ザ・ピーナッツバター・ファルコン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』とは、2019年にアメリカで公開された映画。自閉症の青年ザックは、プロレスラーの養成学校に入る夢を叶えるために養護施設を抜け出す。そこで偶然出会ったのは、獲物を盗んでいたことが知られて追われている漁師のタイラー。老人介護施設でザックの世話をしていたエレノアを加え、夢の実現を目指す3人の旅は、思いもよらなかった冒険へと変化していくのだった。『リトル・ミス・サンシャイン』のプロデューサーが贈る、全米を沸かせた奇跡のハートフルストーリー。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の概要

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』とは、2019年にアメリカで公開された映画。監督・脚本はタイラー・ニルソンとマイケル・シュワルツ。二人にとっては本作が長編映画監督デビュー作となった。また、世界中で愛された大ヒット作『リトル・ミス・サンシャイン』を手掛けたアルバート・バーガーとロン・イェルザがプロデューサーを務めている。『トランスフォーマー』シリーズのシャイア・ラブーフをはじめ、本作が俳優デビュー作となったザック・ゴサーゲン、『フィフティ・シェイズ』シリーズのダコタ・ジョンソンが作品のメインキャラクターを務めている。また、『スリー・ビルボード』などのジョン・ホークスや、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『ウォーキング・デッド』シリーズのジョン・バーンサルなども出演している。

自閉症の青年ザックは、プロレスラーの養成学校に入る夢を叶えるため、友人カールの手を借りて養護施設を抜け出す。そこで偶然出会ったのは、しっかり者の兄を亡くして孤独な毎日を送っていた漁師のタイラー。仲間の獲物を盗んでいたことがばれたことがきっかけで、他の漁師から追われる身となったタイラーは、ザックと共に旅を始める。そこに養護施設でザックの世話をしていた看護師のエレノアを加え、旅を続ける。夢を叶えるための3人の旅は、思いもよらない冒険へと変化していくのだった。

本作はサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞受賞している。アメリカ公開初週には、映画批評サイトの「ロッテン・トマト」で100%フレッシュを獲得。俳優陣の演技の素晴らしさが絶賛された。また、その週末には20万ドル4803ドルを稼ぎ出し、週末興行収入ランキングは初登場20位。わずか17館でのスタートから、公開6週目には1490館にまで上映規模を拡大。タイラー役のシャイア・ラブーフがアルコールにまつわる不祥事を起こしたことで公開が危ぶまれることもあったが、封切された本作はその温かな作風から、多くの映画ファンの心を虜にした。全米を沸かせた少し不思議な奇跡のハートフルストーリーとなっている。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』のあらすじ・ストーリー

ザックとタイラーの出会い

ノースカロライナ州の養護施設に暮らすダウン症の青年・ザック。プロレスファンであり、悪役プロレスラーのソルトウォーター・レッドネックが大のお気に入り。いつしか彼が運営するプロレス養成学校に行き、本人に会うことを夢見ていた。養護施設で暮らす友人の協力を得て施設からの脱出を図ることは日常茶飯事であったものの、成功することはなく、遂には脱走防止のために窓に鉄柵をはめられてしまう始末であった。しかし元エンジニアであり、同室で暮らす友人のカールの協力で、鉄柵を曲げて隙間を作ることに成功。下着姿になると体中に石鹸をぬって柵の間を通り抜けたザックは、とうとう外へ脱出した。近くのボート置き場に止められていたボートの中に身を潜めていた彼は、漁師のタイラーがダンカンたち漁師仲間たちに殴られている場面に遭遇する。彼は仲間の獲物をこっそり盗んでいたのだ。怒りに身を任せたタイラーは、何と仲間の網を燃やしてしまい、それが原因で仲間たちに追われることになる。ボートに乗り込んだタイラーはしばらくしてから、ザックがボートに乗っていることに気付く。何とか追手を巻いたタイラーは「ソルトウォーター・レッドネックのプロレス学校に行きたい」を打ち明け、友達になろうと提案するザックを置いて、一人で行動する。しかしヒッチハイクでつかまえたトラックの運転手から、港で燃やした網が燃え広がったことで検問が敷かれてることを知り、トラックを降りて引き返す。引き返したタイラーは、泳げないザックが少年によって川に突き落とされているのを目撃し、怒って少年を殴ってしまう。ザックを救出すると、自分の目的地とザックの目的地が同じ方向であることから、ついでに送っていくことにした。

