新たなるダークヒーロ―の形! 映画「ナイトクローラー」が面白い!
第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたサスペンス映画。現代の報道を題材にした今作は新たなダークヒーロ―を世に送り出しました。視聴者の興味を惹く画を撮るためならばどんな非情な手段も取って見せる主人公はまさに現代社会に波紋を呼ぶ存在と言えるでしょう。映画「ナイトクローラー」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
人脈も学歴もないために、仕事にありつけないルイス(ジェイク・ギレンホール)。たまたま事故現場に出くわした彼は、そこで衝撃的な映像を撮ってはマスコミに売るナイトクローラーと呼ばれるパパラッチの姿を目にする。ルイスもビデオカメラを手に入れ、警察無線を傍受しては、事件現場、事故現場に駆け付ける。その後、過激さを誇る彼の映像は、高値でテレビ局に買い取られるように。やがて局の要望はエスカレートし、それに応えようとルイスもとんでもない行動を取る。
とんでもないアンチヒーローが誕生してしまった!
良い画を撮るためならば死体を移動することも厭わない。とんでもない主人公だ。序盤において自らのことを「勤勉」と言ってのけた男と同一人物とは思えません。他人の命を喰らって金を得るパパラッチ。このような職業を賛美する気はありませんが、倫理を無視した蛮行によって伝えられる真実があるのもまた事実。しかしこの主人公はその真実までも捻じ曲げてしまいます。文字通り、自らの手によって。
海外のニュースはほとんど見たことがないのですが、死体のシーンがモザイク入りで出てきたりするのでしょうか。日本ではありえない光景ですよね。テレビ局に持っていったとしてもまず放送はできないでしょう。富と名声を求めるあまり倫理観を徐々に見失っていく様が大変リアルに描かれていました。荒唐無稽に思えるも妙に現実感があり、いつか自分もこのような存在に成り下がるような気がしてなりません。
演技・演出・展開のどれをとっても高水準の作品
主人公のルイスを演じるジェイク・ギレンホールを筆頭に出演する俳優の演技がことごとく素晴らしい。特にジェイクは観ているだけでゾクゾクとしてしまいます。冷静沈着な表情に無感動な目つき。全身から暗い雰囲気が醸し出されていて映画のテイストと見事にマッチしています。ちなみに相棒もいるにはいるのですが、ラストで大変なことになります。そのシーンで主人公は完全に人間を止めてしまったような、そんな気がします。
テレビディレクターの妙齢の女性がいるのですが、その人とのラブシーンがなかったのは幸いでした。なにせその女性はキレイではありますがちょっとラブシーンには向かない年齢なんですよ。主人公は交渉という名のアプローチを仕掛けていきますがもしやラブシーンがあるのではとハラハラし通しでした。安易にそういったシーンを選ばず、駆け引きによって心の動きを描写していたのは実に見事でした。
まとめ
アカデミー賞にノミネートされただけあってかなり高レベルの作品です。今まで見たことがない類の映画と言っても良いでしょう。ナイトクローラー。まさにその通り。全編を通して舞台はほとんど夜の街ですからね。カメラを片手にハイエナのように死体に群がり、時により良い画を撮るための演出も厭わない姿勢。無意識に目を逸らしていた事柄を眼前に突き付けられたような衝撃を受けました。オススメしたい映画の1本に数えたいと思います。