コヨーテ・アグリー(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『コヨーテ・アグリー』とは2000年にアメリカで公開された青春映画である。シンガソングライターになるという夢を叶えるためニューヨークにやってきたヴァイオレットは、生活のため「コヨーテ・アグリー」というクラブで働くこととなる。何もかもが規格外で刺激的なその店で、ヴァイオレットは思いがけない自分を発見する。そしてシンガソングライターという夢を応援してくれる青年オドネルとの出会いと恋と別れ。未知の世界に飛び込んだ田舎娘ヴァイオレットの葛藤と成長、挫折と成功を描くハートフルサクセスストーリーだ。

『コヨーテ・アグリー』の概要

『コヨーテ・アグリー』とは2000年にアメリカで公開された青春映画である。製作は『アルマゲドン』(1998)『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)を手掛けた大ヒットメーカー、ジェリー・ブラッカイマーが出が興行成績1億1000万ドル超える大ヒットとなり、出演した女優陣も実際に成功を掴むというダブルサクセスストーリーが生まれた。

主役のヴァイオレットを演じたパイパー・ペラーボはほとんど無名の新人だったが、この映画の主役に大抜擢され一躍注目を浴びた女優である。今作以降も『Dr.HOUSE』(2007)や『LAW & ORDER:犯罪心理捜査班』(2009)に出演し、海外テレビドラマシリーズなどで大活躍している。オドネル役のアダム・ガルシアはオーストラリアでダンサーとしても活動していた俳優だ。ミュージカル俳優として舞台を中心に出演していたが、その後映画やテレビなど幅広い活躍を見せている。またヴァイオレットの父親ビル役として名優ジョン・グットマンが登場しているが、彼は一癖ある役柄を演じさせたらピカイチと言われている有名な実力派俳優だ。

ニュージャージーの田舎町で育ったヴァイオレットは、シンガソングライターになるという夢を叶えるためニューヨークに向かった。しかし現実はそう甘くはなく、音楽会社で門前払いをくらう毎日。安アパートは泥棒に入られ、生活に困ったヴァイオレットは「コヨーテ・アグリー」というクラブで働き始める。過激なパフォーマンスと迫力のあるダンスでお客を虜にするその店に戸惑いながらも、ヴァイオレットは徐々に成長を遂げていく。そしてひょんなことから知り合った青年オドネルとの間に恋が芽生える。しかしヴァイオレットは実はステージ恐怖症であり、夢を叶えるための大きな試練が待ち構えていたのだった。クールでホットなクラブを舞台に、未知の世界に飛び込んだ少女が恋と挫折を味わい、成功の階段を上っていく青春サクセスストーリーだ。

『コヨーテ・アグリー』のあらすじ・ストーリー

旅立ちの日

ヴァイオレット・サンフォードはニュージャージー州のピザ屋で働く21歳の女の子だ。ある日、シンガソングライターになるという夢を叶えるべくニューヨークに引っ越すこととなった。友達のグロリアは別れを悲しみながらも、惜しみないエールを送ってくれた。父ビル・サンフォードは危険な街に向かう娘の身を案じて、すっかり浮かない表情だ。しかし最後はヴァイオレットの荷物に防犯スプレーを忍び込ませ、夢に向かう娘の背中を温かく押した。

現実という厳しい壁

ヴァイオレットはニューヨークで様々な音楽会社に売り込みにいくが、全く取り合ってもらえない。ある日音楽バーを訪ねると、そこでケヴィン・オドネルというマネージャーと出会う。ヴァイオレットは必死に売り込み、デモテープを渡す。しかしオドネルはマネージャーなどではなく、厨房で調理を担当しているただのスタッフだった。ナンパ目的のオドネルに騙されそうになったヴァイオレットは、NYの厳しさを肌で感じる。売り込みは難しいと分かったヴァイオレットは、まずクラブのアマチュアナイトに出演することにした。しかし汚いヤジが飛ぶ場末のクラブの雰囲気におののいてしまい、結局ステージから逃げ出してしまった。しかも自宅の安アパートに泥棒が入り、全財産を盗まれてしまう。全く上手く行かない状況に絶望したヴァイオレットは、床に座り込んで泣き出してしまった。

