日車寛見（呪術廻戦）の徹底解説・考察まとめ

「死滅回游」への参加を決めた虎杖は、呪術高専を停学になっている三年生・秤金次（はかりきんじ）を味方に引き入れる為伏黒と共に仙台へ向かう。同じく秤への接触を狙っていた二年生のパンダの協力を経て、虎杖らは秤ともう一人の三年生・星綺羅羅（ほしきらら）の協力を取り付けることに成功した。

秤と星を加えて「死滅回游」のルールを確認していると、「死滅回游」のゲームマスターと泳者（プレイヤー）との連絡窓口役を務める呪霊・コガネが現れる。「死滅回游」は他の泳者を殺して獲得した100ポイントを使ってルールを追加することができ、コガネは「ルール追加により全プレイヤーの情報が確認できるようになった」と告げてきた。伏黒は「ポイントを大量に持っているプレイヤーを狙ってポイントを奪いルールを変更すれば、巻き込まれている津美紀を無傷で助けられる」と考え、100ポイント以上保持しているプレイヤーを検索する。そこに表示されたのがルール追加を行った鹿紫雲一（かしもはじめ）と日車寛見（ひぐるまひろみ）だった。

日車の過去

日車は東北地方で国選弁護人として働き、立場の弱い人々の弁護ばかりを担当している人物だった。有罪確定と言われた難しい事件で少しでも被告人の無罪の証拠を探し、足を使って情報収集をする。日車の助手を務めていた清水（しみず）は無茶な仕事ばかりをする日車にうんざりしながらも、日車の元同僚である弁護士に「昔からあんなに無茶をしているタイプなのか？」と尋ねていた。
日車の元同僚でともに同じ事務所で働いていた経験のある高木は、「昔はそこまででもなかった。むしろひどくなっている気がする」と語り、かつて日車が担当していた事件の顛末を語りだす。

日車は19歳で飲酒運転の末の事故を起こした被告人の弁護を担当していた。飲酒運転は会社の上司から強要されていたにもかかわらず関係者に口裏を合わされ、執行猶予の付かない実刑判決を出されてしまう。被告人は「無罪になるって言ったじゃないか」と恨みのこもった目で日車を睨みつけていたのだった。
同僚の高木は「被告人に恨みをかってまで弁護人を続けることはない。君の精神（心）はどうなるの？」と心配するが、日車は「昔から自分がおかしいと感じたことを放っておけない性分で、それが治っていないだけだ」と答えていた。
努力の甲斐あって日車は見事に一審で無罪を勝ち取ることができた。被告人は涙を流して日車を先生と呼び、「俺を信じてくれてありがとう」と涙を流して感謝を述べる。しかし控訴審では一審の判決は覆えされ、無期懲役の判決が下った。
人材とお金に余裕のない国選弁護人に対し、豊富な資源を持つ検察は、金にものをいわせて新たな証拠も出さず有罪判決ありきの裁判を起こす。一審判決後涙を流して感謝を伝えてきた被告人は、恨みと怒りのこもった目で日車を睨みつけるのだった。

式神召喚

被告人の目を見た日車はかつて高木から「君の精神（心）はどうなるのさ」と問われたことを思い返す。日車は、「正義の女神は法の下の平等の為に目を塞ぎ、人々は保身の為ならあらゆることに目を瞑る。そんな中縋り付いてきた手を振り払わないよう、私だけは目を開けていたい」と答えていた。
そして日車は突然ガベル（槌）を机に叩きつけ、「全員戻れ。やり直しだ」と怒りの表情で式神ジャッジマンを召喚するのだった。

虎杖との接触

東京第1結界の中で時に人を殺し、時に向かってくる術師を返り討ちにし、自身の得た「呪術」という力を存分に振るう。本人曰く「いろいろとどうでもよくなった、やってはいけないと思い込んでいたことにチャレンジしている」とのことで、作中に再登場した際は激情にバスタブを持ち込んで服を着たまま風呂に入っていた。
弁護士という立場から死滅回游のことを分析し、現状のシステムには問題があることを認めた上で、「死滅回游を利用して、呪術によって悪が裁かれるシステムを構築できれば、より迅速かつ絶対的な法として活用できるのではないか」と判断。泳者として好き放題に暴れているのは、死滅回游の仕組みを詳しく調べたい気持ちもあってのことだった。

