東京放置食堂(ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『東京放置食堂』とは、2021年にテレビ東京で放送されたテレビドラマである。ゲームアプリ『放置少女~百花繚乱の萌姫たち~』を題材に制作された。元裁判官の主人公が伊豆大島に渡り、居酒屋の寡黙な女店主と名物のくさやに出会い、第2の人生を始める。壮大な自然や名物グルメをテレビ画面越しに楽しめ、主人公が悩みを抱える客に説教をする姿を見ると、癒やされた気分になれるところが魅力だ。連続ドラマで初主演を務める片桐はいりをはじめ、主要キャストや各話のゲスト出演者にも、個性的な俳優陣が出演したことで話題となった。
本土からやってきた女子高生・日高真琴が、三原山の裏砂漠で「5、4、3、2、1、ドッカ―ン」とカウントダウンするシーン。真琴は、島全体が活火山である大島に関心があり、裏砂漠で火山の噴火を想像する。しかし毒親を持つ真琴は、「消えたい」と思ったことがあると、物語の後半で判明。この裏砂漠の砂は黒色をしているため、悩みを抱える彼女の心情が表現されていた。真琴が登場する第7話の冒頭シーンであったことから、爆発寸前の精神状態であることを暗示するシーンでもあった。
裏砂漠は、真琴以外の事情を抱えた登場人物が訪れた場所でもある。黒色の砂や強風、霧など厳しい自然環境によって、登場人物たちの心情や渦巻く感情が表現されていた。
日出子と渚がくさやを食べるラストシーン
行方が分からなくなっていた渚を見つけた日出子。2人は風待屋に戻り、くさやを1人1匹ずつ食べる。日出子は改めて母親に会いに行くよう渚に勧める。渚とくさやとの出会いによって救われた日出子が、今度は渚の背中を押した。日出子は、大島から本土まで船で1時間45分で行けると教えるが、渚はすぐに決められない。渚にとってのくさいもの(=触れられたくない過去)が、母親との関係だった。
また、すぐに物事を白黒はっきりさせたい性格の日出子が「ほっとくことにした」と伝え、渚の気持ちを尊重し、すぐに決断させることをやめる。日出子も、くさいもの(=苦手なこと)に取り組んでいくことを示唆している。2人の関係性がより深まっていくのが伝わり、強い絆を感じさせるシーン。
『東京放置食堂』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
ドラマの原案とくさやの共通点は「放置」
本作の原案は、ゲームアプリ『放置少女~百花繚乱の萌姫たち~』である。放置されることにより、キャラクターたちの強さや魅力が増すというコンセプトから着想を得て、ドラマが制作された。本土からやって来るドラマの登場人物たちが、都会の喧騒や日常から離れ、放置されることで自分自身と向き合う。そのあと、すっきりとした表情で本土へ帰っていくストーリー展開に反映されている。
くさやを製造する工程においても「放置」が重要な要素である。魚をくさや液に漬けたあと天日干しにすることで、うまみが増す。最低限の人の手が加わり、味わい深いくさやへと変貌していくところは、日出子に叱られる登場人物たちが自分自身と向き合い、成長していく姿と重なる。「放置」というコンセプトにより、落ち着いた雰囲気が作り出され、視聴者から好評を得た。
波浮港の呼び名「風待ちの港」から誕生した「風待屋」
渚が祖父から引き継ぎ、日出子と働く居酒屋「風待屋」は、実在するHav Cafeという古民家カフェで撮影された。プロデューサーの吉見健士、監督のアベラヒデノブなどが、大島で視察をしている際に、店の外観を気に入ったことがきっかけだった。店内や貯氷庫を見学させてもらったあと、カフェの店主から波浮港の歴史やかつての賑わいについて、説明を受けた。
以前の波浮港には銭湯、寿司屋、映画館などがあり、各地から集まった漁師たちが安全に出航できる状態になるまで滞在していた。風や海が凪いだ状態になるのを待つことから、波浮港は「風待ちの港」と呼ばれている。この呼び名から着想を得て、居酒屋「風待屋」が誕生した。
Hav Cafeはドラマの聖地巡礼先としても人気で、貯氷庫は老朽化が進んでいるため中には入れないが、外から覗くことはできる。
視聴者を魅了した日出子と渚の「バディ感」
