マネーの拳(三田紀房)のネタバレ解説・考察まとめ

『マネーの拳』とは2005年から2009年にかけ『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載された三田紀房による漫画である。元ボクシング世界フェザー級王者の主人公が引退後、会社を興すもののそれを手放し、新たに会社を立上げ、様々な障壁を乗り越え、やがて東証一部上場を果たすというサクセスストーリーである。東証一部上場に昇り詰めるまでの過程での主人公や従業員の仲間達、ライバル、その他の利害関係者らの描写はリアリティを感じさせ生き生きとしており、経営に関する名言やヒントが満載の作品である。

第6巻51話に登場する、証券アドバイザーである牧の事務所。

株式会社T-BOX臨時株主総会

第10巻81話に登場する、株式会社T-BOX代表取締役であるケンの進退を議題とする臨時株主総会。

『マネーの拳』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

塚原為ノ介「起業家として自分にとって必要な素質は何か?それは…一生衰えないカンとセンスだ」

第1巻5話に登場する。
主人公のケンが塚原に1億の投資を申し出てその条件を満たし、後日塚原の元へ向かうと競馬場の来賓席に招待される。そこでケンは投資を受ける前にあっさり承諾を得られた理由を塚原に聞き出す。その中で出てくる言葉がこの「起業家として自分にとって必要な素質は何か?それは…一生衰えないカンとセンスだ」である。塚原はそのカンとセンスを衰えさせないためのトレーニングに競馬に興じているという。塚原にとって競馬はトレーニングの場であり、ケンへの投資も同じ理由で自身のカンとセンスを磨くためのトレーニングとして投資したことを明かす。凡人に到底思いつかないであろう発想でのトレーニング方法ではあるが、塚原は日々の鍛錬を怠らないのであった。

花岡健「生きる価値てめえで作れねえんなら今すぐ死ね。」

第3巻20話に登場する。
従業員の運転資金800万円持ち出しなど災難続きのケンであったがオタク気質の従業員、加藤の趣味のフィギュアに起死回生の一手を見出す。ケンは早速トップアイドルの中原綾名の等身大ボディのフィギュアを作るよう加藤に命じるも加藤は自分の自信の無さからその要求に戸惑う。ここで加藤に言い放つケンの言葉が「生きる価値てめえで作れねえんなら今すぐ死ね。」である。この後加藤は実際に中原の等身大のフィギュアを作成し、会社の危機からの起死回生に大きく貢献する。加藤はここで初めて自分の生きる価値を見出すことができる。ケンは従業員の加藤に仕事を与えるだけでなくその従業員の能力も見出し生きる価値をも与えたことになる。そのきっかけがこの言葉である。

塚原為ノ介「楽して儲けるのが本当の商売だ。」

第3巻22話に登場する。
中原綾名に見事自社製品のTシャツを着させることで増産、一ツ橋物産との取引も処遇改善の上で行われるなど起死回生の逆転劇を果たしたケンは後日塚原の元へ報告をしに訪れる。ここで「この先更に勉強してアパレルブランドを立ち上げていくことを考えている」というケンに塚原は間髪入れず「勉強なんて君らしくない」とした上で言い放つのがこの「楽して儲けるのが本当の商売だ」である。「楽して儲かる商売はないというのは間違っている」と塚原は言い切る。真の経営者はカンとセンスでアイデアがひらめきそれを即座に具体化、独自のビジネスモデルを作り独占化してしまうという。勉強してからという発想は商売の才能が無いもの発想であると塚原は言い切る。正にカンとセンスで結果を残してきた塚原だからこそ言える言葉である。

井川泰子「ビジネスなんてバリバリ私情…個人的感情でやるものよ。」

第4巻27話に登場する。
ケンに対し並々ならぬ執着を抱く井川はケンの新規事業のTシャツ専門店の情報を得るとそれに似た店舗をケンの出店する場所の近くへ進出させようと企てる。そのような井川を見かねた部下の高野が「ビジネスと私情をあまり混同しない方がいい」という指摘に対し、井川が言い放つ言葉が「ビジネスなんてバリバリ私情…個人的感情でやるものよ。」である。大いに私情をむき出しにしなんとしてもケンを倒したいとする、井川を井川たらしめる言葉である。