102点まで得点が溜まったある日、死滅回游の終息を目指して仲間と共に結界に乗り込んできた虎杖と出会う。彼から「死滅回游の終息のため、人殺しを強制される仕組みを解消するため、得点を使わせてほしい」と頼まれるも、先の理由から現時点で死滅回游の仕組みに手を加えることを望んでおらず、これを拒絶。拳を構えて「言い方を変える、100点を使わせろ」と迫る虎杖を前に、自身も戦闘態勢を取る。

日車の戦法は、「裁判を模した領域展開“誅伏賜死”を発動し、この中で有罪を勝ち取ることで相手に強制的に様々な罰則を与える」という、元弁護士らしいものだった。虎杖をこの裁判風の領域に捕らえ、ルールを説明した上で、彼が過去にパチンコ店を利用していたことを罪状として裁判に持ち込む。
誅伏賜死は必ず有罪になるわけではなく、日車を相手に無罪を勝ち取れば効果を発揮しない。知恵を絞って切り抜けようとする虎杖を、理路整然とした追及で追い詰め、有罪判決を勝ち取る。“没収（コンフィスケイション）”という罰則を受けて呪力が練れない状態となった虎杖に、巨大化したガベル（木槌）を手に猛然と攻めかかる。

巨大化させたガベルを自在に操って虎杖を攻め立てるも、彼の常軌を逸したタフネスぶりに手を焼き、「壊れない人形を相手にしているようだ」との感想を抱く。「日車の術式が裁判をなぞらえたものなのであれば、控訴することができるのではないか」と閃いた虎杖が二審を要求すると、強制的に誅伏賜死が発動する。他者の呪力を一方的に封じるという強力無比な能力を持つ誅伏賜死だったが、それだけに「罪を認めなければ最高で2回まで裁判をやり直せる」という弱点があった。

ここで無罪を勝ち取れば呪力を取り戻せると意気込む虎杖だったが、今回取り上げられた罪状は“渋谷事変における宿儺の暴走”、つまりは「虎杖は渋谷で大量殺人を犯した」というものだった。目の前の少年がそれほどの重罪人だとは思っていなかった日車が驚く中、虎杖は自身の罪をあっさりと認めてしまう。
判決は“死刑（デス・ペナルティ）”。誅伏賜死の効果で、“斬りつけた相手を即死させる”力を持つ処刑人の剣を手にした日車は、しかし自分の罪とあまりにも真正面から向き合おうとする虎杖に、言いようのない憤りと歯痒さを抱く。裁判の中で渋谷事変における虎杖の行いの全てを知った日車は、「大量殺人は虎杖の内に潜む宿儺が行ったことで、その時の虎杖は刑法39条1項にある“制御能力を失った状態”であるため無罪」だと断じ、戦闘を放棄する。

そう言われても、なお「自分が弱かったせいで宿儺を暴走させた」と罪の意識に囚われたままでいることを打ち明ける虎杖。己の罪と真摯に向き合おう、本来無罪になって然るべき悪行まで背負おうとする彼の姿は、日車の心にかつて弱者救済のために奔走していた頃の情熱を蘇らせる。
自分が救うべき、救わなければならない弱者がまだいることを悟った日車は、「100点を使わせてやる」と虎杖に提案。改めて話し合いの体勢を作り、「人を殺したことはあるか」と尋ねると、虎杖はそれに素直に「ある」と答える。死刑を覚悟で己の罪を認めた少年の口から飛び出したその言葉を聞いた日車は、自身がかつて怒りのままに裁判官と検事を撲殺したことを思い起こしつつ、「最悪の気分だったろう」と彼の心を慮るのだった。
「泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる」という10個目の総則を追加すると、日車は虎杖の前から姿を消す。今度は自身が己の罪と向き合う番で、そんな自分には今の虎杖の姿は眩しすぎるというのがその理由だった。「良ければ自分たちを手伝ってほしい」と乞う虎杖に、日車は「またな」と再会を期す言葉を残していく。

最終決戦

その後虎杖たちは目的の1つだった「師にして最強の呪術師である五条悟（ごじょう さとる）の解放」を達成し、虎杖の体内から別人へと器を移した宿儺と決闘することとなる。どのような紆余曲折があったのかは不明だが、日車はこの時五条を見送るメンバーの中に顔を出しており、虎杖たちへの協力を決意したものと思われる。
五条と宿儺の決戦は史上空前の激しいものとなった。五条は勝利目前まで相手を追い詰めるも、あと一歩のところで宿儺に上を行かれて敗死。二番手として飛び出していった術師も敗れた後、日車は虎杖と共に三番手として宿儺の前に立ちはだかる。

