『BLUE GIANT』とは、2013年から『ビッグコミックスピリッツ』において連載されている石塚真一による漫画である。ジャズを題材とする本作品は、世界一のサックスプレーヤーを目指す高校生・宮本大が、仙台、東京、ドイツと拠点を移しながら一歩ずつその階段を上っていく様が描かれている。本作には、「お前の音は人を圧倒できるんだ」、「オレはウマくてもヘタでも感動できればいい」など、ジャズだけでなく、音楽に携わっている人には特に心に響くであろうさまざまな名言・名セリフが登場する。
ライブを終えた大たちを尋ねてきた新進気鋭のジャズトランぺッター、カーメロ・キャノンは、大を前にして「世界一だっけ?一生かけて目指すことになるよ。」と言葉をかける。
自分自身が世界一になる、という自信の表れた一言だが、その言葉を裏付けるかのように、彼のプレイは素晴らしいものだった。アメリカの壁の高さを思い知る大だが、ライバルの存在によって、大はより高みを目指す気持ちを固めるのであった。
宮本大「あっそう…そしたら…それ勝つわ。」
ハーレムに引っ越しはしたものの、資金繰りに苦しむバンドの面々の前に、マイクがジャズミュージシャン専門のコンペ「インターナショナル・ジャズ・コンペディション」の話を持ってくる。そのコンペは有名ジャズミュージシャンを数多く輩出しており、ハードルは高いが、勝てば大きな賞金を手に入れることができるというもの。それを聞いた大はあっさりと「あっそう…そしたら…それ勝つわ。」と宣言し、キョトンとするメンバーをよそに、すぐに一次審査のために音源を発送。無事に通過した彼は、バンドの未来を賭けて1人大舞台へ旅立っていく。この度胸があるからこそ、彼は着実にジャズプレイヤーとしてキャリアを積んでいくことができているのがわかる。
ディエゴ・アルバレス「アイツが勝つんだ。」
「インターナショナル・ジャズ・コンペティション」の準決勝の出場者のうちのひとりであるディエゴ・アルバレスは、レンタルのサックスで練習を積み、貧しい家庭を支えてくれる家族のために優勝を目指しているプレイヤーだった。大からサンドウィッチと水をもらい、ランチを共にしたディエゴは、「優勝賞金で代金を払う」と宣言してステージに立つ。
鬼気迫る演奏で審査員や観客の心を掴んだディエゴがステージ裏へ戻ると、そこでは次点の出場者である大が待ち構えており、彼は素直に彼の演奏を称賛した。大の裏表のない人柄を見抜いたディエゴには、ステージに向かって歩いてい
くその背中が大きく見える。
見送るディエゴは「アイツが勝つんだ。」と確信めいたものを感じ、素直に自分が負ける、という予感を受け入れるのであった。
演奏ですべてを出し切り感極まるノア・デュベール
「インターナショナル・ジャズ・コンペティション」の決勝戦、進出者3名のうちのひとりであるノア・デュベール。トップバッターとしてステージに立ったノアは、優勝を目指しつつも、自らの全力を尽くしたプレイで観客を魅了する。
すべてを出し切った彼は「自分をこんなにも誇らしいと思うのは、生まれて初めてだ」と自分自身の演奏に太鼓判を押し、観客席にも深々と頭を下げた。
そして、大は舞台裏に下がったノアを抱きしめ、ノアは「今なら誰が勝っても祝福できる」と、人生最高の瞬間を噛みしめる。
どこの世界でも他者からの評価や勝負というのは付きまとうものではあるが、「心から楽しみ、ベストを出し尽くす」ということの美しさを感じる名シーンだ。
ジョー「音は出したら消えてく。オレはそれでいいんだよ。」
ふらふらと飲みに出かけた先の店で、大のアルバイトの同僚たちに遭遇したジョー。金を持っていなかった彼は、同僚たちに酒をたかるため、ちゃっかりとその輪の中に加わってしまう。
大の同僚の一人に「そんなに酒を飲んだら死ぬぞ」と咎められたジョーは、「いつ死んだって構わない」という趣旨の答えを返した。そしてさらに「音は出したら消えてく。オレはそれでいいんだよ。」と続けている。何気ない調子で言い放ってはいるが、音楽と酒しか持たずに生きてきたジョーの人生観が深く反映された一言だ。
重度のアルコール中毒でメンバーに迷惑をかけ通しで、稀代のダメ人間として描かれているジョーだが、自由を愛するジャズマンとしては正しい生き方なのかもしれない。
宮本大「ジャズという音楽を演っていると、ジャズの自由さに凄く感動するんです。あのロングトーンは吹いているボクも、聴いている会場の人達も自由だったんだと思います。」
「インターナショナル・ジャズ・コンペディション」の決勝でオリジナル曲「モメンタム」を演奏し、そのソロで脅威のロングトーンを披露して優勝を掴み取った大。優勝者へのインタビューで「あの一音で会場が興奮し、吹き切ることを応援するような空気になった」というインタビュアーの感想を聞いた大は迷くことなく、「ジャズという音楽を演っていると、ジャズの自由さに凄く感動するんです。あのロングトーンは吹いているボクも、聴いている会場の人達も自由だったんだと思います。」と答えた。
