
『へび少女』とは、楳図かずお原作のホラー漫画。1966年に、『週刊少女フレンド』誌上にて連載された。楳図かずおは、恐怖漫画の第一人者であるが、同作品が彼の出世作として知られている。少女が蛇に変身していく様が徹底したホラー描写で描かれており、多くの読者に強烈なインパクトを与えた。『へび少女』は、銃でうわばみを撃った祖父を持つ主人公の少女が、継母としてやって来たへび女の復讐によって、蛇に変身していく。そして、主人公の親友姉妹が、彼女を助けるために活躍するという物語である。
『へび少女』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
楳図かずおの名前を全国区にした代表作の1つ『へび少女』

『楳図かずお恐怖劇場 へび少女 』My First WIDE版表紙
楳図かずおは、1955年に山路一雄名義でデビュー作『森の兄妹』(水谷武子との合作)を発表した。そして、1960年代中盤まで、主に貸本漫画界で活躍している。楳図が週刊漫画誌へと活動の場を移したのは、1965年である。彼は、同年『週刊少女フレンド』に『ねこ目の少女』、そして『週刊少年マガジン』に『悪魔の手を持つ男』を発表して、本格的に週刊誌デビューを果たした。その後、1966年に描かれた『へび少女』が大ヒットを記録したことで、楳図かずおの名前は全国区へと広がったのである。
楳図かずおの1960年代作品の主要発表媒体となった『週刊少女フレンド』
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『週刊少女フレンド 楳図かずお へび少女 特集号』表紙
楳図かずおが自作品を発表した主媒体として知られているのは、小学館の『週刊少年サンデー』と『ビッグコミックスピリッツ』である。前者には『まことちゃん』や『おろち』、後者には『わたしは真悟』や『14歳』が連載され、多くのファンを獲得している。また、1960年代における楳図作品の発表媒体となったのは、講談社の『週刊少女フレンド』だった。つまり、楳図は小学館と講談社という2大出版社でヒットを飛ばした漫画家なのだ。『週刊少女フレンド』に楳図が連載した作品は、『へび少女』をはじめ『赤んぼ少女』や『紅グモ』など、ホラー漫画の古典ともいえる名作群である。
山びこ姉妹(山川サツキとカンナ)が活躍する『へび少女』

『完全復刻版 山びこ姉妹』表紙
楳図かずおは、いくつかのシリーズものを世に送り出した。特定のキャラクターを主人公にしたシリーズものに、少年探偵岬一郎シリーズがある。また、山川サツキとカンナ姉妹を主人公にした山びこ姉妹シリーズも、特定キャラのシリーズものである。山びこ姉妹が活躍するシリーズの代表作が、『へび少女』だ。他に、同作品のプロトタイプと言える『へびおばさん』や、『狐つき少女』、『狐がくれた木のはっぱ』が山びこ姉妹シリーズとして知られている。同シリーズは、恐ろしい出来事に遭う姉サツキと彼女を心配する妹カンナが可愛らしく描かれており、恐怖とコメディのバランスが絶妙なことでファンの間で人気が高い。
『へび少女』以降も蛇を扱った恐怖漫画を描いた楳図かずお

『うろこの顔』サンワイドコミックス版表紙
楳図かずおは、人間が異形の者に変化するホラー作品の題材に、蛇を多く起用したことで有名な漫画家である。1961年に発表した『口が耳までさける時』は、楳図が初めて世に送りだした蛇作品であると同時に、初めて「恐怖マンガ」という冠を付けた作品だった。楳図がホラー漫画のパイオニアだと称される理由は、同作品の存在にある。楳図は、その後も蛇を扱った作品を執筆しており、読者に衝撃を与え続けた。楳図が描いた主な蛇作品は以下の通り。
・『口が耳までさける時』(『虹』1961年29号掲載 )
・『へびおばさん』(『花』1964年1~7号連載)
・『ママがこわい』(『週刊少女フレンド』1965年32~36号連載)
・『まだらの少女』(『週刊少女フレンド』1965年37~45号連載)
・『へび少女』(『週刊少女フレンド』1966年11~25号連載)
・『うろこの顔』(『週刊少女フレンド』1968年9~23号連載)
・『蛇娘と白髪魔』(『ティーンルック』1968年掲載)
・『蛇』(『週刊少年サンデー』1975年掲載)
『へび少女』の主題歌・挿入歌
イメージソング:田中路子「へび少女のうた」
「へび少女 山びこ姉妹」
『へび少女』は、連載当時大ヒットを記録したことで、1966年にソノシートが発売されている。ソノシートには、同作品のドラマとイメージソングが収録された。イメージソング「へび少女のうた」は、作詞を原作者の楳図かずおが手がけ、作曲を谷口又土、歌唱を田中路子が担当した。昭和歌謡を思わせるサウンド、楳図の書いた幻想的な詞、そして田中の朗々として悲し気なボーカルが特徴的な楽曲であるが、ソノシートでしか聴くことができない。
イメージソング:楳図かずお「へび少女」
「闇のアルバム 楳図かずお作品集」
楳図かずおは、作詞家・作曲家、そして歌手としても名作を遺している。本格的な歌手デビュー作品となった『闇のアルバム』(1975年)には、自作品のタイトルを冠したナンバーが多数収録された。「へび少女」はその中の1曲であり、作詞・作曲も楳図自身が務めている。同曲は、同アルバムの3曲目に収録されており、蛇の動きを彷彿させるギターとパーカッションが奇妙な味わいを醸し出している。また、詞の世界は同名作品をモチーフにしながらストーリーとは関係のない内容となっており、楳図の拙くも味わい深いボーカルとが相まった名曲としてファンの間で人気が高い。なお、『闇のアルバム』は、2005年にCD化されており、比較的入手しやすい。
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目次 - Contents
- 『へび少女』の概要
- 『へび少女』のあらすじ・ストーリー
- 山中村に伝わる恐ろしい事件
- 中村洋子を襲うへび女の復讐
- 山川サツキとへび少女になった洋子
- へび少女の行く末
- 『へび少女』の登場人物・キャラクター
- メインキャラクター
- 中村洋子(なかむらようこ)
- 山川サツキ(やまかわサツキ)
- 山川カンナ(やまかわカンナ)
- へび女
- その他
- 中村利平(なかむらりへい)
- 中村家のばあや
- 山川ウメ(やまかわウメ)
- 山川良三(やまかわりょうぞう)
- へび女の母
- へび屋敷のばあや
- クマ公(クマこう)
- 『へび少女』の用語
- うわばみ
- 山中村(やまなかむら)
- へび井戸(へびいど)
- へび人形(へびにんぎょう)
- へびよけのおまもり
- 『へび少女』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 中村洋子「サツキさんどうかんがえてもうわばみがしかえしにきたとおもうの…」
- へび女「これでおまえもへびになるんだよ」
- へび女に狙われた山川サツキ
- 人間を蛇にする中村洋子の恐ろしいおみやげ
- 『へび少女』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 楳図かずおの名前を全国区にした代表作の1つ『へび少女』
- 楳図かずおの1960年代作品の主要発表媒体となった『週刊少女フレンド』
- 山びこ姉妹(山川サツキとカンナ)が活躍する『へび少女』
- 『へび少女』以降も蛇を扱った恐怖漫画を描いた楳図かずお
- 『へび少女』の主題歌・挿入歌
- イメージソング:田中路子「へび少女のうた」
- イメージソング:楳図かずお「へび少女」