「コヨーテ・アグリー」との出会い

ヴァイオレットがカフェで落ち込んでいると、そこで楽しそうに盛り上がっているガールズ達に出会う。彼女達はキャミー、ゾーイ、レイチャルという名前で、「コヨーテ・アグリー」という名前のクラブで働く女性たちだった。法律の勉強をするためゾーイが店を辞めると話しているのを聞いて、仕事の空きがあるかもしれないとヴァイオレットはそのクラブに出向く。そして支配人リルのお眼鏡にかない、まずはオーディションを受けることになった。しかしその店はセクシーなバーテンダーが、カウンターをステージにして挑発的なダンスを踊りながら客を盛り上げる刺激的なバーだったのだ。田舎娘のヴァイオレットはすっかり怖気づいてしまったが、リルの勢いに押されてバーテンをしてみることになった。このクラブの店員にはルールが2つあり、一つ目は「客とデートしない」、二つ目は「彼氏を店に連れてこない」ことだった。ヴァイオレットはジョークで修道院から脱走してきたという体で、「ジャージーの尼さん」というあだ名が付けられる。キャミーは「ロシアの小悪魔」、レイチェルは「ニューヨークのアバズレ」といったようにそれぞれあだ名が付けられており、その役を演じることで客を楽しませるのだ。しかしヴァイオレットは店の異様な盛りあがりにすっかり圧倒され、オーダーさえまともに取れない。そんなヴァイオレットに対して、レイチェルは冷たく邪険な態度を取った。しかしヴァイオレットがケンカ中の客を上手にあしらう様子がリルの目にとまり、気に入られた彼女は本格的に「コヨーテ・アグリー」で働くこととなる。

オドネルとの恋

キャミーが服装から何から親切に世話してくれ、ヴァイオレットも少しずつ店の雰囲気に慣れてきた。しかし手厳しいレイチェルは、ヴァイオレットが店の大事な客に失礼な接客をするように仕向けた。そのせいでヴァイレットは、損害分の250ドルを一晩で稼がないとクビにするとリルに言い渡される。そこにオドネルが現れ、手持ちの90ドル分を払おうとしてくれた。しかしヴァイオレットはそれをきっぱり跳ねつけ、店でオドネルとデートするオークションを始める。オドネルはセクシーなダンスを繰り広げ、酔っぱらった女性客たちは色めき立った。落札額はどんどん値が吊り上がり、ついに250ドルを稼ぎ出す。オドネルのおかげでクビを免れたヴァイオレットは、お礼に彼とデートすることになった。しかしデートの最中、オドネルが怪しい袋を取引をしている現場を目撃してしまう。犯罪を疑ったヴァイオレットが質問すると、袋の中身は『スパイダーマン』のコミック本だった。プレミアがついて1000ドルもするコミックをわざわざ取り寄せたと言う。イケメンの意外なオタク趣味を知って、ヴァイオレットは初めてオドネルに好意を持つ。そしてヴァイオレットはシンガソングライターになりたいが、人前では自分の歌を歌えないステージ恐怖症であることを告白する。しかしオドネルはオーストラリア出身という以外、何も自分について語ろうとしない。それでも2人の距離はグッと近づいた。

夢に向かって

ある日クラブで興奮した客がハメを外し、至る所でケンカが始まってしまった。カオス状態となった店内を鎮めるため、ヴァイオレットは咄嗟にジュークボックスから流れてきた歌を歌い始める。ヴァイオレットのパフォーマンスに魅入られた客たちはケンカをやめ、店はより一層の盛り上がりを見せた。ステージ恐怖症を一歩克服したヴァイオレットは、これまで以上に曲作りに打ち込むようになった。そこでオドネルは沢山の人型のハリボテを用意し、訓練を兼ねてその前で自分の歌を歌ってみるように勧める。オドネルの優しさに感激したヴァイオレットは初めて彼と一夜を共にした。そしてオドネルの前で、自作の歌を歌って聞かせる。またヴァイオレットは亡くなった母が自分と同じくステージ恐怖症であったことを告白した。それからのヴァイオレットはオドネルとの関係を深めながら、「コヨーテ・アグリー」のステージと自分の歌の売り込みにまい進する。そして店は連日列をなすほど大盛況となった。

