コヨーテ・アグリー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『コヨーテ・アグリー』とは2000年にアメリカで公開された青春映画である。シンガソングライターになるという夢を叶えるためニューヨークにやってきたヴァイオレットは、生活のため「コヨーテ・アグリー」というクラブで働くこととなる。何もかもが規格外で刺激的なその店で、ヴァイオレットは思いがけない自分を発見する。そしてシンガソングライターという夢を応援してくれる青年オドネルとの出会いと恋と別れ。未知の世界に飛び込んだ田舎娘ヴァイオレットの葛藤と成長、挫折と成功を描くハートフルサクセスストーリーだ。

ある日、オドネルは沢山の人型のハリボテを用意する。そこにヴァイオレットを連れていき、ステージ恐怖症を治すためにハリボテの前で歌うことを提案した。自分の夢を応援してくれるオドネルの思いを感じて、ヴァイオレットは彼と深い関係になる。因みにハリボテはマリリン・モンローやジェームス・デーン、ケネディ大統領などアメリカ人なら誰しも知る有名人が勢揃いしている。こんなオシャレで粋な演出で口説かれたら、ヴァイオレットだけでなく女の子ならついグラッときてしまうに違いない。女子心をくすぐるラブストーリー要素も盛り込まれた今作は、女子にはたまらないシーンがふんだんに登場する。

1-2-3

料金所でライトを点滅させる様子

実家からビルとグロリアを伴って、いよいよステージデビューするためにクラブに向かうこととなったヴァイオレット。車で料金所を通りかかった時、ビルは同僚に「娘が緊張しているから1-2-3をやってくれ」とお願いする。1-2-3とはブザーを鳴らしながら料金所にあるすべてのライトを点滅させる派手な演出のことだ。ビルは娘の門出のために、何か励ましになることをと考えたようだ。しかしヴァイオレットは逆に怖気づいてしまい、思わず車をUターンさせてしまう。事故寸前の危険な行為にビルは度肝を抜かれるが、改めて娘を勇気づける。父の言葉に覚悟を決めて、ヴァイオレットは車をクラブの方向に戻す。するとまた1-2-3がド派手に応援してくれた。ステージに立つヴァイオレットの大きな緊張と恐怖、また周囲の人々の温かい気持ちが伝わってくるシーンである。

『コヨーテ・アグリー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実在するクラブ「コヨーテ・アグリー」の魅力

「コヨーテ・アグリー」は実際にニューヨークに存在するクラブだ。1997年アメリカの雑誌で「コヨーテ・アグリー・サルーン」という店の記事が紹介される。バーテンダーたちが過激なパフォーマンスを繰り広げるこの店は、すでに夜の大人気スポットとなっていた。この記事を読んだ映画関係者が店の常連となり、そこで映画化の話になったという。今作の中でも「コヨーテ・アグリー」はすべてが規格外で破天荒な店だ。まずはバーテンダーが、カウンターをステージにして踊る迫力あるダンスに度肝を抜かれる。店内が盛り上がってくると、客の髪を切り落とし、客に向かって酒を浴びせまくる。店にはビールやウィスキー、テキーラなどのアルコールしか置いてなく、すべてストレートで注文しなければならない。バーテンダーたちが客を手玉に取りながら繰り広げる過激なパフォーマンスはとにかくかっこいい。他に類を見ない、過激で刺激的な演出に客は大盛り上がりとなる。

カセットテープと固定電話

自作のカセットテープを手に、音楽会社で売り込みをするヴァイオレット

ヴァイオレットがニューヨークで自分の曲を売り込む際、音楽会社に渡したのはなんと昔懐かしいカセットテープだった。それを会社に直接持参したり、何個も封筒に詰めて郵送したりというシーンがある。また、ヴァイオレットとオドネルの連絡手段は自宅や店の固定電話だ。どこでもすぐに受け取れる携帯電話と違って、留守にしていると出られない。故にすれ違いが続き、ケンカの後なかなかお互いの声が聞けない状況になってしまった。今はネットでなんでも手に入り、いつでもどこでもすぐに連絡が取れる便利な世の中となったが、これらのアイテムはほんの少し前は不便な世の中であったことを思い出させる。しかし不便が故にロマンチックなドラマが生まれていたのだな、と感慨に浸れるシーンが所々に登場する。

無名女優の起用

主人公ヴァイオレットを演じたパイパー・ぺラーポは、この映画で大抜擢された無名の新人である。リアル感を演出するために制作陣はあえて無名の女優を起用するという方針だった。女優陣はゼロの状態から一流のバーテンダーと振り付け師から訓練を受け、まさに映画と同じく未知なる世界で成長を遂げたのである。新人らしい初々しさとキュートな笑顔が魅力的なパイパーの起用のおかげで、映画は大成功を収めた。またゾーイ役のタイラ・バンクスはスーパーモデルとして既に有名人であったが、モデル出身者に女優は無理という世間の声を乗り越えて見事な演技とパフォーマンスを披露している。今作の主人公と同じく、出演者も夢への階段を上ったというサクセスストーリーがまさに虚実ともに描かれた映画だ。

『コヨーテ・アグリー』の主題歌・挿入歌

主題歌:リアン・ライムス「Can't Fight the Moonlight 」

ヴァイオレットが「ソングライターショー」でステージ恐怖症を克服し、堂々と歌い上げた曲。
後に「コヨーテ・アグリー」でリアン・ライムスがこの歌でイベントを行い、店は大盛況となる。
この曲を実際に作ったのはリアン・ライムスで、シングルナンバーとして2000年に発売された。
全英やオーストラリア、ニュージーランドなどの週間シングルチャートで第一位を獲得した大ヒットソングだ。

挿入歌:リアン・ライムス「The Right Kind Of Wrong」

仕事も恋も順調な時期のヴァイオレットが今作の中で作った曲。
今まで穏やかな曲ばかりを作っていたヴァイオレットだったが、ふと見るとヒップホップダンスをする青年が目に入る。
そのダンス曲をヒントにポップアップ調の曲に仕上げ、新しい音楽を作ることに挑戦した。

挿入歌:デフ・レパード「Pour Some Sugar on Me」

ヴァイオレットがオーディションのために「コヨーテ・アグリー」を訪れた際、店で大音響で流れていた曲。
激しいロック調の曲が流れる店内はすでに異様な盛り上がりを見せており、田舎娘のヴァイオレットは未知の世界にひるんでしまう。
デフ・レパードとはイングランド出身の人気ロックバンド。
アルバム『炎のターゲット』と『ヒステリア』が空前の大ヒットとなり、アルバム総売上は1億枚を超えている世界的ロックスターだ。

挿入歌:ブロンディ「One Way or Another」

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