ザックをトウモロコシ畑に待機させ、自分は食料の調達に向かったタイラー。そこで彼はザックの施設で看護師をするエレノアに出会う。彼女はザックが見ていたビデオから、目的がソルトウォーター・レッドネックのプロレス学校と推測し、捜索を開始していたのだ。ザックを見たことがないか尋ねられた。しかしタイラーは本当のことを告げずに「知らない」と返答し、その場を去る。また、時を同じくして、ダンカンたちも近くまで来ていて、聞き込みをしていた。こうしてタイラーとザックは追われる身という共通点を絆に、ザックの願いをかなえるためにレスラー養成学校を目指すのだった。

ザックとタイラーの旅の始まり

ザックは、自分がダウン症であることで、家族に捨てられたことや、コーチや先生にのろまと言われてきたことを気にしていた。「自分は悪玉にしかなれない」とタイラーに話すと、タイラーは、「できないこともあるけど、ザックには怪力がある」と長所を見つけ出す。ザックは、タイラーを追ってきた漁師とタイラー自身が悪玉か善玉かを聞く。その質問に自分を追ってきた漁師は悪玉と答えるものの、自分自身についてはよく分からず、答えに詰まってしまう。しかしそんなタイラーを横目に、ザックは「善玉だと思う」と言うのだった。翌日、タイラーはザックのトレーニングに付き合ったり、散弾銃の使い方を教えたりする。はしゃぐように過ごし、二人は仲良くなっていく。

旅の道中で、白人か黒人かを問う目の見えない老人に出会う二人。二人が答えずにいると、老人は容赦なく銃を撃ってきた。焦って白人と答えると、老人は全てを見透かしているようで、二人を迷える子羊と例えた。洗礼と称しザックを川に浸ける老人。そしてイカダを作り出発することになった二人に、老人は「御心を受け入れろ。狼どもは過去のものだ。葬りされ」という言葉を投げかけるのだった。

一方、エレノアは捜索の末、遂にザックを見つける。彼を施設に連れ戻さなければならないエレノアは、「立場上適切な処置が必要」と言って必死に説得するが、タイラーは「檻の中でできないことをさせた」と真っ向から対立する。エレノアは、タイラーがダウン症の青年を連れまわしたことで逮捕されると言うが、タイラーはそんなエレノアに、ザックの将来がどうなっているのかと問う。続けてエイデンのプロレス学校に送るとザックと約束したと言う。二人が白熱した議論を交わしている間、ザックはエレノアの乗ってきた車のキーを見つけると海に投げ捨て、「ソルトウォーター・レッドネックに会いに行く。ホームにはもう帰らない」と宣言するのだった。

新たな仲間と訪れる危機

ザックを見守りたい気持ちが強いエレノアは、車が使えなくなったことでザックとタイラーと共に、イカダに乗って夢を叶える旅に同行することを決意した。旅の途中、タイラーがザックに水中で息を止める訓練をさせるが、ザックの身を心配したエレノアはそれをやめさせようとする。しかしザックはその訓練の最中、素手で魚を捕まえることに成功したのだ。タイラーは、ザックにどんな調理方法がいいか聞くと、ザックはピーナッツバター添えがいいと言うので、三人はピーナッツバター添えの魚を食べた。

旅の道中に川に飛び込んだりして遊び、三人は心の距離を縮めていく。しかし三人がイカダを停泊させて浜に野宿していると、タイラーの行き先を聞き回っていたダンカンたちに、遂に居場所を悟られてしまった。ダンカンたちはタイラーを銃で脅し、右手と左手、どっちを撃つか選べと迫る。タイラーが撃たれそうになったその時、小屋の中からザックが散弾銃を持って現れ、ダンカンたちを牽制。ザックの勇敢な行動によってタイラーは窮地を脱したのだった。

