攻殻機動隊シリーズ(原作漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』は士郎正宗によるSF漫画。1巻は草薙素子こと少佐が公安9課で事件を追う中人形使いと出会い融合するまで、1.5巻『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』は少佐が去った後の公安9課の活躍、2巻『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』は荒巻素子がテロ事件を追う内に草薙素子と邂逅するまでを描いている。

人間の肉体から生体組織を限りなく取り除く、あるいは機械で代行していった際に、自分が自分自身であるために最低限必要な物。全身義体化しているサイボーグが出てくる作中においては、主に人間が本来的に持つ自我や意識、霊性を指している。

人間の物として区別をしなければ森羅万象にゴーストは存在するとされるが、それらと区別するなら生命体、特に人間の根源的な魂がゴーストであるとも言える。

攻性防壁

外部からのハッキング行為を防ぐと同時に、相手を攻撃するセキュリティ機能。この攻撃が激しい場合には電脳が焼かれて死亡してしまう可能性がある。
この攻性防壁から身を守る手段として、言葉通り代わりに攻撃を受けてくれる「身代わり防壁」というデバイスもある。

日本が世界に誇るSFサイバーパンク漫画の金字塔

メディアミックス展開として、劇場用アニメ作品として押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『イノセンス』。それに黄瀬和哉総監督の『攻殻機動隊 ARISE』シリーズ。TVアニメ作品として『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ。ハリウッドで実写映画化されるなど、今でも絶大な人気と影響力を誇る、1980~90年代を代表するSFサイバーパンク作品である。

架空の近未来を舞台に、人々が脳で直接ネットにアクセスできるのが一般的な、高度に情報化された社会を描いている。この作品の驚くべき点は、1989年に今のネット社会の更に先を行く世界観を描いた先見性だろう。しかも緻密かつ深遠な設定で未だに新しさを失わず、説得力を持っている。また義体化・電脳化、高度に発達したAIが登場する本作において、それらと対峙することで“人間はこれからどこへ行くのか”、“生命とはどういう存在なのか”という、根源的な問いに挑戦している哲学的な作品でもある。

本作の魅力は、電脳、義体、アンドロイド、AIなど様々な形態の人もしくは機械が存在する複雑な社会背景を舞台に、公安9課が様々な犯罪に対処する警察物のストーリーにもある。本編中に新人の課員が死亡してしまう描写があるが、そこで公安9課は世間では秘匿された組織である為、課員が死亡してもいつどこでどの様に死亡したかは決して家族に伝わることがない。少佐たちはその死を悼むものの、死亡したメンバーの家族から誹謗され、秘密組織であるが故の悲しみを描いていて、人間ドラマとしても秀逸だ。

また本作では、難解なSF設定を解説する為、欄外の補足説明文が多い上非常に長文になっているのも特徴的だ。作者自ら、「作品と欄外を同時に読むと混乱を招きやすく作品の流れが寸断されて楽しみを損なうので、別々に読んで欲しい」旨の文章を載せているほどである。犯罪者たちの電脳を制圧する電子戦と共に、周囲の景色に溶け込む光学迷彩や思考戦車フチコマを用いた近未来の戦闘はスピーディーかつ迫力満点で爽快感があり、純粋にエンターテイメントとしても楽しめる。

緻密で深いSF描写がされながら、作者の配慮によってエンターテイメント作品としての楽しみ方も損なわない工夫がされていることも、ここまで数多のメディアミックス展開がなされる人気作品としての理由だろう。

『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』の概要とあらすじ・ストーリー

出典: www.amazon.co.jp

発売が2008年で、2巻『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』より後である。時系列が1巻と2巻の間のストーリーである為、1.5巻となっている。
人形使いと融合した“草薙素子”が去った後の公安9課の活躍を描く。

草薙素子が公安9課を去った後も、公安9課は独立攻性の部隊として活動していた。
そんな中、死体をリモート操作する事件が発生。犯人は早坂という資産家の死体を遠隔操作で操り、各党の有力議員に献金していた。犯人の狙いは公安や軍事の機密が記録されているパンドラの鍵を各省庁に譲渡させること。その痕跡を残さない犯行は人形使いを彷彿とさせる手口だった。

