
『へび少女』とは、楳図かずお原作のホラー漫画。1966年に、『週刊少女フレンド』誌上にて連載された。楳図かずおは、恐怖漫画の第一人者であるが、同作品が彼の出世作として知られている。少女が蛇に変身していく様が徹底したホラー描写で描かれており、多くの読者に強烈なインパクトを与えた。『へび少女』は、銃でうわばみを撃った祖父を持つ主人公の少女が、継母としてやって来たへび女の復讐によって、蛇に変身していく。そして、主人公の親友姉妹が、彼女を助けるために活躍するという物語である。
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へび女(右)に抱きつかれた中村洋子(左)
山中村(やまなかむら)とは、『へび少女』に登場する日本の架空の地域。具体的にどの地方に存在するのかについては、明かされなかった。うわばみが棲むしのばずの沼がある。また、村内に学校があることも判明している。また、村のはずれには大きな屋敷があり、そこに資産家を装うへび女が暮らしていた。
へび井戸(へびいど)
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へび井戸に落とされた中村洋子
へび井戸とは、『へび少女』に登場する架空の場所。水中には、大量の蛇のうろこが入れられている。突き落とされた人間が井戸を這いずって上がることができると、完全な蛇になったいわれる。また、井戸水が満タンになる時は、山津波の前触れであることが明かされた。
へび人形(へびにんぎょう)

へび人形とは、『へび少女』に登場した物体である。へび女が復讐のために作ったもので、人間大の蛇の形をしている。へび女は、人形の中にへび少女となった洋子を入れ、サツキに刃物を持たせて洋子の目を潰させようと企てた。
へびよけのおまもり
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へびよけのおまもりとは、『へび少女』に登場ヤニするアイテムである。おまもりの中には、蛇が嫌うといわれるタバコのヤニが入っている。洋子は、サツキからおまもりをもらって養女に入ったが、へび女から捨てるように言われた。また、サツキの捜索に出た良三とカンナもおまもりを携帯しており、彼女の救出に役立てている。
『へび少女』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
中村洋子「サツキさんどうかんがえてもうわばみがしかえしにきたとおもうの…」
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中村洋子(右)と山川サツキ(左)
楳図かずおの描くホラー漫画は、不条理に満ちていると評されている。『へび少女』の主人公である中村洋子は、楳図作品のデフォルトともいえるキャラクターであり、不条理極まりない境遇に置かれてきた。自分は何も悪いことをしていないのにも拘わらず、祖父利平がうわばみを狙撃して左目を失明させてしまったばかりに、復讐の対象となってしまうのだ。祖父の悲劇を聞かされてきた洋子は、そのことを敏感に察知しているようで、「サツキさんどうかんがえてもうわばみがしかえしにきたとおもうの…」と親友の山川サツキに打ち明けている。このセリフは、利平のことを語っていると同時に、自分がこれから恐ろしいことに巻き込まれるかもしれないという不条理さを浮き彫りにした名言だと言われている。
へび女「これでおまえもへびになるんだよ」

中村洋子(右)とへび女(左)
楳図かずおが1960年代に発表したホラー漫画は、視覚的恐怖がメインに描かれている。また、人間が突然異形の者に変化してしまう恐ろしさを、楳図独特の描線と書き文字で表現されており、当時の少年少女読者に強烈なインパクトを与えてきた。『へび少女』は、異形の者に変身してしまうキャラクターが主人公の中村洋子であるため、より怖さが読者に伝わったと評されている。へび女が、へびのうろこを飲ませた洋子に向かって、「これでおまえもへびになるんだよ」と言い放ったシーンは、洋子の絶望と主人公ですら酷い目に遭ってしまう不条理が明確に描かれた名場面である。
へび女に狙われた山川サツキ
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山川サツキを追うへび女
洋子をへび少女にする場面をカンナに見られたへび女は、自身の正体を晒してサツキを襲う。サツキは、カンナを先に逃がすと、自分もへび女から逃れようとして必死に走った。サツキが自宅に辿り着き、玄関の扉を開けようとしたその時、へび女が間近に迫っていた。しかし、朝日が昇ったことで、夜行性のへび女は屋敷に戻らざるを得なくなる。九死に一生を得たサツキだったが、この後もへび女に狙われることとなった。サツキが懸命に走っている時に、へび女が物凄いスピードで地面を這って彼女を追うシーンは、へび女の恐ろしい姿と楳図かずお独特の擬音「ザザザーッ」との相乗効果で、『へび少女』屈指のトラウマシーンだと高く評価されている。
人間を蛇にする中村洋子の恐ろしいおみやげ
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へび少女となった中村洋子
へび少女に変身してしまった洋子は、へび女に操られてサツキを狙うようになった。サツキが、へび女の存在に気づいてしまったからである。へび女は、サツキのこともへび少女にすることを思いつき、洋子にあるおみやげを持たせてサツキのもとへと向かわせた。それは大量の卵だった。実は蛇の卵であり、サツキに栄養をつけさせるという名目で洋子は彼女に卵を飲ませてへび少女にしようとしたのだ。この時、サツキの妹カンナも洋子に操られてしまう。ところが、暖かい部屋の中にあった卵は全て孵り、中から大量の小さい蛇が出てきた。サツキはへび少女にならずに済んだが、小さい蛇が沢山出てきたシーンは、多くのファンにトラウマを植え付けた。
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目次 - Contents
- 『へび少女』の概要
- 『へび少女』のあらすじ・ストーリー
- 山中村に伝わる恐ろしい事件
- 中村洋子を襲うへび女の復讐
- 山川サツキとへび少女になった洋子
- へび少女の行く末
- 『へび少女』の登場人物・キャラクター
- メインキャラクター
- 中村洋子(なかむらようこ)
- 山川サツキ(やまかわサツキ)
- 山川カンナ(やまかわカンナ)
- へび女
- その他
- 中村利平(なかむらりへい)
- 中村家のばあや
- 山川ウメ(やまかわウメ)
- 山川良三(やまかわりょうぞう)
- へび女の母
- へび屋敷のばあや
- クマ公(クマこう)
- 『へび少女』の用語
- うわばみ
- 山中村(やまなかむら)
- へび井戸(へびいど)
- へび人形(へびにんぎょう)
- へびよけのおまもり
- 『へび少女』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 中村洋子「サツキさんどうかんがえてもうわばみがしかえしにきたとおもうの…」
- へび女「これでおまえもへびになるんだよ」
- へび女に狙われた山川サツキ
- 人間を蛇にする中村洋子の恐ろしいおみやげ
- 『へび少女』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 楳図かずおの名前を全国区にした代表作の1つ『へび少女』
- 楳図かずおの1960年代作品の主要発表媒体となった『週刊少女フレンド』
- 山びこ姉妹(山川サツキとカンナ)が活躍する『へび少女』
- 『へび少女』以降も蛇を扱った恐怖漫画を描いた楳図かずお
- 『へび少女』の主題歌・挿入歌
- イメージソング:田中路子「へび少女のうた」
- イメージソング:楳図かずお「へび少女」