自由であることが本質ともいえるジャズという音楽を心から愛し、自分らしく、楽しく演奏することを追及してきた大らしい答えだ。
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目次 - Contents
- 『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)の概要
- 『BLUE GIANT』(ブルージャイアント)の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 由井との邂逅
- 定禅寺ストリートジャズフェスティバル
- 文化祭
- JASSの初ライブ
- 玉田、圧巻のドラムソロ
- 由井「上手いヤツはゴマンといる。それじゃダメなんだよ。オレの音はよくても感動。 お前の音は人を圧倒できるんだ。」
- 由井「まだまだだが…最高だ」
- 宮本大「へでもねえや。」
- 宮本大「ヘタだからって、この人たちの音楽に救われる日は来ないと、どうして言えるんすか?」
- 宮本大「オレはウマくてもヘタでも感動できればいい。」
- 沢辺雪祈「ウチのメンバーのことなら、口出し無用なんで。」
- 沢辺雪祈「クラシックやロックではありえねえ、即興重視のジャズだけに許された瞬間…。聴いてる側をもどこか別の場所に連れていく感覚…。オレはまだ…、体験できてねえ。」
- アキコ「凄いわね、あの子。」
- 宮本雅之「一番いいやつ。この店で一番いいやつをください。」
- ライブハウスの常連客「良くなっている。ボクはキミのドラムを、成長する君のドラムを聴きに来ているんだ。」
- 黒木「音楽がなくても生活できる。 でもね、私達には心があるでしょ。 心にも食べ物が必要なのね、きっと。 音楽は、人間にとって絶対に必要なモノだと先生思うの。」
- 『BLUE GIANT SUPREME』(ブルージャイアント シュプリーム)の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- クリス・ウィーバー「いつか世界一になる奴と、知り合えたらステキだなって。な…普通だろ。」
- 宮本大「お前の本番は、いつでも今日じゃなくて明日なのか?」
- ラファエル・ボヌー「いいよ。セッションなら、断る理由はない。だが、特定の誰かとは組まない。オレは色んな奴らと演奏し続けるんだ。人脈は停滞させない。」
- ガブリエル・ベール「失敗ってのは良い学びだって 誰かが言ってたな。なあスポック。ガンジーだったかな?」
- 宮本大「オレは行くんだ。」
- ハンナとブルーノの交際を知って衝撃を受ける大
- 宮本大「こんなに遠くまで来たぞ。」
- 『BLUE GIANT EXPLORER』(ブルージャイアント エクスプローラー)の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ジェイソン「笑いさえすればもう一回、いや…何度だってチャレンジできるんだ。」
- シェリル・ハント「理由がないってことは、アナタは本気ってこと。そして、本当に音楽が好きってこと。」
- ジャズをあきらめた老人「きっと本人が負けたと思わなかったら勝つんだね。 「オレなんて」、そう思った瞬間に終わるんだ。全てがね。」
- 宮本大「オレのサックスは全力です。『シリアスだ』ともよく言われます。オレの中の全部を出します。昨日も明日もない。お客の心を動かすにはそれしかない。計算なんかしない。」
- 宮本大「負けることが前提にあって、小さく勝ちを重ねようとしてるんだ。そんな奴がオレ達を値踏みするだ?ふざけるな!!」
- ジャック「Beautiful.(最高だ。)」
- 衝撃的すぎるジョーの初登場シーン
- 不自由な右手でピアノを弾いた雪祈
- 『BLUE GIANT MOMENTUM』(ブルージャイアント モメンタム)の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 宮本大「………アレ? 今 気付いたけど… 練習って、タダじゃね? 練習って凄えな…!! 練習って…………尊いな!!」
- サム・ジョーダン「NYには無数のジャズプレーヤーがいるが、その誰もが“個性的”でありたいと思っている。だが…ライチはライチでしかない。それに自分で気づくのに何年もかかる。何年もかかって気づかないプレーヤーもいる。」
- カーメロ・キャノン「世界一だっけ?一生かけて目指すことになるよ。」
- 宮本大「あっそう…そしたら…それ勝つわ。」
- ディエゴ・アルバレス「アイツが勝つんだ。」
- 演奏ですべてを出し切り感極まるノア・デュベール
- ジョー「音は出したら消えてく。オレはそれでいいんだよ。」
- 宮本大「ジャズという音楽を演っていると、ジャズの自由さに凄く感動するんです。あのロングトーンは吹いているボクも、聴いている会場の人達も自由だったんだと思います。」
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