7編の短編(2話で一つのストーリーになっており、最後の7話目のみ1話での構成)と、士郎正宗による短編の作品解説、TVアニメーション用プロット、TVアニメに対する所感、思考戦車タチコマのプロット、ゲームソフト(1997年に発売されたプレイステーション用ソフト『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』)用絵コンテとキャラクター設定画、カラー絵と告知イラストで構成されている。

『攻殻機動隊1.5 HUMAN-ERROR PROCESSER』の主要登場人物・キャラクター

アズマ

本作から登場する9課員。新人故かトグサと組んで行動することが多い。性格はお調子者で口が軽く、自分の鼻は麻薬犬より嗅覚が鋭いと豪語する。

クロマ

マイクロテレメーター社の黒沢博士の依頼で、技術供与を条件に彼の愛人を捜索する超一流のハンター。
その正体は前巻で人形使いと融合した“草薙素子”である。クロマには電脳がなく遠隔操作の義体で、本人は衛星と中継車を使ってどこか別の場所にいる。

草薙素子不在の公安9課の活躍を描く

前巻の主人公“草薙素子”(時系列から人形使いと融合後の存在)は本編の『DRIVESLAVE』Part1&2に出てくるのみで、荒巻部長以下公安9課自体が主役となっている。前巻と同じく、政治の不正、高度にネット化されている社会の弊害など硬派な社会問題を絡めて描く刑事物としての作風は継承されている。無機質なイメージのある近未来SF作品でありながら、父親を失った娘の悲しみや組織の腐敗に対する怒りなど情緒に訴える描写も秀逸だ。

また、草薙素子が主役の際には脇役だった9課のメンバーにスポットが当てられ、荒巻部長、バトー、トグサは勿論、新たに配属された新人のアズマの奮闘振りや、前巻では端役だった斎藤が世界的に名の知れたエーススナイパーと狙撃で対決する場面もあり、公安9課の面々により愛着が持てる作品となっている。

漫画以外にも、TVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の作成に当たって士郎正宗がアニメスタッフに提供した初期プロットも掲載されており、実際に放送された内容とはかなり変更がされている話もあるものの、士郎正宗のコメントと共にTVアニメ制作裏話として楽しめる。
他にもゲームの絵コンテや設定画、巻末のカラーイラストなど攻殻機動隊ファンにとって嬉しい内容の構成となっている。

『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』の概要とあらすじ・ストーリー

出典: www.amazon.co.jp

『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』は2001年に単行本が発売。未完の作品である。

2035年3月6日、ポセインドンインダストリアル社の考査部長・荒巻素子は海賊を退治した際、偶然生命工学の権威・ラハムポル博士が残したファイルを手に入れる。ファイルの内容は宇宙人の哲学書の様で、意味不明としてとりあえず捨て置かれた。
同日発生したクローン臓器培養施設襲撃事件を追う中で、事件の背後にあるサイバードーム(電脳娯楽空間)「スターバト・マーテル」の主催者ミレニアムに辿り着く。ミレニアムの背後には托体施設「眠れる宇宙」に義体を預けた“草薙素子”の存在があり、荒巻素子は“草薙素子”の11番目の同位体であったのだ。今度はその背後にいたアンタレスとスピカに制圧される荒巻。そこでスピカとアンタレスは、ラハムポル博士のファイルの存在とその重要性に気付く。

後に意識を取り戻した荒巻素子は、“草薙素子”にハードを提供し、共同でファイルの設計図にある、新しい人工生命を制作する約束を取り交わすところで物語は終わる。

攻殻機動隊というタイトルになっているが、所謂公安9課“攻殻機動隊”はほぼ活躍せず、荒巻素子がほぼ一人で事件解決に活躍する。荒巻部長とバトーが出てくるが、傍観者に徹しているのみである。また、これまでと違い銃やアクションはあまり出てこず、電脳戦がメインの構成になっている。

『攻殻機動隊2 MAN MACHINE INTERFACE』の主要登場人物・キャラクター

荒巻 素子(あらまき もとこ)

hiyuuma78
hiyuuma78
@hiyuuma78

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