BLUE GIANT(ブルージャイアント)のネタバレ解説・考察まとめ
『BLUE GIANT』とは、2013年から『ビッグコミックスピリッツ』において連載されている石塚真一による漫画である。ジャズを題材とする本作品は、世界一のサックスプレーヤーを目指す高校生・宮本大が、仙台、東京、ドイツと拠点を移しながら一歩ずつその階段を上っていく様が描かれている。2016年に舞台をドイツに移してからは、『BLUE GIANT SUPREME』の別タイトルで続編が連載された。
『BLUE GIANT』の概要
『BLUE GIANT』とは、2013年から『ビッグコミックスピリッツ』において連載されている石塚真一による漫画である。ジャズを題材とする本作品は、世界一のサックスプレーヤーを目指す高校生・宮本大が、高校時代を過ごす仙台、卒業後の上京先である東京、バンド解散を期に自身の飛躍を求めて渡ったドイツと、拠点を移しながら一歩ずつその階段を上っていく様が描かれている。『ビッグコミックスピリッツ』の2016年18号にて舞台をドイツに移してからは、『BLUE GIANT SUPREME』の別タイトルとして続編が連載されている。なお、タイトルの「BLUE GIANT」は、ジャズプレーヤーとしての大の才能を赤色よりも高温で燃える青色の巨星になぞらえたことに由来する。
第20回 (2016年)文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 大賞、第62回(2016年)小学館漫画賞 一般部門受賞作品。
『BLUE GIANT』のあらすじ・ストーリー
『BLUE GIANT』
仙台編
中学生の時、友人に連れられて聴いたジャズの生演奏に心打たれた宮本大は、それ以降バスケ部に所属する傍ら、独りテナーサックスの練習に明け暮れる日々を送っていた。そして高校三年生の夏、バスケ部最後の大会に負けたことをきっかけに大は世界一のサックスプレーヤーになるという夢に向けて動き出す。
我流で練習してきたため楽譜は読めずスタンダードナンバーも知らないが、どこか魅力的な音を奏でる大。そんな彼の音に惹かれた馴染みの楽器屋の店長のすすめで、大はいきなりライブに臨むことになる。飛び入りという形で参加することになったジャズバー「バード」での初ライブ。渾身の力を込めた大のパワフル過ぎる演奏は一部の聴衆に強烈な印象を残したものの、静かでムーディーな音楽を聴きに来た一人の常連客に「うるさいんだよ!」と一喝され、ステージを下ろされてしまう。失意のまま帰路につく大。そんな大の演奏に荒削りな才能を見い出した「バード」のマスター・川西は大にジャズの基礎を身に付けるようすすめる。そうした川西の取り計らいにより、大は元ジャズ奏者の由井のもとで基礎知識・技術を身に付けるための特訓に打ち込むことになる。
確かな上達を実感する大は、自身が通う高校の学園祭でピアノの音楽教師・黒木と組んでライブに参加する。ロックバンドばかりの中、ひときわ異彩を放つ大たちだったが、出だしのサックスのソロで一気に観客の心をつかみ大盛況の中で演奏を終える。ライブ成功の報告を受け、問題点を指摘しながらも大の確かな成長を感じていた由井は、再び「バード」でバンドと合わせて演奏することを命じる。そこには初ライブで大の演奏を酷評した常連客の姿があった。由井のもとでの特訓により周囲の音に合わせる余裕が出来た大はかつてのような独りよがりなプレイを脱却し、その常連客をうならせることに成功する。師匠である由井からも「まだまだだが…最高だ」との言葉をもらった大は、プロのサックスプレーヤーを目指し上京することを決意する。
そして高校卒業後、家族、友だち、そしてジャズを通じて知り合った者たちに別れを告げ、大は東京に旅立つのだった。
東京編