日車が危険を承知で虎杖と共に出撃したのは、誅伏賜死で宿儺に死刑判決を下して倒す、最低でも相手の術式を封じるためだった。ジャッジマンが相手のどの罪を問うかはランダムであるため、うまくいくかどうかは賭けだったが、虎杖が「自分が問われた“渋谷における大量殺人”の罪の裁判をやり直すのはどうか」というアイデアによってこれはクリアされる。虎杖との連携で、日車は首尾よく宿儺を誅伏賜死の内部に捕らえる。
かつて虎杖の中から日車の術式を見ていた宿儺は、「お前にどれほどのことができるのか興味がある」と言ってあっさりと渋谷における大量殺人を認める。これにより宿儺の力は封じられ、「今こそ好機」と呪術高専側の術師たちが次々と参戦。しかしこの時封じられたのは宿儺の呪具だけで、本人の術式はまだ使える状態であり、これに気付かなかった日車は大きなダメージを受けてしまう。

日車は弁護士でありながら怒りのまま人を殺めた過去を悔いており、虎杖たちに協力したのもその罪悪感に耐えられなくなったのが理由だった。「宿儺を倒せるならこの場で死んでもいい」とまで覚悟を決めていた日車は、劣勢の中でその才能を覚醒させ、かつてない力で宿儺に立ち向かっていく。ついには反転術式まで修得し、それによって深手を癒して奇襲を仕掛けるも、それさえも読んでいた宿儺の前に敗れ去った。
しかしもともと罪の意識と理想を捨てた己への失望に苛まれていた日車は、「自分の死後、自分の術式がさらに強まる」ことを宿儺攻略の計画に織り込んでおり、死の直前に虎杖に処刑人の剣を託していった。

日車寛見の関連人物・キャラクター

虎杖悠仁（いたどり ゆうじ）

東京都立呪術高等専門学校で教師をしている五条悟の生徒の一人。“呪いの王”と称される特級呪霊・両面宿儺（以下宿儺）をその身の内に宿しており、これを御する術を求めて呪術師を志した。
死滅回游の終息のため、人殺しを強制させる仕組みを解消するため、新たな総則を設けることを当面の目標としている。そのために必要な100点をすでに獲得している日車に接触し、協力を要請するも断られ、実力行使に打って出る。

渋谷事変と呼ばれる事件の中で宿儺に肉体を乗っ取られ、おびただしい数の人々を死亡させたことがある。本人はこれを「自分の弱さが招いた事態」として責任を感じており、誅伏賜死でこれを指摘された際は「自分が殺した（も同然だ）」と認めている。
一方、日車は宿儺の暴走による殺戮を「制御能力を喪失した状態だったのだから虎杖に罪は無い」と判断。それでもなお自分の罪と真摯に向き合おうとする虎杖の姿は、日車の中にかつて弱者救済のために奔走していた頃の情熱を蘇らせることとなった。

虎杖悠仁（呪術廻戦）の徹底解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

renote.net

虎杖悠仁（いたどり ゆうじ）とは、『呪術廻戦』の主人公で、その身に“呪いの王”両面宿儺を宿す少年。
宮城県の学校に通う高校生で、陸上の世界記録を軽々と更新するほどの驚異的な身体能力を誇る。心霊現象研究会に所属していたが、ある日仲間を救うため特級呪物をその身に取り込み、両面宿儺と肉体を共有するようにる。その力を御する術を学ぶため東京都立呪術高等専門学校に転入し、最強の術者である五条悟の下、両面宿儺の力を狙う呪霊たちと戦いを繰り広げながら、同級生の伏黒恵、釘崎野薔薇らと共に呪術師を目指していく。

清水（しみず）

清水（しみず）とは日車が代表を務める東北地方の国選弁護人事務所で、助手を務めている女性である。お金に対して興味が薄く無茶な仕事を振ってくる日車にうんざりしていたが、忠実に仕事をこなし被告人の無罪を勝ち取った。

高木（たかぎ）

高木（たかぎ）とは、かつて日車と同じ事務所で働いていた弁護士であり、副業として喫茶店を経営している女性である。日車の持ち込む仕事にうんざりした清水の愚痴を聞きながら、かつて同じ事務所で働いていた時の日車の様子を明かした。被告人に恨まれてでも国選弁護人を続ける日車を心配し、国選弁護人を止めるよう忠告したこともあった。

日車寛見の名言・名セリフ／名シーン・名場面

「私だけは目を開けていたい」