用:娚の一生 2巻

つぐみが過去をさらけ出し、初めて心情を吐き出したシーン

つぐみは海江田への思いを自覚し、結婚へ向けて進み始めた。海江田の養母の墓参りと海江田の姉への挨拶のため、2人で大阪に向かった。そこで、海江田の幼少時代から家を出るまでの事を聞き、海江田との距離をさらに縮めた。大阪から帰宅途中に泊まったホテルで、偶然つぐみの元同僚に出会い、つぐみは彼と昔話を始めた。元同僚は、つぐみが過去不倫を繰り返していたことを話し、近くにいた海江田はその話を聞いてしまった。何も言わない海江田につぐみの居心地は悪くなり、自分から過去の自分の弱さ、ずるさを話し始めた。「いい年をして自分にいつまでも自信がなくて、自分だけを見てくれる人と向かい合う勇気がないのよ。そのくせ人には愛されたいの。…おまけに、昔の恋愛をいつまでもひきずってるのよ…。重くてだらしなくていやらしい女だわ」
つぐみのセリフを聞いても海江田は動じず「…だから?」と言う。
過去も含めて現在のつぐみを受け入れている、海江田の懐の深さとつぐみへの愛情が伝わる名シーン。

引用:娚の一生 3巻

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