クビと失恋

ある日オドネルの紹介で、業界人が集まる店でヴァイオレットはステージに立つこととなった。しかし「コヨーテ・アグリー」が大盛況で人手が足りないことを理由に、ステージを直前でキャンセルしてしまう。オドネルは自分の宝物である『スパイダーマン』のプレミアコミックを、キャンセル代として手放せざるを得なくなった。せっかくのチャンスを棒に振ったヴァイオレットに納得がいかないオドネルは、その足で「コヨーテ・アグリー」を訪ねた。ちょうどヴァイオレットが男性客に絡まれており、それを見てカッとしたオドネルはその客になぐりかかる。店を締め出されたオドネルとヴァイオレットは大げんかとなった。夢に挑戦しないヴァイオレットをオドネルは批判し、ヴァイオレットは自分のことを何も話そうとしないオドネルをなじる。するとオドネルは自分に家はなく、里親の元を転々とする悲惨な子ども時代を送ったことを告白した。気まずい空気が流れ、オドネルはそのままその場を立ち去った。その後「彼氏を店に連れてこない」というルールを破ったヴィオレットに、リルにきっぱりとクビを言い渡す。ヴァイオレットは夢も仕事も恋人も一気に失ってしまった。

母の真実

何もかも失ったヴァイオレットは曲作りをしながら、寂しい日々を送っていた。そんなある日、父ビルが交通事故に遭い、入院したと連絡が入る。幸い骨折程度ですんだが、これを機にニュージャージーに帰るとビルに告げた。母と同じ恐怖症だから人前で歌えない、とヴァイオレットは弱音を吐く。すると母は恐怖症などではなく、母のステージは素晴らしかったとビルは語った。しかしヴァイオレットが生まれて、母は歌を辞めると決心する。妻の才能を応援してやれなかったことをビルはずっと後悔しており、ヴァイオレットには夢を諦めてほしくなかった。「(ニュージャージに)戻ってくるな」と叱咤激励する父の言葉に励まされ、ヴァイオレットはもう一度ニューヨークで頑張ろうと決意する。そんな中、父の入院を聞きつけたリルがヴァイオレットの元を訪れる。そして「コヨーテ・アグリー」に戻ってもいいと提案するが、ヴァイオレットは夢の実現のためにきっぱりと断った。

ステージデビュー

ヴァイオレットはあるクラブで開催される「ソングライター・ショー」というイベントに応募する。懸命に作った曲が主催者に認められ、いよいよステージに立つことになった。父もグロリアもリルたちも観客席から温かい声援を送る。しかしいざステージに立ってもヴァイオレットは緊張で歌えず、その場を立ち去ろうとした。するといきなり電気が落ち、ステージは真っ暗となってしまった。電気を落としたのは、ヴァイオレットの初ステージを聞いて駆け付けたオドネルだったのだ。それで落ち着きを取り戻したヴァイオレットは、暗闇の中で自作曲「Can't Fight the Moonlight 」を歌い始める。やがてライトがついたが、そのまばゆいステージでヴァイオレットは堂々とパフォーマンスを続けた。

夢への階段

そして3ヵ月後。「コヨーテ・アグリー」で、「Can't Fight the Moonlight 」CDリリースのお祝いパーティーが開かれていた。カウンターで大人気シンガー、リアン・ライムスがヴァイオレットの曲を歌っている。夢への階段を駆け上がるヴァイオレットの傍らにはオドネルが寄り添っていた。ヴァイオレットはオドネルに『スパイダーマン』のプレミアコミックをプレゼントする。それは以前ステージをキャンセルした時に手放してしまったオドネルの大事な宝物だった。借りを返したヴァイオレットはステージに上がり、リアンと共に自分の歌を熱唱する。店は今までにないほど最高潮の盛り上がりを見せていた。

『コヨーテ・アグリー』の登場人物・キャラクター

主要人物

ヴァイオレット・サンフォード(演:パイパー・ペラーボ)

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