旅の終わり

旅も終盤に差し掛かり、三人は調べた住所の場所にやって来た。しかし、そこには古い家屋があるだけであった。タイラーが訪ねていくと、ソルトウォーター・レッドネックの運営するレスラー学校は、10年前に潰れてしまっていた。やるせない気持ちになるタイラーは、ソルトウォーター・レッドネックを、本名のクリントとしてザックに紹介する。しかしザックは目の前にいる男性が、憧れのソルトウォーター・レッドネックだとは気づいていない様子。諦めて引き返す三人の前に、オープンカーが颯爽と走ってくる。そこにはソルトウォーター・レッドネックの姿で登場したクリントがいた。ソルトウォーター・レッドネックは、ザックにプロレスの手ほどきをする。

エレノアは、「もう旅が終わるけどどうするのか」とタイラーに聞く。タイラーはダンカンに弁償した後にフロリダの小さな漁師町のジュピターで、大きな家を買って、観光客相手のビジネスを考えており、自分も成功していい暮らしをするという未来図を描いていた。

ソルトウォーター・レッドネックは、ザックのやる気を見込んでプロレスに出場できるよう手配する。不安に感じるエレノアだが、ソルトウォーター・レッドネックは、プロレス仲間であるサムソンがうまくやると説得する。だがサムソンは納得していない様子だ。翌日ザックの出番まで他の出場者の試合を見学する一同だが、過激さに不安になるザックとエレノア。試合会場にはダンカンの漁師仲間の一人が来ていて、ダンカンにタイラーがいることを報告する。ザックとサムソンとの試合が始まるが、サムソンは手加減をする気配がない。一方的にやられていたザックだったが、タイラーに長所だとほめられた怪力を発揮させ、サムソンをかかえて大きく投げ飛ばす。会場が大きく沸いたと同時に、仲間からの報告を聞いてやってきたダンカンが現れ、タイラーの頭部をゴルフクラブで殴った。タイラーは病院に運ばれ、ザックは友達の回復をひたすら祈るのだった。

その翌日、後部座席に包帯をしたタイラーを乗せ、ザックはエレノアの運転でフロリダに到着したのだった。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の登場人物・キャラクター

主要人物

ザック(演:ザック・ゴッサーゲン)

日本語吹き替え:粟野志門
身寄りがないことで、しょうがなく老人養護施設で暮らしていたダウン症の青年。
悪玉プロレスラーのソルトウォーター・レッドネックに憧れていて、暇さえあれば彼の試合のビデオを見ていた。夢はソルトウォーター・レッドネックが運営する学校に行き、彼に会うこと。友人のカールの手を借りて老人養護施設を抜け出し、漁師のタイラーと出会う。

タイラー(演:シャイア・ラブーフ)

日本語吹き替え:小松史法
ザックと共に旅に出ることになる漁師。同じく漁師である兄を亡くし、さらに兄の漁の免許が漁師仲間のダンカンたちに取り上げられてしまう。喧嘩を挑むもあえなく敗れ、逆上して漁師仲間の網を燃やしてしまい、それが原因で追われることになる。逃げるために乗り込んだボートにザックが潜んでおり、彼の「ソルトウォーター・レッドネックに会う」という願いを叶えるために、一緒に旅をすることになる。

エレノア(演:ダコタ・ジョンソン)

日本語吹き替え:遠藤綾
ザックのいる老人養護施設で働いている職員で、身寄りのない彼のことを気にかけている。ザックが老人養護施設から脱走した際は、彼を追う為に車を使って聞き込みをしたりと、行方を探し回る。捜索の末ザックを見つけるも、施設に戻りたくないザックが車のキーを海に投げ入れられて車が使えなくなり、彼を見守るために二人の旅に同行する。

タイラーの関係者

マーク(演:ジョン・バーンサル)

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