花岡健「だいたい…知り合いから金を借りて、人の心という利息ほど高いものはねえ。」

第4巻31話に登場する。
ケンが新規事業であるTシャツ専門店を立ち上げてから程なくしてケンは出店攻勢をかけるため「一世一代の大借金をする」と言う。その資金繰りで「会長を当てにしているのか」という木村に対し「心底信用しているワケではない」とし続けて言い放つのが「だいたい…知り合いから金を借りて、人の心という利息ほど高いものはねえ。」である。ケンは当初から銀行からの借り入れを受けるつもりでいた。これは後にお金を借りる代わりに差し出すものが不動産などの担保でないといけないとするケンの信念によるものであった。そうでなければ自由を担保として差し出さなければならない。すると思うような経営はできない。それ程までに金の怖さを知り尽くしたケンだからこそ言える言葉である。

花岡健「商売というのは…心を売って金にかえるってことなんだよ。」

第5巻42話に登場する。
T-BOX社のオリジナルの商品である医療用生地を利用した商品がヒットすると、井川はその生地を横取りし同じような製品を中国で生産販売する。しかしその商品は粗悪品で返品の嵐を喰らうことになる。すると井川は横取りした医療用生地を返品してしまうよう部下の高野に指示する。医療用生地を扱う生地卸の田島は再度ケンに泣きつく。ケンは水に流して以前と同じ条件で取引することを田島に伝える。その商談の帰りに「そこまで譲らなくても」という大林に対しかける言葉が「商売というのは…心を売って金にかえるってことなんだよ。」である。相手の弱みに付け込むことはしないという信念を持ち合わせているケンだからこそ言える言葉である。

塚原為ノ介「だいたい経済というものは合法的戦争なのだよ。」

第8巻67話に登場する。
T-BOX社を買収するためT-BOX社の大株主である塚原の元へ探りを入れに来た井川が塚原と面会した時に言う塚原の一言が「だいたい経済というものは合法的戦争なんだよ。」である。人が死なないから騒ぎにならないが銃をパソコンと携帯に持ち替えただけで今も戦争は続いているというのが塚原の見解でこれを面白いとする。例えば今回でいうような企業の買収合戦でこれをネタに居酒屋のビールが2杯のところが3杯になる。これが経済効果を生むという。戦いは生きるエネルギーであり、戦いこそ人類を繫栄に導くと塚原言い切る。塚原はこの人間の戦いを中立の立場で見守る。この中立という神の視座にいるからこその塚原の言葉である。

花岡健「株価の高騰維持。これこそが最強の買収防衛策なんだ。」

第8巻71話に登場する。
T-BOX社の買収を巡る攻防が続く中、ケンは新商品開発に注力する。そこまで注力するケンに「オラはあれぐらいでイケるんでねえかと。」という木村に対しいう言葉が「株価の高騰維持。これこそが最強の買収防衛策なんだ。」である。画期的新製品を大々的に発表し自社の企業価値を飛躍的に向上させれば買収側のコストが上がり意欲を減退させるという。これでケンは見事T-BOX社の買収を巡る攻防で出し抜くことが出来る。商売の王道を貫くケンだからこその買収防衛策といえる。

福沢ウィリアム太郎「教えてやる。相手をいかに支配するか…まず脅す!恐怖心を抱かせる。そして、与えて、甘やかして、骨抜きにする!これが侵略の第一歩なのさ!」

第10巻81話に登場する。
ケンの代表取締役の進退を議題にした臨時株主総会で株主として意見する福沢が心の内で言う言葉が「教えてやる。相手をいかに支配するか…まず脅す!恐怖心を抱かせる。そして、与えて、甘やかして、骨抜きにする!これが侵略の第一歩なのさ!」である。実際に福沢は脅しめいた揺さぶりでT-BOX社役員の日高や八重子をいとも簡単に洗脳する。

花岡健「社長から信用されていない。これを誇りに思わなきゃダメだ。」

第11巻90話に登場する。
ケンは、一ツ橋物産から出向中の高野に「いかにも信用できなさそうなヤツをもう2~3人引っ張って来れないか」と指示を出す。それに対し高野はケンにその真意を聞く。するとケンは「だいたい経営者ってのは社員なんて誰一人信用しちゃいない。信じるのは自分だけ。」と言い切る。その上でケンは自社を狡猾な狼の集団にしたいという。ここで信用できそうな社員が会社を腐らせるという信念を持つケンが言い放つ言葉が「社長から信用されていない。これを誇りに思わなきゃダメだ。」である。信用されていない社員というのは実は会社を活性化させる社員であるという逆説が高野を鼓舞する。

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