長年バイプレイヤーとして活躍してきた、片桐はいりの初主演ドラマとして話題となった本作。演技力はもちろん、その存在感が壮大な自然が広がる大島とよく合っていて「片桐はいりが絵になる」と、ネット上で評判を呼んだ。加えて、大島におけるむき出しの自然を表したような渚のキャラクターにも注目が集まった。
渚を演じた工藤綾乃は脚本会議に参加し、脚本家から渚のキャラクターについて説明を受け、役への理解を深めた。撮影現場での厳しい演技指導もあり、工藤は若くして居酒屋の女将をしている渚を堂々と演じ、片桐が演じる日出子に引けをとらない存在感を発揮した。
片桐は、日出子を「男はつらいよ」の寅さんをイメージし、説教くさいキャラクターにならないように工夫した。ほっとけない性格の2人がバディとして店を切り盛りし、客に説教をする姿を好ましく思う視聴者が多かった。
『東京放置食堂』の主題歌・挿入歌
主題歌:(元)現役女子高生のあたし「碧の宵」
本作の主題歌は、10代を中心に人気が高まっている新人アーティスト・(元)現役女子高生のあたしの「碧の宵」である。クールで切ない歌声が、ドラマのノスタルジックな世界観を引き立てる。作詞作曲は、ao no yoiが担当。この2人は、クリエイター同士のコラボの場を提供する「クリエイターズマッチングプロジェクト」で、各部門賞を受賞している。ドラマのタイアップにマッチしそうな楽曲を探していたドラマスタッフの声掛けにより、三者によるコラボが実現した。
挿入歌:小松原美織「恋の着払い」(第2話)
第2話で登場するアイドル・小松原美織の大ヒット曲である。歌唱シーンなどはないが、エンディングの冒頭で「恋の着払い」のサビと思われる部分が30秒ほど流れた。美織の歌声に合わせて、日出子と渚が踊っているシーンが見られる。
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目次 - Contents
- 『東京放置食堂』の概要
- 『東京放置食堂』のあらすじ・ストーリー
- もう1つの「東京」大島
- 渚とくさやとの出会い
- 居酒屋とくさや工場を引き継いだ渚
- 渚の「放置」された過去
- 母からの手紙
- 風待ちの港
- 『東京放置食堂』の登場人物・キャラクター
- 風待屋で働く人々
- 真野日出子(まのひでこ/演:片桐はいり)
- 小宮山渚(こみやまなぎさ/演:工藤綾乃)
- 風待屋の常連
- 南波一平(なんばいっぺい/演:与座よしあき)
- 北野康夫(きたのやすお/演:松川尚瑠輝)
- 西浦辰彦(にしうらたつひこ/演:梅垣義明)
- 本土から大島へやって来る人々
- 水科繁(みずしなしげる/演:近藤公園)
- 小松原美織(こまつばらみおり/演:松井玲香)
- 山中正平(やまなかしょうへい/演:竹中直人)
- 鶴見美咲(つるみみさき/演:前田敦子)
- 白鳥真澄(しらとりますみ/演:濱津隆之)
- 久田晶(ひさだあきら/演:小宮有紗)
- 宮田洋子(みやたようこ/演:橋本マナミ)
- 日高真琴(ひだかまこと/演:工藤遥)
- 東耕太郎(あずまこうたろう/演:安藤政信)
- その他
- 太郎(たろう/演:柳下晃河)
- 本田サチ(ほんださち/演:伊崎花菜)
- 裁判所所長(さいばんしょしょちょう/演:仲義代)
- 小宮山巌雄(こみやまいわお/演:山本恭治)
- 『東京放置食堂』の用語
- 伊豆大島に関する用語
- 伊豆大島
- 波浮港
- くさやに関する用語
- くさや
- くさいものにフタをする
- 風待屋に関する用語
- 風待屋(かぜまちや)
- 貯氷庫
- 『東京放置食堂』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 日出子と渚が「恋の着払い」を踊るシーン
- 真野日出子「シャバはそんなに甘くないよ」
- 真琴が裏砂漠で火山の噴火を想像するシーン
- 日出子と渚がくさやを食べるラストシーン
- 『東京放置食堂』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ドラマの原案とくさやの共通点は「放置」
- 波浮港の呼び名「風待ちの港」から誕生した「風待屋」
- 視聴者を魅了した日出子と渚の「バディ感」
- 『東京放置食堂』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:(元)現役女子高生のあたし「碧の宵」
- 挿入歌:小松原美織「恋の着払い」(第2話)