高校時代の友人である玉田俊二の家に居候しながら新居やバイト先を探していた大は、ジャズライブを聴きに入ったバーで演奏していた天才肌の大学生ピアニスト、沢辺雪祈と出会う。大が雪祈の演奏に感銘を受ける一方で、自身の実力に見合ったバンドメンバーを探していた雪祈も大の手に出来たサックスタコを目ざとく見つけ接近する。日を改めて聴いた大のサックスに感動し、互いの腕を認めあった二人はバンドを組むことにする。ピアノとサックスがそろったところでドラムを探し始める二人。そこに打ち込むことがなく悶々とした大学生活を送っていた玉田が名乗りを上げる。ジャズプレーヤーとして上り詰めようという野心を強く抱く雪祈は当初素人の玉田の加入を拒否するが、玉田の熱意と大の「音楽の敷居は低くあるべき」という信念にほだされる形で渋々ながら玉田の参加を許可することになり、三人は「JASS」としてバンド活動をスタートさせる。
早速ライブの枠を取ってきた大。無名な三人の初ステージの客は4人。玉田は初めての本番で何も出来ず意気消沈するが、持ち前の実力を発揮した雪祈や大の演奏によりバンドとしては上々の反応を得る。その後、回を重ねるたびに評価を上げ固定客をつかむまでに至った三人は、たまたま彼らのライブに居合わせたプロのミュージシャン、川喜田とのセッションをきっかけに一気に知名度を上げることになる。ライブにも人を集めることができるようになり次の段階を見据える雪祈は、昔からその舞台に立つことが夢であった日本屈指のジャズクラブ「So Blue」で演奏するべく売り込みをかける。川喜田のツテを辿り「So Blue」の支配人である平に自分たちのライブに足を運んでもらう約束を取り付ける。しかしライブ後に平と面会した雪祈は、自身のピアノを小手先の技術に頼った傲慢で鼻につくつまらないプレイであると酷評されてしまう。
ジャズプレーヤーとしての行く末が楽しみな若者を前に気持ちが昂ぶってしまい、つい感情的な物言いをしてしまったことに少し後悔する平。けれど雪祈は悩みながらも自身のピアノスタイルと格闘し試行錯誤を繰り返しながら、着実に前を向いて進もうとしていた。JASSに魅了されCD化企画を進めるレコード会社の五十嵐との出会いや、既に実績のあるプロのジャズユニット「アクト」とのジャズフェスでの競演を経てそれぞれが自分たちの音楽性を意識しながら着実に成長していくJASSのメンバーたち。そんな彼らのライブに足を運び陰ながら成長を確認していた平は、「So Blue」でライブ予定だったバンドのピアニストが欠員した折、サポートピアニストの補充として雪祈に声をかける。大と玉田が観客席で見守る中、存分に実力を発揮した雪祈は、演者のみならず一般のジャズファンの間でも話題に上るまで評価を高めることになる。
「So Blue」での熱演後、平はJASSに正式に出演依頼をする。10代での「So Blue」への出演という快挙にブレイク直前かと思われた公演前々日、路上でガードマンのアルバイトをしていた雪祈は突っ込んできた居眠り運転のトラックにはねられ右腕に重傷を負ってしまう。雪祈と面会さえ出来ない中、大は平に頼み込み雪祈抜きのサックスとドラムデュオでライブを行うことにする。雪祈不在ながら上々のステージを演じた二人はライブ後ようやく雪祈との面会を果たす。痛々しく包帯に包まれた雪祈は、切断までは免れたもののピアニストとして生命線の右腕は回復の目処も立たない状態であることを説明し、JASSの解散を提案する。大の才能をこんなところで立ち止まらせてはいけない、そうした思いからの発言に玉田も同意する。葛藤を抱えつつも大はその提案を受け入れ、JASSは解散する。
大は仙台に戻り、師匠である由井に東京での経験とJASSの解散を期に国外での挑戦を決めたことを報告する。由井と相談して目的地を決めた大は新たな挑戦を求めて旅立つのだった。
『BLUE GIANT SUPREME』
ドイツ編
ドイツのミュンヘンに到着した大は、宿をとり早々にサックスの練習場所を探し始める。勝手の知らない街で警察に止められたりと苦労しつつも程よい川沿いの練習場所を見つけた大。しかし次なるライブスポット探しでは本格的な困難に直面する。目に付いたジャズバーを片っ端から回る大だったが、言語の壁、そしてアジア人であることから演奏も聴かずに出演を断られ続けてしまう。そんな中、大は偶然立ち寄った喫茶店で、彼の持つサックスに興味を抱いた現地の大学生・クリス・ヴェーバーと知り合う。世界一のサックスプレーヤーになるためドイツに来たという大の言葉に心動かされたクリスは、同居人として家賃もとらず自分のアパートの部屋に住まわせてくれることになり、ライブスポット探しまで手伝ってくれることになる。そんなクリスの協力の甲斐あり小規模な店ながらドイツでの初ライブが決まる。10人程度の客のほとんどはクリスの友だちで、大のことはおろかジャズのことさえあまり知らない者もいる中、大の懸命の演奏は彼らの心を打つ。
逃げ場のない状況での独りのライブをやりきった大は、仲間とともにプレイするためにバンドメンバーを探し始める。手当たり次第に様々なバンドを見回る中で大の目に留まったのは女性ながらパワフルな音を奏でるベーシストのハンナ・ペータースだった。早速一緒に演奏をしたいと声をかける大だが、無名でしかも演奏音源もない彼はとりつくしまもなく断られてしまう。それでも諦めることができない大は、ハンナが今組んでいるツアー終了後ハンブルグに帰ることを聞き出し、ミュンヘンを離れハンブルグに拠点を移すことにする。
世話になったクリスに別れを告げハンブルグにやってきた大は、楽器店やジャズバーでハンナについて聞いて回るがなかなか情報を手に入れることができない。それでも諦めることなく方々で聞き込みを続ける中、ついにハンブルグに戻ってきたハンナとジャズバーで再会することになる。その時セッションの真っ最中だった大の演奏を聴いたハンナは、大が若いアジア人というだけで彼の力を見くびっていたこと、そして彼と一緒に演奏することに少し怖気づいてしまっている自分がいることに気付いて腹立たしさを感じるのだった。(『BLUE GIANT SUPREME』第二巻まで)
主要人物
宮本 大
本作の主人公で仙台市に住む高校生。性格は真っ直ぐで真面目、そして凄まじいまでのポジティブ思考。中学生の時に友人に連れられて聴いたジャズの生演奏に心打たれて以降ジャズのとりこになる。兄にテナーサックスを買ってもらってからは、バスケットボール部に所属する傍ら毎日河原に通って独りテナーサックスの練習に励んでいた。我流であるがゆえに基礎的な知識や技術に乏しかったが、由井や「バード」のマスター・川西をはじめ、大の奏でる音には多くの人間をうならせるだけの光る何かがあるようである。高校卒業後プロを目指し上京。家族は父・兄・妹で、幼いころに母を亡くしている。
宮本 雅之
大の兄。幼少の頃から非常に面倒見のいい性格で、いわゆるお兄ちゃんらしいお兄ちゃんである。高校卒業後に家を出て一人暮らしをしている。大がジャズにはまっていることを知り、初任給をもらったばかりのころ大にテナーサックスをプレゼントした。ジャズに詳しくない雅之はよく分からないまま大に内緒で楽器屋へ赴き、「この店で一番いいやつをください」と50万円以上のサックスを購入、ローン完済後は「チョロいもんですな」と男気溢れるセリフを放っている。
由井
元サックス奏者で大の師匠的存在。アメリカにサックス一本で渡っていたこともある実力者。独学でサックスを覚えてきたため基礎的な知識や技術に乏しい大の指導役として川西によって引き合わされる。しかし実はそれ以前、由井が酔っ払って路上でストリートミュージシャンに絡んでいたところを大が仲裁に入るという形で既に出会っていた。ただ由井はそのことを覚えていなかった。大の演奏に才能の片鱗を感じ、レッスン料をとらずサックスを教えることになる。
沢辺 雪祈
上京した大が出会った大学生ピアニストでJASSのメンバー。自信家で毒舌家、また女癖が悪い。一方で「So Blue」の支配人である平に自身のピアノを酷評された際にはそれを受け入れ、がむしゃらに自身のスタイルを改善しようとする謙虚さも持ち合わせている。幼少期からピアノを続けており、日本屈指のジャズクラブ「So Blue」に10代で出演するのを目標としていた。確かな腕を持ちできるだけ若いバンド仲間を探していた折大と出会い、バンドを組むことになる。素人である玉田の加入には当初否定的だったが、玉田の熱意に触れたことや大の「音楽の敷居は低くあるべき」という信念にほだされる形で渋々ながら玉田の加入を認め、JASSとしてバンド活動をスタートさせる。アルバイト中の事故で大怪我を負ってしまったことによりJASSを解散させることを決断する。
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